ある外史のメイジ10 ― 釜底抽薪 ―
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俺は現在、漢中の手前、漢水の畔に張魯軍と曹操軍が展開している戦場を上空から『遠見』(ヴィジョン)を使って俯瞰している。

「右翼が押されていますね、少し頭を冷やしてもらいましょうか」

俺は敵左翼めがけて威力を殺し範囲を拡大した『氷の嵐』(アイス・ストーム)で風花をぶつける。

これ自体はダメージはないが、一度、夏の雪に遭遇している曹操軍の士気と勢いを削ぐには充分だ。精神力消費も少ない。

「おっと騎兵が戦場の外周を迂回してますね。『束縛』(ホールド)」

味方の側面を突こうと繞回していた敵部隊の足を掴み動きを止める。

味方の弓兵隊が足の止まった部隊を射竦めると敵騎兵は諦めて後退していく。

「敵中央が堅いですね。足元を乱してあげましょう」

15cm程の小型クレイゴーレムを大量に作って敵戦列に紛れ込ませる。

ゴーレムが持った小さな槍で敵兵の足を突くと、倒れはしないが、覿面に動きが悪くなる。

そこに味方が押し込んで敵を後退させる。

「おっと、そろそろ高度が落ちてきましたね、イル・フル・デラ・ソル・ウィンデ『フライ』(飛行)」

系統魔法の欠点で、基本的に呪文を同時に発動が出来ないので他の呪文を使う時は自由落下状態である。

「肉体強化系は常時発動なのに飛行系は同時発動不可なのは本当に不便ですね。

 気球でも作りますか……いや曼成殿(李典)が飛行船を作りそうで怖いからやめておきましょう」

3世紀に空爆の応酬なんて御免蒙る。

「そういえば火炎投石機はないようですね。遠くまで飛ぶ分、重くてとり回しがよくないという事ですか」

戦場を探っていると、下から狙撃されたので呪文を唱えて防ぐ。

「『水壁』(ウォーター・シールド)。何でこんなところに矢が飛んでくるんですか」

狙撃された方を見ると、えらく機械的でごつい弓を構えた夏候淵の姿がある。

しかも、この距離で目が合った。こちらは視力強化をしての事というのに。

「連射は出来ないようですが、思った以上に危険ですね。戦況と高度以外に狙撃まで注意を割いてられません」

現在、戦況は俺の嫌がらせによって張魯軍がやや有利。

「今のうちに、もう一押ししますか。一度下がりますが置き土産です『濃霧』(ミスト)」

逃走中に川岸でした様に、夏侯淵と敵本陣の視界を一時的に奪う事で狙撃の防止と指揮の混乱をして、小細工の為の時間を稼ぐ。

そして後方に戻った俺は、用意しておいた油槽の上に乗り『浮遊』(レビテーション) で浮かべて曹操軍の輜重隊の上空に移動する。

「ただの灯油ですが上手く燃えますかね。こちらは大量のナフサなんて用意できませんから」

火をつけた油槽は曹操軍の兵糧の上に落下、どうにか燃え広がる。

曹操軍はこれを潮時と撤退を開始する。

「整然と退いていきますね。全然勝ち馬に乗れてないじゃありませんか」

張魯軍は少しでも被害を与えようと追撃するが、逆撃をうけて慌てて後退する有様だ。

「まあ、後の降伏の交渉は張師君次第です。私は怪我人の治療にかかりきりですから、今度こそ関わりませんからね」

俺は決意を胸に本陣へと帰還していった。

 

陳簡は一介の医者の助手に甘んじたいようだった。

 

 

 

   (丿ー ̄)o∫ ……………… →       ((( \⊂(゚Д゚;)

 

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