青いチビの使い魔 第21話 |
キキSide
「じゃあ、その剣私が買います!」
背後から声を掛けられたので振り向くと目をキラキラさせたちとせがいた。お前が買うんかい!?
「いいですよね! 誰も要らないって言うんなら、私買います。いくらですか?」
「あー、百で結構。こっちとしては厄介払い出来て清々できますでさ」
あれ? なんか俺の思ってたのと全然違う方向にいってる。・・・・まぁいいか。もういいや。どうにでもなるだろう。
「やったー! じゃあこれからよろしくお願いしますね。ジンさんお金払っといてください。そうだ、ただの剣さんって言うのは味気ないですから名前をつけましょう。えーっと、錆助Xってのはどうです?我ながらすばらしい名前だと思うのですか?」
ちとせは俺からデルフを奪い取り、なにやら一人でまた暴走していた。
「また、俺が出すのか」
「ちょっとまて、嬢ちゃんが俺を買うのか!?っつーか俺の名前はデルフリンガーだ!変な名前をつけんじゃねぇ!」
ジンが諦めたように呟き、デルフは戸惑いながら叫ぶ。もう、面倒だな。はぁ、騒ぎが収まるまでなんか良い剣無いか見てよっと。リオンは必要な物を買ったのかすぐに店から出て行き、ルイズとキュルケも後を追って出て行った。
「お前は外行かないのか?」
「あなたが何を探してるのか気になる」
俺が聞くとタバサはそう言ってジっと見てくる。別になんとなくで剣を見てるだけなんだけどな。つってもやっぱり大したものはないな。こんだけイレギュラー満載のゼロ魔世界ならツッコミどころが多い武器ぐらいあると思ったんだが。と樽をあさりながら移動していたら壁に立掛けてあったボロボロの盾に肩が当たってしまい倒れてしまった。俺は倒してしまった盾を戻そうと近寄ったら、
「ん? なんだ?」
盾に隠れるかたちで、後ろの方に何やら妙な人形があった。俺は無性に気になってソレを引きずり出して、
「・・・ツッコミどころ満載の武器発見」
それは、カラクリ人形と呼ばれるものだった。女性の型をしており、服はボロボロだが俺と同じで和服で手足がそれぞれ4本ずつある。刀は流石に持ってはいなかったが、これは・・・・
「((微刀・釵|ビトウ・カンザシ))こと((日和号|びよりごう))」
まさかの変態刀の発見。・・・・めっちゃ欲しい! 昔、傀儡の術を使うため自作で人形を組み立てようとした時に参考にしようとしたけどウル覚えすぎて製作に失敗したことがある。しかし、今、目の前には本物がある。これは手に入れなくては!
「それは、止めたほうがいい」
「へあ? あ、あー、いや〜」
俺が日和号に気を取られまくっていたら横からタバサが忠告してきた。心配してくれるのはとても嬉しいが、これの毒ぐらいなら普通に耐えられるし、なによりやっぱりとにかくこいつが欲しい。
「はぁ、チトセのやつは。・・・? なにやってんだぁっ!?って、ちょ、ま、なんでソレがあんだよ!」
デルフの代金を支払ったらしいジンが近づいてきて日和号を見たら面白いぐらいに驚いた。
「まあ、驚くよな」
「驚くよなって、ソレがなんなのか分ってのか!? 相当ヤバイもんだぞ!」
ジンがそう言って叫んでくる。そりゃあ理解してますとも。
「知ってるって。微刀・釵。通称日和号。うん、素晴しいカラクリ人形」
「なんでお前がコレ知ってんだよ!?」
「いやいや。前世がね〜」
ジンの質問にそう答えてやったら、
「やっぱりかー! なんか薄々そうじゃないかって気はしてたんだよチクショー!」
ジンは頭を掻き毟りながら叫んだ。忙しい奴だなぁ〜と、どうでもいい雑談もそこそこに俺は日和号を店主のオヤジに見せながら、
「コレを売ってくれ。もちろんこいつが持ってた4本の剣も一緒に」
「!? へい、まいど!」
なんか店主が超笑顔なんだが。まあ、なんとなく理由は分かる。
「なあ、おっさん。もしかしなくてもコレも厄介払い物とかか?」
「な、なんのことでしょうか?」
「・・・・・・・まあ、別にいいけど。で、いくらだ?」
動揺している店主に俺は値段を聞くと、
「へい、それも100でけっこうでさ」
「・・・・・ふ〜ん、こんなボロボロでいわくあり気なものを100で買わせようとするのか〜」
「そ、それは、あれですよダンナ。4本の剣も含まれておりまして、むしろその気味の悪い人形はタダ同然で剣4本分の値段と考えてくださいでさ」
むう、そう言われると反論仕様も無いな。・・・・あ、そうだ。
「なあ、オヤジ。コレを手に入れたときに一緒に妙な剣を複数手に入れなかったか?」
「ッ!? あ、あれはダメでさ! あんなもんまた売ったとなりゃあ、店をたたむ事になっちまう!」
おお、予想以上の反応。まあ、何があったかは予想つくけど。アレ等持って平気なのって、この世界の人間いないだろ。亜人の方達なら大丈夫・・・・・でもないか。さて、いい事聞いたぞ。
「なあ、オヤジ。その剣、俺が引き取ってやってもいいぞ。俺ならソレを持ち続けられるからよ」
「・・・・・・・・何が目的で?」
「別にそんな難しいことじゃない。全部タダで譲ってくれればいい。もちろんこの人形とセットで」
「・・・・・・・・わかりましたでさ。タダで譲りましょう。今、奥から持ってくるんでお待ちを」
オヤジはそう言って店の奥へと引っ込んでいった。よし、武器たくさんゲットだ。使わないと思うけど、持ってて損は無い・・・・・・はず?
「・・・大丈夫?」
俺がニコニコしていると、タバサがそう尋ねてきた。おお、心配しくれるのか。とても嬉しいぜ。
「ああ。大丈夫だ、問題ない」
ヤバイな。テンション上がり過ぎて自分のキャラが変だ。少し落ち着け俺。
その後、オヤジが店の奥から日和号の刀4本と5つの刀持ってきた。持ってきた刀は「((絶刀・鉋|ゼットウ・カンナ))」「((斬刀・鈍|ザントウ・ナマクラ))」「((千刀・?|セントウ・ツルギ))」「((悪刀・鐚|アクトウ・ビタ))」「((毒刀・鍍|ドクトウ・メッキ))」だ。?の残り999本は届け先を教えてくれれば後日届けると言ってくれたが、それは断り店の裏で黄金蔵に回収した衣服類と一緒に仕舞った。で、皆それぞれ買い物も終わり、リオン、ルイズ、ちとせ、ジンは乗ってきた馬で。俺、タバサ、キュルケはシルフィで学院まで帰った。
帰った後、タバサは自室でまた本を読み始め、俺は日和号の改造と手に入れた変態刀の毒の封印作業をする。さすがにそのまんま使いたくはないしな。そして時間が流れて、夕食後。春先の夜風が少々寒い学院の中庭。そこで今、ルイズとキュルケの勝負が始まろうとしていた。原因は不明、もちろん理由を知る気はない。
「しかし、お前も大変だな。何故吊るされるはめになったのか全く理解ができない」
「・・・・・・・・もういいよ。色々諦めたから」
どういう経緯でジンがロープで吊るされたのかなんてどうでもいいが、可哀想なものは可哀想である。
「さて、じゃあ確認だけど、彼を吊るしているロープを切ったほうが勝ちってことでいいわね?」
「ええ。いいわよ」
キュルケとルイズが杖を抜き、頷きあう。・・・・・・俺、部屋に戻りたいな〜。なんて思いながらもタバサと共に本を読む。明かりは部屋からランプを持ってきてるから大丈夫。
ドカンッ!!と学院の壁が爆発。あっはは!とキュルケの笑い声。俺、チートだぞ〜と悲しみのこもった声。キャー!何あれ!?ゴーレム!と悲鳴。パラリと俺が本をめくる音。平和だ。そして周りが静かになり、
「ん、終わったか?」
タバサがジト目で俺を睨んでいたことに気づき、本を閉じて立ち上がる。
「・・・・・・・ハァ」
ため息を吐かれた。しょうがないだろ、巻き込まれたくなかったんだから。
「戻る」
「おー」
ランプを回収し、タバサの後を追って部屋に帰った。
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買い物編その3 | ||
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