【真・恋姫†無双】セカイを導く果てに 第2幕
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子供に宣言した後、一刀は1人で賊を倒していた。

魏の猛将達との調練などで強制的に鍛えられた体、影を介して得た知識のお陰でなんとか一刀は1人で50人余りの賊を殲滅したのだった。

 

「ぬるいな・・・やっぱ賊っちゃあこんなもんか」

 

せっかくの一張羅に返り血でも浴びせられたらたまらないので全員を間接技もしくは高速の不意打ちで倒した一刀はまた子供の所に戻ってきていた。

 

「さっきの君の目・・・とても、とても気に入ったよ」

「・・・へ?」

 

一瞬何を言われたのか解らないといった顔をする子供。

だが、子供は質問しようとする前に一刀に抱きしめられていた。

 

「え・・・えぇッ!?」

 

命の危機を助けてくれた人間にイキナリ抱きしめられれば誰でも驚きはするだろう。

だが、一刀は構わず子供を強く抱きしめた。

年相応の柔らかい身体の感触が手、腕、胸につく。

 

「ちょっとチクッとするけど・・・我慢してくれな?」

「あの、わた・・・・・・し・・・・・」

 

その言葉と同時に、子供の視界は急にブラックアウトしていくのだった。

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董卓軍が領内の村に賊が現れたとの知らせを受けたのは、丁度一刀が子供を助けた頃だった。

董卓はその優しさ故に討伐軍を編成。

近頃出没している黄色い布を頭に巻いた軍ということもあって呂布と張遼に騎馬隊100騎を預け討伐に向かわせた。

 

だが、2人が村に着いた頃にはもう戦いは終わっていたのだった。

 

「なんや・・・?もう賊は引き上げたってことっちゅーかいの」

「・・・でも、少し変・・・まるで勝った後みたいな雰囲気」

 

薄紫色の羽織を着たサラシの女性と、褐色で赤毛の女性が先行して村を探索している。

張遼と呂布。董卓軍の槍であり矛であった。

 

しばらく村を探索していると、抱き合っている人影を見つけた。

おそらく賊に襲われて恐怖のあまり兄妹が抱き合っているのだろうと思うところだが、呂布は少し怪訝そうな目で見た。

 

「・・・全然、怖がってない・・・」

 

背の高い方はよく解らない白く輝く服を着ており、どこかの貴族のようだ。

しかし低いほうはただのボロを着ている。

 

「兄ちゃん達ー!無事かー!」

 

張遼がそう声をかけると、2人は立ち上がった。

高いほうの――一刀の茶色の目が、呂布達を見据える。

 

だが、呂布は見逃さなかった。

一刀の目の色が一瞬だけ、金色の光彩を放っていたことを。

 

「ああー・・・えっと、どちら様で?」

 

一刀が営業スマイルのような顔で2人の下へ行く。

 

「この村に最近よく出るっちゅう黄色い布巻いた賊が出たって聞いたんやが・・・もう行っちまったんかいな・・・」

「まぁ・・・ある意味ではもう逝っちゃってるけど」

「どうかしたんか?」

「いえ別に」

 

一刀がのらりくらりと質問をかわそうとしたところに、呂布が肩を掴んできた。

 

「・・・お前、変な臭いする」

「に、臭い・・・?」

 

影からの情報で彼女らが呂布と張遼だということが解っている。

「えっと・・・確か、呂布奉先さん?」

「ッ!・・・名前を・・・?」

 

呂布が得物である方天牙戟を向けてくる。

一刀は慌てて手を振った。

 

「いやいやいや!呂布さんは結構有名だから名前と顔くらい知ってただけであってそんな!!」

「・・・そう」

 

呂布は呟くとすぐさま張遼の隣に戻っていった。

その後で、張遼が申し訳なさそうにしている。

 

「すまんなぁ兄ちゃん、コイツ勘だけは鋭いから変な奴見るとこうしてまうねん」

「それって、俺が怪しいと言っているとしか思えないんですが」

 

張遼がそういうことだと言わんばかりに笑う。

 

「そりゃ、賊に襲われた村に行ってみりゃ子供抱いた男がいたんや。しかも賊はおらへんし。どう見ても兄ちゃん関係しとるやろ」

 

このご時世、賊に襲われる村や誰かと抱き合い安心しようとする人間は星の数ほどいた。

それでも張遼が一刀を変に思う理由はひとえに長いこと使った聖フランチェスカ学園の制服のせいであろう。

 

「確かにこんな服を着てたら変に思われて当然だけど、いささか失礼じゃないですか?」

「嫌に思ったんなら謝るで、せやけどなぁ・・・最近賊が頻繁に出てるから皆疲れとるんや」

 

ため息混じりにそう愚痴る張遼の言葉には、董卓軍の総意とも呼べるべきものがあった。

 

「なら・・・僕が入りましょうか?董卓軍」

「は?兄ちゃん何言ってんねや」

 

張遼が目を丸くするのも無理は無い。

いきなり変な服を着た人間がこっちに入ろうか?と言ってきているのだ。

 

だが、驚いた反面彼女の顔はニヤリとしていた。

 

「そうかぁ兄ちゃん・・・ウチに入りたいんか?」

「ええ、まぁ・・・」

「なら、やっぱり強くなきゃあアカンよなぁ!?」

 

張遼がいきなり一刀に向けて偃月刀を向けてくる。

 

(やれやれ、ここで手合わせか・・・まぁいいが)

「そういうことですか、解りました」

 

一刀は2人に見えないように目元を手で隠す。

その下には先ほどの金色の光彩をした目があった。

 

その時、子供はなおも一刀の腰にしがみついて張遼達を睨んでいたが、急に目が金色の光彩を放ち始めると大人しくなって一刀から離れていったのだった。

 

(さっきのと同じ目・・・何?)

ただ呂布には一刀が何かしているとバレていた。

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子供を呂布に預け、少し廃墟になりかけている村の広場で対峙する一刀と張遼。

張遼は自らの得物である飛龍偃月刀を。

一刀は兵士から借りた槍を持っていた。

 

「勝負は簡単や!先に『参った』と言ったほうが負け、ええな!?」

「ええ、構いませんよ」

 

何事かと董卓軍の兵士も集まって周りを取り囲む。

兵士の壁によってちょっとした闘技場みたいな場所となった広場。

子供は呂布と共に最前列で見ている。

 

「それじゃ、始めるで」

「そっちのタイミ・・・勝手に攻撃してきていいですよ」

「そか・・・なめられたもん、やなッ!」

 

張遼が一瞬で間合いを詰めてくる。

 

「・・・なるほど、そういう動きか」

 

一刀が数歩横にずれ、槍の先端を使い飛龍偃月刀の刀身を受け流す。

そのあまりのスムーズさに、張遼は一瞬目を奪われてしまった。

 

「やるやないけ兄ちゃん・・・せやけど、次はないでぇ!!」

 

今度は回転させて突撃してくる。

 

「回転で惑わせても、所詮は上段の斬り払い」

 

一刀は身を低くして張遼に突っ込んでいく。

完全に裏をかかれた張遼は急いで防御体制に入る。

 

(なんや!?動きでも読まれとるんかいな!)

 

「動きだけじゃないよ」

「ッ!?」

 

槍で突きながら喋る一刀。

それを避けながら聞く張遼。

 

「筋肉、音、目線、武器。それらから導き出される君の動き・・・」

 

一瞬の心の迷いを突かれ、槍を首元に突きつけられる。

 

「なッ・・・!」

「それらを組み合わせれば君の動きなんて俺にとって手に取るように解る」

「な、兄ちゃん・・・やるやないか・・・」

 

言葉とは裏腹に、張遼の目は闘志に燃える。

 

「せやけどッ!」

 

飛龍偃月刀が舞い、一刀の持つ槍が輪切りにされていく。

 

「ウチの方が強いんやでぇー!!」

「なッ、武器破壊アリかよ!」

 

それが手に到達する前に、手を離し張遼から離れるが、まだ追い討ちが重ねられてくる。

 

「この動きも予想出来るもんならしてみぃー!」

 

(動きを読むことが出来ても、その動きが見えなきゃ・・・クソッ!身体能力は前と同じなんだよ!)

 

張遼の圧倒的スピードにやられそうになるが、前の世界でもよく眼帯関連の人物に追い掛け回されていたので避けることには慣れている。

 

「これが、ガチでやる神速の張遼・・・!!」

「遅いでッ!!」

 

一刀の視線が、一気にガッとロール回転する。

気づいた時にはもう、柄によって足払いされた後だった。

 

「グッ!・・・やる・・・」

「さぁ、これで決着はついてるで・・・あとはもう兄ちゃんの一言あれば「残念だけど」なんや?」

 

一刀が張遼に向かって何かを投げる。

それは咄嗟にガードした張遼の腕に刺さったのだった。

 

「つぅ・・・なんやこれ?」

 

その言葉と同時に、張遼はピクリとも動かなくなった。

周りの兵達から動揺が奔る。

 

「ふぅ、強引なタイミングになっちゃったけど・・・まぁいいか」

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「・・・・・・霞?・・・ッ!!」

 

兵達は誰1人気づいていないようだったが、呂布だけが解っていた。

 

張遼の目が、金色の光彩を放っていたことを。

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刀身を首に突きつけられた状態から起き上がり、張遼の肩を叩く。

 

「どうでした?俺も強かったでしょ?」

 

張遼が飛龍偃月刀を落とし、重い音が辺りに響く。

すると張遼は手を頭の後ろにやって飄々と言った。

 

「せやなー・・・確かに兄ちゃん強いわ・・・参った」

 

兵士達から驚きと動揺の「オオーッ!」が聞こえてくる。

呂布は何も言えずにただ呆然とつっ立っていた。

 

(違う、霞は本心から言っていない・・・あの目?)

 

尚も金色に輝く霞の目。

そして一刀のソレも、同じ輝きを放っていた。

 

(ククク、張遼をも支配下に置くことが出来た・・・順調だな)

 

「・・・ん?なんや皆。何で騒いどるんや?」

「張将軍!まさかあのような男に負けるとは!」

「え!?」

「あの男、そこまで強かったんですね!」

「ええええ!?」

 

一方一刀の所には呂布から別れて来た子供が一刀に走りよってきていた。

 

「勝った?」

「ああ、勝ったよ」

「そう」

 

そして呂布は、鋭い眼光を一刀に向けているのであった。

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幽州 荒野

1人の青年が仰向けに倒れて寝ていた。

 

青年はこの世界では珍しい白く光る服を着て、いびきをかくことなくまるで気絶しているかのように寝ている。

そんな彼に近づく人影が3つあった。

 

「あ、ほらー!愛紗ちゃん鈴々ちゃん、こっちこっちー!」

 

その声に、青年はやっと目を覚ますのであった。

説明
かなーーーーーーーーーーり遅めな第2話です。
これ以外書いていないので第1話は「前の作品へ」を押してくれれば飛べますので、よろしくお願いします。
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コメント
>>北郷 刃さん その辺は一刀君の持っていた物をみてくだれば・・・(淀川)
>>鬼神さん ありがとうございます!更新は遅いですが頑張ります。(淀川)
おもしろかったッス! 続き楽しみにしてるッス〜。(鬼神)
一体霞に何をしたのでしょうか・・・?ただ上位種という事ですからなにかしらの術なのは間違いないですけど(本郷 刃)
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真・恋姫†無双 黒一刀北郷一刀 リボーンズカズト 

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