英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 外伝〜剣帝の苦労〜前篇 |
―――リベル=アーク崩壊より1ヶ月1週間後――――
〜帝都ミルス・マルーダ城内・リウイ皇帝の私室〜
「レーヴェを私の伴侶として国内、ゼムリア大陸共に発表しない上結婚も認めない!?どうしてですか、お父様!?」
リウイがエレボニアより帰還し、シルヴァン達にエレボニアでの事を話した後、プリネに話があると告げたリウイに付いて行き、リウイの私室にてある事を言われたプリネは怒りの表情で尋ねた。
「………どうしたも何も、忘れたか?……奴は”結社”の元・”執行者”であり、リベールより託された重罪人だぞ?そんな奴が皇女であるお前の伴侶等と、発表できると思っているのか?」
怒りの表情のプリネに対して、リウイは静かな表情で答えた。
「でも!それを言ったら、ヨシュアだって………!」
「……話に聞くところ、確かに奴は空賊艇を奪ったが………その件に関しては”結社”の情報を持ち帰るという功績とアリシア女王の裁決によって相殺されたという。………対してあの男はヨシュアと違い、ゼムリア大陸内に”結社”の”執行者”として顔が割れすぎている。そんな男が”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”と称されているお前の伴侶だと―――”メンフィル皇女”の伴侶だと発表できると思っているのか?」
「っつ………!けど!今まで私やリフィアお姉様に来た縁談をお父様は私達の伴侶だと認める条件の一つとして、『私達自身が決めた男』と仰いました!」
「ああ。その言葉に偽りはない。………何も絶対に認めないとは言っていない。………今は本当にお前の伴侶として相応しいか、観察させてもらっている所だ」
「そんなの必要ないです!レーヴェと私はお互い、思い合っているんですから!」
「確かにそれは認めよう。………だが、今のお前は”カリン・アストレイ”という村娘ではなく、俺とペテレーネの娘………メンフィル皇女――”プリネ・カリン・マーシルン”だ。俺とペテレーネは奴の事をよく知らん上、奴は重罪人だ。……そんな奴をお前の親として無条件で認める訳にはいかん。」
必死の表情で訴えかけてくるプリネに対して、リウイは冷静な様子で答えた。
「っ………………!けど、お母様は私とレーヴェの仲を認めてくれると仰ってくれました!それにイリーナ様やリフィアお姉様、ティアお姉様だって祝福してくれました!」
「………………その4人が保証するというから、自由の身にしてやっている上、王城の客室の一つを使わせ、さらにお前の傍にいる事に目をつぶってやっているんだぞ?重罪人に対してこれほどの好待遇………どこにもないぞ。」
「………それはっ………!」
「………一端、頭を冷やして来い。お前らしくないぞ。」
「…………………わかりました。………失礼します。…ツーヤ、行くわよ。」
「かしこまりました、マスター。失礼いたします、リウイ陛下。」
リウイに言われたプリネは疲れた表情で溜息を吐いた後、扉の傍で静かに立っていたツーヤと共にリウイの私室を退出した。
〜マルーダ城内・廊下〜
「ハア…………予想はしていたけど、やっぱりそう簡単には認めてくれないわね……」
「マスタ―………」
歩きながら溜息を吐いたプリネをツーヤは心配そうな表情で見つめていた。
「フフ……心配をかけてごめんね、ツーヤ。」
「いえ。マスターが幸せになって頂く事はあたしの希望でもありますから。」
「フフ……そうは言ってもツーヤ………孤児院の事でレーヴェの事………完全には許していないでしょう?」
「それは………………」
苦笑しながら言ったプリネの言葉を聞いたツーヤは返す言葉がなく、黙り込んだ。
「………それにお父様とシルヴァンお兄様からレーヴェの監視役として任命されている事も聞いているわ。」
「………はい。お二方からは常にマスターの傍におり、そしてあの人の事を一部とはいえ、それを知るあたしが適任だという事で任命されました。……申し訳ございません。マスターを裏切っているみたいで………」
「ううん。2人の考えは十分わかっているし、レーヴェの監視役として適任なのはツーヤしかいないわ。だから、気にしないで。」
申し訳なさそうな表情で謝罪するツーヤにプリネは優しい微笑みを浮かべた。
「マスタ―…………あの。本当は提案すべきかどうか迷っていたんですけど、やっぱりあたしはマスターに幸せになって頂きたいですし………マスターの為にある提案をさせていただく事を決めました。」
「提案?何かしら。」
「………あの人――レーヴェさんがリウイ陛下と戦い、その実力を見てもらえばいかがでしょう?メンフィルは実力主義――それも戦いに関しては強さを重点的においてます。……実際あたしも、ファーミシルス大将軍が鍛え上げた親衛隊の方達を10人抜きして護衛騎士として認められたわけですし………」
「………そうね。確かにそれなら、お父様もレーヴェの事を少しでもわかってくれるかもしれないわね。」
ツーヤの提案を聞いたプリネは考え込んだ後、静かな表情で頷いた。
「後は”神格者”になれば話は別だったかもしれませんが………さすがにそれは難しい話でしょうね………話に聞くところ、”神格者”はマスターのお母様のように”神”を信仰し、かつ”神”自身に認められて”神核”を授けられないと不可能と聞きますし。」
「”神格者”………”神”から”神核”を授けられないで”神格者”になる方法。……………!!ありがとう、ツーヤ!光明が見えて来たわ!」
「え?」
明るい表情でお礼を言われたツーヤは首を傾げた。
「とりあえず、今日の所は私の事はいいわ。貴女はこの後、現ミレティア領主――サフィナお姉様のご子息と会う予定が控えているのでしょう?」
「は、はい。かつて”ミレティアの英雄”と称えられ、諸事情により今はその名を隠した伝説の竜騎士の家系――”ルクセンベール”を再び名乗る事を許されたあたしに一度会ってみたいという事で。」
「そう。じゃあ、今は私の事よりそちらを優先しなさい。今の貴女は確かに私の世話役兼護衛騎士だけど………メンフィルの貴族でもあるのよ。国内の領主との会談も”貴族”としての務めよ。貴女はエステルさんやミントと違い、メンフィル帝国に所属する貴族の一人なのだから。」
「……かしこまりました。それではあたしはこれで失礼します。」
プリネの言葉を聞いたツーヤは一礼をした後、どこかへ去った。
「………さて。まずはお母様にミラ様への紹介状を頼んで………後はレーヴェに会って、ツーヤの提案を話さなくちゃ。」
そしてプリネは独り言を呟いた後、どこかに向かった。
〜マルーダ城内・鍛錬場〜
プリネが来る少し前、レーヴェはエヴリーヌと戦っていた!
「そこだっ!」
レーヴェはエヴリーヌにクラフト――零ストームを放ったが
「無駄!」
エヴリーヌは転移をしてレーヴェの背後に回りこみ
「死んじゃえばぁっ!釣瓶打ち!!」
「!!」
ウィルによって弓でありながら剣としても扱えるように改造してもらった上、さらに普通の”剣弓”と違い、普通の弓としても扱える武器――”蒼穹の魔神剣弓”でクラフトを放ったが、レーヴェは剣でギリギリ防御に成功した!
「うっざい!審判の轟雷!!」
それを見たエヴリーヌは眉を顰めた後、すぐに一端後ろに転移して連続ですざましい風の上位魔術を次々と放った!エヴリーヌが放った魔術によって、すざましい雷が連続でレーヴェに落ちてきた!
「クッ……!」
しかしレーヴェは顔を顰めながらも自分に落ちてくる雷を次々と回避した後
「旋風斬!!」
一気に踏み込んで旋風のごとく剣で弧を描くように斬りつけるクラフト――旋風斬をエヴリーヌに放った!
「!!」
レーヴェの攻撃に気付いたエヴリーヌは簡易結界を展開して防御した!
「ハァァァァ………!」
その隙を狙って、レーヴェはたたみかけるようにクラフト――破砕剣を放った!しかし!
「キャハッ♪引っかかった♪」
エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべ、オーブメントを駆動させた!
「!しまっ…………!」
それに気付いたレーヴェは攻撃を中断させて、回避行動に移ろうとしたが
「吹っ飛んじゃえ!ゲイルランサー!!」
「ガッ!?」
エヴリーヌが放ったアーツによって、ダメージを受けると共に吹っ飛ばされた!
「ハッ!」
吹っ飛ばされたレーヴェは空中で受け身をとって着地をしたが
「貫け!氷剣!!」
その隙を逃さないかのようにエヴリーヌが魔術を放った!
「っつ!」
エヴリーヌの攻撃に気付いたレーヴェは回避したが、片腕に氷の刃がかすり、顔を顰めた!
「我が幻影よ!」
そしてレーヴェはクラフト――分け身を放った、もう一人の自分自身を作り出した!
「行け………!」
分身のレーヴェはエヴリーヌに襲い掛かった!
「とうっ!!」
一方エヴリーヌは矢を放って攻撃したが
「フッ!」
分身のレーヴェは矢を打ち払い
「せいっ!」
エヴリーヌに攻撃を仕掛けた!
「無駄!」
しかしエヴリーヌはまたもや簡易結界を展開して防御をした後
「消えろ!贖罪の雷!!」
「グアアアアアアッ!?」
片手で魔術を放ち、エヴリーヌの魔術を受けた分身のレーヴェは悲鳴を上げ
「これで終わり!ケール・ファセト!!」
「ガハッ!?………」
エヴリーヌが放った魔槍を放つ魔術が分身のレーヴェを貫き、消滅させた!
「むんっ!受けて見ろ、荒ぶる炎の渦を…………鬼炎斬!!」
一方本物のレーヴェはエヴリーヌが分身の自分と戦っている間にすざましい闘気を溜め、そしてエヴリーヌにSクラフトを放った!
「そんな技でエヴリーヌに勝てると思っているの?……格の違いを思い知らせてやる!ゼロ・アンフィニ!!」
自分に襲い掛かる炎を纏ったかのようなすざましい衝撃波をエヴリーヌはつまらなさそうな表情で見つめた後、Sクラフトを放った!エヴリーヌが放ったSクラフトはレーヴェが放ったSクラフトを易々と消滅させ、レーヴェを襲った!
「!!」
それを見たレーヴェは横に跳んで、回避した!
「……避ける事だけは相変わらず、ムカつくぐらい上手いね。……けど、いつまでも避けれると思ったら大間違いだよ。……”魔神”の恐ろしさ……思い知らせてやる!」
「フッ……さすがは”魔弓将”。噂通り………いや、噂以上に容赦のない攻撃だ。どの攻撃もまともに喰らえば、ただでは済まない。」
「………当たり前だよ。だって、最初から殺すつもりで攻撃しているもん。……お前がプリネの恋人だなんて、絶対に認めないんだから!リフィア達が交際を認めているからといって、エヴリーヌやお兄ちゃんが認めていると思ったら大間違いだよ!」
「………元からカリン――メンフィル皇女、プリネ・カリン・マーシルンとの交際を無条件で認めてもらえるとは思っていない。俺はカリンの今の立場を……そして俺自身の立場もわかっているからな。……だが、例えそれでも俺は構わん。カリンが生きているのなら………例えどんな修羅の道であろうと進むのみ。カリンを失った時と比べれば、その程度、大した事はない。」
「あっそ。だったら、プリネと一緒になる夢を見ながらさっさと死ねばぁっ!?」
そしてエヴリーヌは次の攻撃の構えをし、レーヴェも剣を構えたその時!
「そこまでです!」
プリネの制止する大声を聞こえた!
「2人とも………これは一体どういう事!?もはや、鍛錬とは言えない戦いじゃないですか!特にエヴリーヌお姉様!本気でレーヴェを殺すつもりでしたでしょう!?」
「プリネ。……だって………」
近づいて来たプリネに責められたエヴリーヌは気まずそうな表情をした後、顔を下に向けた。
「レーヴェ、大丈夫?」
「ああ。少し怪我をしたが、この程度、かすり傷だ。」
心配そうな表情をしているプリネを安心させるようにレーヴェは微笑した。
「……治療しておくわ。………闇の息吹!!」
微笑しているレーヴェをプリネは治癒魔術を使って傷を回復した。
「もう………何で2人が戦う事になったの?」
「………”戦妃”達のように対戦を誘われて、それを受けただけだ。」
「カーリアン様達はわかるけど、エヴリーヌお姉様が?………どうしてですか、エヴリーヌお姉様。普段のお姉様なら、戦でない限り『めんどくさい』とおっしゃって、鍛錬は滅多にしないのに………それに黙ってはいましたが時折、レーヴェを狙ってどこからか放たれる矢……あれはエヴリーヌお姉様でしょう?」
レーヴェの話を聞いたプリネは不思議そうな表情でエヴリーヌを見て尋ねた。
「だって…………そんな弱い奴がプリネの恋人なんて認めたくないもん………………それに結婚なんてしたら、プリネがエヴリーヌ達と離れちゃうし………」
プリネの言葉にエヴリーヌはレーヴェを睨んで、呟いた。
「愛する事に強さとか関係ありません、お姉様。確かに私とレーヴェは恋仲で結婚も真剣に考えていますが………だからと言ってお姉様達の傍から私は離れません。私は将来、陛下――シルヴァンお兄様や次期女帝となられるリフィアお姉様のお手伝いを……闇夜の眷属と人間達の共存をよりよくする為に”皇女”としてこの城に残り続けるつもりですし。」
「……でも!そいつはいつか絶対プリネを悲しませる!」
優しい口調で説得しようとするプリネの言葉を聞いたエヴリーヌはレーヴェを睨んで叫んだ。
「………なぜ、そう言い切れる。”魔弓将”。……やはり俺がリベールより預けられた”重罪人”だからか?」
エヴリーヌの言葉を聞いたレーヴェは静かにエヴリーヌを見て尋ねた。
「そんなどうでもいい事は関係ない!お前が”人間”である限り、絶対にいつかプリネを悲しませる!」
「何……?一体それはどういう事だ………?」
「……お姉様、まさか………”寿命”の事を気にしていらっしゃるのですか?」
エヴリーヌの言葉を聞いたレーヴェの疑問に察しがついたプリネはエヴリーヌを見つめて尋ねた。
「……”魔神”のエヴリーヌや”神核”のあるお兄ちゃん、ペテレーネは寿命なんか関係ないし、お兄ちゃんの”魔神”と”姫神”の力の一部を受け継ぐプリネやリフィア達、そして”竜”のツーヤは寿命なんてまだまだの話だけど………そいつは……”人間”は50年ぐらい経てば、年老いて死ぬじゃない……!その時、プリネは絶対悲しむよ……!」
「………………………」
「お姉様…………私の事を心配してくれて、ありがとうございます。………でも、大丈夫です。その件に関してはレーヴェの頑張り次第で解決できるかもしれません。」
エヴリーヌの言葉を聞いたレーヴェは静かに目を伏せ、プリネは静かな表情で見つめた後、優しい微笑みを浮かべて答えた。
「え……」
「カリン……?一体それはどういう事だ……?」
自分の話を聞いて不思議そうな表情をしている2人にプリネは鍛錬場に来る前に母(ペテレーネ)に頼んで、自らの力で”神格者”に至ったブレアード迷宮地下の”闇の訓練場”の主であり、幼いリウイを鍛え上げたのリウイの師匠と言ってもおかしくない女性――ミラ・ジュハーデスへレーヴェを”神格者”にする為の修行をつけてくれるように頼む紹介状を書いてもらった事を説明した。
「そのような人物がいたのか………」
「ええ。……それよりごめんね、レーヴェ。相談もせずに私の独断で決めてしまって………」
自分の話を聞いて驚いている様子のレーヴェにプリネは申し訳なさそうな表情で謝った。
「いや……お前やヨシュアを2度と失わせない力を手に入れる為にも……そしてずっとカリンの傍でカリンを守り続ける為にもありがたい話だ。……それにあの”剣皇”の師の元で修業をさせてもらうなど、戦士としても光栄だ。」
「もう、レーヴェったら………」
口元に笑みを浮かべて語るレーヴェを見たプリネは苦笑した。そしてエヴリーヌを見て微笑んで言った。
「エヴリーヌお姉様……もし、レーヴェが”神格者”になればお姉様も祝福してくれますよね?」
「…………………プリネ”だけ”は祝福してあげる。……フン!そう簡単に”神格者”になれると思ったら、大間違いだからね!」
プリネに微笑まれたエヴリーヌは静かに答えた後殺意が籠った眼でレーヴェを睨み、そして転移してその場から消えた。
「……追わなくていいのか?」
「勿論、後で会いに行くわ。それよりまずはお父様の件よ。……今からお父様の所に行って、さっきの説明をするから一緒について来てくれないかしら?」
「ああ。」
そしてプリネはレーヴェを伴って、ツーヤの提案の事を説明し、リウイ自身が了承し、そして翌日。ミルス郊外の演習場にて、プリネ達や兵達が見守っている中、レーヴェはリウイと向かい合っていた。
〜帝都ミルス郊外・メンフィル軍演習場〜
「……今回の事をお前と因縁があるツーヤが提案した事には驚いたが……それとは別にもう一つ。エステル達と共にケルヴァンと戦った際に見せた剣筋で気付いたが……レオン=ハルト……お前はクーデター事件以降行方を眩ませた”ロランス少尉”だな?」
「……はい。……あの時の戦いで貴方に敵わないのは承知しています。……だが、それでも俺はカリンの為に退けません。かつて”剣帝”と呼ばれた俺の剣………どこまで届くか存分に奮わせてもらいます、”剣皇”。」
「……いいだろう。………今回の戦いの結果次第ではそれなりの身分につけてやる事も考えている。……俺にプリネの伴侶として認めてもらえたければ、全力で来い。」
すざましい闘気を全身に纏い、剣を構えたレーヴェに対して、リウイは静かに答えた後全身にすざましい魔力や闘気、そして覇気を纏ってレイピアを鞘から抜いてレーヴェにレイピアの切っ先を向けて言った。
「行くぞ、”剣皇”………!」
そしてレーヴェはリウイに戦闘を仕掛けた………!
という事で次回はレーヴェ、リウイへのリベンジ戦です!そしてレーヴェ……悲しいことにエヴリーヌからは雑魚扱いされています(爆笑)しかも常にエヴリーヌから命を狙われています(大汗)………感想お待ちしております。
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外伝〜剣帝の苦労〜前篇 今回は軌跡ファンの方達がある意味期待していたであろう話です(笑) |
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