〜貴方の笑顔のために〜 Episode7 戦場に散る華
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張任の説得に失敗した桔梗と紫苑は

しぶしぶと本陣に戻ってきた。

 

「すまぬ」

 

「申し訳ありません」

 

もともと成功する確率も少なかったのだが、それでも義を通す二人。

 

「あわわっふたりのせいではありません。

 いま、三国が同盟を結び平和へと歩んでいる中、

 反旗を翻したのは相応の覚悟があったからかと・・・」

 

「そうですよ桔梗様、張任は桃香様に刃をむけた・・・

 それは万死に値します。

 いますぐやつの頸をとってきましょう」

 

「まぁそうあわてるな焔耶よ・・・・

 して、軍師殿こたびの戦い、どうみるかの?」

 

早まる焔耶にたいして、桔梗が一言いい、

軍師である、雛里に助言をもとめた。

 

「敵の兵数は報告通り約二千です。そうであるならば、こちらは

 桔梗さんを中央に置き、左翼に紫苑さん、

 右翼に焔耶さんをおき、攻城戦にあたります。

 おそらく張任さんは、斥候の情報から主力

 は三人であると判断するでしょう。

 私は初めは本陣で待機して、

 混乱に乗じて、少数精鋭百騎を率いて

 南門をめざします。

 ここは竹林となっているので、身を隠すのには

 ちょうどいい場所になっています。

 張任さんが正門の対応に手一杯になったら、

 南門を突破し、城内を混乱させます。

 敵の乱れが生じたら、三人には、正門を突破してもらいます。」

 

 

「うむ、承知した、しかし軍師どのだけで、平気かの?」

 

「はい、そこが今回の狙いなのです。相手の裏をかけば

 被害も少なくて済むでしょう。

 それに、精鋭百騎です。大丈夫かと。」

 

「まあ、そうじゃの。わしらが鍛えた者たちじゃ、安心できる」

 

「ええ、雛里ちゃん、気を付けてくださいね。」

 

「あぅ、ありがとうございます」

 

「さてと・・・行くとするかの、

 後れをとるなよ、焔耶よ」

 

「もちろんです、桔梗様」

 

 

かくして軍議が終わり、四人は白帝城前に、

陣をひくのであった。

 

 

 

 

〜雛里視点〜

 

白帝城へむかう途中、私はひとつのことが気になってしょうがなかった。

それは、恋さんのこと。

彼女を罠にはめたのは誰なのか、そしてその狙いは・・

 

それでも、親友である朱里ちゃんが頭に浮かぶ。

彼女ならきっとその問題は解決してくれるはず、だから自分は今やるべきことを

しっかりとやればいい、そう思って陣についた。

 

 

攻城戦がはじまって一刻後、私たちはは南門から侵入すべく、

混乱に乗じて本隊からはなれ、竹林に身を隠していた。

相手にも完全に気づかれることもなく、策はもうなったと、そう思う。

 

「鳳統様、ここまでは難なく来られましたね。

 すでに張任将軍は手一杯になっているということでしょうか?」

 

桔梗さんたちの精鋭のみなさんも同じように考えているらしかった。

 

「そっそうだとおもいます。

 私たちは南門の見張りに乱れがあったのち、

 強襲します。」

 

「はっ!」

 

それでも、少しおかしい。さすがに伏兵でも置いておくか、南門のまもりを

もっと固めるのは当たり前・・

 

「乱れが生じました。ではみなさんいき“ブスッ”・・・・えっ?」

 

南門を攻めようとした矢先、

後方の兵たちがつぎつぎと倒れていく。

 

「報告します!伏兵がいた模様、つぎつぎと被害が広がっている様子、

 いががいたしましょうか?」

 

そう、ですよね。流石にこうも簡単には通してくれませんか・・

 

「わかりました。ではこちらの伏せていた兵に合図を送ってください。

 その後部隊をふたつにわけます。

 ひとつは南門を強襲。

 もうひとつは敵の伏兵にあったてください」

 

 

もともと伏兵はおいているだろうと考えていた

私はそれに対応する策をすでにとっていた。

敵の将は一人で兵数は三千。

伏兵をおくことはできてもそう多くは置けないと

考えていた。

 

 

 

だから、伝令の報告に私は驚愕し、それが嘘であるとさえも思った。

 

 

「でっできません。もうすでに味方の伏兵は壊滅状態にあります。

 敵の数は千、我々ではもう対応しきれません。」

 

千?・・・千ってなんですか?

敵の総数は三千。伏兵に千などありえない。

それがありえるとしたら・・・

 

「えっ・・・・そっそんな・・・だれが・・」

 

「旗は冷、あれは冷苞将軍です!!」

 

その言葉に茫然とするわたし。

 

うっうそです・・・だって冷苞さんは長坂で

五万の五胡兵をひきいているはず・・・

そう伝令さんはあの時報告していました。

その冷苞さんがなぜここに?なんでここにいられるのでしょうか?

距離からしてもあの数日でここまで来られるのは無理なはず。

では、なぜ・・・?

・・・・・はっ!!まさかっ・・・

 

冷苞さんの登場により私は知ってしまった。今回の

巧妙な敵の策の全貌を・・

 

しかし、時すでに遅し・・・

 

私の前には冷苞将軍が立っていた。

 

「そっそういうことだったんですか・・・

 これをはやくみんなに伝えないと桃香さまがっ!」

 

そう、私が考えていることがもし本当であるとするならば、

桃香様があぶない・・・

 

「ほぉ、さすが鳳統殿、我らがここしばらく試行錯誤し

 ようやく練りあげた策を

 私が現れただけで策の全貌を見破るとは、

 だが、もう遅い・・・

 もはや残っているのはあなた一人。

 これで終わりにしましょう。」

 

「早く桃香様にっ!!」

 

わたしは馬を走らせた。ただ桃香様にこのことを伝えるために。

このままではきっと桃香様が・・

けど、私はわかっていたのかもしれない・・

もう・・

 

 

“グサッ”

 

私ののぞみとは裏腹に、そんな鈍いおとが間近で聞こえる。

 

 

「・・えっ・・・?」

 

刺さ、れた?・・今まで見たことのない自分の大量の血・・

矢にふれる・・たしかにここに刺さっている。

本当?嘘?・・・私は

わからないまま自分の体が寒くなっていくのを感じる。

 

 

寒い・・寒いよ

 

これが死?これが私が私でなくなる冷たさ?

怖い・・・死ぬことがじゃない・・多分。

頭に流れてくる様々な記憶とそれがもうなくなってしまう現実・・

それは一瞬のできごとだったのかもしれない、けれど私にははるかに長く感じられた。

 

わたしにとっての数え切れないほどのいっぱいの思い出。

 

 

ねえ、

水鏡先生のところに一緒にいたとき、一緒に勉強したの覚えてる?

朱里ちゃん・・

私はぜんぶ覚えてる。

たまには朱里ちゃんと喧嘩したこともあったけど、それでも

ずっと朱里ちゃんは私にとって一番の友達だった。

 

桃香様にお使えするときも、そしてそのあとも、

私は朱里ちゃんがいたから頑張ってこれたんだよ?

 

桃香さま、そしてほかのみなさんも、天を目指して共に戦った日々。

私は一秒たりとも忘れたりはしていません。

だって、一秒一秒が私たちにとって大切で、かけがえのない、

そんな大切な宝物だったから・・

 

私たちが抱いた天は達成できなかったけれど、それでも曹操様がいだいた天

をともに叶えることができて、はじめてみんなの

大勢の人の笑顔を見ることができた。

嬉しかった・・

 

もっと、一緒にそばにいたかった・・これってわがままなの、かな?

それでも、私はみんなが幸せになれるってそう、信じていたのに、

笑い合って生きていけるってそう信じていたのに?

やっぱり、だめ、なのかな?

軍師は理想なんか掲げちゃいけなかったのかな?

 

それでも、私はあなたにお使えすることができて

本当に幸せでした、桃香様。

そして、本当に朱里ちゃんの親友でいられてよかった。

 

すこし早いかもだけれど、ゆるして、ね。

 

わたしは幸せな思い出の数々とともに目を閉じると、

またもや急激な寒さが私を襲うのを感じた。

 

それでも、最後のちからで、なんとか私はわらうことが

できたんじゃないかって、そう思う。

 

 

「さ、よう、なら・・あり、がとう」

 

 

 

 

 

 

一瞬の出来事であった・・

 

矢を受けた雛里は落馬し倒れた。

 

ただその事実が、戦場に声となって響く。

 

 

「敵軍師鳳統、この冷苞がうちとった。

 これより我々は南門から入城し、

 張任様に加勢する。皆わたしにつづけー!!」

 

 

「「「「応っ」」」」

 

冷苞に声とともに兵千騎はうごきだす。

 

竹林は静寂な雰囲気に包まれる。

 

それは自然が涙をながしているのか、

怒りに燃えているのか・・・

 

残るのは希望か、絶望か・・・

 

説明
張任への説得も虚しく失敗に終わり、いよいよ白帝城の戦いがはじまった。軍師、雛里の策で陣が組まれ、戦いは始まった。
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コメント
蜀軍の甘さが原因なのかねぇ(qisheng)
桃香の甘さとほんの少しの抜け目が雛里の重症ですか・・・・・・雛里が死ぬ?そんな事は一刀が、刃が許しませんよ。そして冷苞も首を取らなかったのは最も甘いことですね。次回も楽しみです!(本郷 刃)
結局蜀攻略時の甘さが仇になった結果なんでしょうねぇ。さてさて落鳳破を演じることになりましたが医者王の出番はあるのか?それとも?次回も期待しております。(shirou)
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北郷一刀 桃香 真・恋姫無双 恋姫†無双 雛里 

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