IS インフィニット・ストラトス 〜転入生は女嫌い!?〜 第四十話 〜マン・アズ・ビフォー〜
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夕食も終わり、それぞれの部屋へと戻る生徒達。クロウと一夏は風呂に入った後、部屋でのんびりとしていた。

 

「今日は楽しかったな、クロウ」

 

そう言って布団に寝転ぶのは一夏。昼は海、夜は豪勢な夕食に露天風呂と修学旅行を十分に堪能していた。旅のしおりを見ながら明日の予定を確認している。クロウは椅子に座って窓から夜の海を眺めている。

 

「まあ、その分明日はハードだと思うがな。明日の予定ってどんな感じなんだ?」

 

「ああ、明日は一日中ISのデータとかを取ったり、何か色々装備の試験とかするらしいぜ」

 

「要は装備の試験運用と、データ採取って所か。でも俺と一夏にはあまり関係はないがな」

 

「何でだよ?クロウ」

 

「一夏、俺とお前のISについてよく考えてみろ」

 

クロウに言われ、しばらく考え込む一夏。しかしいつまで経っても答えが分からない一夏を見かねてクロウがヒントを与える。

 

「・・・全然分からない」

 

「そうだな、まずISに追加の装備をするには何がいる?」

 

「え〜っと、ISの((拡張領域|バススロット))だっけ?それの空きが必要だったはず」

 

「正解だ、じゃあ次に俺たちのISの事を考えてみろ」

 

「・・・あっ、そうか!!」

 

クロウにそこまで言われようやく気づいた一夏。クロウが説明口調で続ける。

 

「そう、俺のブラスタも、お前の白式も((後付武装|イコライザ))なんて物、無いんだよ。ブラスタの後付武装なんて物がそもそもこの世界にあるわけが無いし、白式も((単一仕様能力|ワンオフアビリティー))の零落白夜と武装の雪片弐型で((拡張領域|バススロット))の余裕は無いだろ?」

 

「そういう事か。だから明日は暇かもしれない、なんて言ったんだな」

 

「そういう事だ。だから((後付武装|イコライザ))も試験運用する様な装備も無いって訳だ、いやむしろ“出来ない”と言った方が正しいかな。まあとにかく明日は少し暇になるかもしれないな」

 

クロウと一夏が明日の事について話し合っていると、部屋のドアがノックされた。応対するべく、ドアに近い一夏が立ち上がる。

 

「はい、誰ですか?」

 

「(一夏か?開けてくれ)」

 

「え、千冬姉??」

 

「何??」

 

声を聞いた一夏とクロウは揃って怪訝な顔をする。取り敢えず要望に従い一夏がドアを開けると、そこには浴衣姿の千冬がいた。片手には袋を下げている。

 

「おう、どうした千冬?」

 

「ああ。す、少しいいか?」

 

 

 

 

 

〜旅館・廊下〜

 

現在、夜十時。一般の生徒であれば、部屋で遊んでいるだろう。間違っても部屋の外に出て、他の部屋に遊びに行く、などだいそれた事を考える者はいなかった。何故なら見つかった瞬間、その時点で((鬼|織斑 千冬))による説教が待っているからだ。しかし、今クロウと一夏の部屋の前には、そんな罰など恐れない五人の勇者(?)がいた。しかし、全員扉の前に立っているだけで、一向に部屋に入る様子を見せない。しかもただドアの前に立っているだけではなく、耳をドアにぴったりとくっつけて部屋の中の話を盗み聞きしているのだ。

 

「「「「「・・・」」」」」

 

(クロウ、もっといけるだろ?)

 

(いや、俺はもういいよ。お前こそ、その位にしておいた方がいいんじゃないか?)

 

(いや、私はまだまだいけるさ。ほら、お前も遠慮するな)

 

(・・・おい一夏。千冬を止めろ)

 

(無理に決まってんだろクロウ。大人しく諦めようぜ?)

 

(・・・勘弁してくれ)

 

部屋の中を伺っている勇者達は中の状況を推察する。

 

「何やってるのかなクロウは?・・・しかも織斑先生までいるみたいだよ?」

 

「・・・グズグズしてられませんわ。強行突入しましょう」

 

「アンタ達もう少し落ち着きなさい。顔がもの凄い事になってるわよ」

 

「ほう、一夏と教官達がいるのか。それでは入らせてもらおう」

 

「ま、待てラウラ。もう少し状況を探らなければ」

 

廊下には箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラが浴衣姿で声を抑えて会話していた。今にも部屋に押し入りそうな三人を鈴と箒が抑えている状態になっている。そのまま口論していると、部屋の中に変化が。

 

(・・・ん?この気配は・・・)

 

(どうしたんだ、千冬姉?)

 

(ああ、これは・・・)

 

部屋の中から誰かが立ち上がり、そのまま部屋のドアへと足音が近づいてくる。いきなりドアが音を立てて開けられるとそこにいたのは、

 

「お前達、何やってんだ?」

 

片手に缶ビールを持ったクロウ・ブルーストだった。

 

 

 

クロウに招かれ、そのまま部屋に入った五人だったが、中の様子を見て驚く。なぜなら部屋には酒類の空き缶やツマミの類がいくつか転がっており、座り込んでいる千冬の片手にも缶ビールが握られている。五人も部屋の思い思いの場所に座ると最初に口を開いたのはシャルロットだった。

 

「あの〜織斑先生、何を飲んでいるんですか?」

 

「そうだな、お前らも何か飲むか?」

 

千冬はシャルロットの問いには答えず、いきなりクロウが立ち上がり部屋に置いてある冷蔵庫へと近づいて中から飲み物を五つ取り出す。そのまま一人ずつ手渡ししていき、再び座り込むクロウ。

 

「あ、ありがとうございますわ。それで、先程のシャルロットさんの質問ですが・・・」

 

「見たとおりだが?」

 

悪びれもせず、缶ビールを煽る千冬。その光景に唖然とする五人に一夏が状況を説明する。

 

「千冬姉が、これを持って来たんだよ。何でも“一緒に酒を飲む相手がいない”だってさ」

 

言いつつ一夏が部屋に転がっている酒類とツマミを指さす。続けてクロウが話す。

 

「いや、俺も久しぶりだからちょうどいいと思ったんでな。一緒にやらせてもらっている」

 

「でもアンタ、未成年でしょ?」

 

「体はな、だが精神年齢の方は変わってないんでな。まあそう硬いこと言うな」

 

グイッっと缶ビールを呷るクロウ。一応納得した様子の一同に今度はクロウから問いかける。

 

「それにしてもどうしたんだお前達、こんな夜中に??」

 

「い、いや、そ、それは・・・」

 

箒を筆頭に慌て出す一同。しかし一人だけ反応が違う者がいた。

 

「私は一夏に会いに来ました」

 

シレッと言い放つラウラ。そんなラウラを何処か羨ましそうに見る箒と鈴。その返事を聞いてクロウは苦笑する。

 

「まあラウラはそうだろうな、お前たちは?」

 

「え、ええと・・・」

 

返答に困る一同だが、一夏が助け舟を出す。

 

「いいじゃんクロウ、そんな事は」

 

「・・・まあそれもそうか」

 

一夏の意見を受け、追求をやめるクロウ。まあ大方の見当は、箒達の様子を見てクロウにはついているのだが。少し静かになった部屋だったが、ラウラの一言で静寂が破られる。

 

「クロウ、一つよろしいですか?」

 

「何だラウラ、聞きたい事でもあるのか?」

 

「はい、クロウの事について」

 

「??それは前に話しただろう?」

 

「いえ、それより前の事です。どうやってそこまでの能力を手に入れるに至ったのか、クロウ自身の事が知りたいのです」

 

「・・・要は俺の過去って事か?」

 

「あ、それは僕も興味あるな」

 

「私もですわ」「アタシも」「私もだ」「俺も!」「ふむ、それは確かに」

 

シャルロットを皮切りに、千冬を含めた全員がその話題に食いつく。収まりがつかなくなり、渋々クロウが話し始めた。

 

「じゃあ話すが、特に面白い事なんてないぞ?どこから話すかな・・・」

 

「じゃあさ、クロウの子供の時ってどんなだったんだ?」

 

「そうだな、じゃあそこから話すか」

 

そこからクロウの語りが始まった・・・。

 

 

 

 

 

 

「母親は物心ついた時にはもういなくてな、それを除けば俺が子供の頃は特に何も無かったな。家は裕福だったが、特にそれを感じた事も無かったし。ただ親父との仲は最悪だったな」

 

「本当?」

 

クロウのおかげで実の父親との和解をする事が出来たシャルロットが声を上げる。

 

「ああ、まあよくある事だ。仕事にかまけて子供の事を見ない父親ってのはどこの世界もいるんだよ。そんで、ハイスクールを卒業してすぐに軍に入ったんだ」

 

「「「「「「え!?」」」」」」

 

千冬を除いた全員が驚愕の声を上げる。クロウは話を続けた。

 

「理由としては親父へのあてつけってのが一番大きかったかな、あとは自分一人で生きて行くためにでもあった。まあそのまま色々あって何年か経ってな。軍に入ってから四年後に、親父が事業に失敗して死んだんだ」

 

「「「「「「・・・・・・」」」」」」

 

「当時、俺は軍って奴にほとほと嫌気がさしていてな、親父が死んだのをきっかけに軍を辞めたんだよ。そんでもって親父は物凄い借金を残してな、まあ一応俺を育ててくれた恩もあったんでその借金を引き継いだんだよ。そこから俺の借金返済生活が始まった、とまあこんな所かな」

 

話が一段落して、今度は一夏から質問が飛ぶ。

 

「えーっと、クロウのブラスタの事なんだけど、どうやって手に入れたんだ?」

 

「ああ、ブラスタとの出会いか。あれは軍を辞めて、当ても無く適当に街をぶらついていた時だったな」

 

その時を思い出しているのか、クロウが遠くを見る様な目をする。

 

「いきなり街にテロリストがやってきてな、人間に構わず街の中にあった研究所を襲い始めたんだよ。街には抵抗できる様な力は無くてな、やられるだけの状態だった」

 

「それで?アンタはどうしたのよ」

 

「奴らの悪党ぶりに我慢できなくなって、まあ単純に言うとむかついてな。その研究所に駆け込んで使える機体を貸してもらったんだよ。それがブラスタとの出会いだ」

 

「へえ〜、そんな事があったんだね」

 

「その後、俺はそのまま研究所に雇われてな、いろんな所を飛び回って最終的にはZEXISって言う部隊に出向する形になったんだよ。そこから先は前にお前たちに話した通りだな」

 

「ほう、私とやりあえるのもやはり軍にいた時の経験からか?」

 

千冬が問いかけると、クロウの顔が一瞬だけ暗くなる。しかし千冬に返事をする時には元の表情に戻っていたがその一瞬を千冬は見逃さなかった。

 

「ああ、まあな」

 

「(今の顔は何だ?)・・・そうか」

 

そこでクロウの話は終わった。部屋にいる一同は再び話し始める中、クロウは立ち上がる。

 

「あれ、どこ行くんだクロウ?」

 

「ああ、すこし喋り疲れてな。夜風に当たってくる」

 

「じゃあ俺も行くぜ」

 

一夏も立ち上がり、男二人が部屋を出ていこうとドアに手をかけるが少女達も続こうとして箒が声を上げたが、クロウに止められる。

 

「一夏!わ、私も行くぞ!!」

 

「お前らはのんびりしてろよ。女だけで話す事もあるだろうしな」

 

クロウのその言葉を聞き、全員が反応する。一夏はクロウの言葉の意味が分からない様で、戸惑う。

 

「え?別にいいんじゃないのか?一緒に行っても」

 

「いいから、ほら行くぞ」

 

その隙をついて、一夏とクロウは部屋から出ていった。

説明
第四十話です。
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コメント
ルビの指定ミスが多いですね。読み専なのでルビ使えるのかどうか知らないですが。(紅蓮のアーティスト)
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IS インフィニット・ストラトス SF 恋愛 クロウ・ブルースト スーパーロボット大戦 ちょっと原作ブレイク 主人公が若干チート ハーレム だけどヒロインは千冬 

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