戦国慕歌路絵巻 風雲!鏡音伝 第1話 不思議な鏡
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 とある街の高台に、何も変わらない・・・いや、正確には1つを除いて、普通の神社である“鏡音神社”がありました。

 

(1月4日・鏡音神社・おみくじ売場)

 

幼稚園児の女の子:綺麗なお姉ちゃん、おみくじ1つ下さいな♪

 

 黄色い帽子を被った小さい女の子は、部屋のおみくじカウンターに立っている綺麗な巫女さんに100円を差し出した。

 

手伝い巫女のレン(以下、レン):あ、いや、俺は・・・・・、はい、お嬢ちゃん、このおみくじ箱をガラガラして、おみくじ棒を1本取り出してね

幼稚園児の女の子:うん。ガラガラ〜

 

 ガラガラ・・・・・

 

 ポイ

 

幼稚園児の女の子:お姉ちゃん、コレが出たよ

レン:はい、ありがとうね。えっと・・・、リン姉さん、“あ”の“1”です!

 

 レンは出てきたおみくじ棒の番号を、部屋の奥にいた、姉で手伝い巫女の鏡音リン(以下、リン)に伝えた。

 

リン:はーい、綺麗な巫女さんのレンさーん! 今、持って行くわよ〜♪

 

レン:お願いしまーす(うぬぬ、リン姉め、からかいやがって・・・・)

 

 リンは“あ”の“1”番のおみくじを持ってきて、レンに手渡した。

 

レン:はい、お嬢ちゃん、これがおみくじですよ。中に書いてあることをお父さんお母さんに説明してもらって、神社の木に結って置いてね

 

 レンは女の子に、おみくじを丁寧に手渡した。

 

幼稚園児の女の子:はーい♪ 綺麗なお姉ちゃん、ありがとー♪ バイバーイ!

 

 後ろでヒヤヒヤしていた女の子の両親もペコリと頭を下げた。レンも軽く会釈して、女の子に返事をした。

 

レン:はい、バイバーイ!

リン:くすくす

レン:(くっ・・・・なんで毎年俺まで・・・・)

 

そう、変わっているのは、男の子が巫女をやっている神社、ということです。でも正確にはもう1つあるのですが、それはこれから起こる出来事でわかってくるのです。

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(鏡音神社・夜・休憩部屋)

 

 その鏡音家の双子と神主の父は、まだ制服(?)の姿のまま、今日の営業が終わった神社の休憩部屋でくつろいでいた。

 

レン:ふー、疲れた

リン:綺麗なおねーちゃーん

レン:リン姉! あの時といい、今といい、からかわないでくれよ。俺だって好きでやってるんじゃないんだから。親父だって、また今年も俺まで“手伝い巫女”やらせて! 去年は忙しかったから理由を訊かなかったけど、“男が巫女”って、それ神社的にいいのか?

神主の二人の父:しかしだな、世の中の“ニーズ“って物があるんだよ

レン:は?

 

 父は“神社ご意見箱”と書かれた木の箱を持ってきて、鍵を開けて、逆さにした。

 

 バサバサバサバサ・・・・

 

レン:うわ、また今年は結構あるんだなぁ・・・・親父、これ全部クレームだったら、どうすんの?

父:いや、たぶん、今年“も”、全部クレームじゃないだろうな

レン:え?

リン:“要望”よ

 

 父とリンはランダムに数個、折り畳まれている何か書かれた紙を、広げて、読んでみた。

 

父:『あの黄色い髪のおみくじ売場で立っている綺麗な巫女さん、名前を教えて下さい』

リン:『おみくじ売場のカウンターの綺麗な巫女のお姉さんを紹介して下さい』

父:『あのおみくじ売場の巫女のお姉さん、来年もいて下さい、会いに来ます!』

リン:『おみくじ売場にいる巫女のお姉さま、惚れました』

父:『学校で噂になってます。町内巫女ランキングの1位でした。また来年も来ます』

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レン:・・・・・・・・

 

リン:悔しいんだけど、私へのこーゆー意見って、毎年、両手で数えられる位しか来ないのよね

父:でもって、レン、お前へのこういう意見は、見ての通りだ。しかもこれは一部なんだな。昨年、お前に手伝って貰ってから、こういう意見の数が鰻登りでな。おみくじの売り上げだけで、2年前と比較して、倍以上になっておるんだ

リン:まぁ経営の事は抜きにしても、参拝客のほとんどが、“あなた目当て”、で来ているのよ。だから、やめるにやめられないのよね

父:ワシも不本意なんだぞ? 巫女の条件は、“黒髪”、“飾り物をしてない女性”だからな

 

レン:お、俺は、看板娘にされているのか・・・・

リン:レーン、今日だって、可愛いお嬢ちゃんが、目をキラキラさせて、おみくじ買っていたじゃない。お客さんの期待は裏切っちゃだめよー

父:レン、わかってくれるか? 巫女姿のお前が立っているだけで、神社に華が咲くんだよ

 

レン:・・・・わかったよ・・・・今年のピークは過ぎたし。それに他のバイトの巫女さんに迷惑かけちゃいけないしな

父:すまんな

リン:まぁ、レンも解ってくれたことだし・・・・・・・あれ? 誰あれ?

 

リンはすっくと立ち上がって話を終えようと思った時、暗闇の窓の向こう、神社の灯りが届く付近に、人影を見つけた。レンも立ち上がり、リンが示す方向を見つめた。

 

レン:ほんとだ・・、って、巫女服じゃんか! なんか緑の長髪・・・ツインテールっての? 親父! まだ帰っていないバイトさん、いるのか? ってか、あんな巫女さん、いたっけ?

父:い、いや、全員帰っているはずだが・・・というか、あんなバイトの巫女さん、いないはずだぞ

リン:って! “木之子洞窟”の方へ向かっているじゃないの!

レン:え!?、親父!、確かあそこ、“立入禁止”だったよな!?。

父:ああ、そうだ。すまんが二人とも、あの巫女を連れてきてくれないか!? 神社といえども警備は怠ってはいかんからな。ましてや知らない巫女がここに来るってことは、いろいろ問題が出てくる可能性もある

リン、レン:はい!

 

 リンとレンは巫女姿のまま、懐中電灯を持って、つっかけ(サンダル)をはいて、急いで人影を追っかけていった。

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(木之子洞窟前)

 

 人影は“木之子洞窟”の前で見失ったのだが、入り口前のパイロンと棒が一組、外されていたので、間違いなくこの中に入った事が伺えた。

 

レン:リン姉、困ったね。この中だよ、きっと

リン:うん。間違いないと思う。でも、ここ、ずっと立入禁止で、私たちも入ったことないんだよね・・・あれ? 奥に光が?

 

 木之子洞窟の奥に、懐中電灯のような、携帯式の灯りらしき“光”が見えた。光は奥に移動していた。

 

リン:ど、どうしよう・・やはりお父さんを連れてこようか?

レン:いや、だめだよ、今度見失ったら、マジで見つけられなくなるよ。俺、三面記事に出たくないぞ

リン:わ、わかった。一緒に追いかけよう!

レン:行こう!

 

 二人は小さくなった光を追いかけて、木之子洞窟の中に入っていった。

 

(木之子洞窟内)

 

リン:な、なんかここ、“きのこ“を栽培できそうな位、暗くてジメってしているね

レン:そ、そうだね・・・っか、巫女姿でここをスタスタ歩けるって、どういうことだ?

リン:とりあえず、光はまだ見失ってないから、追跡は続けよう

レン:そうだね

 

(木之子洞窟・最奥の部屋)

 

 かなり奥まで歩いてきたとはいえ、途中、枝分かれした道はなかった。だから確実に“この部屋”にいるはずなのだ。しかし、リンとレン以外、誰もいなかった。光を出す物も残されてなかった。

 

リン:ちょ、ちょっと、これって、いわゆる、“ユーレイ”、とかそういうヤツ?

レン:・・・・いや、確かに見たし、足もあった。姿もしっかりしていたし、間違いなく“人”だったよ。ということは、“隠し部屋”とか、そういう“ギミック関係”だぞ、これ

リン:え、でも・・・

 

 リンは懐中電灯で部屋をぐるっと照らしてみた。狭いが古い祭壇のような場所で、中央に化粧が施されている“古い鏡”が置かれている位で、他は珍しい物、ギミックに繋がるような“棒”などは全くなかった。

 

リン:ここ、なんにもないよ・・・

レン:・・・・って事は、この古い鏡に謎があるってことだね。例えば鏡面に光を当てるとか

 

 レンは懐中電灯の光を鏡の真っ正面から鏡面に当てて光を反射させた。

 

 すると鏡で反射した光は、部屋の隅々の“光沢のある石”で次々に反射していき、そして、元の鏡の鏡面に戻ってきた。そして、

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・

 

レン:な、なんだ!? 部屋が揺れているぞ!

リン:ちょ! まさか本当に“光のギミック”だったってこと!?

 

 そして部屋全体が輝き、鏡の鏡面からまばゆい光が発せられ・・・・そして、リンとレンは意識を失った。

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(???)

 

???:・・・・起きてくださいませ・・・・

リン:う・・・・・・ん

???:・・・・起きて下さい・・・・

レン;う・・・・う・・・うーん・・・?

 

 リンとレンは、ようやっと意識を取り戻した。

 

緑のツインテール髪の巫女:よかったミク。気が付いたミク

ピンクの髪の巫女:よかったですわ

 

リン:うーん・・・・えっと・・・・あ・・・・あー! やっと見つけた!

レン:え?・・・・あ! あの時の迷い巫女さん! やっと見つけたぞ!

 

緑のツインテール髪の巫女:えっと、とりあえず名乗らせて下さいミク。私は、初音御貢(ミク)。徳川家秘蔵の神社の巫女をやってます

ピンクの髪の巫女:同じく、私は巡音流歌(ルカ)です

 

リン:あ、いや、そんなことより! この行き止まりの部屋のどこに隠れていたのよ! それも二人だったなんて!

レン:そうだそうだ! ご丁寧に“鏡のギミック”まで使いやがって!

 

ミク:その節は素直に謝りますミク。でも、私たちは別に隠れてませんでしたミクよ?

ルカ:それに、ここは“行き止まりの部屋”ではありませんよ?

 

リン、レン:え!?。

 

 リンとレンはようやっと“自分が今いる場所”を眺める余裕が出来た。そして、目を丸くした。

 

 明るい社の一室

 綺麗な鏡が飾られ、お供え物がされている綺麗な祭壇

 綺麗に掃除された板間

 

リン、レン:・・・・ここ、どこ?

 

ミク:・・・・慶長三年(1598年)の江戸城付近の神社ミク

ルカ:つまり、あなた達の“場所”からだと、“過去”に来たことになるわね

 

リン、レン:・・・・つまり・・・・・『タイムスリップ』!!??

 

ミク:その言葉は知りませんが、過去に来る“妖術”にかかった、そういうことミク

ルカ:ミクはあなた達の元の時代で、あなた達に見つかるように行動してあなた達を誘導し、私はこっちの時代でミクとあなた達をこっちに引き込みました。あなた達も巫女である事は知ってましたが、ちゃんとそのままの姿で来てくれて、助かりました

 

レン:ふ・・・・・ふざけろよ・・・・・こんな漫画みたいな事、とーとつに言われて・・・

リン:“はいそうですか“って、簡単に納得すると思っているんですか!!!! どうせ私たちが気絶しているときに、別の所に抱えてきたんでしょ!

 

ミク:・・・納得出来ないのも無理ないミク。なら、これならどうですか?

 

 ガラッ

 

 ミクは外に出られる観音開きの扉を開けて、外の景色をリンとレンに見せた。

 

 チュンチュン

 プォー

 

リン、レン:こ・・・・・・これは・・・・・・・・

 

 その社は高台にあった。そして外の景色に映っていた物は、

 

 “お城”

 “時代劇に出てくるような長屋”

 “櫓”

 

 リンとレンの時代に映っているはずの“物”は一つもなかった。元の神社さえ無かったのだった。

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レン:ちょ・・・・・ちょっと待てよ・・・・まさか・・・本当に・・・・タイムスリップ・・・・・

 

 リンはちょっと涙ぐんでいた。

 

リン:ちょ・・・・冗談じゃ・・・・ないわけ・・・・・ぐす・・・・・・帰りたいよ・・・・・帰りたいよ! うわーーーん!

 

 リンは泣き出してしまった。

 

ミク:あの、こちらの話も聞いて下さいミク

リン:やだやだやだやだ!! うわーーーーーーん!!!

レン:あ、あの、ちょっと訊きたいんだけど、マジで俺達、帰れないんですか? ってか、こっちに引っ張ってきたって・・・

ミク:うーん、帰れないわけではないんですが・・・・

リン:じゃ! すぐ帰して!

ルカ:今は出来ないんです。必要な霊力がないんです

レン:え?

ルカ:ミクをあなた達の世界に持っていき、そしてミクとあなた達をこっちに持ってくるだけで、霊力を使い切ってしまったんです。能力はあっても、必要な燃料が無くなってしまったんですよ

リン:じゃ・・・じゃあ・・・・やっぱり帰れないんだぁああああ!!!! うわーーーーん!!!!

ミク:あ、いや、その、“燃料”さえ充填されれば、帰れるミク

レン:それはどうやって手に入れるんですか!

 

ルカ:それを手に入れることと、あなた達をこっちに引っ張ってきた事は、目的が同じ事なんです

ミク:詳しい事は・・・あなた達もご存じの将軍様であります“徳川家康公”と関係者が教えてくれます。とにかく江戸城に来て下さいミク

ルカ:あなた達も巫女姿。私たちと行動を共にしていれば、怪しまれません

リン:ぐす・・・・わかった・・・

レン:わかりました。とにかく・・・・って! これから、あの天下統一した“徳川家康”と会うんですか!

 

ミク:えーーーっと、あー、やっぱり、事前に話しておかないといけない肝心なことがありましたミク

ルカ:そうね、あれは話しておかないと、錯乱するかも

 

リン、レン:え!?

 

ミク:はっきり言うと、あなた達が来た時代と、ここの時代は“1つの道”で繋がってません

ルカ:つまり、あなた達の時代の正確な“過去”ではないんです

 

レン:えーーーーーーっと、つまり、慶長三年って言ってましたが、確か社会の授業で習った“豊臣秀吉 死去”になってない世界、ってことですか? 僕たちの時代ではそれを“パラレルワールド”って言うんですが・・・

ミク:その言葉も知りませんが、まぁ、そう言う事になるミク

ルカ:はっきり言うと、“知将”である、“魔太閤秀吉”、は、今でも健在です

ミク:それと信じられないかも知れませんが、あの“織田信長”・・・こっちの世界では“第六天魔王信長”って言われてますが、あの魔人すら、健在なんです

リン:?????

レン:そ・・・・そんなはずは・・・信長はとっくに本能寺の変で死亡しているはずなのに・・・

 

ミク:それと、これは同じだと思いますが、この世界はまだ“江戸時代”とあなた達が呼んでいる時代ではないミク

ルカ:確か“安土桃山時代”とかと呼んでいる時代であり、家康公はまだ天下統一されてません。というか、こちらでは“出来ない”可能性が高いです

レン:・・・確かに、僕たちの史実とは大きく異なってますね・・・つまり、違う世界の先を知っている僕たちを呼び寄せて、その変な存在になっている秀吉と、死んでいるはずなのに生きている信長を、倒してくれ・・・・と?

 

ミク:はっきり言うとそうです。でも詳しい事は、家康公から直接聞いて下さい

リン:ってか、こっちの家康さん、そんなことまで“真に受けて理解してくれる”人なんですか!?

 

ミク:こっちの世界の“陰陽道“って、あなた達の史実とは違って、進んでいるんですミク

ルカ:・・・・あの、それと1つ訊いていいですか?

リン:なんです?

 

ミク:そっちの白い髪飾りをしている巫女さんはいいですが、もう片方の冷静な方は、本当に“巫女”ミクか?

ルカ:冷静なのはいいんですが、口調が・・・まるで“男”なのですが・・・・・

 

レン:あ・・・・・・あの、その・・・・これはここだけの話にして欲しいんですが・・・・・

 

 レンは事情を説明した。

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ミク:ありゃーミクー

ルカ:これは予定と違っちゃいましたね。大丈夫かな????

 

レン:とにかく、もうそう言うわけなので、それで通させていただきます

 

ミク:ま、まぁとにかく、江戸城に行くミクよ

 

 こうして、一行は社を後にして、江戸城に向かったのだった。

 

(続く)

 

CAST

 

お手伝い巫女・鏡音リン:鏡音リン

お手伝い巫女(?)・鏡音レン:鏡音レン

 

巫女・初音御貢(ミク)(緑の髪の巫女):初音ミク

巫女・巡音流歌(ルカ):巡音ルカ

 

徳川家康、鏡音神社の神主(リンレンの父)、神社の参拝者、etc…:エキストラの皆さん

説明
○ボーカロイド小説シリーズ第9作目の” 戦国慕歌路絵巻 風雲!鏡音伝“シリーズの第1話です。
○巫女の鏡音姉弟(?)が主役の擬似タイムスリップジュブナイルです♪
○メインは和風の妖怪とか陰陽師とか出てくる、バトル物でもあります。

☆前回の第0話の次ですが、ピアプロではこっちを先に投稿したので、実質の本編の第1話になります。
☆これから、鏡音姉弟の大冒険が始まります。
☆今回もある日の鏡音神社から始まります。

☆(当時は正月1回目の投稿でしたので)正月から始まります!   
☆今回は徹底的に設定を“日本時代劇”にしてみました。
☆レンの巫女は、個人的にツボだったりします。ちなみにリアルでは、巫女になるには、黄色い髪はNGです。それ以前に男性はダメですが・・・。
☆今回も、宜しくお願いいたします!
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タグ
Vocaloid 鏡音レン 鏡音リン 初音ミク 巡音ルカ 

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