IS -インフィニット・ストラトス- 〜恋夢交響曲〜 第十二話
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放課後の第三アリーナ、約束通り俺、一夏、セシリアで特訓しようとしていたが、そこに思わぬ参入者が現れた。

 

「な、なんだその顔は・・・。おかしいか?」

 

「いや、その、おかしいというか」

 

「予想外というか・・・」

 

「篠ノ之さん!? どうしてここにいますの!?」

 

そう、俺たちの前に居る箒は量産型のIS『打鉄』を装着、展開していた。ちなみに打鉄は日本国産のISで安定した性能で防御能力に優れる、訓練機として優秀な機体でもある。以上、俺の開発者としての知識。

 

「近接格闘戦の訓練が足りていないだろう。私の出番だな」

 

打鉄は日本生産ということもあり刀型近接戦ブレードが付いており、格闘戦は得意ともいえる機体ではある。しかも見た目は剣道をやっている箒には似合ってると思うし。

 

「はぁ・・・一夏さんだけでなく篠ノ之さんまで。いつになったら二人っきりで・・・」

 

「どうした、ぶつぶつなにか呟いて。やっぱり具合でも悪いのか?」

 

「い、いいえ、では早速訓練をしましょう!」

 

本当に大丈夫なのだろうか? 本人ことは本人が一番わかるっていうし、口を出さないようにしようか。

 

「とりあえず、二組に分かれるか。じゃあどう組むかだけど・・・」

 

「では、わたくしと奏羅さんで射撃訓練、一夏さんと篠ノ之さんで格闘訓練をするのはいかかでしょうか?」

 

なるほど、確かにな。一夏の白式は近接格闘特化、というか近接格闘しかできないからな。長所を伸ばす形でいいだろう。

 

「ならセシリアの提案通り、その組み合わせで特訓するか」

 

一夏と箒もその提案に同意し、今日の特訓が始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、今日はこのあたりで終わることにしましょう」

 

「し、死ぬ・・・」

 

二〜三時間ほどの訓練を終え、俺の体力は限界を通り越していた。俺の当面の問題はこの体力のなさを何とかするところではないだろうか。セシリアはというと、俺と同じような運動量なのに俺のようにバテていないところをみると、さすがは代表候補生ということだろう。

 

「とりあえず、ピットに戻りましょう」

 

「そ、そうだな」

 

どうやら一夏たちもピットに戻るようだ。同じピットに入って行った箒をみて、色々アイツも頑張ってるなぁと思ってしまう。

 

「・・・あれで、もう少し素直だったらいいんだけどなぁ」

 

「なにがですの?」

 

「いや、こっちの話。俺たちもピットに戻ろうか」

 

ピットに戻ると、ISの展開を解く。ISの補助が消え、一気に重力と体への負担がのしかかってくる。・・・女の子はよくこんなものを平気で動かすよな、まったく。

 

「奏羅さんは体力がなさすぎるのが問題ですわね・・・。スジは悪くないのですが・・・」

 

「はは、それは自覚してる」

 

自覚してるだけになんとかしようと考えているのだが、IS学園の馬鹿でかいグラウンドを一周するというのはさすがにハードルが高い気がする。

 

「日曜日あたり、早朝ランニングでもするかな・・・」

 

「仕方ないですわね、わたくしもご一緒させていただきますわ」

 

「いや、セシリアは別にしなくてもいいんじゃないか?」

 

「そ、それは・・・そう、わたくしもダイエットのためです。それに、一人より二人ですわ」

 

別にそんなに太っていないと思うんだけどな、かなりスタイルもいいし。でもセシリアの言うとおり、一人で走るのは確かに味気ない気がする。

 

「じゃあ、その時になったらまた伝えるよ」

 

「はい!」

 

部屋に帰ったら近場のランニングコースとか探してみるか。いや、まずはシャワーかな。

 

「じゃあ、またあとで」

 

「ええ、では夕食の時にまた」

 

そう言って俺たちは更衣室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、こことかどうかなぁ」

 

部屋に戻ってシャワーを浴びた後、俺は先ほど話題にも取り上げた近場のランニングコースについて調べていた。学園から少し離れるが、川沿いのランニングコースが一番近いだろう。大体長さは3キロくらいで、体力づくりをはじめるにはうってつけだろう。

 

「ジャージとかあったかな・・・?」

 

持ってきた荷物を確認しようとすると、突然電話が鳴り響いた。着信画面を見ると、前回俺の装備をどこぞへと送るという失態を犯したリリィからだった。

 

「もしもし」

 

『もしもし、元気してる?』

 

「ああ、おかげさまでな」

 

『奏羅がこの前送って来た戦闘データをマリア先生と見たけど、結構頑張ってたじゃない』

 

「いや、お前が送り間違えなければあんなに頑張らなくてよかったんだけどな」

 

あはは、と苦笑する声が受話器から聞こえる。とりあえず俺に電話してきた理由を教えてほしいんだが。

 

『あ、そうそう。奏羅が提案した新しい二つのフレームのことだけど』

 

「どれくらいかかる?」

 

『とりあえず片方はもうすぐ完成かな。もうひとつはまだかかるけど』

 

「わかった。今回はまったく急いでないから確実に頼む」

 

その時、いきなりバァンという大きな音が響いた。たぶん発信源は隣の部屋。

 

『な、何、今の?』

 

電話越しにも聞こえたのか、リリィがかなり驚いていた。

 

「わるい、とりあえず切るぞ」

 

電話を切ると、一夏の部屋へと急いだ。一応女の子の箒もいるので、とりあえずノックをして部屋に入る。

 

「いったいどうしたんだ?」

 

「・・・いや、鈴を怒らせちまって」

 

まったく、こいつはまた余計なことを言ったのか・・・。一夏から理由を聞くと、どうやら凰さんとの約束を忘れていたり、気にしていることを言ってしまったらしい。

 

「一夏」

 

「お、おう、なんだ箒」

 

「馬に蹴られて死ね」

 

箒の痛烈な一言に落ち込む一夏。当然だ、これはお前が悪い。

 

「とりあえずもう寝たほうがいい。明日も早いぞ」

 

俺は二人にそう告げると、俺は自分の部屋に戻った。ランニングルートの検索に使っていたパソコンの電源を落とし、ベットの上に寝転ぶ。

 

「幼なじみにもいろいろいるんだな・・・」

 

そういえば俺と旭はあまり喧嘩しなかったな。喧嘩したとしてもすぐに仲直りしてたし。でもすぐ仲直りしてたのはやっぱり旭の人柄もあったからだろう。しかし一夏と凰さんは違う。一夏はそういうことにものすごく鈍いし、凰さんも自分から仲直りするとは思えないほどの意地っ張り。

 

「なんとかしてやらないとな・・・」

 

出来れば俺が介入しなくても仲直りしてほしい。そう願いながら俺は眠りに着く。翌日、生徒玄関前廊下に張り出された紙、『クラス対抗戦日程表』には一夏の一回戦目の相手は凰さんという情報が書かれているとはその時はまだ夢にも思っていなかった。

 

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恋夢交響曲・第十二話
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