いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した |
第四十九話 さすが『傷だらけの獅子』やな
「…にゃう」
「…アリシア?」
なのはの収束砲を受けて急に動きを止めた銀髪の女性が動きを止めた。
その後で、僕とユーノ。そして、アリアと今の今まで一人で結界の維持に努めていたアルフも彼女をバインドで動きを地面に張り付けるように封じていた瞬間にアリシアがまるで電池が切れたかのように気を失った。
そのことを不思議に思ったフェイトがアリシアの傍に近寄った時だった。
次の瞬間、アリシアの体は緑色の光に包まれると同時にタカの持っていたデバイス。待機状態のガンレオンに吸い込まれる。
さらにその光が砲撃用のデバイスへと変化した闇の書が取り込まれ…。いや、まるで飛び込んでいくかのように吸い込まれていく。
「アリシア!アリシア!」
フェイトはその状況を見て思わず闇の書の砲身に触れようとするがアルフとクロノが止めに入る。
「待ってフェイト!何があるか分からないのに近づくのは危険だよ!」
「離してアルフ!アリシアが!」
「落ち着くんだフェイト!エイミィからの情報だとアリシアのバイタルも無事だ!だけど、今、闇の書に触れるのはやめるんだ!スフィアの事もあるのに近づくのは危険すぎ…」
クロノが慌てだしたフェイトをなだめようとしたその時、今いるメンバーの中では最も補助に優れた魔導師のユーノとアリア。そして、スフィアを持っているクロウが何かに気が付いた。
「…これは?」
「クロノ!闇の書の砲身から異様な魔力を感じる!」
「それだけじゃない!あの銀色からも魔力を感じる!急いで、デュランダルで封印を」
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!
この場にいる全員を射竦めるほどの獅子の咆哮が鳴り響く。
そして、その咆哮が鳴り響くと共に銀髪の女性が黒い光に包まれる。
そして、その光が収まると同時に二つの声が響いた。
「ダアラッシャアアアアアアアア!!」
「よっしゃああああ!脱出成功やぁあああ!!」
ガンレオンとそのガンレオンに抱えられた。病衣を身に纏ったはやてが僕たちの前に現れた。
突然のことに驚いている僕等をしり目に、はやては闇の書を持ってガンレオンを見る。
「いやあ、助かったで。高志君。さすが『傷だらけの獅子』やな。あの闇の書。いや、壊れた夜天の書の呪いを叩き潰してくれたから脱出も楽に出来たで。うんうん、百獣の王は伊達やない」
「それはいいから早くあいつ等を呼んでやれ。…家族なんだろ」
「そやな。…おいで、私の家族達」
はやてが闇の書に意識を集中させると、俺から離れるようにはやての体は宙に浮き、足元に真っ白な三角形の魔方陣が現れるのを見たアリアがそれを止めに入ろうとした。が、
ジャキィッ。
「悪いが、家族の再会の場面を汚すわけにはいかない」
高志がライアット・ジャレンチで威嚇するかのようにアリアにその矛先を向ける。
「何やってんだい!?あんたは!?早くしないとまた闇の書が」
「闇の書はもうここには無い。今ここにあるのは夜天の書だ」
≪ユニゾンアウト≫
タカがそういうと同時にガンレオンから一人の少女が現れる。
「ただいまだよ。フェイト。ごめんね、心配かけちゃったね…」
「アリシア!」
フェイトが涙をこぼしながらアリシアに抱きつく。
「にゃわああ、嬉しいんだけどもっと優しく…」
「アリシア、アリシアァアア…」
「フェイトちゃん。アリシアちゃん。…よかった」
なのははそんな姉妹の様子を見て涙を浮かべていた。それとは対照的にユーノとクロノは不思議そうに高志に話しかける。
「…よく戻ってこれたね」
「アリシアが光になって闇の書に取り込まれたかと思ったら、君が出てくるし…。これもスフィアの力なのか?」
「まあ、それしか考えられないな」
最後の言葉はクロウ。
まあ、確かに高志の魔力はこの中ではアリシアを除いて一番低い。だから、考えられるとしたらスフィアしかない。
そんなことを話しながらもアリアからは目を離さない高志。
そんなやりとりをしている間に彼の後ろでは、はやてが夜天の書となった魔道所から自分の守護騎士。いや、家族を呼び戻していた。
「…お帰り。みんな」
「…主はやて」
「…ごめんなさい。はやてちゃん。私達の所為でこんな」
「構わんよ。ザフィーラもシャマルも私の為に頑張ってくれたのは夜天の書に取り込まれた時で知っとるから、な。全部終わったら家に帰って反省会や」
ザフィーラはただ、目を閉じてはやての優しい言葉をかみしめる。
シャマルもまた涙を流しながらコクコクと頷く。
「申し訳ございません。この責任はすべて私にあります」
「せやな」
「…っ」
「だから、シグナムも反省会や。皆の将である自分なのはわかる。だけど、主は私や。だから、今まで迷惑かけてきた人達にごめんなさいをいわなあかんよ。勿論私も一緒や」
「いえっ、あなたが気になさるような事では…」
「シグナム!これは命令や!……私と。ううん。((家族全員|・・・・))で謝りに行こう」
「〜〜〜はい」
シグナムはもう二度とこの人の命令には逆らわないと心に、魂に刻み込む。
「…はやて」
「…ヴィータもやで。まったく人様に迷惑かけたらいかんというのにこんな事をしでかしおってからに…」
「…ごめん。はやて」
「…それは私に言うべきことやない。まずは迷惑をかけてた人にいわなあかん」
「…う」
はやての言葉を聞いてしょぼくれるヴィータ。
その様子を見たはやては苦笑しながらヴィータの所にプカプカと宙に浮きながら近づいて彼女の頭を撫でる。
「だけど、まあ。…お帰りヴィータ」
「…はやて。はやてぇえええええ!」
その仕草にヴィータは思わずはやてに抱きついた。
とても感動的なシーンを目の前で見せられたアリシアはうんうん、と涙を流しながら頷いていた。
「…あ〜。感動的なシーンの所を悪いんだが。結局、闇の書はどうなったんだ?」
「見ればわかるだろうクロノ。闇の書の呪いからはやてたちは解き放たれた。だろ?」
(ちっ。ガンレオンの能力でまさか闇の書の中にいる状態からあいつは夜天の書に戻したっていうのか!)
クロノが俺に話しかけるが、俺が答える前にクロウが口を挟む。
「何だって。それは本当なの!?」
「あー、半分正解で半分はずれかな〜。…いや、完全に直したわけじゃないし…。そもそもそんな暇もなかったし…」
アリアの言葉に高志はポリポリと顎のあたりを掻いて答える。
そして、海のある方向を指さす。
「はやて達を闇の書の呪いから切り離すことは出来たけど、その呪いの塊が海の方に飛んで行って…。一応、はやて達がロックをかけているからすぐには暴れないとは思うけど、それをどうにかしないと根本的な解決にはならないな」
その言葉に全員が目を向けるとそこには巨大な黒い球体が浮いていた。
「…あれは?」
「あれが闇の書の呪いや。いや、『悲しみの乙女』にまとわりついた怨念ともいうべき存在や」
はやてがクロノの質問に答える。そして、上空に浮かび上がったモニターからリンディとエイミィの顔が映し出される。
「つまり、アレを砕けばもう闇。ううん、夜天の書は暴走しないと…」
「はい。そう言えます」
(…高志君。あわせてぇな)
はやてがモニター越しのエイミィにそう言うと高志の方に目配らせをする。
確かにはやての言葉に嘘はない。だが、肝心な部分『悲しみの乙女』は未だに夜天の書の中にある。
『悲しみの乙女』がある限り夜天の書は確実に封印・処分されるのは間違いない。だが、はやてには『傷だらけの獅子』の高志とアリシアがいる。
二人がいれば『悲しみの乙女』をどうにかできると半ば確信しているからだ。
「では、『悲しみの乙女』も?」
「…まあ、それは長話になるのでまたあとで…。今はアレをどうにかしましょう。…何か出てきました」
(まあ、ここははやてに合わせるか。スフィアに関しては俺も無関係ではないし…)
リンディの質問に答えようとした時、高志は黒い球体から何かが漏れ出しているのに気が付いた。まるで球根から生えてくる根のようにウジュウジュと何かの触角が生えだしてきている。
「あれは…」
シグナムが蒐集していた無人世界の生物の有している触手だ。
それだけじゃない、ヴィータやザフィーラが確保した怪獣の咆哮もあの黒い球体から聞こえる。
「とにかく、アレを吹っ飛ばそう。あれは確実にいいものじゃない」
高志の言葉にその場にいた全員が頷いた。
「…はやてはどうする?」
この中で一番の非戦闘員と言えば間違いなくはやてだと思っていた高志だったが、それは杞憂に終わる。
「…私の責任でもあるからな。リインフォース。私に杖と甲冑を」
『…はい。主』
はやてが持つ夜天の書が強く輝くと、はやての病衣が白と黒を基調にしたバリアジャケット。それは法衣を纏った騎士とも思えるものだった。
「さあ、あれをぶっ飛ばして終わりにするよ。闇の書の呪いは今日ここでお終いにするんや」
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