真・恋姫†無双〜だけど涙が出ちゃう男の娘だもん〜[第33話]
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真・恋姫†無双〜だけど涙が出ちゃう男の((娘|こ))だもん〜

 

[第33話]

 

 

「刹那。俺は、もう我慢出来ない。良いだろう?」

 

北郷はそう言って、ボクを自分の両腕に優しく((抱|いだ))きました。

 

「ダメだよ、一刀。ボクたちは男同士じゃないか。こんな事、間違っているよ」

 

ボクは北郷の胸を押して、彼の両腕の((戒|いまし))めから逃れます。

しかし北郷は、またボクを後ろから抱いて離してくれませんでした。

 

「分かっている。でも、この胸の高まりが((抑|おさ))えられないんだ」

「でも……」

「始めて出会った時から君が好きだったんだ、刹那」

「……」

 

北郷は右手でボクの顔を優しく振り向かせました。

そして、ボクと視線を合わせながら話しかけてきます。

 

「刹那は、俺が嫌いなのか?」

「……そんな事は…無いさ。でも、ボクは……」

「嫌いなら嫌いと、そう言ってくれないか? 望みが無いのなら、ハッキリ言ってくれた方が良いから」

「…嫌い…じゃない…よ」

 

北郷から問われたボクは、嫌っている訳では無い事を彼に告げました。

ボクの返答に気を良くした北郷は、満面の笑顔を見せます。

 

「ありがとう、刹那。こんなに嬉しい事は無いよ」

 

そう言って北郷は、ボクを両腕に抱きしめます。

ボクはその腕を取り払う事をせず、されるがままに任せていました。

 

「あ!」

 

北郷がボクを抱きしめたままベッドに寝かし就けてきたので、ボクは思わず叫んでしまいました。

 

「刹那、俺を受け入れてくれ」

 

そう言って北郷は、ボクの首筋に舌を((這|は))わせてきました。

 

「はあん?」

 

ボクは初めて人に身体を触られて、その感触に戸惑って甘い声を上げてしまいました。

そのまま北郷は器用に着物を脱がせていきながら、あらわに成っていくボクの上半身に舌を這わせていきます。

 

「……だっ、ダメだよ、一刀。あふん? ……こんな…こと……」

「大丈夫。優しくするから」

「……で、でも。……はあん? やっぱり……」

「ダメだよ、刹那。もう、逃がさない」

 

ボクは頭上に自分の両腕を組まされて、その両腕を北郷は片手で押えつけていました。

そして、もう片方の腕で彼は器用にボクの着物を脱がしていきます。

ボクは身体の敏感な部分に舌を這わされて、その快感に息を荒くしながら((悶|もだ))えるしかありませんでした。

 

「あ?! そこは!」

 

いつのまにか北郷はボクの((太股|ふともも))に手を這わせて居て、ボクの禁断な果実を触ろうとしていました。

彼は、ボクの顔を上から見下ろしながら優しく話しかけてきます。

 

「ふふっ。さあ、刹那。君の全てを、俺に見せてくれ……」

「かっ、一刀。もう、やめよう?! やっぱりイケないよ、こんな事」

「大丈夫さ。そのうち、そんなこと言えなくなるから」

 

そう言って北郷は、覚悟を決めろとばかりに太股から上の方へと手を這わせてきました。

ボクは言い知れぬ恐怖を感じて、彼の腕を振り払うべく力を込めます。

 

「やっ、やめろぉおおー!」

「ふごぉお?!」

 

ボクは((渾身|こんしん))の右ストレートを北郷の顔面に放ち、そして勢い良く上半身を持ち上げました。

 

「あぶっ、危なかった! もう少しで……って、あれ?」

 

荒くなっている息を整えていると、そこには先ほどまでの((淫靡|いんび))な景色では無く、のどかな風景が見て取れました。

ボク自身は日中の日差しを避ける為か身体を木陰に寝かしつけて居て、少し離れている所では将兵たちが陣営を築いているような風景です。

不思議に思って周りを見渡してみると、ボクの右隣りに居る周泰が驚きの表情を見せていました。

さらにボクの前方に北郷が居て、地面で((痙攣|けいれん))しながら身悶えているのが見て取れます。

何をしているのでしょうかね? 彼は。

不思議な事もあるものです。

 

 

「刹那様、大丈夫ですか?」

 

周泰がボクを気遣うように問い掛けてきました。

 

「え? なにが?」

 

ボクは状況が((掴|つか))めず不思議に思いながら周泰の問いに答えました。

 

「いえ。さきほどから、うなされていらしたので」

「うなされていた?」

「はい。天幕の準備が出来るまで((此処|ここ))で休憩されていたんですけど、いつのまにか寝ていらしたんです。……覚えていらっしゃいませんか?」

「あっ……?」

 

ボクは周泰の説明を受けて、今の自分の置かれて居る状況を思い出してきました。

 

 

 

 

橋頭堡でボクが男色家であると云う風評に打ち((拉|ひし))がれた後、なんとか立ち直って準備完了と共にボクたちは冀州の黄巾党征伐に出発しました。

((?|えん))州から黄河を渡って冀州に上陸したボクたちは、すぐに広宗へは向かわずに賊を追い込むように((迂回|うかい))しながら進軍して行きました。

迂回しながら進軍して行く理由は、賊を広宗に一((纏|まと))めにして行くと云う事のようです。

各個撃破が兵法の常道では無いのか? と云うボクの疑問に諸葛亮は、賊を広宗に追い込んで人数を増やしながら兵糧攻めをして行くと答えてくれました。

逃げる賊たちは物資などを持って逃げる事は出来ません。

だから、着のみ着のままで賊を広宗に追い込む事で、賊の取れる行動を予測して行くそうでした。

一つ目の策は、立て籠もっている賊を兵糧攻めにしての弱体化。

もう一つの策は、兵糧が((乏|とぼ))しくなった賊を城郭から((誘|おび))き出して軍勢同士での決戦でした。

どちらにせよ、賊の人数が増えれば増えるほど兵糧の消費は進んで進退は極まって行きます。

そう云った主導権を握る事で、どう料理するかを自由自在に決めていくといった事を軍師たちは考えたようでした。

 

今現在のボクたちは、今迄行なって来た賊を追い立てる戦闘を終了させて、広宗での決戦に挑む前の最後の休息を取らせているところでした。

位置的な場所でいえば、冀州の真ん中辺りに居るのでしょう。

この場所から西に向かえば、広宗に居る黄巾党主力の征伐に((赴|おもむ))けるからでした。

そして、ボクは陣営の天幕が出来上がるまでの間、休息を取るべく木陰で寝転んで居たのです。

ですが、そのまま寝入ってしまって居たみたいでした。

 

 

 

 

(しかし、何て気蝕の悪い夢だったんでしょうか? 一刀と(ピー)するなんて冗談じゃありませんよ)

 

先ほどの悪夢を思い出して寒気を感じ、ボクは少し震えて仕舞いました。

表面的に立ち直って居るように見えても、それだけホモ疑惑の風評が心に負荷をかけて居たのかも知れません。

でなければ、あんな気持ちの悪い夢など見る筈が無いと思います。

ボクは自分を((叱咤激励|しったげきれい))して、思いを((新|あら))たにしました。

 

 

「何するんだよ、刹那! 痛いじゃないか!」

 

ボクが物思いに((耽|ふけ))っていると、いつの間にか北郷が復活して居て、自身の顔を片手で押えながら文句を言ってきました。

 

「あっ、起きたの? 一刀。変な格好で寝ると身体に悪いから、止めた方が良いと思うよ?」

 

ボクは北郷の身体を心配して彼に忠告しました。

 

「ちがう! 俺は寝て居たんじゃない! お前が殴ったから、伸びて居ただけだ!」

 

そう言って北郷は、自分の((頬|ほお))が赤く成っている場所を指さしました。

 

「あー、……そうか。うん。悪かったよ。ちょっと越えてはイケない一線を越えそうだったんで、気が動転していたんだ」

 

ボクは、悪夢と現実がゴチャマゼに成っている事に気が付いて北郷に謝りました。

北郷はボクの物言いを((訝|いぶか))しんで、怒りを鎮めていきます。

 

「何だよ、それ。((三途|さんず))の川でも渡りそうだったのか?」

 

北郷は自身の疑問をボクに問いかけてきました。

 

「三途の川って……。それ。たしか、死んだ人が渡る川じゃなかった?」

「そうだ」

「……一刀はボクに死んで欲しいのかい? まあ。越えてはイケないと云う意味では、同じかも知れないけどね」

「ふ〜ん、そっか」

 

あんな気持ちの悪い夢を北郷に話す訳にもいきません。

だから言葉を濁すしか無いボクの返答に、北郷は気の無い返事を返してきました。

 

「それより、何か用事でもあったのかい?」

 

ボクは話題を変えるべく、北郷に問いかけました。

 

「ああ、そうだ。刹那の天幕が出来上がったんで、呼びに来たんだった」

「そうか。ありがとう、一刀。知らせてくれて」

「刹那が呼んでも起き無いから身体を((揺|ゆ))すっただけなのに、なんで殴られるんだよ」

「あはははっ……。だから悪かったって。許してくれよ、な?」

 

ボクの問いかけに用事を思い出した北郷は、それを伝えてくれました。

しかし続いて彼は、未だ怒りが納まり切らないのか文句を言っています

そんな北郷に、ボクは許しを乞うしかありませんでした。

どうやら先ほどの悪夢での感触は、彼がボクを起こしている時に感じたものだったのかも知れません。

ボクは会話の内容から、そのように判断しました。

 

何故、北郷がボクに知らせて来たかと云うと、それは彼がボクの従者になったからでした。

今回の黄巾党征伐の準備をしている時に北郷から相談されたのです。

世話になるのだから自分にも何か仕事を与えて欲しいと。

お客さんなのだから気にしなくても良いと言ったのですが、北郷は何もしないのは心苦しいと言って聞きません。

だから、北郷の未来知識の流失防止や身の安全を考慮した結果、彼を親衛隊に入隊させてボクの従者としたのです。

その時に北郷には真名が無くて『一刀』という名がそれに相当すると聞いたので、ボクは自身の真名を渡して名前で呼び合うように成りました。

その後、他の将軍たちからも真名を受け取ったみたいです。

 

しかし、北郷の本当の立場は従者なのですが、ホモ疑惑の風評が影響してか周りが誤解をして、彼を男妾としてボクの((傍|そば))に置いていると思われて仕舞いました。

おかげで、北郷は親衛隊副長のような感じで扱われるので華陽軍内での身の安全は保障されます。

ですが、いつも周りから生温い目や黄色い歓声が注がれるので、ボクの心労は増していって減る事がありませんでした。

その心労が((祟|たた))ったせいで、さきほどのような悪夢を見たのかも知れません。

まあ。人の噂も七十五日と云いますから、それまでは我慢するしかないと思っています。

ホント、((儘|まま))ならないものですよね。

 

 

「刹那様。少しお側を離れますが、宜しいでしょうか?」

 

準備が整ったボク用の天幕へ向かおうとした時、周泰がボクに発言してきました。

 

「うん? 別に良いけど、どうかしたのかい?」

 

周泰が((態々|わざわざ))断わりの発言をする事に疑問を持って、ボクは彼女に問いかけました。

 

「いえ。向こうの方から偵察させていた者が戻って来ているので、確認しに行って来ます」

 

そう言って周泰は、地平線の方を指差しました。

ボクは周泰の指差した方学を、眉を((顰|ひそ))めて目を細めながら見ます。

そうすると、米粒ぐらいの人影が((辛|かろ))うじて見て取れました。

相変わらず、周泰の目の良さは健在のようですね。

 

「ああ、構わないよ。ボクたちは天幕に行っているから、報告があったら知らせて?」

 

ボクの言葉を聞いた周泰は、一礼してから偵察隊員の方に向かって行きました。

ふと隣りを見ると、北郷が先ほどのボクと同じように目を細めて地平線の方を見ています。

 

「見えるのかい?」

「う〜ん。……微妙」

 

ボクは北郷の物言いが可笑しくて、微笑しながら話しかけていきます。

 

「明命は、((華陽軍|ウチ))で一番の目を持っているからね。普通は、あそこまで離れていたら識別出来ないさ」

「へぇー。明命って凄いんだな」

「そうだね。ボク自慢の親衛隊隊長さ」

 

ボクは自分の配下を褒められた事が嬉しくて、ちょっと自慢してしまいました。

 

それから北郷を((伴|ともな))って、ボク用の天幕へと行きます。

彼を伴う理由は、冀州の賊征伐を行なっている間中、同じ天幕で一緒に寝泊まりしているからでした。

昼間の行軍中には北郷と未来の事などを話す事は出来ません。

だから必然的に夜間に話す事に成り、身辺警護も兼ねて取った処置でした。

色々と話し合って来たおかげで、北郷は((大分|だいぶ))落ち着きを取り戻してきます。

ボクにしても、おぼろげだった記憶が刺激されたりして楽しい一時でした。

まあ。おかげで余計にボクたちのホモ疑惑が真実味を増して手が付けられない風評に成って来ているから、差し引くとマイナス要因の方が勝ってしまうんですけどね。(泣)

 

 

「刹那様!」

 

ボクが天幕内で北郷と話しながら((寛|くつろ))いでいると、周泰が少し慌てたように入室して来ました。

 

「どうしたの、明命。何かあった?」

 

ボクは周泰に要件を問いました。

 

「はい。この場より北西の方学にて、官軍らしき軍勢が攻撃を受けているとの報告です」

「軍勢の規模は?」

「おおよそですが、一万に満たない軍勢同士での戦闘だそうです」

「ふむ……」

 

ボクは周泰の報告を受けて、どの軍団を動かすかを思案していきました。

今現在の保有軍団の仕分けは、ボクの親衛隊、厳顔の第1軍、魏延の第3軍、趙雲の第4軍、李典の第5軍です。

第1軍と第3軍は定数を満たしているのですが、第4軍と第5軍は定数の半分の大体5000〜7000人位で構成された軍団でした。

本来であれば、正規の軍勢の人数を円滑に動かす為の教育を学校などで学ばせるのですが、李典と趙雲たちはその教育を受けていません。

だから、彼女たちの統率力が未知数で、1万人以上の軍勢を動かせるか分からなかったから半分にしたのです。

趙雲の軍師に郭嘉をつけ、李典の軍師に程cをつけてあるので、千人単位の軍勢の統率には支障が無い事を確認出来てはいました。

今迄の冀州での賊征伐を主に李典と趙雲に行なって貰う事で、実力を付けさせていったからです。

李典はともかく、趙雲・郭嘉・程cの3人は客将として働いていた経験があるので ((殆|ほと))んど問題はありませんでした。

後の確認は軍団の連携ぐらいかな? とボクは思い、それを確認すべく周泰に問いかけます。

 

「明命。第4軍と第5軍は、すぐ動かせるかな?」

「はい。この場に一番始めに陣営を築いたのが両軍なので、問題無いと思われます」

「そう…。じゃあ明命、星と真桜に伝えて貰えるかな? 官軍の救援が第一義、第二に軍勢の連携を確認する事。賊への追撃は不要だと言ってね」

 

周泰はボクの命令を受諾後、天幕から出て行きました。

天幕内にボクと北郷が取り残されます。

 

「大丈夫なのか?」

 

周泰が天幕を出って行った事を確認した後、憂い顔の北郷がボクに問いかけてきました。

 

「何がだい?」

「いや。救援を真桜と星に任せてだよ。下手をしたら、大変な事に成るんじゃないか? まだ ((馴|な))れていないんだろう?」

「ふふふっ。一刀は心配性だね? 大丈夫だよ。稟や風もついて居るし、合わせた総数は((此方|こちら))が勝っているのだから」

「そう……か?」

「そうさ」

 

心配している北郷にボクは安心するように告げました。

それでも彼は、半信半疑と云った態度を見せます。

絶対と云う事が無い以上、ボクたちには人事を尽くす事と信じる事しか出来る事がありません。

だからボクは、無事に皆が戻って来るように願うしかありませんでした。

 

(しかし今時分、ここら辺りに居る軍勢って誰なんでしょうかね?)

 

ボクはそう思い、周泰から軍勢の主の事を聞かなかった事を思い出しました。

 

(まあ、すぐに分かる事です。気にしても仕方ありませんね)

 

官軍を率いているのが誰であれ、救出しない訳にもいきませんでした。

だからボクは、気にするだけ無駄だと思って、そのまま放念していきます。

たいした事には成らないと、そう高を((括|くく))りながら。

 

説明
無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。
*この作品は、BaseSon 真・恋姫†無双の二次創作です。
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コメント
GOLDさん、コメントありがとう。 アッー!の展開を期待させての夢オチで申し訳ないです。でも、属性や耐性の無い私には、これで精一杯でした。(愛感謝)
最後の「高を括り」は明らかにフラグですね。あと、アッー!を序盤の文章で期待してしまった私ですw(GOLD)
NSZ THRさん、shirouさん、コメントありがとう。 誰が出て来るのか?! それは神の味噌汁です!→かみのみそしる→神のみぞ知る。古い?(愛感謝)
さてさて鬼が出るか蛇が出るか。次回も期待しております。(shirou)
もしかして董卓か?(NSZ THR)
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