恋姫外史終章・いつまでも一刀第10話 |
婚礼まであと二日
「目の届きにくい場所を中心に探して見ましたが、特に異常は見当たりませんでした」
「そうか。って事は前もって罠を仕掛けてる訳じゃなさそうだな・・・・・・」
昼前、一刀は明命を連れて、街を歩いていた。
麗羽はと言うと、華琳との邂逅の後すっかりへそを曲げてしまったのだが、一刀が一晩頑張ったおかげで、現在は気持ちよさそうに寝ている。
それゆえに、一刀は少々やつれぎみである。
「大丈夫ですか?コーチ?」
「・・・・・・あんまり大丈夫じゃないな。このままじゃいかん。どこかで精のつくものでも食って、二日後に備えないと・・・・・・」
そう言いながら、一刀は通りにある店を見て回っていた。
その途中、
「もうちょっとまけてよおじさん。もう少しまけてくれたら買うから・・・・・・ね?」
「はあ・・・・・・仕方ねえな。いいぜ姉ちゃん。半額で売ってやるよ。持ってけ泥棒!!」
「おじさんありがと!・・・うふふ。いい買い物しちゃったわ」
酒屋からほくほく顔で出てくる女性と鉢合わせした。
そう、彼女は・・・・・・
「しぇ、雪蓮様!?」
「・・・・・・明命?貴方、何でこんな所にいるのよ。袁紹の所でこきつかわれてたんじゃないの?」
「え、ええと・・・・・・」
言いよどむ明命。
そこに一刀が助け舟を出した。
「今もこきつかわれてるよ。現在は護衛の一人として使われてる所だ」
「ふうん・・・・・・ていうか、貴方はだ・・・・・・」
雪蓮は誰かと聞こうとしたが、途中で言葉を切り、一刀を上から下へ、じっくり眺めた。
「・・・・・・何だよ。そうやって観察されるのは、あんまりいい気分じゃないぞ?」
「そうね、ごめんなさい」
一刀の言葉に、雪蓮は眺めるのを止めて謝った。
「貴方からなんだか懐かしい感じがして、つい・・・・・・ね。それで、名前は何て言うの?」
「北郷一刀。一刀と呼んでくれ」
「一刀ね。私は孫策。袁術の下で客将やってるわ」
雪蓮と一刀は互いに自己紹介をする。
「それで、その一刀は何で明命と一緒にいるのかしら?袁紹の関係者?」
「ああ、袁紹の補佐・・・・・・ってところか」
「ふうん・・・・・・」
それを聞いて、雪蓮の目が少し細まる。
「ねえ一刀」
「何だ?」
「袁紹はいつになったら明命を返してくれるのかしら?明命はうちの重要な将の一人なんだから、いつまでもそっちにいられたら困るんだけど・・・・・・」
「あと少しだと思う。確実な期日までは分からないけどな・・・・・・」
「そう」
一刀の言葉に雪蓮はそれだけ言うと、一刀たちに背を向けた。
「もう戻らないと。冥琳に黙って出てきちゃったしね・・・・・・明命」
「は、はい!」
「早く帰ってきなさいよ。みんな待ってるからね」
「は、はい・・・・・・」
背を向けたまま手を振って去って行く雪蓮。
「・・・・・・」
明命は無言で、その後姿を見つめていたのだった・・・・・・
婚礼まであと一日
一刀は一人で大通りを歩いていた・・・・・・のだが
「かっずとさ〜〜ん!!」
その声と共に、いきなり誰かがドーン!と一刀の背中にぶつかってきた。
背中に柔らかな感触が伝わる。
「うお!?」
一刀は驚き、背中越しにぶつかってきた人物を見る。
「もう!遊びに来てって言ったのに、ちっとも来てくれないんですから・・・・・・」
その人物とは、桃香であった。
そのまま一刀をホールドし、背中に大きな胸を押し付けてくる。
「色々忙しかったんだよ・・・・・っていうか、一人なのか?」
「いえ、愛紗ちゃんと鈴々ちゃんも一緒だったんですけど、鈴々ちゃんがはぐれちゃって、愛紗ちゃんと手分けして探してた所だったんです・・・・・・」
一刀をホールドから解放し、てへへと舌を出す桃香。
「ところで一刀さん。月ちゃんの事ですけど・・・・・・」
「その事なら心配すんな。既に奪還作戦は立ててある。後は明日になるのを待つだけだ・・・・・・」
「本当ですか?・・・・・・くれぐれも月ちゃんの事、お願いしますね。私に出来る事があったら・・・・・・」
「大丈夫だから任せとけ・・・・・・ところで、鈴々の事はいいのか?」
「あ!そうでした・・・・・・あの、一刀さんも一緒に探してくれません?」
「・・・・・・いいけど」
「やった!それじゃあ行きましょう」
そう言って、桃香は一刀の腕に自分の腕を絡めた。
「おい・・・・・・人探すのに腕組む必要ないんじゃないのか?」
「まあまあ、細かい事は気にしないで行きましょう」
ご機嫌な様子で一刀の腕を引く桃香。
やれやれといった感じで、一刀は桃香と歩き出す。
ちなみに同じころ、愛紗は屋台で特大ラーメンを食べていた鈴々を見つけ、ラーメンを平らげた鈴々と共に、桃香と合流すべく街を歩いていた。
その後、ほとんどデートの様相を呈していた一刀たちに、鉢合わせした愛紗のカミナリが落ちる事になるのである・・・・・・
一刀たちが愛紗から説教を受けているころ・・・・・・
「断じて断る!」
宮廷内の一室で、あるいざこざが起こっていた。
明日の婚礼に使う作戦について説明する干吉に対し、左慈が異議を唱えたのだ。
「しかし、これが考えうる限り一番有効な作戦なのですよ?左慈」
「黙れ!何故俺がそんな事をしなければならん!百歩譲ってその作戦が有効だと認めたとしても、俺がその役をやる必要性がどこにある!!」
「おや?ならば北郷一刀が貴方以外の手にかかって、それで貴方はすっきりするのですか?片目まで奪われているのに・・・・・・」
「ぐむ・・・・・・」
干吉の言葉に、左慈は口を噤む。
確かに、出来る事ならやつは俺の手でやりたい!・・・だが、こいつの策は死ぬほど嫌だ!
左慈はそう思っていた。
「多少成功率が低くても構わん!他の作戦にしろ!!」
「そうは言っても、この作戦の準備しかしていませんし、やるなら確実性のあるほうがいいではありませんか・・・・・・」
「・・・・・・」
左慈はすごい目で干吉を睨んでいる。
「正直、貴様の趣味だとしか思えんのだが・・・・・・」
「否定はしませんが・・・・・・ならばこうしましょう。この作戦が失敗した時には、私の管理者としての力の全てを貴方に移します。そうすれば左慈。貴方は管理者二人分の力を持つわけですから貂蝉や卑弥呼、ましてや北郷一刀など敵ではなくなるでしょう・・・・・・いかがです?」
「・・・・・・」
左慈は目を閉じ、悩んだ。
悩んで悩んで、そして、
「・・・・・・いいだろう。だが覚えておけ。もし失敗して貴様の力を全て奪ったあかつきには、貴様をちり一つ残さず消し去ってやるからな!!」
そう言うと、左慈は部屋を出た。
バン!と扉を力任せに閉めると、ずかずかと廊下を歩いていく。
そして残された干吉は・・・・・・
「あらかた準備は整いましたね。後は、最後の仕上げを・・・・・・ふふふ」
そう言いながら、不気味な笑顔を浮かべるのだった・・・・・・
どうも、アキナスです。
随分と引っ張りましたが、ついに次回が婚礼の当日となります。
左慈と干吉の策(主に干吉の策ですが・・・)に、一刀の策。
二つの思惑が交差する中で、果たして何が起こるのか?
すべては次回ではっきりします。
それでは次回に・・・・・・
「リモコン下駄!!」
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婚礼まであと・・・・・・ | ||
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コメント | ||
ZERO&ファルサさん:嫁になったら、すぐさま未亡人(犯人は左慈)(アキナス) たこきむち@ちぇりおの伝道師さん:目玉オヤジのいる位置からして、まじでありえそうな話ですね。こわ・・・・・・(アキナス) 欠陥製品さん:劇場版(昔の方)見たので・・・異次元妖怪編のねずみ男かっこよすぎる・・・・・・(アキナス) 本郷 刃さん:逆かもしれませんよ?(アキナス) Mr.ハリマエさん:一回使用するごとにどのくらい飛ばしているんでしょうねえ・・・・・・(アキナス) siasiaさん:全ては次回・・・・・・(アキナス) 左慈も嫁にいくのかあ。(ZERO&ファルサ) 前なんかの画像で、目玉おやじが鬼太郎のアタマに乗ってる時、「妖怪アンテナに反応が!」って、思いっきり刺さってた画像を見たことがある。一刀さんの策が成功しますように・・・(たこきむち@ちぇりおの伝道師) 何故に鬼太郎チョイスw(欠陥製品) やっぱり左慈が新郎で于吉が新婦ですよね!(本郷 刃) ふと思ったことがある、髪の毛ばりって髪の毛を飛ばすけど、一部なくなる心配しなくて良いのかなぁ?あとウキツの作戦てサジにウエディングドレス着させるとかじゃないよな?(黄昏☆ハリマエ) これは結婚か!!たのしみです(siasia) |
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