IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
生徒会の仕事が終わり、しばらく経って夕食時。
俺は一夏とともに食堂に続く廊下を歩いていた。
「そう言えばよ」
一夏が思い出したように言った。
「ん?」
「虚さんの様子、変じゃなかったか?」
「虚さん? あー、お前も気づいてた?」
今日の虚さんの様子はとにかく変だった。なんというか、『心ここに有らず』って感じ。
「どうしたんだろうな。いつもはあんな感じじゃないのに」
「さあな。俺にも分からないけど、なんか悩んでる感じだったよな」
一夏は顎に手をやって考え始めた。
「卒業後の進路、とかかな?」
「それは無いだろ。楯無さんが言ってたじゃん。布仏家は更識家の使用人の家系だって」
虚さんの進路は間違いなく楯無さんの専属のメイドだろう。
「そうなるとのほほんさんは卒業したら簪の使用人になるのか」
「のほほんさんが使用人・・・・・」
一夏の発言からつい想像してしまう。のほほんさんがメイドってなると・・・うーん・・・・・。
「・・・ダルダルのメイド服ってちょっとアレじゃね?」
「確かに・・・・・アレだな。それに簪が大変そうだ」
だよなぁ、と笑いながら食堂の扉を開けた。
「ん? よう。セシリア。マドカ」
すると目の前にセシリアとマドカが立っていた。
「あ、お兄ちゃん。瑛斗」
「こんばんは。お二人とも」
二人とも料理が載ったトレーを持っている。
「シャルロットたちもいるから、向こうのテーブルで待ってるね。セシリア、行こ?」
「え、あ、ええ。まいりましょうか。ではまた後で」
そう言って二人は食堂の奥の方へ進んでいった。
「じゃあ俺たちもあっちに合流するか」
「そうだな」
俺と一夏はそれぞれ煮豚定食とチキン南蛮定食を受け取って、いつものメンツがいる席へ向かった。
「よお。みんな、お揃いで」
「基本このメンツで揃ってるでしょ。さっさと座りなさい」
「へいへい。わーってるよ」
鈴に急かされて空いている席を探す。
「瑛斗、ここ空いてるよ」
「空いてる・・・・・」
「おう」
俺は空いているシャルと簪の間の席に座る。
「一夏。ここが空いているぞ」
「一夏さん。こちらが空いてますわ」
箒とセシリアが同時に自分の隣の席を一夏に示した。要するに二人の間の席だ。
「・・・・・・」(バチバチ)
「・・・・・・」(バチバチ)
なぜか睨み合う二人。
「あ、ああ。サンキュ・・・」
一夏は恐る恐るその席に腰を下ろした。
「・・・・・ふふっ」
そんな一夏の様子を見て楽しそうに笑うマドカ。俺は見慣れているからいいけど、来たばかりのマドカにとっては面白い
ものなのだろうか。
「こ、コホン。ところで一夏さん?」
「ん?」
セシリアが咳払いしてから一夏に話しかけた。
「一夏さんは、甘いものはお好きかしら?」
「甘いもの? 食べ物でか?」
「はい。その通りですわ」
突然何を聞いたかと思えば、なんのこっちゃ。
「・・・・・まあ、嫌いじゃないぜ」
「それはお好きと捉えてよろしいかしら?」
「ああ、でもあんまり量は食えないかも」
「そうですか。分かりましたわ」
そう言うとセシリアは手帳を取り出して何かを書き記す。
「? なんだったんだ今の?」
「いえ。お気になさらずに」
セシリアはニッコリ笑うと再びスプーンを持つ手を動かし始めた。
「「?」」
俺と一夏は何が何だかわからずに首を捻った。
「ね、ねえ・・・・・・」
「うん?」
簪が俺の上着をクイクイと引っ張って話しかけてきた。
「瑛斗は・・・甘いの・・・・・好き?」
「え? どうしたお前までいきなり」
「いいから・・・・・答えて」
「お、おお。好きな方だな。技術開発のアイデア出すには糖分は不可欠だからな」
「うん・・・。わかった」
簪はコクンと頷いて、再び箸を動かし始めた。
「「?」」
俺と一夏は再び首を捻るのだった。
それからしばらくはいつも通りおしゃべりしながらの夕食だった。
「あ、そう言えば。みんなは卒業マッチのことで何か聞いてるか?」
食後のおしゃべりの中、ふと思い出した俺はみんなに顔を向けた。
「そのことなら教官から少し聞いている」
今まで黙っていたラウラが口を開いた。
「三年生が卒業前に相手を指名して実戦を行うイベントであろう」
「そうそう。それそれ」
「確か・・・開催が二十日だったわね。申し込まれた方は断れないんだっけ」
鈴も会話に加わる。
「それがどうかしたの?」
シャルも聞いてくる。
「いや、みんなは申し込まれたのかなーって思って」
「その口ぶりからすると、お前は申し込まれたのか?」
ラウラが俺の顔を見ながら聞いてきた。
「んー・・・申し込まれたっつーか、なんと言うか。なあ?」
一夏に顔を向ける。
「そうだなぁ」
一夏は苦笑いを返してきた。
「どうした? 何があった」
箒が眉をひそめた。
「実はよ――――――――――」
ポン
事の顛末を話そうとしたら、ふいに肩を叩かれた。
「?」
振り返るとあの謎の果たし状を俺に渡したフォルテ先輩が。
「・・・・・・・・・・」(ニコニコ)
顔は満面の笑顔だ。だけど・・・・・
手が尋常じゃない力で俺の肩を掴んでいる・・・・・・!
「!」
俺はあの果たし状の内容を思い出した。
――――――――このことをだれかに言ったらあなたのみにふこーがおこるでしょう―――――――――
ヤバい。何されるか分からない・・・・・!
「・・・・・・!」(コクコク)
俺は無言で頷きまくった。するとフォルテ先輩も頷き返してそのまま食堂の出口へ行ってしまった。
「・・・な、なんだったんですの? 今のは・・・・・」
他のみんなも呆気にとられている。
「・・・あ。それで? 卒業マッチがどうこうっていうのは?」
シャルが思い出して再び俺に顔を向ける。
俺はゆっくりと、しかしはっきりと言った。
「・・・・・・・ごめん。やっぱ、なんでもない」
尋常ならざる、冷や汗と共に。
「・・・・・・・・・・・」
ありえん。
寮で男子が使えるトイレが全部点検中なんて・・・・・!
「今度生徒会に申し立てしようか・・・・・あ、俺生徒会役員だった」
意外とその気になれば話通るかも。
まあそれはそれとして、おかげで俺は用を足すために校舎まで行くことになった。今はその帰りである。
「こんな夜の校舎からは早く出ねえと・・・・・・」
ぼやきながら廊下を歩いていると・・・・・
「ん?」
一つの教室の電気がついていることに気づいた。
「三年・・・二組?」
三年生の教室だった。
(こんな時間に誰だ?)
俺は気になって中をのぞいた。
「・・・・・・・・・・」
教室の中にはダリル・ケイシー先輩がいた。
窓を開けて遠くを見ている。
考え事でもしてるのだろうが、こんな時間にいるのは心配だ。
開いているドアをノックして声をかけた。
「ダリル先輩」
「・・・・・・・・・」
返事がねえ。
「ダリル先輩!」
「うわあっ!?」
大きめの声をかけてようやく気づいた。
「な、なんだ。桐野か」
「なにやってんですか? こんな時間にこんなところで」
近づこうとするとダリル先輩は俺の方に近づいてきた。
「なんでもない。ちょっと学園生活を思い出してただけだ」
そしてそのまま俺の横を通り過ぎて、教室から出て行ってしまった。
「・・・・・あ、そうだ。先輩あの――――――――」
フォルテ先輩のことでなにか知っているかもしれないと思って声をかけようと振り返ったが、
すでにそこにはダリル先輩の姿などなく、人っ子一人いない廊下が続くばかりだった。
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