Infinite Stratos 00:Re 第四話
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日本某所。山間の広葉樹が生い茂る中刹那は立っていた。刹那が見据える先は此処から10km程離れた大型施設だ。人里からかなり離れたそこはとある製薬会社の研究施設となっているが、余りにも不自然であった。

企業の研究施設にしてはえらく物々しい。衛星からも見つからぬよう巧くカモフラージュされてはいるが発電施設や通信施設、配置されている人員にそぐわない敷地面積と建物数、そしてアサルトライフルを装備した警備兵……。

 

刹那は静かにエクシアを起動する。ただいつもと違うのはモスグリーンの追加装甲と左腕の大型ライフル、額のレンズ式高感度センサー。ガンダムデュナメスをモデルにした遠距離狙撃型装備『GNアーマーtypeD』である。

片膝立ちの姿勢で左腕に折り畳まれたGNロングライフルを展開、ハイパーセンサーとGNロングライフルのクリスタルセンサー、額のレンズ式高感度センサーを同調させる。

 

「ガンダムエクシアtypeD、刹那・F・セイエイ、目標を破壊する!」

 

引き金を引く。銃口から迸る圧縮粒子は真っ直ぐ施設に向かって伸びていき――正確に目標となる建物を撃ち抜いた。

そのまま次々へと照準を動かし引き金を引き続ける。それに伴い施設からは爆炎が上がり、警備兵達が慌ただしく走り回る。着弾したビームによってGN粒子が撒き散らされ無線やレーダーの類が一切合切無効化され、通信施設も経った今破壊された。

あらかた目標となる建物を破壊した刹那はGNロングライフルを収納させてエクシアを立ち上がらせる。そして施設に向けて飛び立った。

 

極相の広葉樹林の上空を高速で駆け抜けながら施設が通常倍率で視認出来る距離になるとGNリボルバーバズーカを展開して発射。撃ち出された弾頭は翡翠色の軌跡を描きながら施設のゲートに吸い込まれる様に飛んでいき、一帯を吹き飛ばす。

エクシアの躯体を施設の敷地内に滑り込ませ、両腰のホルスターからGNピストルを引き抜く。そして先程の狙撃で開いた穴から施設に突入した。

施設内の通路はIS一機が何とか通れる程の広さがあり、通常のISと違い多方向加速推進翼を持たないエクシアではそれなりに楽々と通れた。途中立ちはだかる警備兵を体当たりで吹き飛ばし隔壁をGNピストルで破壊しながら突き進むと、地下で広大な空間に出た。

 

 

 

 

 

 

 

一方、複数台の車両が刹那が破壊している施設に向かって進んでいた。群を為す装甲車や歩兵輸送車両の中でも一際目を引く大型装甲輸送車の中で、一人の少女がこれから始まる戦いに向けて準備を進めていた。

 

「まったく、忙しいったらありはしないわ……」

 

水色の髪を揺らしながらモデルが裸足で逃げ出す程のプロポーションを持つ引き締まった身体を柔軟で伸ばしていると付き人らしき眼鏡に三つ編みの少女が返す。

 

「ですが、お嬢様が家督をお継ぎになるには相応の成果が必要です」

 

「仕方ないわよね……。お父様も古傷をやってしまったしお母様は頭脳派なんだもの」

 

少女が背中をそらして戻すとと彼女が持つ豊かな双丘がたゆんと揺れる。そして同じ輸送車に積まれた"甲冑"に近づき手を当てると、"甲冑"が展開し人一人が入れる程のスペースが空く。

そのスペースに少女が己の身体を滑り込ませると"甲冑"の装甲が少女の身体を包み込み、起動を知らせる各種パネルが空中に投映される。

 

「手筈通り私達も後から続きます。御武運を、お嬢様」

 

「有難うね。じゃ、行ってくるわ」

 

輸送車の天井が開きそこから夜の帳と満月が顔を覗かせる。少女を乗せた"甲冑"はゆっくりと浮かび上がった後一気に空高く飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

 

施設の地下に存在した薄暗い広大な空間には培養漕と思わしきシリンダーが大量に並んでいた。人一人が簡単に入れそうなソレは製薬会社の研究施設には明らかに"異物"である。しかしそれらのどれ一つにも中身が入っていない事(・・・・・・・・・・・・・・・)を刹那は不審に思った。

警戒しながら慎重にゆっくりと歩を進めていくと、サーバーと思わしき大型の端末があった。端末にエクシアのマニュピレーターを触れさせると先端が溶けた様に変形し溶鋼が冷えて固まった様に端末と一体化した。

その正体はエクシアの装甲に同化したELSだった。ELSを端末に浸食・同化させる事でエクシアと端末をダイレクトに接続させ端末内のデータをエクシアに転送させるのだ。そして、端末に残されたデータの内容に刹那は言葉を失った。

 

《]月]]日 被験体A-10号からA-20号に『・・・・・・・・』を投与。以後、経過観察。被験体A-11号、A-12に号拒絶反応有り。被験体A-11号、A-12号を廃棄。

 

 ]月]]日 身体能力試験を実施。被験体A-13号、A-14号〜B-16号を目標とする数値まで届かなかった為廃棄》

 

端末内に残されていたのは人体実験…それも、『超兵』と同じ人工的に優秀な兵士を生み出す為の実験記録だった。この施設は表向き製薬会社の研究施設であったがその正体はIS開発企業の実験場だったのだ。端末の中にはこの国のの高官の名前もあった事から国絡み、もしくはその高官の独断でこの非人道的な実験が指示されていた可能性がある。

一企業でやるには資金的問題に難があるが故に恐らく資金援助などがあったと考えられる。

この施設の概要はヴェーダによるハッキングで識ってはいた。。だが実際に目にしてみると耳に聞いただけの時とは別の思いが出てくる。更にデータ内を深く潜っていくと、ある項目に行き着いた。

 

《]月]]日 計画最終段階により、規定値を満たす被験体A-18号、B-12号以外の個体を全て廃棄》

 

……この項目が何を指すのか、刹那には嫌にでも解かってしまった。否、誰にでも解かってしまうだろう。この部屋の培養漕がどれ一つとして使われていない理由がここで明らかになった。

 

《マイスター刹那、これは……》

 

《……ああ。どの世界でもやる事は同じなのか……》

 

《……気持ちは分かります。ですが今は私達に出来る事をしましょう》

 

《……そうだな》

 

胸の内に湧き起こる感情を抑え込みながらデータを全てコピーしターミナルユニットを通じてヴェーダに送る。端末内のデータは全て破棄し、端末とシリンダー郡といった機器を二度と同じことが繰り返されぬよう粉々に破壊。そしてこの部屋から出ていこうとした時、通路の向こうから銃声が響いた。

 

銃声のした方へとエクシアを動かす。更に一発の銃声と悲鳴。自分以外にこの施設を襲撃している人物がいる?そんな可能性を考えながら刹那は先へ急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

  ――パァンッ!

 

 

刹那が見たのは、今にも倒れようとする少女の姿だった。顔は見えないが手入れされた様子のない自然に伸ばされた銀髪の少女の身体はコマ送りした様にゆっくりと倒れ、床に紅い血の池を作る。その周りには、同じように倒れる複数の白衣の人間――だったもの。

その光景を目にしてから弾かれる様にしてエクシアを解除、拳銃を構え部屋の中に突入する。そこにいたのは硝煙を吐き出す拳銃を構えた白衣の年老いた男。

 

「銃を捨てて手を挙げろ!何をしている!?」

 

その前に立ちはだかる様に男に向けて拳銃を突き付ける。しかし男はそれを気に掛ける事無く平然と不機嫌そうな目を刹那に向けた。

 

「何だ貴様は……」

 

「銃を捨てろと言っている!」

 

刹那の態度が気に入らなかったのか、男は刹那に向けて引き金を引こうとする前に男の銃を構えた腕の肩から血飛沫が飛んだ。そして刹那の足元に空の薬莢が転がる。

 

「次は急所に当てる」

 

撃ち抜かれた肩の傷をもう一方の腕で庇いながら男は刹那を睨みつける。男の手にはまだ拳銃が握られたままだ。

 

「……貴様、件の襲撃者か。貴様の所為で儂の計画が……!」

 

強烈な恨みがこもった目でより一層睨みつけてくる。まるで目力のみで刹那を殺さんととばかりに。

 

「貴様は此処で何をしていた」

 

「ふん、貴様の様な愚か者には理解出来んだろうが教えてやる。儂の目的はただ一つ、最高・最強の能力を持つ人間を"創り出す事"のみだ」

 

さも当然とばかりに何の悪びれもなく男は淡々と答える。ヘルメットのバイザーの向こうで刹那の顔が強張んだ。

 

「政府やそこらに転がっている愚か者共は"この程度の結果"で喜んでいたがな、儂の理想には届かんよ。こんなもので"人類の夢"を騙るなどおこがましい」

 

「"人類の夢"だと?」

 

「そうであろう?不完全である人間が求める完全。これを夢と言わずに何と言う?!」

 

「完全な存在など世界には絶対存在しない!」

 

「だからこそ創り出すというのだ!」

 

「人の命を弄んでまでする事か!」

 

「何事にも犠牲は付き物だ!寧ろ感謝して欲しいぐらいだな。"人類の夢"という理想の為に生まれ死ねるのだからなあ!!」

 

狂気を孕んだ目が妖しく輝き、痩せこけた頬がよりその狂気に満ちた顔を際立たせる。

 

「此処にあるのは全て儂の研究成果であり儂の理想の過程だ。それを一片たりとも渡す訳にはいかん。まあそこの"出来損ない"は"儂の作品"には相応しくはないが、儂の手で処分してやるのもせめてもの情けだろうて」

 

男が視線を向けた先に振り向く。そこには刹那が最初に見た少女と白衣の人間。そしてその奥に――同じ銀髪の、左胸を紅く染めた――壁に身を寄りかからせた少女が一人。

 

「ついでだ。貴様も処分――」

 

 

  ――パァンッ!

 

 

男が言い終わる前に男の眉間に穴が開いた。男の身体もまた同じように床に伏し血溜まりを作るが、それに目を向けず少女達の遺体へと歩を進め片膝を落とした。

 

「……すまなかった」

 

……俺がもっと早く来ていれば、と刹那は声には出さず心の内で言う。何も変わらない。言った所で意味を成さない。確かにもう少し早くこの場に辿り着けていたのならば少女達は、もしくはどちらか一方ならば助けられたのかもしれない。

しかしそれはあくまで仮定であり、起きてしまった結果に対して『IF』を述べてもそれは無意味だ。それを理解しているからこそ刹那は言葉にしない。それでも思考として出てしまうのは後悔の念からだろう。

ゆっくりと立ち上がる。今自分に出来る事は一刻も早く此処(ユガミ)を破壊する事。

 

「エクシア」

 

『了解、マイスター刹那』

 

刹那の身体が粒子に包まれ機械仕掛けの白亜の鎧を纏う。ただ違うのはその姿が先程とは異なるマッシヴなものである事だ。通常時の倍はあるかと思われる巨大な脚部装甲と腕部装甲。重厚な造りの胸部装甲とバックパックから伸びるアームによって両肩に配された黒い大型のパーツ。ガンダムヴァーチェをモデルにした拠点殲滅型装備『GNアーマーtypeV』。

両肩にあるブロック状のパーツが動き、それぞれ二門の砲口を覗かせる。そして実験体であった少女達の方へと振り向き、砲から噴き出された熱と閃光がその亡骸を灼いた。

 

バーニアを噴かして地表へと繋がる道を戻る。決して戻らない。戻れない。戻ってはならない。過去は、事実は変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

「何よ、これ……?!」

 

少女は困惑していた。辺り一面に立ち込める黒煙と炎。無残に破壊された建造物群。無造作に転がる死体。自分が襲撃を仕掛ける筈の施設が既にほぼ壊滅状態にまで追いやられていた。

地面に降り立ち辺りを見回す。これだけの被害だ。自分とは別の襲撃者はISを使用しているに違いない。ふと地面を見る。ひび割れたコンクリートから露出した地面の一部が抉れ、硝子の様に硬質化していた。

 

「少なくとも分かるのは光学兵器を所持しているという事…ね……」

 

光学兵器は自分の知る限りごく一部の国家で漸く実用化の目途がたったぐらいだ。それを所持しているという事はそれなりのバックがいるという事。此方に向かっている仲間の元に通信を送るがノイズが走るばかり。……ジャミングされている。

 

「ちょっとこれ…最悪な状況じゃない?」

 

訊ねても返す者はいない。最新兵器である光学兵器を持ち、ISの通信システムを妨害する高度なジャミング。しかもそのジャミングの効果が残っている事から襲撃者はまだこの施設にいる。

では襲撃者の目的は何だ?この施設を破壊しているという事は目的は二つ。一つはこの施設で行われていた事の証拠隠滅。もう一つは単純にこの施設の破壊のみ。

 

(余りにも判断材料が少ないわね……)

 

現状では判断する事が出来ない。出来れば後者である事を望むばかりだ。もしもの為にもと用意しておいた信号弾を打ち上げ仲間に待機命令を出す。此方の戦力は自分のISを除けば後は生身の突撃部隊と工作部隊のみだ。無論某A国の特殊部隊にも引けを取らない程の猛者達ではあるがIS相手には言うまでもない。

どうしたものか、と考えを巡らせていると建物に開いた穴から一機のISが飛び出して来るのが目に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

地表に出た刹那が見たのは一機のISだった。……失念していた、と内心一人ごちる。増援を呼ばれぬようGN粒子でジャミングをしておいたのだが、まさかやってきたのがこの国の軍部ではなく暗部だとは思わなかった。

この施設に襲撃を仕掛けるにあたって刹那はこの国の軍部に相当する組織にハッキングしていた。もし既にこの施設の処理計画が立てられているかどうか。ミッション中に鉢合わせなどというのは避けておきたい。

目の前にいるISの操縦者を見る。肌の色や顔つきは黄色人種の、日本人のソレだが髪の色が水色という明らかにおかしなものだ。確かに刹那の知っている人物にはピンクや紫、黄緑といった髪色の者もいたが大半は人工的な理由であるが故にその様な髪色は珍しい。

操縦者である少女も遺伝子の突然変異とも考えられるが、この特徴を持った人間を刹那は知っていた。

 

(『暗部』の『更識家』か……)

 

『暗部』。古来より時の権力者に仕えてきた『裏』の家系のことを指す。その中でも『更識家』は特に古い歴史を持ちその実力は折り紙つきである、と。噂程度しか流れなかった話だが、事実こうして存在する。

刹那の調べた限りではIS操縦者の国家代表候補生主席として更識家の人間がこの国にいた。代表候補性は基本軍属ではあるが軍部に動きが無かったとなると『暗部』としての活動だろう。……しかしこんな年端も無い少女が『裏』に関わっているというのは刹那にとって辛く忌むべき事実だった。

 

《データ所得。日本製第二世代機『打鉄・隼兜(ハヤト)』。打鉄の高機動仕様です》

 

エクシアから情報が送られてくる。『打鉄』は日本製の量産型第二世代機であり、目の前の機体はその高機動仕様として装甲の一部を削って打鉄にはない多方向加速推進翼が備えられておりスラスターも増設されている。

 

「そこのあなた、ちょっと待ってくれるかしら?」

 

打鉄・隼兜の操縦者である少女が刹那を警戒しながら呼び止める。前例のない全身装甲の機体。この施設の襲撃犯。僅かな動きさえ見逃さないよう注意を払う。

 

「此処を襲ったのは貴方よね。何が目的かしら」

 

「………………」

 

問われると刹那は新たにエクシアに追加したボイスチェンジャーを起動して返答した。

 

「此方の目的はこの施設の破壊のみ。ただそれだけだ」

 

「(変声機を使ってる)……国家の領域内でのISの無断使用に破壊活動。見逃す訳にはいかないのよね」

 

そう言うと少女は36mm機関砲『櫻花』を展開して突き付ける。一方、刹那としては無用な戦闘は避けたいがそれには少女が邪魔だ。少女の目的が何であれ此方の妨害をしてくるだろう。

何の収穫も無しに暗部が手を引くとは考えづらい。また、向こうは此方をこの施設の関係者であり証拠隠蔽の為に施設を破壊したと考えられていてもおかしくないのだ。

 

「此方に投降する気はない」

 

「投降の余地なし、と。なら力づくで拘束させてもらうわ!」

 

機関砲の銃口から弾丸とマズルラッシュが奔る。それを刹那はその巨体に似合わない軽やかな機動で避けてみせた。

 

(見た目に反してかなり速い。ならっ!)

 

打鉄・隼兜の背部から大型ミサイル二発が射出されるとミサイルは空中で分解、中から各六発の小型ミサイルが現れ、計十二発がエクシアに襲い掛かる。刹那は慌てずエクシアの両肩のGNキャノンを起こし、四条のビームがミサイルの軍団をいとも容易く呑み込んだ。

 

辛うじて避けたが先程まで少女がいた場所が高熱の奔流によって焼き払われる。ミサイルは全弾撃ち落とされてしまったが、それは算段通りだ。少女は機関砲のオプション装備であるグレネードを反動で身動きできないであろう相手に向かって発射。

刹那は身を捩ることで紙一重でそれを躱しながらエクシアの膝からGNビームサーベルの柄を引き抜くと桃色の光刃を発して斬りかかる。それを躱せないと判断した少女は機関砲を収納して日本刀型の近接ブレードを展開、PICとスラスターを噴かして突撃する。

 

近接ブレードを振り上げ一気に加速する。加速度的に両者の距離が縮まってゆき、互いの得物を同時に振り抜…かれなかった。少女が近接ブレードを振り下ろそうとしたのに対し、刹那はGNビームサーベルを振らずに更に加速して距離を詰める。そして振り下ろされようとしている近接ブレードの石突を空いている方のマニュピレーターで押さえつけ、GNビームサーベルの発振器を突き付けようとする。

しかし咄嗟に少女は武器を手放すことで拘束から逃れ、後退しながら機関砲で牽制、距離を取った。十分な間合いを確保出来たのを確認すると左腕に不格好な大型砲を展開。試作高出力レーザー砲『明星』。日本が開発した実用レベルの試作光学兵器だ。

 

右腕の機関砲で弾幕を張りつつ左腕のレーザー砲にエネルギーを充填。試作品故に連射と長時間の照射は不可能だが、単発あたりの威力はISの兵装中現時点で最高レベルだ。

……チャージ完了。機関砲の射撃を止め、相手が此方へと進路を向けようとしたところに予備の大型ミサイルを拡張領域から展開、ばら撒かれた小型ミサイルで相手の動きを制限してレーザーを叩き込む!

 

(やった!?)

 

相手が回避運動を取った様子は無い。装甲は厚いだろうが直撃なら痛手だ。大火力光学兵器を搭載しこの施設を襲撃しているから残存エネルギーは多くはなく、絶対防御を発動させればエネルギー切れも狙える。

相手へと到達した光柱がシールドバリアとの干渉で拡散し閃光を発している為相手の状態が確認出来ないが、中ったことには違いない。そろそろレーザー砲の照射時間限界の為もしもの保険として機関砲を構え…光が減衰した。

 

レーザー砲後部の排気口から砲身内に籠った熱が吐き出され冷却が始まる。強烈な閃光の連続で視覚が奪われるのを操縦者保護機能が防ぎ、今を以て対閃光防御が解除される。正常な視界を取り戻した眼が捉えたのは機能を停止した未確認機…ではなく、翡翠色の球体で、その存在から彼女は詰みと読んだ期待に裏切られたことを理解した。

現れた球体はそのまま急加速で此方に向かってくる。右手の機関砲が火を噴くが弾は全て球体に弾かれ間合いがあっという間に詰められ、その加速度によって巨大質量の塊となり少女の身体を叩きつけた。球体は減速することなくそのまま少女を巻き込んだまま直進、施設の外壁に突っ込み漸く停止。

 

外壁に打ちつけられ身体が動かせない少女の目の前で球体はその姿を霧散させ、中から現れた白亜の巨体が桃色の光刃を突き付けた。

 

「……何故殺さないのかしら?」

 

少女は問う。自分の排除が目的ならば今すぐにその剣で殺せばいい。なのに何故止めるのか。

 

「此方の目的はこの施設の破壊のみだ。貴様を殺す理由が無い」

 

「甘いわね。邪魔になるものはさっさと排除しないと面倒よ?」

 

「『俺』が破壊するのは"対話"を放棄し、"歪み"を生み出すモノのみだ。……貴様はこの施設の正体を知っているのか」

 

「素直に吐くと思う?」

 

「こんな『歪み』は存在してはならない。だから駆逐する」

 

「正義の味方のつもりかしら?」

 

「そんなものではない。確固とした正義など世界には存在しない。罪を背負い、罰を受け入れる覚悟なら出来ている」

 

……なんなのよもう、と少女は内心嘆息する。続けて骨折り損の草臥れ儲けとはこの事ね、と呟いた。

 

「何にせよ私の負けね。いいわ、教えてあげる。私もこの施設の破壊が目的よ。こんな外道の産物を残しておけるものかしら」

 

少女の答えに巨体の持ち主は軽く"そうか"と軽く返しただけで光刃をどけ、宙に浮かび上がった。

 

「ま、待ちなさい!」

 

制止をかけようとするが、相手はそのまま飛び去って行った。光学迷彩を持っていたのかその姿はなくレーダーに反応も無い。追いかけようにも身体はまだ痛みと衝撃が抜け切らず装備も心許なかった。

 

(……完敗ね。まだまだ修行不足ってことかしら)

 

よろけさせながらその身を起こす。負けるのは初めての経験ではないがそれでも今の時期にそれはあまり受け入れられるものではなかった。

だが次期党首として今は出来ることを最優先に行うことをする。自分を鍛えなおし、自分にとって大切なモノを守りその座に就くのに相応しい実力を身に着けるその前に、この事態を収束させる為に先程から時間の経過故か引っ切り無しにかかってくる従者からの連絡に応えることにした。

 

その後、更識の部隊は無残に破壊された違法研究の証拠と思しき機器と、事前の調査で違法研究の主導者と思しき老人の死体を発見した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この事は決して外部には報せる事無く更識家の内々で秘密裏に処理され、同時にあらゆる手を使ってその正体を洗い出そうと試みるが結果は芳しくなかった。

 

また、更識家と日本政府によって表向きには贈賄容疑で報道され企業関係者が全員逮捕、IS開発企業は倒産。逮捕者の中にはデータの中にあった政府高官も含まれていた。そして刹那とエクシアに関する情報は全てヴェーダの手で削除された事を、当人を除く者達は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

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見方間違えれば刹那がテロリストに…てのは気のせいかと…(駆蘭)
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