カーニバル 13話目
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 ボクの前を軽快なスキップで進んでいる、ちまっとした少女。その足跡からは

音符がピョコンと、でてきそうな、心地よいリズム。

 

 一応これから戦いが待っているのだけど……

 

「ねぇ、オーダー、レッドサン城は猫を飼ってもいいのかな?」

少し不安そうな顔で、こちらを見てくる。

 

「猫?飼ってもいいんじゃないかな……でもこれから行くところは」

 

 と、言いかけたところで

オリンズは、より軽快なスキップで先へ先へと進んで行ってしまった。

 

 やがて、鳴けない猫団のアジトへ着く。

 

 野ざらしで、特に手入れもされていない洞窟だ。ボクは警戒しながら様子を伺う。

 

 すると、オリンズがツカツカと歩いて

「にゃーにゃー」と入り口に向かって大声で鳴く。

 

 ……え?

 

 と一瞬何が起こったのか、わからず間が開いたが、慌ててオリンズの口元を両手で塞ぐ。

オリンズはモゴモゴしているが、そのまま離れた岩陰へとボクらは身を隠した。

 

「オーダー……」と言いかけたところで、ボクは指を一本立てて「シーっ」と伝える。

コソーっと入り口付近を見るが誰もでてこない。

 

 

 ボクは深呼吸して

「オリンズ、実はあの洞窟の中に悪者がいて、猫はそいつらに捕まっているんだ」

 

 オリンズは、コクリコクリと頷く。

 

「だから、見つからないように、進入して悪者を懲らしめてやらなきゃならないんだ」

オリンズは、握りこぶしをして大きくコクリと頷く。

 

 ボクらは入り口の左右に分かれて、中の様子を伺う。けれど気配はない。

そして恐る恐る中へと歩を進める。

 

 遠くでオレンジの灯りが、かすかに見える。そして歩を進めると、段々と灯りが

大きくなっていく。

 

「オーダー、ここは先制攻撃よ」

オリンズは真剣な眼差しでこちらに決意を伝えてきた。

 

 ボクは「何か手があるの?」と聞くと

コクリと頷き、マスクに隠れた口元が動く。そして口元の動きが止まり、ビシッと

地面を指差した。

 

 ああ、前は月から、ウサギを呼んだからまた何か召喚したに違いない。

ボクは相手に気付かれないように灯りの方を注視している。やはり、こんな時は

時間が経つのが遅いのか、なかなか魔法の効果が、あらわれない。

 

 ……。

 

 あ、あれ?ボクは、ちらっとオリンズを見る。オリンズも何か落ち着かない様子

でキョロキョロしている。

 

 すると、ここから離れた場所で

 

 ドゴゴゴゴーン!!!

 

 と地響きが起こる。

 

 オリンズは、サーっと血の気が引いた顔で

「オーダー、あの子、たぶん場所を間違えたみたい」

  

「へ?」ボクは何のことか分からずポカーンとした。

 

「モグラのモラを召喚したんだけど、毎回呼んだ所と違う所に行っちゃうの」

 

 ……ええええええーーーー!

 

 と、いうか毎回だったら、何で今回もそうなるって思わなかったの?とは聞けない。 

 

 今の音で、鳴けない猫団の連中が、こちらに気付いた。

 

「オーダー、私、あの子探してくる、迷子になって困っているはずだし」

 

 すると慌てて、音の方に向かって走っていってしまった。

 

 ……い、いや困っているのは、ボクなんだけど。

 

「おい、貴様ここで何をしている」やたら大きな体の騎士がこちらへ来た。

ボクは剣に手をかけ、身構える。

 

「君が王子の命を狙っている者か?」

 

「うん?貴様、ブラッドの手下だな」

 

 とても重厚な鎧を纏っている。

「貴様に用はない、ブラッドをここへ呼べ」

 

「なぜ、ブラッドさんの命を狙うんだ?」

 

「答える必要はない」見てくれと同じで頑固頭な奴だ。

 

 このまま放っておく訳にもいかない。捕まえてブラッドさんの指示を仰ぐか。

ボクは剣を抜いた。

 

(ギャハハハ)ハァっとため息をつく。

 

(おいおい、どうした、楽しい戦闘タイムじゃないか)

 

「バロー、どう、あの相手は?」

 

(ふーん、ディフェンダーだな、アレ)

 

「なにそれ?」

 

(お前が攻撃タイプなら、アイツは防御の能力に優れている)

 

 大きな体の騎士が

「ふふふ、その剣でオレと戦う気か?無駄だと思うぞ」口笛を吹いて二人仲間を呼ぶ。

 

「ワンロック団長、そこの小僧が侵入者ですかい」

 

 ワンロックと呼ばれた男が 

「ああ、ブラッドの手下だ、痛めつけてやれ」

 

「へーい」

 

 ワンロックと二人以外は、どうやらいないみたいだ。鳴けない猫団って

……三人だけ?

 

 二人の傭兵が同時にこちらへ向かってくる。

 

(おいおい、なんだこりゃ雑魚じゃねーか)

 

 左右からくる剣を同時に受け止めて跳ね返す。

 

「うわぁ……」「ぐぇ……」

 

 二人同時に尻餅をつく。

 

「君たちも、ブラッドさんの命を狙っているの?」ボクは少し語気を強めて問う。

 

「とんでもねぇ、ただの雇われた傭兵で……」

 

「わしら二人は、そろそろ、おいとまさせていただきやす」ダーっと外へ向かって

二人は駆けていった。 

 

(ギャハハハ、みっともねーぜ)

 

「……貴様と一対一で戦い、捕まえてブラッドに、突き返してやる」

動きは遅いが一撃もらえば、体ごと吹っ飛びそうなパンチが向かってくる。

 

 スッと、かわすが、ビューっと風が顔の横を通り過ぎる。

 

(おい、オーダー、あの重い鎧を身に着けているんだ、足を払って転ばせば、起き上がれないだろ)

 

「わかった」

 

 ボクは顔や上半身を何度も何度も攻撃してワンロックの集中を上に向けさせた

 

「ふふふ、何度やっても同じだ、そんな攻撃は効かん」

 

 ボクは数歩後ろに下がった。

 

「うん?逃げるのか?」ワンロックは得意な顔で言う。

 

 勢いをつけてワンロックの顔へ剣を出す。上半身を防御したら、下半身が

完全にお留守になった。そこへ、バローの力のこもった足払いが完璧に捕らえた。

 

「うおおおおおー」

 

 腕をバタバタさせて無駄な抵抗をするも前のめりにバタンと倒れた。

「ぐぬぬぬ」起き上がろうとするものの、うつ伏せのまま起き上がれない。

 

「す、すまん、手を貸してくれないか」

 

(ギャハハハハ、貸す訳ねぇーだろ)

 

 ボクはバローを鞘に収める。

「君を捕まえて、ブラッドさんの指示を仰ぐ」

 

「ふん、まぁ、ブラッドと話をする為ここは、あえて捕まってやる……だから

起こしてくれ、いや、下さい」

 

 ボクは顔が赤くなる位、力を入れて、ようやく起こした。

 

 ボクらは洞窟の入り口でオリンズを待った。

 

 すると、息を切らしながら、ちまっとした少女がやって来た。

 

「あ、オーダー、モラに会えたよ」

 

「はははは……」ボクは苦笑した。

 

「でも、もう誰もいなくなっていたから帰ってもらったんだ」

 

「う、うん」

 

「それより、猫ちゃんの救出はできたの?」

 

「うん、できたよ、でももう自由の身になってどこかへ行ってしまったよ」

 

「ええ〜」ものすごく残念な顔をしている。

 

「この騎士さん、ブラッドさんに用があるみたいなんだ。オリンズ、城へ帰ろう」

 

「大きな騎士さんだね、ブラッドさんに御用があるの?じゃ、行きましょう」

 

 ボクらはレッドサン城へ向かった。 

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