武装神姫「tw×in」 第九話 一対戦乙女×天使= |
『ツインワン』戦乙女型神姫、アルトレイネス。
もちろんその姿を見るのは初めてで、どんな武器を使ってくるのかも謎だ。
『まずは相手の出方を見よう』
「はい」
エンルは右回りにレイネスとの距離を少しずつ詰めていく。
『そっちから来ないなら、こっちから行くよなのです』
レイネスが動いた。一直線にエンルへ向かい、武器を構える。
それは小剣だった、しかしそれを手に一つずつ持っている。
右手にはアルトレーネ型のプラオシュテルン。
左手にはアルトアイネス型のロッターシュテルン。
二人の小剣を、レイネスは一人でダブルナイフの容量で持っているのか。多分、アレで1つの武器なんだろう。さながら、ダブルシュテルンという感じかな。
『えぇい!』
ダブルシュテルンが振るわれる。その動作はやはりダブルナイフと同じ動きだ。
『ダブルナイフと同じだ、その要領で応戦するんだ』
「はい!」
エンルは小剣を取り出してシュテルンに応戦した。
「くっ……」
しかし、ナイフよりもリーチのあるシュテルンをいなしきれず、数回かする。
『一旦離れるんだ!』
「は、はい!」
エンルは後ろへとダッシュして間合いを開けた。
『ランチャーで応戦するんだ』
「はい!」
エンルはランチャーを取り出して構える。
標準をレイネスへ向け、引き金を引く。
「当たれ!」
青白い光線がレイネスへと放たれた。
『甘いよ、なのです』
レイネスは避ける動作をせず、新たな武器を取り出した。
光線がレイネスへ当たる。しかしそれはレイネスが前へ構えた武器により防御された。
それはアルトレーネ型仕様の大剣:ジークリンデ。両手武器によるスーパーアーマーを利用しての防御か。
『いっくよーなのです』
そのまま大剣を携えてエンルへと迫った。
『攻撃を回避して、その後の隙を突くんだ!』
レイネスの大剣が上から降り下ろされる。エンルはターンで避けると、小剣を構えて向かう。
『甘いよなのです』
しかし、レイネスは武器を入れ替えた。それによる大振りな一撃をエンルは避けれずにくらった。
そのままコンボが繋ぎ、エンルは吹き飛ばされた。
「きゃあ!」
『エンル!』
弧を描いたエンルは床に落下する。
「うぅ……ごめんなさいマスター、油断しました」
『大丈夫、アレはさすがに予想出来ないから、立てる?』
「はい……」
ゆっくりと立ち上がり、エンルはレイネスを見た。
『ボクをなめてると痛い目を見るよ、なのです』
今使った武器、大剣を床に突き立てながらレイネスは余裕の表情だった。
しかし、まさか大剣を2つ持ってるなんて予想外だったな。
最初にエンルのランチャーを防いで振るっていたのが、アルトレーネ型の大剣、ジークリンデ。
そして今アタックチェインから硬直無しでエンルが攻撃されたのが、アルトアイネス型仕様の大剣:ジークムント
アルトレイネス、まさか二人の小剣だけじゃなく、二人の大剣まで持ってるなんて。
でも多分、アレでレイネスの3つの武器なんだろう。小剣は同時に出していたけど、大剣は片方ずつだったところを見るに、おそらくそうだと思う。
とことんクロスレンジに特化した神姫なんだな。
『休む暇は与えないよなのです』
レイネスが大剣ジークリンデを構えて向かってきた。小剣では力負けし、ランチャーではスーパーアーマーで守られる。両手武器には両手武器をぶつけるのが良いが、あいにく持ってない。
けど、もう一つの武器は、
『行くんだエンル!』
「はい!」
レイネスの大剣が迫る中、エンルは前へ出た。
右腕に奥の手となる、パイルバンカーを持ってレイネスへ肉薄した。
レイネスの大剣がエンルの横を掠め、エンルのパイルバンカーの刃がレイネスに突き刺さる。
瞬間、パイルバンカーから爆発が起こった。
『うきゃあ!』
爆発を間近でくらったレイネスが吹き飛んだ。
杭打ち器という名前が付いたパイルバンカー、刃を当てることで相手に爆発による大ダメージを与えるという物で、現段階唯一大剣に対抗出来る武器だ。
かといって、そう何度も効くわけはないよな。
『ミルートも言ってたし、レールアクションも使っていくよ』
「分かりました、まずはどうしますか?」
そうだな……
『いっくよー! レールアクション!』
え?
「え! まさかあっちも!」
起き上がっていたレイネスは言うより早くレールアクションを発動していた。
リアパーツが開き、翼を拡げたような姿で上空へと上昇するレイネスを見て、何が来るか予想出来た。
アレは……ならコッチは、
『エンル! ランチャーのレールアクションだ!』
「はい!」
エンルがレールアクションの構えを取る。
『レールアクション! ATK:ランチャー』
唱えた瞬間、エンルはレイネスとの距離を開けた。少し行って、ランチャーをレイネスに向けて構える。
レイネスが唱えた。
『今こそ決戦の時、なのです! ゲイルズゲイグル!』
その場で回転、その遠心力も加えて、大剣ジークリンデが投げつけられた。
アルトレーネ型の固有レールアクション、ゲイルズゲイグルだ。
「いきます!」
ジークリンデが迫る中、エンルはランチャーを構えた。
引き金を引くと、青白い光線、ではなく光の球が5つ横一線に放れた。
扇状に拡がる光球の内1つがジークリンデに当たるが、威力は落ちない。
再び球体が扇状に放れる。その内1つが当たるが、ジークリンデは若干速度を落とすも飛び続ける。
そして、ランチャーのレールアクション最後の一発が放たれ、今までのより大きい光球が1つ、ジークリンデと接触した。
同じレールアクションである以上、さすがにこれでどうにかなるか?
光球とジークリンデがぶつかり合い互いの威力を削り合う。
「お願い……負けないで!」
そして、エンルの願いが届いたのか、
ガキィン!!
光球の消滅と同時に、ジークリンデは力を無くして垂直に下降した。
『よし、なんとかなっ…』
そこでオレは気づいた。
『エンル、レイネスは?』
「えっ?」
その時、
『隙を見せたね、なのです』
レイネスが直前に迫っていた。
「!?」
『しまった!』
『レールアクション!』
瞬間、レイネスのリアパーツが開いた。
先ほどの翼のようにではなく、両手が鋏のようになりエンルに叩きつけられる。そこから打撃乱舞が繰り出され、最後に吹き飛ばす。
レイネスの元となったもう1人の神姫、アルトアイネス型の固有レールアクション。
その名は、
『シザース・ガリアス・ドミニオール!』
「きゃぁあ!」
全て命中したエンルが吹き飛ばされる。
『エンル!』
「うっ……平気、です」
床に落ちる直前、受け身を取って体制を立て直した。
ああは言ってるけど、固有レールアクションは強力だ。大ダメージに違いない。
まさか固有レールアクションを連続で使ってくるとは……しかも今の順番で。
仮に順番が逆だった場合、シザーが来ると分かり接近してくれば緊急回避で避けるし、そこからゲイルズゲイグルを放てば近くにいるので死角となる真下へ周り込めば不発に終わる。
だが今のならば、気をとられてる間に接近を許してしまい、攻撃される。
プログラムとは言え、神姫二人分の感情か。ミルートが指示を出してるようでもないし、凄いのはレイネスのようだ。
「マスター! 次の指示を!」
エンルはまだ戦える。レイネスはおそらく固有レールアクションの連続使用でスキルポイントがほとんど無い。
なら、攻めるなら今だ。
『よし……行くぞエンル!』
「はい!」
エンルはランチャーを構えて放った。
レイネスはジャンプで避け、空中をダッシュして間合いを詰めてくる。
やはり、剣の届く位置じゃないと攻撃出来ないんだな。
レイネスは空中から距離を縮めつつ、大剣を構えて落下してくる。
エンルはそれをステップで避け、再びランチャーを向けた。
『遅いよなのです!』
引き金を引くより早くレイネスの大剣が迫る。
しかし、
「甘いです!」
エンルはランチャーをしまい、パイルバンカーを取り出してレイネスに突き刺した。
瞬間、爆発が起こってレイネスが吹き飛んだ。
『エンル、ナイスアタックだ』
「ありがとうございますマスター、でもまだ油断は出来ませんよ」
レイネスが起き上がった。やはり決定打になる何かを与えないと勝てないか。
ランチャーは大剣に防がれるし、小剣では威力不足、パイルバンカーは……あの突撃が三度決まる確率はかなり低い。でもそれが一番威力があるし……
『あ』
不意に、思い出した。
「ど、どうしましたマスター?」
『そうだ、まだ使ってなかったよ』
「まだ使って……もしかして、アレですか?」
『うん、多分そうだよ。いきなり本番だけど、行けるかな、エンル』
「もちろんです! マスターとなら、必ず成功出来ますよ!」
心強い返事だ。
『よし、行くよエンル!』
「はい! マスター!」
決意を固め、オレとエンルの声が重なった。
『「レールアクション!」』
構えたエンルが前へ走り出す。
『ん? 何だか分からないけど、そっちがやる気なら、こっちもやる気を出すのです!』
レイネスに変化が起こった。
それに気づいたのは、レイネスのリアパーツが翼の様に開きだしたからだ。
「させません!」
エンルはパイルバンカーをレイネスへ向ける。本来なら刃がある先端に刃は無く、そこから光球が何発もレイネスへと放たれた。
本来コレはレールアクションを当てるための威嚇射撃、もしも相手がガードしても、破壊するくらいの威力がある。
だが、今のレイネスにはスーパーアーマーが発動していて、当たりはするが身をのけ反らせるには至ってない。
あちらも何か隠し技を使うらしい……おそらく、ミルートの言っていたレールアクションの3つ目、二人の固有レールアクションを合わせたという、ツイン固有レールアクションだ。
何をするかは分からないが、単純計算で固有レールアクション二倍の威力を持っていたとしたら、1つの固有レールアクションを使っているエンルでは……
その時、レイネスに大きな変化が現れた。
リアパーツに付く両腕に、両戦乙女の大剣、白い右腕にジークリンデ、黒い左腕にジークムントがそれぞれ、レイネス自身の両手に、両戦乙女の小剣が握られた。
多分あれで準備完了の姿なんだろう。
だが、こちらもまだ負けていない。
『行くんだ、エンル!』
「はぁぁぁぁぁ!」
威嚇射撃を続けながら変化を続けるレイネスへと近づいていたエンルは、ついにレイネスの懐、攻撃の間合いへと入った。
よし、こっちの方が早い!
その瞬間、使ったことのない筈のエンルが、自らのプログラムに刻まれた固有レールアクションの名を唱えた。
「一刀、両だーーーーーん!!」
射撃を終えたパイルバンカーに刃が戻り、エンルが振るう先にいたレイネスのボディを、
ズバン!
左下から斜めに切り裂いた。
『うわ…………』
レイネスの力弱い声が聞こえ、変化が、止まった。
それと同時、
バリーン!
スーパーアーマーの防御が遂に砕け、レイネスは後ろへと吹き飛ばされた。
『あわ…………ま……け……』
リアパーツの両腕と両手に握られた剣が落下。更に少し飛んでからレイネスは床に落ちた。
すると、レイネスのボディに青白い光が纏った、かと思うと光は消え、そこにはレイネスではない元のネイキッド素体が横たわっていた。
『おー、やるねー』
ミルートの声が聞こえた。
『レイネスに設定した体力が0を下回った。キミ達の勝ちだ』
説明 | ||
二人の能力を持っている、ゆえに二人の能力を扱うことが出来る という感覚で創ったのが、このアルトレイネスです。 原作となったゲームでは、まずありえない出来事が起こっていますが、これこそ二次創作の醍醐味、という感じで。 |
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