ある外史のメイジ8 ― 走為上 ―
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「火の玉が飛んでおるのう」

「それも随分たくさんですねー」

夜空を彩る無数の火球を城壁から見上げながら美羽と七乃が呆ける。

火球は曹操軍の増援の夏候淵の部隊が飛ばしている。

曹操は先遣軍が立ち往生にあった事に応じて増援を送ってきたわけだが、

その中には従来より有効範囲の長い投石器とそれで飛ばすナフサを混ぜた燃料が用意されていた。

雪に阻まれて城までは届かないが、山中の森を焼いて道を切り開く事は出来ているようだ。

落下地点では燃料が森を焼きつつ道を作っているが、周りには燃え広がっていない。

俺の雪が延焼を食い止めているらしい。

その内即席の侵攻路が出来るだろう。俺たちの部隊を尻目に漢中へ侵攻する道が。

「放って置くと漢中が陥ちますねー」

「そして追撃したら確実に敵軍が待ち受けていて、正面決戦を挑んで来るじゃろうなあ」

どうするかと二人が目で問いかけてくる。

「敵より先に味方の全部隊を漢中に撤退させましょう。将も兵も質・量共に向こうが上です。まともにやって勝ち目はありません」

全く楽が出来ると思ったのに、李典あたりが頑張ってるのかね。

俺は退路を確保するために『風』(ウインド)の呪文を唱えた。

高山を越えて吹く風炎(フェーン)が漢中と城を遮る雪を見る間に融かしてゆく。

 

1週間後、俺は追撃してくる夏候惇の部隊と相対している。味方部隊は張衛に押し付けて撤退させた。

「元譲殿、私は一騎打ちでは一流武将に勝てませんが、防戦なら万軍を相手にしても負けませんよ。

 食らいなさい、『転倒』(スネア)!」

俺が杖を一振りすると夏候惇の部隊の前曲の9割方が足を掬われて転倒する。

当然追撃は止まり俺は悠々と逃げ出し七乃と美羽に追いつく。

本当は本隊に付けて撤退させたかったのだが、俺と同行すると言って聞かなかった。

俺は美羽と七乃と議論をして勝利した試しはない。

「お待たせしました、それでは本隊を追いましょうか。元譲殿が生きている味方を踏みつけにしてこない限り私達には追いつけません」

「……では飛び越えてきた場合はどうするのじゃ」

美羽が指差す方を振り返ってみると、夏候惇に担がれた状態の許楮。どうやら許楮をこちらに投げ飛ばすつもりのようだ。

なんというファイナルスカイラブハリケーン。

「一騎打ちに持ち込むつもりの様ですよ?」

呆れた様子の七乃。

「翼もないのに軽々しく飛ぶな、と言いましょう。『閃光条』(フラッシュ・ジェット)」

目潰しを掛けると夏候惇は目測を誤って、許楮はこちらからそれて脇の森に飛んで行く。

許楮も一時的に視力を失い着地し損ねたか、木に何かがぶつかる音がした後は出てくる気配はない。

それを確認すると隘路一杯に『氷の壁』(アイスウォール)を巡らせる。

更に中に空洞を作り『悪臭』(スティンク)の呪文で硫黄性のガスを詰めておく。

これで当分追ってこれないだろう。

 

 

 

陳簡はサボリの宛てが外れたようだった。

 

 ( ^.^ξξ*゚∇゚)ξξ   レ(゚Д゚ )ヘ≡3≡3≡3  ⊂(゚△● )≡3≡3≡3

 

説明
「親父、ここまで成長したぞ」(某 族長代理補佐心得見習い)
「やっぱりアウトレンジは強いんだお」(長安のメタボリックホワイト)
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