IS インフィニット・ストラトス 〜転入生は女嫌い!?〜 第四十一話 〜胸の内の思い〜
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クロウと一夏が部屋から出ていき、しばし黙る一同。しかしやはりそこは年長者、千冬が最初に口を開いた。

 

「さて、あいつの言った通りここには我々しかいない。腹を割って話そうか」

 

「何をでしょうか、教官?」

 

堅い口調でラウラが返す。ラウラを除いた他の面々は千冬と一緒に話をする機会など滅多にないためか、全員が緊張で固まってしまっている。

 

「そうだな、まずはお前たちに聞こうか」

 

そう言って箒、鈴、ラウラの顔を順番に見る。三人は一体何を言われるのか、と少し身構えて言葉を待つ。缶ビールを呷ってから千冬は問いかける。

 

「お前ら、一夏のどこがいいんだ?」

 

「「「!?」」」

 

千冬の口からそんな言葉が出るとは思ってもいなかったらしく、一様に驚く三人。構わず千冬は話し続ける。

 

「まあ、あいつは確かに役に立つ。家事は文句の付けようが無いし気配りも出来る、女関係の方は鈍感が過ぎるがな。お前らあいつのどこに惚れた?」

 

空っぽになった缶ビールで箒を指す千冬。まず自分かららしい、と感じた箒はいつもの彼女には似合わないたどたどしい調子で話す。

 

「わ、私は小学生の頃から・・・その・・・助けてもらった時から・・・」

 

「あー、お前はいい、分かりきっているしな。次」

 

「ア、アタシはあいつにその・・・いつの間にか・・・」

 

「次」

 

「ちょ、ちょっと千冬さん!!」

 

箒以上にあっさり飛ばされ素の言葉遣いで異議を申し立てる鈴だが、千冬に一蹴されてしまう。

 

「はっきり言え。ボーデヴィッヒ、お前は?」

 

「わ、私は一夏の強い所に」

 

「あいつ、そこまで強いか?まあクロウの指導もあって、最近は腕を上げているようだが」

 

千冬から見ればまだまだ弱い方なのだが、ラウラが珍しく反論する。

 

「確かに身体能力はまだまだですが、その、何と言いますか、精神的なものが強いと思います」

 

「ふむ、クロウとの出会いはやはりあいつにとってプラスに働いているらしいな。どうだお前ら、欲しいか?」

 

「「「くれるんですか!!」」」

 

「そうだな、出来るものならやっても構わん。だがあいつがお前らの気持ちに気づくのはお前たちが相当の事をしなければな。下手すると一生気づきはしないぞ?」

 

千冬からの形式的な許可は出たものの、その当人である一夏に多大な問題があった。これからの事を考えたのか、三人は揃って頭を抱える。三人を尻目に千冬は冷蔵庫から新しいビールを取り出して、景気のいい音をたてながらフタを空け流し込んでいた。千冬達の問答もあり幾分空気が緩んできた所に、今度は復活したラウラが逆に質問する。

 

「そう言えば、お前たちはクロウの事はどう思っているのだ?」

 

「(ピクッ)」

 

話しかけられたのは、セシリアとシャルロット。いきなり話題を振られ慌てふためく二人だが、わずかに千冬もその言葉に反応する。

 

「いいいいいきなり何をおっしゃいますの!?」

 

「そそそそそうだよラウラ!!」

 

「む、違うのか?日々の行動を見ている限り、お前たちはクロウに好意を抱いていると考えていたのだが」

 

平然と話し続けるラウラ。二人が慌てるのも無理はない、少し前までの彼女はそんな事を言う人間ではなかったのだ。恋は人間を変える、という言葉を代表する様な変わりぶりを果たしたラウラだからこそこの様な事を言うのである。口では否定するも図星をつかれた二人はというと、そんなラウラに嘘を付くのも出来ずに顔を赤くすると言う行動で回答する。ラウラに乗っかって鈴も追い打ちをかけた。

 

「そうね、あんた達の日頃の行動を見てれば丸分かりよ。むしろ分からない方がおかしいって」

 

「「ううう・・・」」

 

否定できない事実なので、顔を伏せてしまう二人。そんな二人にラウラが先程の二人と同じ質問を投げかける。

 

「お前達はクロウのどこが好きなのだ?参考までに聞いておきたい」

 

「わ、私はその、男らしい所が・・・」

 

「僕はその・・・優しくてかっこいい所とか・・・」

 

「・・・・・・」

 

本人がいたら全力で否定ような評価を下す二人。その二人を、缶ビールを飲みながら睨んでいる千冬がいた。納得した様でうんうんと首を縦に振るラウラ、そこに箒と鈴も加わる。

 

「そうだな、あいつは普段はへらへらしているが、一本筋が通った男だと私は思うぞ」

 

「やっぱり人生経験の差かしらね、あの性格は。それにたまにジジくさい事言うのよね、妙に老成してるって言うか」

 

「そうですわね、言葉の端々に大人の様な物言いが見え隠れしています」

 

「そういうの聞くと、やっぱクロウって大人なんだなあって思っちゃうんだよね」

 

「まあそうだろう。クロウは、外見はともかく中身は23歳の立派な大人なのだから」

 

少女達がクロウの事についてやいのやいのと話し続ける。その光景を缶ビール片手に見つめていた千冬だったが、その内ラウラが話の輪から離れて千冬に近づいてきた。

 

「どうした、ボーデヴィッヒ?」

 

「教官もクロウの事が好きなのですか?」

 

いきなりラウラに質問され、飲んでいたビールを盛大に吹いてしまう千冬。その様子を見て急いでラウラが心配する。

 

「大丈夫ですか、教官?」

 

「構わん!しかしなんだその質問は!?」

 

「いえ、ただ教官の雰囲気が((あちら|ドイツ))にいたときと違っているので疑問に思っただけです」

 

「そ、それがどうしてクロウにつながる!?」

 

「それを私の副官に話したところ、“きっと男が出来たからだ、そうに違いない!!”と言われまして。よくよく観察してみた結果、教官はクロウに好意を抱いているという結論になりました」

 

「ぐっ・・・」

 

言葉に詰まる千冬。ラウラの言っている事はニアピンどころか見事に的を射ており、事実であるからこそ何も言えなくなってしまう千冬。しかも恋する少女達の何と耳聰い事か、ラウラが“クロウに好意を抱いている”と言った瞬間、一瞬で箒達が千冬を囲んだ。四人の内二人は好奇の目で、二人は敵対の目で千冬を見ている中、ラウラがさらなる追い打ちをかける。

 

「それで、どうなのですか?クロウの事が好きなのですか?」

 

「う・・・まあその、何だ。き、嫌いではないな・・・」

 

苦し紛れに言う千冬だったがその言葉は肯定に等しく周りの少女達は一瞬で千冬から離れ、頭を突き合わせながら物凄い勢いで喋り始める。

 

「聞いたか!?あの!“あの”千冬さんが!!もしや、とは思っていたが!!!」

 

「ア、ア、アタシも驚いたわよ!!き、きっと明日は大雪が降るわ!!!」

 

千冬を幼い頃から知っている箒と鈴にとっては驚愕の事態だった。しかし、同じ人間に好意を寄せる二人は違う反応をする。

 

「・・・やっぱり。まあ僕は気づいてたけど」

 

「そうですわね。あの様な雰囲気を出していて、気づかない方がおかしいですわ」

 

「何故、クロウを好きになったのですか?」

 

ラウラが千冬に繰り返し質問をする。再び千冬の周りに集まる少女達。千冬は腹をくくったのか、ゆっくりと話し出す。

 

「う、うむ。そうだな、まずアイツは私を私として見てくれるんだよ」

 

「?どういう事ですか??」

 

「今まで私に近づいてくる人間は私を私として見ていなかった。皆私の事を“織斑 千冬”ではなく“ブリュンヒルデ”としてしか見ない。しかしあいつは違った」

 

「「「「「・・・」」」」」

 

いつの間にか、箒達は真剣な眼差しで千冬の話を聞いていた。千冬は独り言の様に話し続ける。

 

「初めて会った時から、そして私が“ブリュンヒルデ”である事を知ってからもあいつは私を私という一人の人間として見てくれた。嬉しかったんだよ、純粋にな。それがまず一つだ」

 

「他にも何かあるのですか?」

 

「ああ、あとは私の弱さを肯定してくれた事かな?」

 

「弱さ、ですか?」

 

「以前まで私は自分の中のある気持ちを弱さだと考えていた。しかしあいつはそんな私の気持ちを聞いた時、私のそんな弱さを否定せずむしろ肯定してくれた。お前が持っているその気持ちは当たり前のものだ、むしろ誇っていいものだ、とな。救われた気分だったよ・・・」

 

全てを話した千冬の顔は何処か晴れ晴れとしていた。

 

「主にその二つが大きな理由だな。まあ他にもあるが」

 

「・・・まだあるのですか?」

 

「そうだ。それにな・・・」

 

〜十分後〜

 

そこから話続ける事十分、少女達は同じ事を考えていた。

 

「「「「「(・・・なにこの乙女)」」」」」

 

酔っ払っているためか、話が止まらない千冬。その間に話した事と言えば千冬のクロウに対する思いであり、もはや理由などではなく完全に惚気であった。現在はラウラ一人で千冬の相手をしており、箒達は完全に話の輪から外れて小声で会話している。

 

「(千冬さんって意外と思い詰めるタイプだったみたいね)」

 

「(ああ、今まで話せる相手がいなかっただけなのだな)」

 

「(やはり織斑先生も人間だった、と言う事でしょうか)」

 

「(うん、それでクロウを好きになるのはむしろ当たり前だと思うよ)」

 

四人が話している最中にも、ラウラは千冬の相手役を続けていた。しかし千冬の事を尊敬しているラウラですら、若干引いてしまう程に千冬は話続けている。

 

「・・・という事があってだな」

 

「も、もう結構です。教官のクロウに対する思いは十分に分かりました」

 

「・・・む、そうか」

 

聞き手のラウラがギブアップし、ようやく止まる千冬だった。落ち着いたところで再び千冬を中心にして円になる一同。

 

「しかし教官、一つ質問したい事があるのですが」

 

「何だ?」

 

「将来的に私と一夏が一緒になるように、教官もクロウと結婚するのですか?」

 

「「けけけけけけ結婚!?!?!?」」

 

素っ頓狂な声を上げるのはセシリアとシャルロット。箒と鈴は爆弾発言をしたラウラに食ってかかっていた。

 

「ちょっとアンタ!一夏とけ、結婚するって何よ!!」

 

「そうだ!!一夏と一緒になるのは・・・こ、この私・・・」

 

「?何もおかしな事は言っていないが?」

 

「おかしいわよ!!そもそもアンタは・・・」

 

箒、鈴、ラウラでぎゃあぎゃあと喚き始める。対して千冬はラウラの問いに答えた。それが更なる騒ぎを引き起こす原因となることも知らずに。

 

「そうだな、将来的にはそうなるかもしれんな」

 

「「ちょ、ちょっと待って下さい!!!!」」

 

大声で千冬に食ってかかるのはセシリアとシャルロット。凄まじい勢いで千冬に迫る二人。

 

「おかしくないですか!?クロウは今、15歳なんですよ!!しかも生徒と教師!!」

 

真面目なシャルロットは世間的な物の見方から千冬を弾劾するが、当の千冬はどこ吹く風と言った様子であっさりと受け流す。

 

「ん?ならば卒業してからでいいだろう」

 

「良い訳がないですわ!!そ、それにクロウさんと織斑先生とでは年が離れすぎていますわ!!」

 

「ふん、それがどうした?」

 

あわてふためいている二人をよそにはっきりと言う千冬。その千冬の言葉には確固とした思いが宿っており、その物言いに勢いを削がれてしまう二人。

 

「私は意外と強欲な人間でな?欲しいと思ったものは全力で奪いに行く人間だ。貴様らには渡さんぞ?」

 

口の端を歪めてニヤリと笑う千冬。その時二人は心の中で再び誓う。

 

「「(織斑先生には負けない(負けませんわ)!!!)」」

 

その後、クロウと一夏が部屋に帰ってくるまで醜態は続いた。帰ってきて部屋の惨状を見てクロウが一言。

 

「お前達、何やってんだ??」

説明
第四十一話です。
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コメント
なにこの乙女かわいい・・・(デーモン赤ペン)
千冬さんも女ですがらな〜(soutiro)
タグ
IS インフィニット・ストラトス SF 恋愛 クロウ・ブルースト スーパーロボット大戦 ちょっと原作ブレイク 主人公が若干チート ハーレム だけどヒロインは千冬 

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