魔法少女が許されるのは15歳までだと思うのだが 番外@
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 ある日のこと。

 

 活動の拠点にしているマンションの一室にて、休息をとっていたフェイトとアルフの二人は和やかな時間を過ごしていた。

 

「なぁーアルフー。思ったんだけどさ」

「ん? なんだいフェイト」

 

 リビングでうとうとしていたアルフは、神妙な顔をしたフェイトの声に頭を上げました。

 

「毎日コンビニの弁当ばっかじゃつまんないよね」

「まぁ、アタシは他のモン食ってるから問題ないっちゃあないけどさ」

 

 ドッグフードを貪る人間は普通いません。

 

「だからさ……試しに料理やってみたんだけど、……食べてくれない?」

 

 意外な提案に、アルフは目をパチクリとさせました。

 

「へぇ、フェイトが料理たぁ珍しい」

「なんだよぉ、ボクだってそういうのに興味持っちゃ悪いのかよー」

 

 ふてくされたのか、頬を膨らますフェイト。

 アルフはその姿に、微笑ましくなって笑みがこぼれました。

 

「いやゴメンゴメン、ついね。んじゃせっかくだし、頂くとしますか」

「ホント!? ありがとアルフ!」

 

 ぱぁっと顔を輝かせるフェイト。

 使い魔である自分の役目、それは主人であるフェイトに幸せになってもらうこと。そのためならばどんなことだってしよう。彼女が少しでも笑ってくれるなら、いかな悪行も是とし、過酷な労働さえも苦としない……それこそがアルフの生き様です。そういう生き様でした。

 

「いっぱいあるから、たくさん食べてよねっ!」

 

 そう言って、フェイトはキッチンから抱えて持っていた鍋の蓋を開きました。

 

 すると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――で、気が付いたら倒れていたの?」

「食べたかどうかすら思い出せないんだ……」

 

 思い出しては震えだすアルフに同情してしまったユーノでした。

 

 

 

 

 

 

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 ある日のこと。

 

「ほぉう、料理の腕を上げたいと?」

 

 椅子の上であぐらをかいていたなのはは、いつもの尊大な口調で言いました。

 

「うん。前作った時は味見を忘れちゃって、アルフに迷惑かけちゃったんだよ」

「味見は必要なプロセスだからね。料理を作ったならば、まず最初に口にすべきは自分だよ」

「そうだよなぁ。……だから自分で食べてみたんだけど、ボクじゃちょっと分かんないから、なのは、食べてみてくれない?」

 

 なのはは少し考えてから、

 

「ふむ。その口ぶりだと、既に味見は済ませたようだね?」

「当たり前だろっ! ちゃんと食べたって!」

 

 自信満々に言うフェイトの姿からして、食べてもさして問題ないようです。

 

(まぁ殺人的メシマズなどそう滅多にいるまいよ。アルフ君が卒倒したのは、さしずめたまねぎやら香辛料やらを口にしたのが原因だろう)

 

 犬狼であるアルフにとって鬼門となる食材を頭に描きながら、嬉々とした様子で鍋を持ってくるフェイトを迎え入れました。

 

「じゃあいっぱい食べてくれ! まだまだあるからなっ!」

「ほう。これはまた、なんとも豪華なも、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三日後。

 

「すまないユーノ君……ここ三日ほどの記憶がないのだが、私は何をしていたのか教えてくれないか?」

「なのは、君は疲れてるんだよ……」

 

 真実を教えないのも優しさの一つです。

 

 

 

 

 

 

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 ある日のこと。

 

「お〜い、ユーノぉおおおーっ!」

 

 遠くから金髪が走って来るのが見えたので、嫌な予感がしたユーノは急いで方向転換、後ろへ向かって一目散に走り出しました……が、魔法を使ってもいないのに通常の三倍の速度で接近したフェイトに見事とっ捕まりました。

 

「もう、なんで逃げるんだよ! 失礼しちゃうなぁっ!」

「嫌だぁあああああああああああ! 記憶障害になるのは嫌だぁああああああああああッ!」

 

 血涙を流さん勢いで叫ぶユーノでした。

 それもそのはず、フェイトの手の中には、まるで今さっき作ったと思しき料理をおさめた小さな鍋があるのです。湯気が立っているのは作りたてだから当たり前ですが、火で温めていないのに蓋がガタガタ揺れています。沸騰してないのに何故でしょうね?

 

 青ざめるユーノに、フェイトは笑いかけます。

 

「大丈夫だよ! 今回はなのはのお墨付きだから!」

「なのはの……?」

 

 前回の被害者たるなのはがそう言うのでしたら、その味は間違いないのでしょう。

 

 いつの間にかフェイトの後ろに控えていたなのはは、いつもより『ちょっと』強張った無表情でした。

 そして無言のまま、ついと指先を上げ、鍋を指しました。

 

「そのスープ、マジ最高デース」

「誰だよっ!?」

 

 思わず突っ込んでしまいました。

 

「ね? 大丈夫だって言ったろ?」

 

 どこが大丈夫なのか全然分かりません。

 

「ち、ちなみにアルフは……?」

 

 答えが半ば分かり切ってる問いに、フェイトはキッパリ言いました。

 

「食べたよ。『チョベリグ!』って言ってた」

「終わった……」

 

 記憶破壊どころか人格破壊まで起こしているようです。

 

「さぁ! た〜んとお食べ……!」

 

 何故か笑みが黒く見えるのは気のせいではないと思います。

 

「や、やめて……! たたた助けてなの―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一週間後。

 

「僕たちは、分かり合えると信じてここまで来た……」

「幾度ともなく刃を交え、互いの信念をぶつけながらも、いつか、またいつかと挫けることなく己の道を歩み、今日この時まで生きてきた……」

「アタシらもコイツらも、行く先は違っても、同じ方向を見ていると信じて、そして遂に分かり合えたんだ、一つの共通認識を持つことで……そう、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「フェイトの料理は死ぬほどマズいと」」」

 

 

 

「うるさいやいっ! ボクだって一生懸命やってんだよぉ!」

「貴様……! 一生懸命などという小奇麗な言葉で片付けるつもりか! なんだあのバイオウェポンは! 脳髄まで溶けるかと思ったぞ!」

「ひどいよフェイト! 僕が口開かないからって鼻から押し込めるなんて! お陰で未だに嗅覚が元に戻らないんだよ!? 緑色の鼻水なんて僕初めてだよ!!」

「もうダメだ! さすがのアタシもアレだけは勘弁! 一生ドッグフードだけでいいから! 後生だからフェイト、アンタは料理を作らないでおくれ!」

「オマエらなんて大嫌いだぁああああああああああッ!!」

 

 

 

 フェイト君 君のお料理 天災です    by 高町なのは以下被害者一同

 

 

 

 

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