ちーちゃん日記 一年目@
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一階に下りるとリビングにあるテーブルの上に食事が用意されていた。

 スクランブルエッグにミニトマトを添えたサラダ、こんがり焼けたトースト。

 椅子を引き腰を落ち着けてトーストを手に取る。齧るとサクッと音が鳴った。歯応えのいい触感と冷たさを感じる。

 何の感慨も無く静かな朝食をそのまま続けた。

 

 タイトル;千早日記

 

 今日は土曜日で学校も休み。中学三年生で受験時期であるが幸い私は志望校の前期試験で合格の判定を受けているから試験勉強をする必要も無い。だからやる事がない。

 何時もなら考えるまでも無く、合唱部の部室に行くか近くにある公演へ歌の練習に行くのだけれど今日は不思議と何もする気が起きなかった。

 だからといって、このまま寝てしまうのも時間の無駄な浪費だ。何か他にやる事が無いかと部屋を見回すと散らかってはいないが埃が溜まっているのが見えた。

 そういえば最近、歌と受験の事で頭がいっぱいで掃除などしていなかったな。

 思い立ったが吉日。休日を有意義に使って掃除しよう。

 

 掃除用具を持ち出し、簡単な清掃を済ませる。

 目に付いた所を順々に片付けていく。みるみるうちに綺麗になっているのが分かる。思い出せないが最後に掃除してから大分経つのだろう。

 最後に部屋全体を見て確認をする。

 見ると不自然なまでに掃除していないと分かる所があった。

 押入れの周辺だ。

 少しだけ気が引けるがここまで掃除していて一箇所だけ汚いのも嫌なのも事実。気後れする心を殺し、押入れの清掃を始めた。

 掃き掃除した後に雑巾掛けをして汚れを清める。深呼吸した後に押入れを開き、中を覗くと最後に押入れを閉じた時の記憶と何ら違いない景色が其処に在った。

 二段式の収納スペースに子供用の玩具、人形、アルバムが無理やり押し込められている。数秒、中を見たまま突っ立っていたけれど何かが落ちる音がして意識が覚めた。

 足元を見ると一冊の冊子が不恰好な形になっている。

 屈んで拾い冊子の表紙を見るとお世辞にも上手いとは決して言えない字が書かれていた。

 目を細め、文字の部分をなぞる。

 おそらく冊子を開き中を見ても最初のページ以外捲っても何も書かれていないだろう。

 ページを閉じると私は押入れを閉めて部屋に備え付けてある子供用の勉強机の上に冊子を置き、ベットに体を投げ出して目を閉じる。掃除用具を元に戻していないが今はただ眠りたかった。

 

 

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 2009年 1月25日 日曜日

 この日記帳を押入れから偶然引っ張り出してから大分経ってしまったが、今日から日々の記録をつけていこうと思う。この前に歌の技術向上のために読んだ本に「過去と現状を比べ成長を観測する事が人間には必要だ。その為に日々の事を記録するのは有用な方法である」と書かれていた都合が良かったかもしれない。

 日記をつけることに慣れていない所為か何も書くことが見当たらない。TVでマラソンが長々とやっていた。

 

 2009年 1月26日 月曜日

 今日は学校だった。私には関係ないことだけれど私立高校の一般入試が終わり、一部の生徒がはしゃいでいた。部室に行く際、廊下でそんな人達が通せん坊していたので迷惑だった。早く歌の練習がしたいのに。

 

 2009年 1月27日 火曜日

 もう直ぐ私達三年生は卒業で部活動に来なくなっている人が多い。私一人、後輩と混じって練習をしている。歌を歌いたくて入部したはずなのに彼女達は何故来ないのだろうか。分からない。

 

 2009年 1月28日 水曜日

 大分先のことだけれど今年の全日本合唱コンクールに向けての練習が始まった。三年生が来なくなったので今の内から今年の主力になる二年生の選別も兼ねてのことだと思う。高校とは違い課題曲が無く自由曲なので二年生に合った曲を見つけることも視野に入れてるのかもしれない。

 私は邪魔だろうか。

 

 2009年 1月29日 木曜日

 高校でも合唱部に入ろうと考えているので去年の全日本合唱コンクールの課題曲を練習する。私が進学する高校の合唱部はレベルはそう高くないけれど、大丈夫だろうか。今から心配だ。

 

 2009年 1月30日 金曜日

 本格的に部室に居辛くなった。放課後に練習できる場所を探すとする。外で歌うことになるだろうからアカペラだけの練習。高校の合唱部に入部するまで我慢だ。

 

 2009年 1月31日 土曜日

 場所を探すため朝から外へ出るも見つからず帰る。

 

 2009年 2月1日 日曜日

 今日も外へ出て探していると、浅黒い肌が特徴の人に声を掛けられる。「ティンと来た。君、アイドルになってみないかね?」と言われ名刺を渡されたけれど曖昧な返事しか出来なかった。「その気があるのならぜひ連絡してくれ」と言い残し、去っていった。

 名刺を見ると『765プロダクション 社長高木順一朗』の名前があった。

 

 2009年 2月2日 月曜日

 クラスが朝から騒がしい。耳を澄ませて会話を盗み聞くと長野県の浅間山が噴火したらしい。

 

 2009年 2月3日 火曜日

 放課後、練習場所探しに町をうろついていると軽そうな男の人に声を掛けられる。素っ気無い言葉を返し逃げた。あの辺りに行くのは止めよう。

 

 2009年 2月4日 水曜日

 私の夢は歌手でアイドルになる気は無いけれど、このまま何も出来ない日々を過すのも嫌なので名刺に書いてあった連絡先に電話。女性の人が出て対応してくれた。今週の日曜日にお邪魔することに。事務所の場所を聞いてみると自宅からそう離れた位置じゃないので安心。音無小鳥と名乗った事務員さんの声が綺麗で羨ましく少し思う。

 

 2009年 2月5日 木曜日

 特に何も無かったけれど、いいのかしら。車が凄いらしい。

 

 2009年 2月6日 金曜日

 図書室へ行った。課題曲練習のため譜だけでも確認しておく。流浪の民や空駆ける天馬など中学の課題曲しか見つからなかった。学校の図書室ではないのだろうか。

 

 2009年 2月7日 土曜日

 明日は765プロダクションに行く日だ。ヴォーカルレッスンを見学できたら嬉しい。そう上手くいくとは思えないけれど。

 

 2009年 2月8日 日曜日

 凄かった。特にヴォーカルレッスンをしていた三浦あずささんという人が凄かった。外見通りのおっとりとした雰囲気の声質だけれど落ち着いた歌声だった。アイドルにデビューする前の候補生らしいけれど凄い。アイドルには会えなかったけれどプロはもっと凄いのだろう。アイドルも悪くないと思った。

 

 2009年 2月9日 月曜日

 心は決まった。あとは両親に了承をもらうだけ。

 

 母は特に何も言わなかった。

 アイドルになる事と保護者の確認印が必要だと簡潔に話すと口を開く事も無く判を押した。そのままリビングを離れようとしたら後ろから「頑張りなさい」の一言が聞こえた。

 父に言ったら頭ごなしに反対されるだろうから母にしか言わない。

 きっとあの人は私のする事の全てが気にくわないのだろう。普段はマネキンのように静かな癖にお酒が入ると人の悪口しか口にしない人だから。

 一応、貰っていた書類に全て書き込み、事務所にこれからお世話になる事と週末に挨拶に行く事を伝える。電話越しだけれど音無さんは嬉しそうな声音だった。綺麗な声。

 日曜日に初めて姿を見たのだけれど、声と同じで清楚な美人だった。元アイドルの人なのだろうか。

 必要な用件を伝え終わり、相手は仕事中だから無駄な長話は迷惑だろうと直ぐに電話を切る。

 携帯を話すとその場に座り暫く天井を見上げていた。

 早く歌いたい。もう10日も満足に歌えていない。

 私の実力では歌手になるにはまだまだ遠いと分かるけれど、アイドルなら少しでも早く人前で歌えるのだろうか。所詮、中学生レベルの合唱大会やコンクールで賞を貰えたからと言って私の実力がプロに届くなんて勘違いしない。未熟。とてもじゃないけれど未完成過ぎる。

 あぁ早く歌いたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
普通のアイマス二次創作小説を書きたくて書きました。本文に一人称の人物紹介はありませんが如月千早さんが主役です。物語は千早さんのアイドルデビュー前から三年の月日を書きたいと思っています。
 長々と駄文が続くと思いますが御付き合い願います。
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アイドル 二次創作 如月千早 アイドルマスター 

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