ハイスクールD×B〜サイヤと悪魔の体現者〜 二十一話
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カリフは十年以来に我が家へと帰ってきた。

 

しかし、カリフの朝は他の誰よりも早い。

 

「5006、5007……」

 

朝の七時から既に朝日を浴び、庭で逆立ちの状態で腕立て、いや、親指だけで立っている。

 

相当前に起きてやっていたのか体も汗でぐっしょりと濡れていた。

 

シャツ越しでも鍛え抜かれた肢体がくっきりと浮かび上がっている。

 

そして、黙々とこなしていくそんなカリフの前に現れたのは……

 

「あらあら、朝から張りきってますわね? うふふ……」

「……朱乃か」

 

垂れる汗でできた水溜りを見て朱乃は少し目を見開かせた後にまたいつものニコニコ顔で優雅に近付いてきた。

 

「昔からこういうことを?」

「そうだな、大体三歳くらいから始めた」

「あらあら、その頃から努力してらしたんですのね?」

「あぁ、努力は決して嘘をつかないからな」

 

筋トレを終えて腕の反動だけで宙返り、そして足を地面に付けて着地して一息吐いていると、朱乃が水筒を差し出してきた。

 

「はい、水分はこまめに取らないといけませんわ」

 

にこやかに渡してくる水筒にカリフはあまり深く考えずに受け取った。

 

「……助かった」

「いえ、これくらいは当然ですわ」

 

拭ってきらめく汗を振りまきながらカリフは水筒をある程度飲んで朱乃に返す。

 

「あらあら? それだけでいいんですの?」

「元々はお前のものだ。全て飲むわけにはいかんだろう」

「そんなこと気にしなくてもいいですのに……」

「だめだ、これはオレの気持ちの問題だ」

「そうですか……」

 

そう言って朱乃は艶っぽく顔を赤くさせて水筒の口の部分を舌で舐め取る。

 

「うふふ……これでおそろいですわね……」

 

唾液の線が朱乃の舌と水筒の口の部分を繋ぐ。

 

大抵の男なら股間を抑えて悶絶するようなシチュエーション。

 

そんな羨ましい状況を味わっている本人はといえば……

 

「なんだ? そんなに飲みたかったのか?」

 

なにも反応を見せなかった。

 

「あらあら……私なりに考えましたのに……何も反応が無いと傷つきますわ」

「む? 何かあったのか?……まあいいか、腹減ったし」

 

カリフはさっきの行動の真意にも気付かないまま家に入ろうとすると、そこから母親が現れた。

 

「あら、朱乃ちゃんおはよう」

「おはようございます」

 

双方共に挨拶を交わしているとカリフはふと思った。

 

(この二人……喋り方似てるな……)

 

多分、朱乃の喋り方は母の影響なのだと推測できた。

 

 

 

 

そのままカリフとお呼ばれされた朱乃がリビングに行くと、そこには既に制服に着替えていた小猫と母親が朝食用の皿をテーブルに出し、父親は……

 

「あら? どうなされたのですか?」

「あ、朱乃ちゃんおはよう」

「おはようございます……えっと、その手は一体……」

 

朱乃が父親の痛々しく包帯に巻かれた手を見て心配そうに言うと、父親は影を落として自嘲する。

 

「すげぇだろ……これ、息子の頭を殴っただけでこうなっちまったんだぜ?……大袈裟に見えるけど、これ……罅入ったんだぜ?」

「どれどれ」

「あぁ! 今は握らないで!! 変な音が手の中から……!!」

 

カリフが父の手に握手してわざと力を入れると、父親は情けない声を出してペキペキと変な音を出しながら悶えた。

 

「カリフったら、久しぶりだからってはしゃいじゃって……」

「おばさま……あれは……」

 

小猫がいつの間にか合気道で父に止めをさすカリフを見てどう言うべきかと悩んでいる。

 

すると、横から朱乃がニコニコフェイスで小猫に近付いてくる。

 

「おはよう小猫ちゃん」

「あ、おはようございます。朱乃さん」

 

お辞儀し合うと、すぐに朱乃が変わらない笑顔で小猫に聞いてきた。

 

「あのね、小猫ちゃん。聞きたいんですが……」

「?」

「昨日……一緒に寝たの?」

「!!」

 

その質問に小猫は顔を真っ赤にさせて煙を頭から出す。

 

そんな初々しい姿に朱乃は微笑ましくしながら小猫にしか聞こえないように耳打ちする。

 

「時々来てたから知ってるけど、あの部屋にはベッドが一つしかないから……そう思ってたんだけど……」

「そんなことしてません……」

「そうですか? てっきり久しぶりの逞しくなった幼馴染に燃え上がったのかと……」

 

だが、朱乃の言葉とは裏腹に小猫はいつもの無表情に戻って淡白に答えた。

 

「別に……ただの幼馴染です」

 

意外とドライな返答に朱乃も少し寂しげな表情に変わる。

 

「そう……ですか……」

 

自分と同じ心境……どう接すればいいのか分からなくなっていることに朱乃は小猫と共感し、少し安心した。

 

「ほーれほれ〜次は握力五十キロ〜」

「ギブギブ!! もうお父さんのライフはゼロだから!!」

 

そんな彼女たちの心情も知らずにカリフは父親にトドメを刺していた。

 

 

 

遊ぶのを止めてカリフは朱乃と隣り合わせに人一倍多い飯を喰らいながら今日の方針を話す。

 

「学園に来る……ですか?」

「これからオレが通う学園だからな。下見に行こうと思ってな」

「……こんな急に見学なんて大丈夫ですか? 朱乃さん」

「ん〜……そこはリアスを通じて生徒会に打診しなくてはなんとも……」

 

小猫も朱乃もこの急な申し出に少し困ってしまう。

 

そんな二人にカリフはボール並の茶碗を平らげて自信満々に言った。

 

「心配するな。気付かれないようにする」

「と言われましても……でしたら今日にでも生徒会から許可をもらってからでもよろしいですの?」

「あぁ、許可されたなら“現れる”から」

「「?」」

 

カリフの言ったことに疑問を抱くが、朱乃はカリフの頬に付いている食べカスに目がいった。

 

「うふふ……」

 

カリフの変わらない子供っぽさに朱乃は微笑ましく思いながら食べカスを手で掴んでそれを……

 

口の中へ運んだ。

 

「カリフくん、食べカス付いてましたわよ」

「ん? そか」

 

あまり気にしない様子で食事を続けるカリフを朱乃は頬に赤みがかった顔で微笑み、小猫に関してはこっちを睨んでくる。

 

「朴念仁……」

「なんか言ったか? 言いたいことははっきり言え」

「……なんでもない」

 

そんなやり取りが朝に行われていた。

 

「あらあら、青春ね〜」

「我が子が羨ましい……」

 

親はそんな若者たちを微笑ましく見守っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、朱乃たちは朝食を食べた後に家からカリフに見守られて学園へと向かって行った。

 

その後に旧校舎で落ち合うことを約束して……

 

 

 

 

 

 

俺こと兵藤一誠は色々な出来事に頭がパンクしようとなっています。

 

「そんな……なぜリアスお姉さまが兵藤なんかと……」

「離れてください! 汚されてしまいます!」

 

え〜っと、この声は今まさに私の腕に抱きついてきている我が学園の二大お姉さまの一人! リアス・グレモリーさまにでして……!

 

こんな前置きはいりません……正直、最っ高−−−−−−−−−−−−−−−−!!

 

だって今まさに俺の腕に胸が当たってるわけでありまして……!!

 

「じゃあねイッセー、後で使いを出すから教室で待っててね♪」

「あ、は、はい!!」

 

そう言いながら小悪魔的な微笑みを投げかけて行ってしまった。

 

やべぇ……今日が人生絶頂の日じゃないのか? 朝だって先輩の生乳見れたし……

 

それに、今の言葉だって“また会おうね”って意味だよな!?

 

「「くたばれえええぇぇぇぇぇぇ!!」」

 

有頂天になっていた俺の背後から悪友二人の涙の叫びと飛び蹴りが俺の頭にぶち込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一通りの授業が終わった後、俺に待ち構えていたのは……

 

「なんでこいつが……」

 

今、俺をリアス先輩の使いとして先導するイケメン野郎の木場がいつもの爽やかなフェイスで笑いかけてきやがった。

 

「不安にならなくてもいいよ。僕がエスコートするから」

 

野郎にエスコートされても嬉しかねええんだよおおおおおぉぉぉぉぉ!! ていうかその顔イケメン過ぎてムカつく!!

 

やっぱりイケメンはこの世にいちゃいけない存在なんだ!!

 

周りからも兵藤×木場とか木場×兵藤とか訳の分からねえことまで呟かれるしよおおぉぉぉ!!

 

「ねえ、兵藤くん」

「んだよ」

 

今の俺は敵意を相当に込めた返事だろう、自分でも分かる。

 

そんな俺に木場はイケメンフェイスを崩さずに続けた。

 

「着いたよ」

 

木場に言われて初めて気付いた。

 

そこには『オカルト研究部』と書かれていた部屋があった。

 

「多分、皆揃ってると思うよ?」

 

そういってドアを開けるとそこには異様な光景が広がっていた。

 

「こ、これは……」

 

部屋中には怪しげなグッズやら仮面やら禍々しい刃物とか……ここは逃げるべきなのだろうか……

 

「やあ、早いね」

 

木場が部屋の中の誰かに手を振って挨拶する。

 

誰だろうと思ってみると、そこのソファーには我が学園のマスコットキャラの塔城小猫ちゃんが羊羹を食べていた!!

 

マジか!? この部活に小猫ちゃんが……なんてレベルの高い部活なんだ!!

 

それから次々と姫島朱乃先輩と挨拶したりシャワー上がりのリアス先輩とも挨拶したりできた!!

 

やったあああああああああぁぁぁぁぁ!! なんていい部活なんだああぁぁぁぁ!! もし、ここに入ったら俺はもうおっぱい妄想しなくても生きていけるぞおぉぉ!! ありがとうございます!!

 

「……いやらしい顔」

 

小猫ちゃんがこっちを見てそう呟いた。

 

そうか、嫌らしい顔だったか、ごめんね!!

 

そう心の中で謝っていると、リアス先輩が皆を集めて切り出した。

 

「これで悪魔全員は揃ったわね? 後は……」

「もうすぐ来ます」

 

小猫ちゃんはそういうとまた羊羹を食べ始めた。

 

やっぱり噂通り無口な子なんだ。

 

そう思っていた時だった。

 

「最初から来ている。話を続けろ」

「「「「「!!」」」」」

 

突然の見知らぬ声に全員が驚愕した直後の時だった。

 

「今のは……え!? きゃあ!!」

 

辺りを見回していたリアス先輩のソファーの下から突然に朱乃さんより首一つ小さい少年が気だるそうに出てきた。

 

どっから出てきてんだ!?

 

ソファーごと持ち上げられたリアス先輩はそのまま一緒に転ばされてしまっていた。

 

それによって先輩のパンツも見れて眼福、それに先輩の悲鳴可愛かったです、ごちそうさまです!!

 

脳内メモリーに今の光景を保存していると、その少年は不意に話を続けた。

 

「そんじゃ、始めるか」

 

 

 

 

少年によって転ばされた先輩はよろけながら立ち上がってカリフを睨んだ。

 

「あ、あなたは昨日の子……でいいかしら?」

「いかにも、オレこそがカリフだ」

 

反省してない様子のカリフと名乗る少年に先輩も額に青筋を浮かべると、そこへ朱乃先輩が落ち着いた様子で先輩を治める。

 

「部長、カリフくんに悪気はないんです。ただちょっと悪戯好きでして……」

「……朱乃がそう言うなら」

 

朱乃先輩の説得に先輩はなんとか怒りを鎮めてた。流石はお姉さまです!! 感服しました!!

 

お姉さまの手腕に脱帽していると、そのカリフと言う少年は顎をさすりながら俺の顔を覗いてきた。

 

「な、なんだよ」

「いや、綺麗に治療されてと思ってな」

「治療?……ってことは……」

 

そのワードでピンと来た。

 

そうだ、確か俺は変な男に何かで腹を……

 

「今イッセーが考えていることは正解よ……昨日のことは夢じゃないわ」

 

リアス先輩が俺の考えていることを当てると、次に朱乃先輩が続ける。

 

「お腹に光の槍を刺されて瀕しに瀕したイッセーくんを救ったのが……カリフくんなの」

「え? お前が……俺を?」

 

そんな意外な内容に俺はカリフという少年に聞くと、本人は鼻を鳴らして興味なさそうに答えた。

 

「あれはたまたまだ。お前の運がよかったとしかいえんから礼など言われる筋合いはない」

 

そう言って朱乃先輩の隣に座る。

 

そして、そこから話が進んだ……

 

 

 

 

 

正直、急に信じられるような内容では無かったことは確かだった。

 

まず、リアス先輩たちが悪魔であってこの部活はそれを隠すカモフラージュのための部室、そして俺は一度死にかけたこと……そして、天野夕麻ちゃんが俺を殺した堕天使だということ……

 

「どう? 信じてもらえた?」

「……正直、受け入れがたい部分もあります……ですが、リアス先輩が俺を助けて下さったことは分かりました。ありがとうございます!」

 

思わず大声張り上げて頭を下げると、先輩はにこやかに笑ってくれた。

 

「いいのよ、こうしてあなたを私の下僕にできたのだから……ね?」

 

やべー、リアス先輩いい人、いや、いい悪魔だよ!!

 

俺、この人の下僕になっちまったんだから……なんだか得っつーか、なんつーか……ぐふふ……

 

「さて、イッセーへの話はこれまで……後もう一つ本題が残ってるわ」

 

途端にリアス先輩の表情が引き締まり、朱乃先輩の隣の少年に目を向けると……

 

「zzz〜……」

「部長……寝てしまいましたわ……」

 

部室の隅で寝てた……

 

な、なんなんだあいつは……

 

「早く起こして下さい……」

 

なんか小猫ちゃんが半目で呆れている……

 

「そうね……というよりよくもまあ、周りが悪魔だというのに寝れるわね……」

「あはは……相当に神経が図太いですね」

 

リアス先輩も木場も苦笑していると、朱乃先輩に起こされた少年は目を擦って欠伸しながら起きてきた。

 

「……なに? もう終わった?」

「終わったって……まあいいわ。次はあなたに聞きたいことがあったのよ」

 

気を取り直して少年に聞く。

 

「あなたがイッセーを堕天使から助けた結果は変わりない。まずは礼を言うわ」

「あ、ありがとな」

 

確かに聞けばこの少年がいなければ俺は今頃いなかっただろう……やっぱそれについては礼を言わないとな。

 

とりあえず、礼を言うと少年はさほど興味無さそうに呟いた。

 

「ふん、昨日はマジで偶々だったから故意はない。よって、それの礼もいらねえ」

「そう言ってもらえると助かるけど……あなたは今後からこの戦いに関わらない方がいいわ」

「……あ?」

 

リアス先輩がそう言うと、少年の顔つきが劇的に変わった。

 

それはさっきまでの寝顔からは比べ物にならないほどの変わりようだった。

 

平静を保ちながら明らかに怒ってるという一番怖い怒り方だった。

 

周りもそれに委縮してしまい、リアス先輩も怯んでしまうがすぐに持ち直す。

 

「こ、今回は運が良かったけど、次があるとは思えないわ……」

「いーや、次で終わらせてやるよ……奴はどの道ぶち殺し確定だからなぁ……」

 

そう言った瞬間、テーブルに突如として亀裂が奔った。

 

ちょっ! こんな現象初めて見た!! つーか今度は怪しい笑みを浮かべてるからマジ怖いです!!

 

とりあえず、リアス先輩は溜息を吐いて打診した。

 

「じゃあこうしましょう……私が危ういと思ったらあなたの意見に関係なく追い出すわ」

「小猫と朱乃は?」

「二人は私の眷族だから一緒に戦って……」

「なら、オレは必ずその堕天使を殺す。だれが止めようともだ……」

 

ん? なぜここで朱乃先輩と小猫ちゃんの名前が?

 

そう思っていると、当の二人は意外そうに眼を見開いていた。

 

「この二人には約束がある……それまではこの二人を死なせるわけにもいかんし、なにより両親を世話してくれた恩もある……堕天使だろうが天使だろうが神だろうが軍だろうが仇成すようならオレが直々に裁く。これだけは譲るわけにはいかねえな」

 

当然のように言った言葉に朱乃先輩は『あらあら……うふふ』と顔を紅くして満更でも無さそうに笑って、小猫ちゃんに至っては同じく顔を紅くさせて俯いていた……明らかに照れてますね……

 

「そんな恥ずかしいことよく言えるね……」

 

小猫ちゃんはそういう意味で顔を赤くさせているのか……まあ、聞き様によっては告白だしね、これ。

 

ただ、リアス先輩はそれに難色を示していた。

 

「あなたの目的は……」

「それ以外に理由などない、必要ない」

「……」

「あぁ、心配せずとも必要以上には介入はしない。もっとも、気分で動くこともあるからな」

 

そうは言うが、さっきとは一変させてソファーにもたれかかって言う。

 

その一応の打診にリアス先輩も一手先を言われたことで顔を顰めた。

 

「……分かったわ。それならいいけど……」

 

いいんだ!? でもまあ、俺を助けてくれたし、今の所は信用してもいいかな。

 

とりあえずはそんな感じで今日の話は終わった……

 

それにしても今後はリアス先輩を部長と呼ぶこと、朱乃さんと呼んでも問題はなくなった。

 

後は、今後は部長の下僕として悪魔家業を頑張っていこうと思う!!

 

なんでも、強くなればハーレムも夢じゃないっていうからさ!!

 

それなら迷う必要はねえ!! 俺は俺の道を行くだけだ!!

 

「ハーレム王に俺はなる!!」

 

決意をそのままに高らかに叫んでやった。

 

俺の人生はここから始まるぜ!!

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コメント
ムリだわ(´д`|||)(渡部一刀)
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