魔導師シャ・ノワール 無印偏 第四話 見た目は大人!中身は子供! |
「では、こちらの名簿にサインを」
「アルフ」
「ああ、ここにだね?」
名簿にアルフがサインを記入した。
「こちらがお部屋の鍵となります。それではごゆっくりとどうぞ」
「ありがとう。行こうか」
「お、オウ!温泉ッ!温泉ッ!」
「やめろ!恥ずかしい!みっともない!」
あの一つ目のジュエルシードを回収してから数日が立ち。探索やら回収したジュエルシードを解析した結果から。封印が非常に不安定であり、封印が外れ掛けて発動するまでは
とてもじゃないが見つけるのが困難という結論に至った。
そして現在は、海鳴市の北部の山側で微弱な魔力を感知した為。山に来たのだが。
近くに温泉宿があるという理由からアルフが温泉に興味を持ち。
フェイトは使い魔に甘いようで。温泉に入ってきてもいいと許可を出してしまい。
しかしながら地球の常識に疎く。人の姿であっても稀に耳や尻尾を出してしまうアルフが余計な騒ぎを起こすと俺が注意したら
なぜか俺が目付け役とアルフと共に温泉について行くことなってしまった。
相変わらず資金は豊富だった為、余計なトラブルも回避も含めて温泉宿でも高級な宿に日帰りで部屋を借りることとなったのだが。
「ねぇねぇノワール!ノワール!あれはなんだいッ!?」
部屋に移動しながらアルフが何か見つけたようで。目を向けると青い台の上を
オレンジ色の玉がバウンドしている光景が目に入った。
「ああ、卓球というスポーツだ。温泉宿の定番だな」
「あれはあれは!?」
今度はブルブルと揺れる茶色のソファー椅子に座って気持ち良さそうにしている人々。
「あれはマッサージチェアーだ。お金を入れると機械がマッサージしてくれる」
「へぇー!あたしもしてみたいなー!」
「後でな。それよりもう少し静かにしてくれ、頼むから」
見た目は大人のお姉さんなのに。まるで好奇心の強い子供の相手をしているようだった。
いや、フェイトがアルフの最初のご主人だとすれば。単純な人間の年齢に直すと年相応の反応ではあるのだが・・・。
「ねぇねぇ!そういえばさ〜」
「はぁ・・・今度はなんだ?」
「ノワールは、やけにこの世界の事しってるよねぇ?なんでなのさ」
「大分、昔にこの世界で住んでいた・・・ただ・・・・それだけだ」
自分でも分かるほど声が下がりながらやや不機嫌に答えてしまった。
今の俺にとって表の明るい世界は眩しすぎる。
「・・・・そうかい」
その言葉に反応してしまったのかアルフのオレンジ色のしっぽも垂れて....しっぽ!?
「おい!アルフ!」
「わっ!な、なんだい急に大きな声だして?」
「しっぽだ!しっぽッ!出てるぞ!」
「わっ!?ととッ」
しっぽを変身魔法でしまい込み。傍から見てコスプレ女からただの外国人のお姉さんに戻った。
「気をつけろ。目立つ真似は特にな」
「ご、ごめんよ〜」
「ふう・・まったく。手が掛かるワンちゃんだな」
「むう〜!」
「冗談だ。そう怒るな」
やや頬を膨らませて不満げにアルフが唸る。まだそれほど付き合いは長くないが
毎食の食事を俺が用意していることもあって。素体が犬ということもあり。
それなりに仲は築いていた。まあ、仲間と認識される程度には、だが。
そして、なんだかんだと言っても俺も温泉は楽しみだった。なにしろ彼是10年ぶり以上である....
部屋で浴衣に着替えてからアルフと共に大浴場に向かう。
いい宿ということもあり家族風呂なども用意できるらしいが予約制であり。どうせなら大きな風呂で伸び伸びと入りたい。
アルフが女風呂で仕出かさないか不安ではあるが。もしもの時は苦手であるが結界でも張って防ぐとしよう。
「・・・ノワール」
「ん?・・チッ、どんなエンカウントだ」
廊下の先から楽しそうに話しながらこちらに歩いてくる浴衣姿の少女が三人。その中の栗色の少女は
最初にジュエルシードを集めた時に斬りつけた、高町なのはという魔導師だった。
ご丁寧に使い魔らしき動物まで一緒である。
ここは知らん振りを決め込むに限る。アルフは初対面で
幸い俺はマフラーで顔を隠していたので、声を出さない限りばれないだろう。
「おい、アル「フフッ、ハーイ!おチビちゃん達ー!」フ・・・・」
注意しようとした矢先に、まるで親しい知り合いにあったかのように声を弾ませて近づいていくアルフ。
どうやら見た目はお姉さんでも、やはり頭の中は犬レベルらしい。
「フンフン・・君かね〜。家の子をあれしてくれちゃってる子ってのは」
「え、えっ?」
高町なのはは知らないお姉さんに突然話しかけられ。動揺していた。
どうやら魔力の探知はしていないようで助かるが。
「あんまり賢そうでもないし。強そうでもないし。ただの餓鬼ンチョに見えるだけどなぁ〜」
それにも気を掛けずに次々と言葉を放つアルフ。こいつは一度締めといた方が良さそうだ・・・
しかしながら好戦的な台詞と視線で。勝気なブロンドの少女が高町なのはとアルフの間に立ちふさがる。
「なのは、お知り合い?」
「う、ううん・・。知らない人」
「この子、あなたを知らないそうですがッ!」
「フ〜ン・・・え?わっ!イタタタタタタタッ!!痛いよ!ノ、ノワール!?」
ガンを飛ばし始めたアルフに左耳を抓って思いっきり引っ張った。
「真昼間から酔ってなに人様に絡んでるんです?外国に来て開放的になるのもいいですが。ほどほどにしないと怒りますよ」
「わ、わかった!わかったから!痛いよッ!」
思わず抓りあげた耳の負担を減らそうと俺に体を近づけて頭を下げるアルフを無視しつつ言葉を続ける。
「申し訳ありません。連れがご迷惑をお掛けしました」
「い、いえ。私達は別に...ねぇ?」
「う、うん・・・なのはちゃんも平気だよね?」
「・・う、うん、大丈夫。それよりその人すごく痛がってますけど・・・」
そうしている間にもアルフは耳を抓った俺の右手の動きに追随して。小さな悲鳴を上げながら体を大きく上下に動かしている。
「いいんですよこれくらい。人も獣も痛みを知らないと覚えませんから」
「「「は、はぁ」」」」
「ほら、謝ってください姉さん」
「いひゃいよ〜・・ご、ごめぇんなしゃい〜」
耳を離すとすっかりと目に涙を溜めて。涙声にアルフが謝った。
アルフの耳はすっかり腫れて真っ赤になっていたが俺は悪くない。
「い、いいんですよ。お酒の所為ですから」
高町なのはに気取られずに危機は去り。お互いに会釈をしてその場から立ち去ろうとしたが。
【こ、これで勝ったと思うなよー!】
突然、無差別にアルフが通信魔法の念話を跳ばしてしまう。
「「ッ!?」」
「この(馬鹿犬が)・・・」
その言葉に高町なのはと肩に乗っていたフェレットが反応してしまった。
【家のご主人さまはお前なんかよりずっと強いんだからなー!】
どうやら怒りの矛先を彼女に向けてしまったらしい。
「なのは?」「どうかしたの?」
「う、ううん。なんでもないよ〜」
念意に気を取られた高町なのはが友人に呼ばれゆっくりと再び歩き出した。
通路の角に3人が消えるとその方向に向かってアルフが舌を出して「ベ〜だッ!」と怒っていたため。
とりあえず、残りの浴場までの残りの道は赤く腫れてない右耳を今度は引っ張って歩き出したのは仕方ない。
「う〜・・・・耳が〜いひゃいよ〜」
「自業自得だ・・・それで?なんで俺まで女湯にいるわけ?お前、俺が男って知ってるよな?」
いま俺が居る場所は男なら誰でも憧れそうな場所。つまり・・女湯に連れ込まれていた。
「別にいいじゃないかさ〜。入り口に10歳未満は性別関係なくどちらでも入れるって書いてあったでしょ?」
「そ、それはそうだが・・・」
「それに自慢じゃないけど、あたし!一人で髪洗えないからッ!!」
アルフがビシッと効果音が入りそうなほど人差し指を伸ばして俺の鼻先に向ける。
「ほんと、自慢にならないな。それは」
それに対して俺は呆れるばかりだった。
「だって〜自分でやると目に入って沁みるんだよ〜」
「そんな事、俺が知るかッ。というか餓鬼かよ」
「た〜の〜む〜よ〜!」
「わっ!ちょお前!そんな格好で抱きつくなッ!」
脱衣所でいつの間にか裸になっていたアルフがタオルも体に巻かずに抱き付いて来た。
「大丈夫だって!ノワールは見た目が女の子みたいだし。アレさえ隠せば全然バレやしないって」
「うるさいよ!ほっとけ!」
「まあまあ♪」
そうこうしている内にアルフに組み敷かれ。着ていた浴衣と下着を剥がれてしまい。
体にタオルを巻かれてアルフにそのまま浴場まで担ぎ込まれてしまった。
こうなっては仕方ないと諦め。幸い中途半端な時間ということもあって入っている人は案外少なかった。
とりあえず、先にアルフの髪を洗い。アルフ自身で自分の体を洗わせて、その隙に俺も手早く丁寧に体を洗ってから
湯船に向かう。するとそこにはまた、見た顔が居たわけで....
「お?お、おお?たしか君は....」
「げっ・・喫茶店のメガネ娘・・・」
「ちょ、ちょっと!お風呂で今メガネ掛けてないし。それに私には高町 美由希ってちゃんとした名前があるんだよ?」
「誰も聞いてないぞメガネ」
「う、うわ〜相変わらず毒舌だよ〜」
残念ながら俺はあの時の仕打ちを忘れてはいない。
「美由希ちゃんのお知り合い?」
さらにその横に居たやや紫色の入った黒髪の若い女性が高町美由希に尋ねる。
「うん、一度お店に来た子でね。名前も聞き忘れたんだけど。ほら、お店に可愛いメイドさんの写真増やしたでしょ?」
「ああ、あの子ね。道理で見たことあると思って・・あれ?たしか男の子だったんじゃ?」
「ところが実は女の子だったッ!とか?」
なにやら無視できない言葉を聞いたような気がするが後で追求しよう。
「気味の悪いこと言うな。俺は男でここに居るのは「ノワール〜♪」こいつのお守り(おもり)だ」
後ろから湯船に波を立てながら抱きついて来たアルフに呆れつつ二人の疑問に答えた。
「なに話してるのさ〜?」
「いや、町で知り合った人と偶然会って。ただ話しをしていただけだ」
「ふ〜ん。それより温泉気持ちいいねぇ!」
「ほら、向こうの扉から露天風呂っていうのに入れるから行って来いよアルフ」
「おお!なんだかすごそうだねぇ!ちょっと行ってくるよ!」
すぐさまアルフは興味が移り。浴場にある注意書きの走るな!という文字も無視して全力で露天風呂に走っていった。
「うわ〜パワフルだねぇ」
「フフッ元気で仲がいいお姉さんですね」
「ええ、本当に・・・まるで駄犬みたいで困ってますよ」
さらりと本音も暴露しながら、改めて自己紹介をする羽目となり。
魔導師の高町 なのはの話も自然と聞いても居ないのに聞かされた。
良ければ友達になってあげてなどと言われたのには苦笑を隠すのが大変だった。
正直、子供と戦うのはあまり好きじゃないが。一度刃を向けた相手と友達になれるわけが無い。
殺す気で向かい。偶々、彼女のバリアジャケットが俺の剣を防いだに過ぎない。
偶然、装甲の無い首などに当たっていたら先ほど友人達に囲まれて笑っていた笑顔など永遠に浮かべることはなかっただろう。
精々彼女には、注意して戦いから遠ざけるのが限界だ。今は、フェイトの指示で非殺傷の設定を入れているが。
射撃魔法などと違い。デバイスによる直接攻撃ではやや効果は薄く斬撃が鋭い打撃に変わるだけで。
場合によっては相手を殺してしまう。近接攻撃故の長所であり加減という事でなら短所でもある。
戦いになれば俺は容赦なく再起不能にするだろう。
だがやはり気持ちいい良く戦える相手ではないので。
この美由希という高町なのはの姉に忠告として伝えるのはあれだが。
高町士郎には軽く伝えた方がいいかも知れない。と、心の中で思いつつ話しを弾ませ。
既に大分前から入っていた高町美由紀とその友人の二人は温泉から上がり。
すっかり露天風呂が気に入ったのかのんびりと湯船に浸かっていたアルフに俺も先に部屋に戻ると声を掛けて温泉から上がる。
唯でさえ温泉とは体が温まりやすく。小さな子供の体ではのぼせるのも早い。
適度に脱衣室に置かれた扇風機で涼んでから。浴衣を着て脱衣室を後にした。
その後、決まってやることと言えば....
「んっんっ!ぷはぁ〜!この為に生きてるなー!」
売店で売られていた瓶入りの真っ白な牛乳を右手に持ち左手を腰に当てて一気に飲み干して思わず声を上げていた。
「おいおい、なにおじさんみたいなこと言ってるんだい?ノワール」
「あ?」
後ろを見るとふっと沸いたように年齢不詳 闇の住人を辞め 今では駅近くの喫茶店のマスターである高町士郎が立っていた。
「うわッ!気配を消して後ろに立つなよ!!」
これでも俺は人の気配に敏感である。完全に高町士郎は気配を絶って後ろを取って来たのだ。
「まだまだ青いね〜君は」
「じゃじゃ〜ん♪私も居たりして?」
高町士郎のうしろからちゃっかりとこれまた年齢不詳の士郎の妻が現れた。
「酷いわ〜。私だって桃子って名前があるんですからねー。ノワールちゃん♪」
「夫婦そろって気配まで消すばかりか、人の心まで読まないでください・・・」
本当に何者だこいつら・・・・思わず魔力資質を探るが俺の探知能力が低いのか全くのゼロ。二人からは魔力を感じない。
「いや〜にして偶然だねぇ。美由希がねここにノワールが来てるって言うものだから
風呂上りになればここに来るって予測して隠れてたんだよ」
「また馬鹿な事を・・・士郎は悪戯好きの子供か?」
「フフン、若さの秘訣は遊び心を忘れないことだよ」
「そうそう、どんなことも遊び心をわすれてはダメよ」
「誰もそんな事聞いてない。この馬鹿夫婦」
「つれないな〜」
「つれないわね〜」
夫婦揃ってこれは馬鹿なのだろうか?いや、人目も気にせずに肩を組んで寂しがるところから。
新婚気分が抜けていない仲のいい馬鹿夫婦なだけか。結局、馬鹿だが。
だが、残念にも悪い人間ではないので始末に終えない。とりあえず、フェイト達には勝手ではあるが伝えておこう。
「士郎、少し二人だけで話したいんだが」
「ん?・・・わかった、とりあえず人気の無い場所に行こうか。すまない桃子、少しだけ出てくる」
「んっ・・わかったわ。士郎さん」
「すいません桃子さん」
「ううん、気にしないでいいのよ。またねノワールちゃん」
俺の真剣な目におちゃらけて居た二人は直ぐに悟ってくれたのか。
高町士郎の案内で人気の無い宿の庭に二人で向かった。
庭に辿り着き。丁度、置かれたいた長椅子に並んで座り。話しを始める。
「ここでならいいだろう。で、話ってなにかな?なにやら真面目な話みたいだけど
もしかして何か困った事にでも遭った?」
「そう・・ですね・・・。実は、今受けている仕事に士郎さんの娘さんが関わろうとしているみたいで」
「えっ?美由希の事かい?」
まあ、普通はそう思うだろうな・・・。
「いいえ、高町なのはさんですよ」
「なのはが?君の仕事は...っても言えないよね?」
「すいません。雇い主などに言明はされてませんが人には言えない仕事ですから」
魔法に関わらず。闇の仕事では口が軽いと生きていけない。
「まあ、それは仕方ないよ。それより教えてくれてありがとうな、ノワール
最近夕方とか夜に娘が出かけていたから少し気になっていたんだ」
なにか引っ掛かりが取れたのか。以外にも高町士郎の顔は穏やかな表情だった。
「出来るならもう関わらないように言ってください。最悪の場合、死ぬかもしれません」
「う〜ん・・・困ったな〜」
「はっ?」
普通の親ならここで困ったな〜などと言う前に死ぬという言葉に反応して今からでも飛び出して行って。
直接、娘に止めるよう、訳も聞かずに言いそうなものだが。高町士郎の反応はややずれていた。
「いや、ちょっと娘も誰に似たか結構頑固でねぇ」
「いや頑固とかそういう話じゃないでしょう」
「なのはは、昔から自分で物事を決めれる子だし。心配はもちろんするんだけど・・・
なにか遭っても君が助けてくれる気がしてね?」
「・・・なにを勘違いしている。腹を割って話せば、俺は娘の敵だぜ?下手したら俺が今、娘の仇になっていたかも知れないんだ」
「おや、これは以外だ」
そう軽く言いながらも仇という言葉にやや反応し士郎の体に力が入ったのを見逃さない。
「兎に角、一度しっかりと話してやめさせろ。あれはお前の娘のような一般人が関わっていい問題じゃない」
「・・・うん、そうだね。一度話してみるよ」
「ああ、お互いの為だ。しっかりとな」
その後、お互いに終始無言で庭から宿に戻り。其々の道に分かれた。
それから温泉より上がり更にテンションが上がったアルフの相手をして。
日帰りの温泉旅行は終了し。一人で森の中を探索しているフェイトの為におみやげを買い込んで宿を後にした。
説明 | ||
神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。 | ||
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