IS~音撃の織斑 二十四の巻:姉弟の涙 |
一組と四組の合同授業。今回は実際に飛行テクニックをマスターする事になっている。
「では、以前と同じ様にグループに分かれて専用機持ちがリーダーを勤めろ、以上だ。」
六人の専用機持ちの前に、一般生徒達が並んだ・・・・・・一夏の前に。
「ちなみに今から三秒後に出席番号順に並んでいなければ私自らがグループのリーダーを務めるからそのつもりでいろ。」
それを聞いて全員があっという間に軍隊の様に素早く並んだ。
「うっし、お前ら。訓練とは言え、事故は付き物だ。気ぃ抜くなよ?」
隣に立っている専用機持ち達に忠告する。
「はい、兄様!」
「分かってるよ、一夏。」
「当然ですわ、一夏さん。」
「うむ。言われるまでも無い。」
「・・・・分かった・・・・」
そして、開始から二十分弱。やはり専用機持ちとは違って、連続稼働時間も短く、量産機の使用申請の手続きをしなければならない一般生徒は多少なりと操縦に苦戦していた。
「うわー、おりむー助けてーー!」
「全くお前は・・・・」
空中で回転しながら全く勢いを消せていない本音をどうにか受け止めた。
「良いか、サークルロンドをするのに回転は必要だが、自分が回転する必要は無い。まずは円状の飛行、馴れて来た所でそれに加速、減速を加えて行け。馴れていないうちにスピードを上げたままでやったら、怪我をするぞ。」
「う?、はーい・・・・」
「うし、次だ。」
そして、十分程の時間を残して訓練は終了となった。千冬は打鉄を纏う。
「まだ少し時間があるので、これから私とおり・・・・五十嵐で模擬戦を行う。お前達も あいつの実力をしっかり見て参考にする様に。始めるぞ。」
「お手柔らかに、なんて事は言わない。出し惜しみなんて以ての外だ。全力で来い。」
二人は睨み合い、その場の緊張が一気に高まった。そして、二人はイグニッションブーストで互いに接近、ぶつかり合った。激しい剣戟、銃撃、そして衝撃波音が鳴り響き、二人は戦った。鍔迫り合いでお互い一歩も譲らない。だが、そこで虚を突いた一夏は草薙を十王に変形、そして左手のカノンモードで一斉射撃を行った。だが、紙一重でそれを躱され、今度はいつの間にか左手にもコールしたブレードで攻撃して来た。十王を呼び戻して左手のクローと右手の涅槃を交差させてそれを受け止める。どちらも武装がぶつかる度に衝撃で軋んだ。
「何なの、あれ・・・・?」
「あんなに、強かったっけ・・・?」
正に一進一退の戦いを空中で繰り広げる二人をセシリア、シャルロット、そして山田先生まで唖然として見ていた。
「当然だ。兄様は学園に来る何年も前から厳しい修行を積んで来たのだ。教官の実力には勝るとも劣らない。」
ラウラが自慢げに言い張った。
「成る程・・・流石にISでは上か・・・?」
どちらもシールドエネルギーと体力、共にほぼ互角の残量を残している。一夏は左手のクローをシールドに変形させて鬼哭を構えた。一瞬だけ零落白夜を発動させ、狙いをつけて三発放った。当然全て避けられたが、それが曲がった。
(何・・・?!いつの間にあんな事を・・・?!)
「((偏向射撃|フレキシブル))?!私ですらビットの操作で精一杯ですのに・・・・!」
セシリアは改めて一夏の強さを痛感した。その強さの下には、究極の叩き上げられ、積み重ねられた努力があると言うのを聞いた。
零落白夜のエネルギーを避けている間、一夏は左手をクロー、鬼哭を再び涅槃に切り替え、涅槃の連結を解除、その内の一つを投げつけた。追跡機能がついているので、これで計四つの攻撃に追われている事になる。だが、左手に持っていたブレードで弾の一つを打ち消し、更にそれを涅槃に投げつけた。
(残りエネルギーも零落白夜を一瞬とは言え使ってしまったから少ない・・・・・)
戻って来る涅槃を再び草薙に戻すと、千冬に向かって接近し、攻撃を仕掛けた。
「これで、最後の最後だ。俺が極めた我流の一閃二断、見せてやる。」
居合いの構えを取ると、千冬もまた居合いの構えを取った。どちらも微動だにしない。二人を交互に見分け、見ている者達全員が固唾を飲んで見守った。
((次だ・・・次で、勝負が決まる・・・・!!))
二人は残り少ないエネルギーでイグニッションブーストを発動、そして二人が交差し、それぞれの得物が振り抜かれる。ブザーが鳴り、
『勝者、五十嵐一夏!』
勝者を告げた。ISを解除した一夏は、千冬の所まで歩いて行った。彼女もISを解除して立っていた。
「(戦鬼流抜刀術((迷来鬼斬|めいらいきざん))、ぶっつけ成功・・・!)俺、強くなったろ、千冬姉?」
「いち、か・・・?」
久し振りに聞いたその呼び名に、千冬の目は涙で溢れた。
「俺は、超えたぞ。千冬姉を超えたぞ・・・」
そう言いながら、一夏はがっくりと膝を降り、前のめりに倒れた。極度の緊張の中、ようやく戦いが終わったのだ。上半身が地面に叩き付けられる前に、千冬が優しく弟を抱き止めた。
「一夏・・・・今まで本当にすまなかった・・・・」
「俺こそごめん。つまらない意地張って・・・・」
消え入りそうな声で泣きながらも謝る千冬の背中に一夏は腕を回した。懐かしいこの感触に、一夏の目も思わず潤んで来た。
「私を倒せるまでに至るとは・・・・本当に、強くなったな・・・・」
「これが、俺の強さ・・・・」
そして一夏の意識は遠のいて行った。
(全くコイツは・・・間の抜けた顔で眠りおって・・・・)
「授業はこれで終了。私はこいつを医務室に連れて行く。」
涙を拭くと、負けたとは言え清々しい顔で一夏を肩に担いで医務室に運んだ。
「ん・・・・?」
一夏は起き上がると、腕が鉛の様に重い事に気付いた。あれだけ何度も武器を振るって元世界最強とぶつかり合ったのだ、当然の帰結である。
「一夏・・・・大丈夫なのか?」
「腕がすげえ重い。それ以外は特に。千冬姉こそ、大丈夫?」
「馬鹿者、私を見縊るな。お前の姉だぞ?」
「そうだった。」
二人はしばらく黙っていたが、やがて大声で笑い始めた。
「もう少し寝ていろ。ここの所、あまり寝ていないだろう?」
「大丈夫だ、これ位。疲れているのはいつもの事だから。」
起き上がろうとしたが、体の力が抜けてしまい、倒れ込んだ。
「ほら、見た事か。ノートや残りの授業は私がなんとかしてやる。今は寝ていろ、馬鹿者。」
「悪い、千冬姉。」
「織斑先生だ、馬鹿者。」
千冬は薄笑いを浮かべながら医務室を去った。
「これで、良いのか・・・・フフッ・・・ハハハ・・・」
一夏は意地を張っていた過去の自分が馬鹿らしく思えて思わず笑ってしまった。
説明 | ||
はい、一夏vs千冬のファイナルバトルです。短いですが、どうぞ | ||
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コメント | ||
神薙さん、まあ、そんな所です。(i-pod男) つまり、危ないからやめろとかいう事でですね?(神薙) 西湘カモメさん、確かにそうですが、また鬼の事で衝突しますので。(i-pod男) なんだか、あれだけ憎んでいたのにアッサリ和解するとは違和感があるけど?(西湘カモメ) 姉妹の仲は元通り。でも鬼と学園関係者での関係は・・・続編待ってます(デーモン赤ペン) |
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