The Duelist Force of Fate 3
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第三話「遊戯者の規定」

 

衛宮君と言えば、あの気に食わない生徒会長の最終兵器と名高い。

いつも雑用を押し付けられている姿には感心する。

しかも、何やら困っている人を助けてくれるお人よしであの男の友人で・・・あの子が慕っているという噂もある。

だから、助けないわけにはいかなかった。

今まで聖杯戦争の為に魔力を溜め込んできた宝石の一つ。

切り札の一つを私は衛宮君の為に使った。

本当に馬鹿だと自分でも思う。

でも、此処で見捨ててしまったら何かが自分の中で壊れてしまうような気がした。

衛宮君を置いて一度家に戻ってきた私は何やら台所に向かったカードゲームの英霊である彼の背中をジッと見つめる事しかできなかった。

あまりにも不可解なカードゲームの英霊を自称する彼は凄まじい性能を秘めていた。

今まで使えない英霊呼ばわりしてきた身としては少々負い目を感じる。

どうやらカードを具現化して戦闘を行う英霊だと気付いたのは先程の事。

よくよく彼が持っているカードを見てみれば凄まじい魔力が秘められていた。

今まで気付かなかったのはカードの魔力が封印されていたからだ。

どうやらカードは【デュエルディスク】というらしい彼の宝具にセットしなければ力を発揮しないらしい。

彼が台所に向かい何をするのか眺めていると何やらデッキからカードを一枚引き抜いて虚空に放った。

それが一瞬にして冷蔵庫に変わる。

「え・・・ね、ねぇ、ちょっと! そのカード【デュエルディスク】とかいうのに入れないと使えないのよね?」

「・・・・・・」

「は、はいぃいい?! 戦闘用だけ!? 何それ!? しかも、何で冷蔵庫なんて具現化できるのよ!!?」

「・・・・・・」

「仕様ですって!? 仕様って何よ!! 仕様って!!」

マスターである私にまだまだ隠し事をしていそうな彼はおもむろに家の冷蔵庫の横に具現化した小型冷蔵庫を開け放った。

「プリン?」

「・・・・・・」

「名前はトリシューラプリンで一個二千七百円なり? 高ッッ!? 何でサーヴァントの癖にそんなプリン―――じゃなくて!! どうしてそんなプリン入った冷蔵庫が具現化できるのよ!!」

「・・・・・・」

「どんな場所でもデュエル飯は欠かさない? いや、デュエル飯ってそもそも何!!」

「・・・・・・」

「く、くれるの・・・? 人間が食べていいものなんでしょうね?」

居間のテーブルで一息付いて色々疲れた私は彼に勧められるままプリンを口にする。

「美味い!? 何コレ!?」

「・・・・・・」

「ちなみにあれはプリンが無限に出てくる冷蔵庫だから、ですって!? 何そのチート性能冷蔵庫!?」

ぜいぜいと叫び過ぎて喉が痛くなった私は物凄く腑に落ちないものを感じながらもプリンを平らげる。

彼も寡黙にプリンを食べ終えると後には沈黙だけが残った。

向かい合って初めて私は気付く。

彼が自分の言葉を待っている事を。

「こほん。で、色々と聞きたい事があるんだけど。アンタの能力はカードを具現化する能力でいいのかしら?」

「・・・・・・」

「色々とデュエルには制約があるですって? 制約ってどんな?」

「・・・・・・」

彼の言葉を要約して噛み砕く。

色々と彼の性能と制約が分かり始める。

列挙すると彼の性能はとても複雑だった。

戦闘はデュエル形式で行う。

相手及び自分は一ターンを一分以内に行う。

ターン終了を宣言するか一分経つと強制的に相手ターンに移行。

相手も自分もターン中バトルフェイズ以外攻撃を仕掛ける事が出来ない。

お互いにライフは8000。

サーヴァントはデュエル中フィールドに出ているモンスター扱い。

敵サーヴァントはモンスターとして破壊及びバウンス、除外可能。

敵サーヴァントの性能によって敵の能力を数値化して確定。

確定した能力に対してカードによる干渉が可能。

相手の能力は戦闘を行わない限り知る事が出来ない。

ライフをゼロにするか相手サーヴァントを破壊する事で勝敗が確定。

カード及びサーヴァント自身の効果で破壊効果を無効にした場合、ライフが残っている限り死なない。

敵サーヴァントがデュエルに乱入した場合、ルールに取り込む事が出来る。

ライフは自分も敵もデュエル中でしか回復できない。

ライフがゼロになったサーヴァントは外傷やあらゆる能力に関わらず魔力が枯渇して消滅する。

相手及び自分が敗北または【逃亡(サレンダー)】した場合勝利1を得る。

二戦以上同一サーヴァントと戦闘が可能な場合、先に二戦勝ち越すとマッチで相手及び自分のライフは強制的にゼロとなって勝利する。

勝利1で相手及び自分の最もレアリティーの高い【宝具(カード)】を勝利者側が接収する。

「えっと。つまり・・・簡単に私達の敗北条件を言うと、二回続けて同じ相手に逃げるか負けるかするとアンタは消滅、設定されてるアンタのライフがゼロになっても消滅、更に相手の能力で破壊されても負けって事? それに倒されなくても逃げるか負けると相手に切り札を一番上の順から取られると」

彼が頷く。

私は悩む。

「でも、アドバンテージも多いわね。デュエル中にサーヴァントは同じサーヴァント同士でしか戦闘を行えない。それに倒せなくてもデュエルに勝った場合の見返りが大きいし、何よりその設定が相手には分からない。つまり、同じ相手を二回敗走させればどんな状況でもサーヴァントを消滅させられるんだから、考えようによってはアンタ最強のサーヴァントじゃない?」

「・・・・・・」

「その他のルールはウィキを参照って・・・ウィキって何?」

「・・・・・・」

「ま、まぁ、私はカードゲームとか分からないからそこはアンタに任せるけど」

「・・・・・・」

「それがアンタの宝具の名前ってわけ? 【決闘者の作法】(ルール・オブ・デュエル)ねぇ・・・概念魔術・・・いや、固有結界に近いのかしら?」

「・・・・・・」

「言い忘れてたことがあるですって? 何よ」

「・・・・・・」

「あんたのデッキがゼロでドローできなくなっても負けるの?」

「・・・・・・」

「デッキは相手からの宝具接収で補充する以外使いきりなわけ? それって同じカードは使えないって事?」

「・・・・・・」

「デッキの中身は入れ替えられても使ったカードの数だけデッキの上限数は減っていくって事なのね・・・それに強力なカードは基本的にデッキに入れられる枚数にも制限があると。でも、それって枚数が減れば減る程強いカードを引けるって事じゃないの?」

「・・・・・・」

「そう・・・引けるカードを操作するカードでもない限りアンタは好きなカードを持ってこられないんだ。操作するカードも一枚計算だからアンタがデッキ切れで消滅する可能性が高くなると。でも、それだけ強力なカードが引ける確率が高くなるのは間違いないから要検討ってところかしら」

「・・・・・・」

「初期手札が五枚で六枚目を最初にドローするから実質デッキが六枚以上無ければデュエルした瞬間に敗北? えっと、六人を二回負かすとして後十一回で残りのデッキが三十七枚だっけ? あんまり戦いを長引かせると負けるのはこっちなわけね」

「・・・・・・」

「今回は相手が引いたからデッキが節約出来たですって? 本来ならどれぐらい使えば倒せそうだったの?」

「・・・・・・」

「十枚・・・つまりランサーみたいな明らかにパワータイプじゃないサーヴァントにそれくらい使うって事は・・・実質の戦闘が出来る回数は四回くらいが限度って事ね」

状況を整理した私は色々と考える事が多くて困った。

「とにかく大たいの事は分かったわ。アンタが実は凄い英霊だって事も。何でアンタみたいなのが英霊なのか知らないけど、アンタは英霊に打ち勝って見せた。私がアンタを信じる理由にそれは足る」

手を差し出す。

「これからよろしくね。【決闘者】のサーヴァントさん」

彼が手を握る。

それは初めて私と彼がお互いに認めあった瞬間だったのかもしれない。

「って、何かホルダーが光ってるんだけど」

彼が気付いて腰のホルダーからデッキを取り出す。

デッキの中の一枚が光っていた。

それを取り出した彼が私に見せる。

「・・・・・・」

「戦闘用のカードじゃないから使ってもデッキは減らないけど使うかって? そもそも何で光ってるのよ?」

「・・・・・・」

「何かが起こって『千里眼』が発動した? とにかく使ってみてから判断しましょ」

彼がカードを虚空に投げる。

すると壁に映像が現れる。

そこは大きなお屋敷だった。

「これって・・・衛宮君の・・・まさか!?」

私が思わず立ち上がると映像の中でランサーが壁を飛び越えていく。

「あいつ!? まだ諦めてなかったの!? 行くわよ!!」

「・・・・・・」

「どうして助けに行くのかって? そりゃ・・・私の人生の大半の魔力を次ぎ込んだ宝石で助けたんだもの。これでまた殺されたら無駄極まりないじゃない」

「・・・・・・」

「お人よしかもしれないわ。でも、此処で見捨てたら私はきっと後悔する。だから」

「・・・・・・」

「なら、行きましょ。次も負かして一人リタイアよ」

私と彼は走り出す。

その時まだ私は何も知らなかった。

彼が本当はどういう存在か。

彼がどういう望みを持って聖杯戦争に参加したのか。

まだ、その時は何も・・・・・・。

 

To be continued

説明
ランサーを退けた凛は彼から力のレクチャーを受けていた。
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聖杯戦争 カード 英霊 遠坂凛 ランサー Fate 

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