ぬこの魔法生活 第22話
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 ◆ 第22話 決戦前夜 ◆

 

 

 どうも、前回カッコつけすぎて『ピチューン』したぬこです。

 ……はぁ、いつからぬこはこんな熱血キャラになっちゃったんだろうね?

 かませ犬臭がプンプンするぜ、ぬこなのに。

 

 

 ところで、ここはどこなんでしょうか……?

 

 

 目が覚めたら、全然見覚えのないとこなんですが。アースラじゃないけどなんかそれっぽい造りだなぁ。ということは魔法関連か……

 むむむ、つまりフェイト嬢の本拠地ですかね?

 でも、肝心のフェイト嬢やアルフさんいないし……とりあえず二人を探しますかな。

 早くご主人のとこに戻りたいし。

 

 

 

 ぬこが寝かされてた部屋を出て、とりあえず勘に任せて適当に進む。

 さっきは気づかなかったけど、そこかしこが痛みます……

 やっぱ自分の身の丈に合わないことはするもんじゃないねぇ。

 ま、あの場面は仕方がないものがあったけど。

 ……それにしても無駄に長いなこの通路。移動とか超不便だろうに。

 セグウェイでもあるのかしら。

 

 おっ、ようやく終わりが見えてきたな。でかい扉っぽいものがある。

 それに……あれはアルフさんか……?

 なんか俯いてますが、大丈夫ですかね。

 

 (アルフさん)

 「あんた……大丈夫なのかい?」

 (おかげさまで。ところであれからどうなったんでしょ?あと、ご主人は無事なの?)

 「あんたが気を失っちまった後であのまま置いてくのも気が引けてね……連れて来ちゃったんだよ。

 ある程度防げたみたいで外傷は余りなかったけど、一応治療はしておいたからね。

 ……それとあんたのご主人は大丈夫だよ、怪我もしてないから」

 

 ……まぁ、とりあえずご主人が無事ならそれでいいか。

 問題はこの後だなぁ、ご主人からO☆HA☆NA☆SHIがあるのは間違いないしな……欝だ。

 

 「それと、ありがとね。おかげでフェイトもほとんど怪我をしなかったよ」

 (いやいや、当然のことをしたまでですよー)

 「そうかい……」

 (ところでフェイト嬢はどうしたんです?)

 「それは………ッ! フェイト!」

 

 何か答えようとして、何かに気づいたのか弾かれるようにドアを開けて入って行くアルフさん。

 なにやらただ事ではない様子。慌ててぬこも追いかける。

 

 そして、そこにはボロボロに名って横たわるフェイト嬢の姿があった。

 

 「フェイト! フェイトぉ!」

 (アルフさん! 今ヒーリングするから!!)

 

 やられてからしばらく経ったとはいえ、ギリギリまで魔力を使っていたからどこまでできるか分かんないけど、ここで使えなきゃ覚えた意味がない!

 

 「なんで……ッ、こんな、フェイトは……フェイトは!」

 (くぅ……はぁ、はぁ。今は、これが精一杯、です)

 「ありがとね、あんたもまだ全快ってわけじゃないだろうに……ここ、任せてもいいかい?」

 (……何するつもりか知らないけど、せめてフェイト嬢が目覚めるまで待ったらどうですか?)

 

 明らかに目が血走っている。

 このまま行かせていいはずはない。

 

 「だめだよ、だめなんだ。もう、あたしはもう限界だよ! 絶対に許さない!

 ……あんたには迷惑をかけるけどね、フェイトを頼むよ」

 (あ、ちょっと、アルフさん!?)

 

 そのまま奥の部屋に向かうアルフさん。止めたいとこだけど、魔力がすっからかんな現状では無理っぽい。

 頼まれたものの、どうしようか。こんなところじゃなくてちゃんとベッドか何かに寝かせた方がいいと思うんだが……

 せめてぬこがアルフさんぐらい大きければ、枕でも布団にでも代用できそうなんだが……

 でもそれだと、ぬこに限りなく近い虎だよね。

 

 ともかく今は身体を休めるとしますか。これから何が起きるか分からないし―――

 

 

 

 

 

 ドドォオオォオーーッ!!

 

 

 建物全体を揺るがすような爆音と振動が響き渡る。

 

 ……何かが起きたみたいですね。つか、アルフさんが向かった方からじゃね!?

 あんな死亡フラグみたいなセリフを言うから……見に行った方がいいか?

 でも、フェイト嬢を置いて行くわけにもな……むぅ、どうするべきか。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 やっぱり見に行くことに。アルフさんのことも心配だし。

 とりあえず状況次第ではすぐにフェイト嬢のところに引き返そうと思います。

 魔力が不足してる今じゃそれが限界です。

 

 奥に進んでみるとなぜか扉が吹っ飛ばされていた。アルフさんブチ切れてたからなぁ。

 なんだかんだ言ってぬこたちには手加減してたんですかね?

 まぁ、それはともかくその元扉をくぐると、そこはなんだか魔界にでも迷い込んだかのような場所であった。

 すごく……禍々しいです。

 

 で、そこには大きな穴と膝をついて息苦しそうな女性が。

 アルフさんがそこにいないところを見るとこの人がアルフさんを吹っ飛ばしたようだ。

 無事なのか?アルフさんは。

 

 「はぁ、はぁ、まったく。随分と躾のなってない使い魔ね」

 

 ……ッ!

 

 「余計な手間をかけさせるなんて……私には、私たちには時間がないというのに」

 

 気付かれたかと思ったが、どうやら違ったようだ。

 そのままなにやら懐から錠剤らしきものを取り出して、それをガリガリと食べ始めた。

 薬というよりはドラッグっぽい。ピルイーターか……相当キテるな。

 

 ともかく、あの状態で見つかるとさすがにまずいな。問答無用に攻撃される気がビンビンする。

 そうなればいったんどこかに身を潜めたほうが得策か、そう思ってこの部屋から出ようとしたときだった。

 

 「あら、リニスじゃない。こんな忙しいときに今までどこにいたのかしら?」

 

 ……今ここにはぬことこの人しかいないよね?

 つまりは―――

 

 「何を黙ってるのかしら? 早く答えなさいッ!」

 

 攻撃が飛んでくる。既のところで、飛びのいて避ける。

 やはり気付かれてしまったようです。

 幸か不幸か分からんがリニスとやらと勘違いしてるようだけど……やっぱ、あのドラッグらしきもののせいかね。

 どうにも正気を保ってるようには見えない。ここは、話を合わせつつ撤退の機会を窺う。

 

 (すみませんね。ちょっと所要で外していたもので)

 「へぇ、アリシアのこと以上に大切なことなんてあったのかしら? ぜひ教えてもらいたいものね」

 

 また知らない人の名前が出てきたよ……

 でも、どうにかしてこの場面を乗り切らなくては……!

 

 (それについては後ほど報告します。それにしても先ほどの爆発音はなんですか?)

 「ああ、ただあの人形(・・)の使い魔がお痛をしたから始末しただけよ。

 まったく、貴方ちゃんと使い魔の躾方まで教育しなかったの?」

 (……人形?)

 「そうよ、人形。アリシアになることのできなかった紛い物。

 姿形しか似せることのできなかったできそこない。失敗作。ジャンク。

 使い捨てられるとも知らずに踊り続けるマリオネット。フフ、哀れね、哀れだわ。あは、アハハハハ!!」

 

 そう言って狂ったように哂い続ける女性。

 ……フェイト嬢のこと、だろうな。くそっ、アルフさんの気持ちがよく分かる。

 この人は、ダメだ。いくらなんでもひどすぎる。

 

 「さぁ、あなたもあの人形とジュエルシード回収してきなさい。契約が切れるそのときまで踊り続けなさい!」

 

 そのまま部屋を出て行く女性。

 ……ここまで頭に来たのはいつ以来だろうか。初めてかもしれない。

 怒りに身を任せてしまいそうなのを必死で抑える。

 ここで歯向かったところで返り撃ちになるのは目に見えている。まずは身体を休めないと……

 

 そういや、あの人はどこに……?

 ……ッ! フェイト嬢のところか!

 

 急いで後を追いかける。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 「―――いいわね、フェイト」

 「………はい、母さん」

 

 

 とりあえず、痛めつけられるといった事にはなっていないようだった。

 

 「そうね、使い魔はリニスにやってもらいましょうか。逃げ出したあの子よりよほど使えるわ」

 「えっ? リニスって……」

 

 その言葉にこっちを向くフェイト嬢。

 

 (……何やら勘違いされてるようなんでそのまま流してください)

 (えっ、う、うん)

 

 それだけ言うとその場を後にして、奥の部屋に行ってしまった。

 

 「えっと、何でここに……?」

 (んー実はかくかくしかじかで。ここにいるわけですよ)

 「かくかく、しかじか?」

 

 首をこてんと傾げながら尋ねてくるフェイト嬢。

 ……シリアスぶれいく。なに、この可愛い生き物。

 

 まぁ、そんなことやってる場合でもないのでこれまでの経緯を伝えていく。

 無論さっきの話は伏せる。さすがに聞かせるわけにはいかんだろ。

 ついでに、フェイト嬢側の状況も聞いてみた。

 さすがに全部は教えてくれなかったけど、さっきの人が母親のプレシア女史で

 リニスと言うのはフェイト嬢の育ての親件魔法の先生だそうな。ちなみに山猫を素体とした使い魔だったんだとか。

 あと、猫の形態でもぬこには似てないそうな。……識別できてないのか。

 

 「そっか、ありがとう。助けてくれたんだ」

 (いえいえ、どういたしましてですよ。それより体の調子はどうですか?

 一応ヒーリングはしたんだけど、いかんせん魔力不足だし、習ったばっかりだったし)

 「うん、それは大丈夫。ちょっと魔力が足りてないけど、休めば戻るから」

 (そいつは重畳。ゆっくり休んだ方がいいですよ。……また、戦うんでしょ?)

 「……そうだね。ごめんね、なるべく怪我はさせないようにするから」

 (……フェイト嬢もですよ。怪我なんてしたらアルフさんも悲しむでしょ!)

 「……うん。ありがとう」

 

 はかなく微笑みながら、お礼を言ってくれるフェイト嬢。

 まったく、どうしてこうなったんだか。くそっ、なんでこんないい娘が……

 その苛立ちをフェイト嬢に悟られないように、必死で声色を繕う。

 

 (じゃあ、出るときになったら呼んでくださいな。ぬこも帰れなくなると困るので)

 「あ、でも、それなら先にあの町に送ってあげられるよ?」

 (ダメです。フェイト嬢も疲れてるでしょ?

 ちゃんと休んでください、ぬこはまったりしてるのでお気使いなく〜)

 「そう、じゃあ休ませてもらうね?」

 

 一旦フェイト嬢と別れることに。その間にプレシア女史にバレない程度に散策をするか。

 何か都合のいい物でも見つかるといいんだけど……それが無理でもここの構造だけでも頭に入れておいた方がいいな。

 どうせ、最終的にはここに突入することになるんだろうしね。

 

 

 

 じゃ、さっさと済ませて明日に備えるとしますか!

 

 

 

 

 

 

 

 ◆ あとがき ◆

 読了感謝です。

 はい、というわけでプレシアとの邂逅でした。

 ……我ながらどうしてこうなったんだか。もう少し救いのあるはずだったんですけどね。

 

説明
無印編

※この話ではプレシアの設定が若干酷いものとなっています。
 ただし、ヘイト、アンチの類ではないのでご理解の程を。
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