おっさんPとアイドル(律子編) |
我が765プロのプロデューサー殿。私のプロデューサーとしての先輩でもある人。
見た目というか……実際の年齢もそうだけど、事務所の皆からは『おじさん』だなんて言われてたりする人。
私は彼の後輩ということになるからプロデューサーと呼んだりプロデューサー殿と呼んだりしている。
まぁ、最近は『殿』をつけて呼ぶと嫌そうな顔をしているんだけどね。
それを分かっていながらわざと『殿』をつけて呼んでいる私はきっと性格が悪いのだろう。
だけど、それを止めるつもりはない。別にバカにしているわけではないし、尊敬をしているからこその呼び名なのだ。
それに彼をそういう風に呼べるのは私だけだから…………
さて、今日の仕事も終わったことだし事務所に戻ってプロデューサー殿の顔を見て……いや、仕事の報告をしましょうか。
「ただいま戻りましたー」
元気に挨拶をしながら事務所に戻ってみたけど、誰からの返事もない。
事務所のドアが開いていたってことは誰かが居るはずなんだけど……いや、居てくれないと困る。
こんな無防備な状態で事務所を空にするのは許されることではないのだから。
「誰も居ないんですか……?」
声をかけながら事務所に誰かいないかを調べる。
アイドルはいなくてもプロデューサーか小鳥さんのどっちかは居るはずなんだけど……
「本当に誰も居ないのかしら?」
本当に誰も居ないのなら、事務所を空にした犯人にはシッカリとお説教をしないといけないわね。
世間は物騒というわけじゃないけど、安全というわけでもないのだから。
「まったく……あっ」
呆れて溜息が出そうになったところで人影を発見した。
誰も居ないと思っていたけど、ただ寝ていただけだったのか。それでも無用心な気もするけど。
「すぅ……ぐぅ」
小鳥さんが寝ているのかと思って見てみたら、寝ているのはプロデューサーだった。
「プロデューサー……」
気持ちよさそうに眠っているプロデューサー。きっと仕事で疲れて眠ってしまったのだろう。
「まったく、あなたという人は……」
碌に休まずに仕事ばかりしていたのだろう。そして限界が訪れて事務所で眠ってしまった。
この人がこうやって誰かの前で寝ることはないから。だから事務所で無防備に寝てしまっているのは、それほど疲れているということだ。
「きちんと休憩を取って下さいよ」
眠っているとは知っているけど、それでも文句を言わざるを得ない。
この人はすぐに無茶をするから。年だってそこまで若くないのにアイドルのために無茶ばかりをしてしまう。
「あなたに倒れられたら皆が困るんですよ?」
仕事が出来なくなるから困るわけじゃない。心配で不安になるから困るのだ。
皆には『おじさん』だなんて言われている人だけど、それだけ皆の心の支えにもなっているのだ。
そしてそれは私にとっても……
「プロデューサー起きて下さい」
本当はこのまま寝かせてあげたいけど、続きはプロデューサーの部屋でしてもらおう。
このまま誰も帰ってこないとも限らないし、こんな所で眠ってしまっては風邪を引きかねない。
だから少しだけ心が痛むけど、プロデューサーを起こす。
「ん、んぅ……」
「起きて下さいプロデューサー殿」
「……律子、か?」
「はい。私です」
もそもそとプロデューサーが目を覚ます。よほど疲れていたのだろう、動きがかなりゆったりとしている。
こんなにも疲れているのならもう少し寝かせておきべきだったかしら?
いや、でも……プロデューサーだって他の人に寝ているところを見られたくないはずだし……
自分の選択が正しかったのかと、不安になり悶々としてしまう。
「どうしたんだ律子」
「あ、いえ……ちょっと自分の行動が正しかったのかが不安になりまして」
「律子が何に対して不安になっているかは知らないが、自分で選んだのなら信じるしかないな」
「……」
「それでもし間違っていたら素直に謝ってやり直す。それしかないだろ」
「それは、プロデューサー殿の経験からきているモノですか?」
「あぁ。これでも無駄に年はとっているからな」
「なるほど……勉強になります」
「はは、律子が立派なプロデューサーになれることを願っているよ」
プロデューサーと会話をしていると、いつもこの言葉を言われる。
お世辞なのか冗談なのか分からないけど何気にこの言葉は嬉しいと思っている。
これを聞くと頑張ろうって気になる。少しでもプロデューサー殿に近づこうと気合が入る。
「それにしてもプロデューサー殿。きちんと休みは取っているのですか?」
「うぐ……実はあまり取っていないな」
「きちんと休むこともプロデューサーの勤めですよ?」
「はは、そりゃそうだ。律子に偉そうなことを言っておきながら情けない限りだ」
「まったく、少しは周りの人にも頼って下さいよ」
私ではまだ頼りないかもしれない。
だけど、少しでもあなたの負担を軽減することが出来るのならば頼って欲しい。
だって私は――
私はあなたのことが、プロデューサーのことが好きなのですから。
好きだからこそ頼って欲しいと思う。倒れられて欲しくないと思う。あなたが大切な人だから……
「すまないな律子」
「ぁ……」
ポンポンと私の頭を撫でてくれるプロデューサー。
「家に帰って少し寝てくる」
「はい。お休みなさいプロデューサー殿」
「あぁ。俺が言うのもアレだが、律子もちゃんと休めよ」
「分かっていますよ」
倒れてプロデューサー殿に面倒を見てもらう。それも素敵かもしれないけど、負担をかけたくはない。
だから私が一人前になるその時まではシッカリと体調を整えて、仕事をしますよ。
もし私が一人前の立派なプロデューサーになれたその時は――
あなたに私の『恋心という』我儘をぶつけてもいいですか?
説明 | ||
りっさんですか? いいえ律子です。 はい、今回は律子ですよ律子。 |
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アイドルマスター 秋月律子 P | ||
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