IS~音撃の織斑 二十二の巻:鬼の迷い
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グラウンドに出ると、既に他の代表候補生と教師達がISを纏って戦っていた。相手は背中に巨大な針を幾つも持つ二足歩行の魔化魍、ヤマアラシだった。

 

「何なのよ、あれ?!」

 

「信じられませんわ・・・・攻撃が全く効かないなんて・・・・!?」

 

「何と言う生き物だ・・・!」

 

鈴音、セシリア、箒も苦戦している。攻撃と言う攻撃が全く通用せず、ヤマアラシの針攻撃によってまともに近付く事すらままならない。

 

「はああああ・・・・・・はあっ!!」

 

荊鬼は空から飛び降り、ヤマアラシを雷撃蹴で後ろに吹っ飛ばした。

 

「あれは・・・?!」

 

「あの時の・・・!!」

 

「やはり、味方なのでしょうか?」

 

「総員、待機だ。」

 

オープンチャネルから千冬が指示を出す。

 

「しかし・・・!」

 

「奴は恐らくコイツらを倒すエキスパートだ。アリーナにも突入して来た時も何の苦も無く倒した。待機だ、良いな?」

 

 

 

 

 

さてと、俺はとりあえず雪月刃を使って飛んで来る針を全て弾き飛ばし、球状の鬼火を吐き出した。足元辺りに接近すると、俺は脚を切り付け、刺した。

 

『ブオオオオオオ!?』

 

足場が崩れた所で、音撃震を装着、深々とそれを突き刺した。

 

「音撃斬、雪崩嵐!」

 

(集中しろ・・・集中しろ・・・・!あの感覚を・・・・感覚を掴み直す!)

 

再び二段変身を試みる荊鬼。片から下の両腕が炎に包まれ、その炎が音撃弦を伝って鬼石に向かって流れ込み、清めの音の波動が強くなるのを感じた。

 

『ブオオオオォォォオオオオオオ!!』

 

最後に断末魔の悲鳴を上げながら、土塊になって吹き飛んだ。

 

「お前、何者だ?」

 

打鉄を纏った千冬が近接ブレードを荊鬼に向けながら詰問する。荊鬼は切っ先を撥ね除け、地を蹴ってジャンプした。それと同時にアカネタカを起動、巨大化させてそれに飛び乗り、森の方に消えて行った。

 

「逃がさんぞ!」

 

(ここに魔化魍がいるとしたら・・・・姫、童子、そして一番問題になるクグツがどこかにいる筈・・・・!)

 

だが、捜索を邪魔され、地面に落とされた。イグニッション・ブーストで接近し、ブレードの峰でアカネタカの翼を折ったのだ。術が解け、アカネタカは元のサイズに戻ったが、荊鬼はどうにか着地し、音叉剣を引っ張り出した。

 

「答えろ。貴様は一体何だ?」

 

「・・・・知る必要は無い。っ!」

 

気配を感じて、千冬の頭上を飛び越えて後ろに立ち、飛んで来た物を叩き落とした。

 

「「鬼か・・・・よくも我が子を・・・・許さん・・・」」

 

山賊意匠の男女一組が姿を変えて姫と童子が針を飛ばしながら近付いて来た。

 

(糞・・・!)

 

飛んで来る針を弾き、背中に背負っていた雪月刃を地面に突き刺し、音撃棒を構えた。

 

「下がっていろ、お前では奴らを倒す事は出来ない。」

 

だが、警告を振り切った千冬は彼らを攻撃した。

 

「何・・・?!」

 

だが、その振り下ろされた近接ブレードはバキリと折れてしまい、逆に殴り飛ばされた。絶対防御が発動し、シールドエネルギーが尽きてしまう。

 

「だから言っただろう?何故警告を聞かない、織斑千冬?」

 

だが返事が返って来る前に怪童子と妖姫が襲いかかって来た。馴れた手つきで音撃棒をエスクリマのスティックの様に振り回し、殆ど片手ずつで二体を同時に相手取っていた。一度距離を取ると、一旦音撃棒をしまい、雪月刃を地面から引き抜いてそれを槍の様に投げつけた。狙い通り、妖姫に突き刺さった。

 

「これで終わりだ。」

 

印を結んで両手の指先を胸の前で合わせると、両手の間にバチバチと火花が走った。火花はやがて小さな輝く球体に変わった。サイズはゴルフボール大差無い。

 

『鬼闘術:((雷撃衝|らいげきしょう))!』

 

これを怪童子に向かって全力で投擲すると、未だに雪月刃を抜こうとしている姫を踏みつけて固定し、音撃震 羅雪を装着した。

 

「(トドロキさん、今だけ技借ります!)音撃斬、雷電激震!」

 

姫と童子は、跡形も無く消し飛んだ。荊鬼は千冬を見下ろす。

 

「俺が誰か、そう聞いたな。俺は・・・・荊鬼だ。」

 

そう言い残し、戦闘で刺さった針を抜き取り、その傷を気合いで治した。千冬を連れ戻そうかと思案したが、恐らくモニターで千冬のISの反応が無くなった事で慌てて増援を寄越すと思い、放置したまま密かに部屋に戻った。新聞部では、既にこの事件を取り上げ、学級新聞でも大騒ぎ。この『謎の戦士』は一体何者なのか?こう言う話も囁かれている。

 

「まずいな・・・・」

 

「マズいですね、兄様・・・・」

 

「師匠、いよいよ昼間での活動が難しくなりました。」

 

『だろうな・・・・仕方無い・・・ここまで来ると、IS委員会も目をつけるだろう。魔化魍どころか鬼の存在まで警戒する筈だ。いつも以上に、用心しろ。委員会も当然女尊男卑に染まったクズ共だ。鬼が男だと分かるや何をしでかすか分からん。』

 

「分かりました。」

 

電話を切ると、一夏は深い溜め息をついた。

 

「兄様・・・・」

 

ラウラは少し((窶|やつ))れた様子の一夏を心配そうに見た。

 

「大丈夫だ・・・絶対に・・・・」

 

「はい・・・・所で。」

 

「ん?」

 

「実は簪から伝言を預かっています。出来るだけ早く屋上に来る様にと。」

 

「屋上に?分かった。」

 

一夏は重い腰を上げると、屋上に向かった。確かに、そこには簪が立っていた。

 

「俺に用があるって?」

 

「うん・・・・あの、ね・・・・わ、私・・・・・一夏が、好き・・・・なの・・・」

 

数秒の沈黙。簪は自分の言った言葉に顔を真っ赤にしている。

 

「え?でも、何で俺なんか・・・・」

 

「それは、貴方が簪ちゃんと私の間を取り持ってくれたから。」

 

全く気配を感じずに、一夏の背後に楯無が現れた。

 

「ISの方も、手伝ってくれたし・・・・」

 

「でも・・・お姉ちゃんも・・・・・」

 

「まさか・・・・!」

 

一夏はとりあえず更識姉妹が赤くなっているのを見て一つの結果に辿り着いた。所要時間は0コンマ三秒。

 

「お前ら二人・・・・・なのか?」

 

「うん・・・・・」

 

「そうよ・・・?」

 

一夏は目頭を揉み、二人を見据えた。

 

「時間をくれ。今は少し・・・・考える事が多過ぎる。」

 

「分かったわ。幾らでも待つわよ。ね?」

 

「うん。」

 

 

 

 

 

 

 

Side: 一夏

 

あー、なんて事だ・・・・まさか姉妹揃って俺を好きになるとは・・・簪は、まあある程度交流があるが・・・・楯無の方は殆ど会ってもいないし、初対面から間も無い。どうした物か・・・・火照った体を冷ます為に、俺はシャワーを浴びに行った。冷たい水を頭から被って心を落ち着かせようとするが、これが中々上手く行かない。二人の言葉が耳の奥でリフレーンを続けている。

 

(確かに・・・・あの二人なら鬼の事を知ってても無闇に話す様な事はしない。どっちも・・・・綺麗だし・・・・あーーーーもう!!!)

 

「兄様?そろそろ夕餉の時間です。」

 

「ああ、分かった。」

 

「簪は一体何の用だったのですか?」

 

「あー・・・ちょっとな・・・・色々と込み入ってるんだよ、事情が。」

 

(時間はある。決めなきゃな。どっちかに・・・・けど・・・・)

 

心に迷いを宿しながらも、時間は過ぎて行く・・・・

説明
はい、いよいよ更識いもう党ないし更識姉妹ヒロイン化の支持をする方々、お待たせいたしました。
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