夜天の主とともに  21.人生初の対人戦
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夜天の主とともに  21.人生初の対人戦

 

 

 

フェイトとユーノがタイミングはまさに間一髪だった。なのはを襲った少女、ヴィータに武装解除と投降を求めたがそれに応じることなくビルから出ていった。

 

「ユーノはなのはをお願い。私はあの娘を追う。」

 

「わかった、フェイトも気を付けて。」

 

ボロボロになったなのはをユーノに任せフェイトもビルを出ようとしたところで視線を感じ振り向くとなのはが見ていた。

なのはは自分が心配されるべき対象だというのに逆にフェイトのほうを心配するような視線を送っている。

 

「フェイトちゃん‥‥‥。」

 

その呟きにフェイトは優しく微笑むとそのままヴィータを追うため飛び出していった。

 

ビルを出ると上空でヴィータが仁王立ちで待ち構えていた。少し離れた場所には仲間と思しき少年、時野健一がいた。こちらは何をするでもなくただ立っているだけのように見えた。

そう判断したフェイトは隠れているアルフに念話をする。

 

『アルフ、あの娘から捕縛するよ。タイミングを合わせて同時に攻撃。いける?』

 

『わかったよフェイト。』

 

そしてヴィータに突撃する前にもう一度健一を見た。やはり動く様子はなく仮にこちらに何かしようとしたとしてもここからあそこはかなり離れているため問題なしと結論を出した。

 

『じゃあいちにのさんでいくよ。いち‥にの‥‥さん!!』

 

合図とともにフェイトと魔法で隠れていたアルフは同時にヴィータに突撃した。そしてサイズフォームで斬りかかろうとして――――

 

離れた場所にいた健一が突然割り込むように一瞬で現れた。

 

「なっ!?」

 

驚く暇なく健一はキャリバーのジェットで加速させた蹴りを放った。完全に虚を突かれたフェイトはギリギリ間にバルディッシュを割り込ませガードした。

 

鋭く重い蹴撃だったがなんとか耐えられると思った瞬間、その足に何かが纏われて、ビルまで一気に蹴り飛ばされた。

 

「フェイト!?うわぁ!!」

 

フェイトが蹴り飛ばされて動揺したところを打ち合わせでもしていたかのようにヴィータが障壁ごと同じようにアルフを殴り飛ばした。

 

「おい健一、邪魔すんなって言っただろ。」

 

アイゼンを担ぎ睨みつけながらそういうヴィータに全く表情を変えずに健一は返した。

 

「それはさっきの白い魔導師の娘の話。なんか新手来てるし相手は2人、こっちもせっかく2人いるんだ。それを使わない手はないだろ?」

 

「まぁな。でもそれならすぐに攻撃すればよかっただろ?」

 

「油断させておいた方が分断させやすいと思っただけだ。で提案だけどオレンジの守護獣の方はヴィータが、俺は金髪の魔導師の娘とやるけどいいか?どうにもさっきの接近速度から見てあの娘は俺と同じ高機動型みたいだからたぶん相性がいいと思う。」

 

「ああわかった。でも負けんじゃねーぞ。」

 

「わかってる、大丈夫だ。それに今からやるのは一対一だ。だったらベルカの騎士に‥‥」

 

「「負けはない(ねぇ)!!」」

 

それを最後にヴィータはアルフの方へ、健一はビルまで蹴り飛ばしたフェイトのところまで降下した。

 

フェイトの方もフェイト自身にダメージはないようでデバイスの損傷を修復させすぐにビルから出てきた。

 

(この人あの距離を一瞬で詰めてきた。たぶん私と同じ高機動型だ。さっきは不意を突かれたけどあの距離からの速度を計算すると‥‥私のほうが速い。)

 

「あなたの出身と名前、そして目的は?」

 

「‥‥答える義理はない。」

 

「武装を解除して投降する気は‥。」

 

「ない。」

 

健一の即答にフェイトも戦闘態勢に入り思考を回転させた。それに応じるかのように健一も袖の中から腕を抜き、自身のデバイスであるジェットナックルを構える。

 

(あれは‥‥‥ガントレット?いやそれにしては大きいし何よりデバイス特有の機械さがある。でも仮にあれがデバイスでも相手は拳と脚。リーチの差も速度も私の方が上のはず。‥‥いける。)

 

〈Photon lancer.〉

 

周囲に電気を纏った魔力弾を4つ生み出した。それに応じるように同じ数だけ健一もフェイトにはわからなかったが何かを纏った魔力弾を生み出した。

 

「フォトンランサー、」

 

「ジェットショット、」

 

「「‥‥ファイア!」」

 

同時に放たれたそれは交差するように入れ違った。それをお互いによけながら接近戦へと持ち込んだ。健一は拳で、フェイトはサイズフォームで斬りかかる。

 

(やっぱり速いな。でもカートリッジが必要なほどではない。)

 

フェイトの斬撃をスウェーで避けたり蹴りや拳、時にはバリアで相手のデバイスの柄にぶつけて弾いたりしながらそう考えた。

 

(この人、いなし方と防御が上手い。でもやっぱり私の読み通りスピードは私の方が上、‥‥それなら。)

 

「バルディッシュ。」

 

〈Sonic move.〉

 

フェイトの十八番、短距離高速移動魔法で加速したフェイトは一瞬で健一の背後を取った。目の前でそれをやられた健一の目には消えてしまったかのように見えただろう。

 

(とった!!)

 

内心で勝利を確信したフェイトはそのまま振り切ろうとした。そして金色の魔力刃が健一に達しようとする寸前でフェイトは健一の小さなつぶやきを聞いた。

 

「ジェナ。」

 

〈Jet move.〉

 

直後健一の姿は消えフェイトの攻撃は目標を失い空をきった。スピードで上回っていたと思っていたフェイトは一瞬の動揺の後、直感的に後ろを向いた。そこには分厚く重そうな拳をすでに振り上げている健一がそこにはいた。

 

〈Defencer.〉

 

バルディッシュが咄嗟の判断で魔力障壁を築いてくれたため直撃は避けることができたが最初の一撃の時よりも遥かに速くそして重い衝撃がフェイトを襲った。

 

その際にも拳には薄緑色の何かが纏われるのをフェイトは確認した。

 

その衝撃で一気に距離を離されることとなった。

 

(拳にも足にも薄緑色の何かが纏われてた。この子の魔力光‥‥とは別?とすれば属性魔力変換ということになるけど。さっきから風が普通より強く吹いてるってことは。)

 

「君‥‥まさか風の魔力変換資質があるの?」

 

その言葉に健一は軽く目を瞠った。

 

「へぇ、よくわかったな。そういう君はさっきからバチバチいってるから雷‥‥かな?まぁどうでもいいけど。」

 

フェイトも確かにそうだと思い改めて現状を把握する。障壁を見てみればすでに欠片となって消えていた。

 

(私の障壁は確かに脆いけどまさか拳一つの一撃で破壊されるなんて‥‥‥。いやそれよりも私のスピードとは互角かそれ以上。)

 

同じように健一も考えていた。

 

(さっきまでのスピードは全力じゃなかったのか。一瞬だけど見失った。スピードは互角かそれ以上。だけど防御自体も堅くない。これならいけるな。)

 

それからも2人は自身の自慢のスピードで駆け回り交差するごとにデバイスをぶつけ合った。だが、フェイトは先ほどまでとはうって変わって緊迫した表情に、健一は何も変わらずそのまま。どちらが優位に立っているかは明らかであった。少なくとも本人たちにはわかっていた。

 

だが健一は決して油断をしなかった。油断は自分を窮地へと立たせる自らが師、ヴォルケンリッターたちに教えられていたからだ。

 

しかし何合も打ち合いながら決め手がないのも健一は感じていた。

 

(攻撃に対する反応速度は俺と互角か。‥‥使うかカートリッジ。)

 

そしてジェナに命じようとしたその時、フェイトは急に距離を取った。

 

〈Arc saber.〉

 

振りかぶって金色の魔力刃を分離させて放つ。それは不規則な軌道を描きながら健一に迫っていった。

 

(これは避けにくそうだな。避けれないことはないけどここは防御を‥。)

 

そう考えて障壁を張ろうとした瞬間魔力刃は急に進路を変え健一とは別のあさっての方向へ飛んでいった。なぜと思いそしてすぐに理解した。狙いは自分ではなかったのだと。そう‥‥本当の狙いは、

 

「!?アイゼン、障壁!!」

 

ヴィータだったのだ。魔力刃は障壁とぶつかり少しした後消滅したがそれを見計らっていたかのようにアルフが突撃した。アルフがご主人から命じられたことそれは最初からひとつ。

 

「(この赤い娘から先にやる!!)うぉりゃぁぁぁ!バリアブレイク!!!」

 

バリア崩しの拳は見事障壁を壊した。そして一連の動きで硬直していた健一のそのわずかな隙をフェイトは見逃さずスピード最大限に使ってヴィータへ向かった。

 

(悪いけど私たちのやるべきことはあなたを倒すことじゃなくてあなたを含めた2人を捕まえる事。)

 

フェイトはアルフのバインドによって動けなくなったヴィータに向かい戦闘不能にしようとした。ヴィータはもちろん健一もそのわずかな硬直で間に合わない。

誰もがもうだめだと思った。その時だった。

 

「ハァァァァァ!!」

 

「キャァァァァ!?」

 

横合いからフェイトに向かって何者かが斬りこみ吹き飛ばした。そして何者かはもう一人いた。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「くはっ!?」

 

何者かがアルフを蹴り飛ばし距離を無理やり取らせる。その何者かはシグナムとザフィーラだった。

 

「レヴァンティン、カートリッジロード。」

 

〈Explosion.〉

 

「紫電一閃!!はぁぁぁぁ!!」

 

剣に炎を纏わせ一気に距離を詰めてきたシグナムにフェイトは自身のデバイスをかざすことしかできなかった。そしてそれはいとも簡単に一刀両断された。しかもそれで終わらず二撃目が待っていた。

 

〈Defencer.〉

 

ギリギリ自動防御が間に合ったがそのあまりの威力によってフェイトは悲鳴を上げることもできずビルへと叩き落された。

助けに行こうとするアルフだがそれもザフィーラが立ちはだかる。

 

それを見ていた健一はとりあえずシグナムとヴィータのところへ戻った。

 

「油断でもしたかヴィータ。」

 

「うるせぇよ。今から逆転するところだったんだ。」

 

「そうかそれはすまなかった。」

 

シグナムは手をかざすとヴィータの動きを止めていたバインドが壊れた。

 

「っていうかあの金髪は健一が相手してたんだろ。ちゃんとやれよな。」

 

「まさかあそこで標的を変えて来るとは思ってなかった。油断はしてないつもりだったが‥‥悪かった。」

 

「ヴィータそれはお前も同じようだろう。あまり健一を責めてやるな。それとほら、壊れていた箇所は修復しておいた。」

 

そう言ってヴィータの頭に被せられたのはあの赤いベレー帽だった。どうやらシグナムが治したようだ。

 

「ありがと‥シグナム。」

 

「へぇ〜、シグナムってこういう細かい事もできるんだな。」

 

「なんだ健一。これぐらいなら簡単なことだ。それともなにか、私には細かいことができないとでも?」

 

「いやまぁシャマルの件もあったからシグナムもかなって。とりあえずそれは置いといて。まずはありがと。たぶんあれは俺じゃ間に合わなかった。」

 

「カートリッジを使えば間に合ったのではないか?お前のスピードは私たちの中でも随一だ。あれぐらいの距離ならわけないだろう。まさか忘れていたわけでもあるまい。」

 

「‥‥忘れてました。」

 

その言葉に思わず頭に手をやるシグナムとヴィータ。

 

「お前って本当に‥‥」

 

「相変わらずだな。だがそれでこその健一だ。」

 

「馬鹿にされてるような。まぁいいや、それじゃ‥‥‥‥」

 

眼下で先に行われている2人の守護獣を眺めながら各々は武器を構える。

 

 

 

「第2ラウンドの始まりだ。」

 

 

 

説明
A's編っす

あと健一のレアスキルに風の魔力変換資質を加筆しました。毎度修正してすんません。
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コメント
あぁ〜・・・なるほど、納得です(鎖紅十字)
ご指摘ありがとうです。でも、健一は使い魔という存在は知らないので、守護獣と判断したという設定になってるので大丈夫です。わかりにくくてすみません。(森羅)
アルフは守護獣じゃなくて使い魔ですよ(鎖紅十字)
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