無表情と無邪気と無我夢中3-3
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【無表情と無邪気と無我夢中3-3】

 

 

 

 

 

 

カランカランという音は私達が店内に入った合図であり、店員さんの「いらっしゃいませ」の声が響く。

 

ウェイターの一人が人数の確認のために応対します。

 

が、その途中で私に気が付いたようです。

 

そのウェイターさんは「少々お待ち下さいませ」と八神姉妹に一声残し、キッチンの方へ走って向かっていきました。

 

 

「えと、何や?」

 

「さあ……あ、戻ってきた」

 

 

それを聞いた私は節目がちだった私も顔を上げました。

 

 

「おうか」

 

「ぁ……」

 

 

その温かくて優しい声でもう何もかも抑えられません。

 

 

「おがあさぁあああん!!」

 

 

前世の人生は30で終わりまして、その記憶を受け継いでから5年たったから精神年齢は計算上35のはずなのに。

 

今の私はまさにただの5歳児です

 

さっきまでせき止めていたつもりだった悲しみや不安が一気に津波が川を逆流する勢いで私の心を巻き込んでいく。

 

 

「ごめんなざぁあぁあいぃ!!!」

 

 

お母さんは何がとは聞いてきませんでした。

 

勢い良く涙を流しながら抱きついてきて、エプロンに顔を埋めて謝る私をそっと撫でてくれます。

 

 

「いいのよおうか。なのはのこと、みんな協力してくれてるから」

 

「ごべんなざあいい!ひっぐ、ひっぐ」

 

「よしよし。大丈夫大丈夫」

 

 

お母さんは私を抱き上げて背中をさすってくれます。

 

普通の子供でしたら母親にこうされたら安心するのですが、私全然落ち着いていく様子を見せません。

 

昔からそうでした。

 

私はお母さんやお兄ちゃん、お姉ちゃんがあやしても泣き止まず、唯一お父さんの腕の中に収まると泣き止んだそうです。

 

なのはの場合は全くの逆だったそうですが。

 

嗚咽を漏らし続ける私を抱いたままお母さんは八神姉妹を席へ案内させていました。

 

ほんのお礼らしいです。

 

 

 

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しばらくして落ち着いた私は現在状況を聞かされます。

 

例のおばさんがあの後翠屋まで来てなのはがいなくなったことをお母さんに知らせたみたいで。

 

ただお母さんは翠屋から離れられないのでおばさんが自らの人脈を使って情報収集と捜索を今もしてくれているみたいです。

 

探しに行きたいと言ったらダメって言われたので八神姉妹に励まされながら今は待つしかありません。

 

気が付いたらもう5時近く。

 

本来なら店内は忙しくなりみんなバタバタする時間帯なのですが、いやに落ち着いてます。

 

お母さんが八神姉妹に流石にご両親が心配するからと帰るよう促しますが、二人は大丈夫と言います。

 

なのはが見つかるまで私の傍にいてあげたいと。

 

とてつもなく嬉しかったのと同時に申し訳無くなりました。

 

お母さんは、じゃあ留守番電話だけ残しておくと言い電話をかけます。

 

ふとその時あらしがポツリと呟いたことが非常に気になりましたけど。

 

 

 

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しばらくしてお兄ちゃんとお姉ちゃんがお店に入ってきました。

 

お父さんが入院してから二人は学校帰りにこの翠屋を手伝うようになっていたのです。

 

普段と違う雰囲気の店内にビックリした二人にお母さんが事情を説明します。

 

それに耳を傾けると、どうやら今日は6時で営業を終えるようです。

 

店内が静かで遅番のアルバイトの人達が顔を見せてないのはそういう理由があったのですね。

 

そういえば入り口の扉にそんな紙が貼ってあったような気が。

 

 

「おうか」

 

「おうか……」

 

 

心配そうな目で二人は私の名前を呼びます。

 

お兄ちゃんだけ少し表情が読み取りにくいですが私にはわかります。

 

ある意味似た者同士ですから。

 

 

「お兄ちゃん……お姉ちゃん……ふぇ」

 

 

ああ、また心が揺れて泣きそうです。

 

 

「ほらほら、泣かない泣かない」

 

「あぐぅ」

 

 

そう言ってあらしがハンカチで私の涙を拭いて―――ってすいませんちょっと乱暴ではありませんか!?

 

 

「おうか。なのはがどこに行ったか見当つかないか?」

 

「恭ちゃん。ついてたら真っ先におうかが向かうんじゃないかな?」

 

「う……そ、そうか」

 

 

お兄ちゃんにそう聞かれ、もう一度思い返します。

 

なのはが行きそうな所。

 

あまりなのはと外に遊びに行かなかったので思い付きません。

 

だからこそ迷子になってるのではないかと不安になり探し回っていたのです。

 

 

「じゃあ、なのはがいなくなったのに気付いたのはいつだ?」

 

「恭ちゃん、少しは推理しようよ。今日の朝もいつも通り私達がおうかに挨拶して学校向かったじゃない。いつもならその後おうかはなのはが起きる前からランニングにいっちゃうんだから」

 

「…………え」

 

 

それは“いつも”の話です。

 

 

ですが“今日”は。

 

 

「今日、朝二人に会ってませんが……」

 

「「え?」」

 

 

何かが噛み合ってない。

 

 

いや噛み合わないどころか今日の朝はいつもとは色々、そう色々違っていた。

 

 

「今日私は珍しく寝坊してしまったので……そういえばなのはが珍しく早く起きてました」

 

「待って待って。じゃあ朝私達が会ったのは“おうか”じゃなくて“なのは”?」

 

「その可能性が高いな」

 

「あの、一度朝の状況を整理しませんか?」

 

 

はやてがそっと口を挟む。

 

 

「そうね。まずその、なのはちゃんの行動から整理しましょう」

 

 

あらし、何故貴女が仕切るのですか?

 

 

なのはは珍しく早起きをして、お兄ちゃんとお姉ちゃんに挨拶をしています。

 

その後寝坊してきた私と挨拶をし、一緒に朝ご飯を食べます。

 

ごちそうさまをして食器を片付け、私は日課のランニングの準備をしていたのでその間はわかりません。

 

そしてなのはに一声掛けて出発したのです。

 

 

「で、帰ってきたらいなくなってたってことやな」

 

「ちゃんと確認しなかったのでわからないのですが、おそらくそうかと……」

 

「ふうん……アンタ、ランニングはどれくらい時間掛けてるの?」

 

「いつもは約1時間半くらいでしょうか。今日は寝坊してしまったのもあっていつもより短めでした」

 

「なぁあらし。おうかちゃんのこと聞いてどうすんの?」

 

「…………」

 

 

会話が止まりました。

 

結局なのはの行動を整理しても答えが浮き出てくるとは限りません。

 

あらしははやての一言でシュンとなり、私もつられてシュンとなってしまいます。

 

ああ、こんな時はあの写真を眺めて眼福としたいのですが、あいにく―――というか持ってる訳ありません。

 

カランカラン、と音がします。

 

今日は6時閉店のはずです。

 

誰が来たのでしょう?

 

 

「どう桃子ちゃん、なのはちゃん見つかった?」

 

「ううん。おうかは帰ってきたんだけどなのははまだ……」

 

 

おばさんです。

 

ああ、私は知らず知らずの内にいろんな人に迷惑を掛けていたみたいです。

 

説明
編集が追いつかない……
3-2から続き。
泣き虫おうかちゃん、翠屋で泣きじゃくるの巻!
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逆行 無表情と無邪気と無我夢中 リリカルなのは 泣き虫おうかちゃん 

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