幽霊のお仕事4
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・・・あれ、市役所?

ああ、俺のあの世に対するイメージが音を立てて次々と崩れていく・・・

「ほら、ぼーっとしてないで受付するよ」

なんだろうな。あれ、近未来!?と思った矢先現実に引き戻されるけど、それも違和感ってゆうのは。

そう心の中で突っ込みつつ俺は窓口の人(?)の前に連れて行かれた。

「死神の花塚です、新しい幽霊を連れてきました。入国手続きをお願いします」

「あれ、遅かったねー、遠くのほうに出ちゃった?火車(かしゃ)使わなかったの?」

「先輩、私まだ免許とってないですし、取る暇ないですよ・・・」

「火車?」

「車みたいなもんよ」

「あははは、そうか、そうだったね、いや〜ほら幽霊になると歳に疎くってさ。さ、それじゃ早速はじめましょうか、座って」

「はい」

そうして俺が座るとなにやら目の前のカウンターの横に設置されているキーボードを操作して、ってあれ?」

「あれ、ディスプレイは?」

「ほいっと」ヴオン

「」

またか、またこれか。全くいい加減にしろ、タッチパネルに始まり市役所でゆるくしてから立体映像形ディスプレイって・・・緩急付けるんじゃねえ!」

「おわっ」

「ちょ、ちょっとあんた何かぶつぶつ言い出したと思ったら、大声出してんじゃないわよ!」シュッ「いてっ」ゴッ

殴られた頭が痛い

「こら、何殴ってんのよ」ピッ

「いつっ」ピシッ

花塚はデコピンされた額を押さえてこちらをにらんでくる

なんで私が注意されなきゃいけないのよ、とでも言いたそうだ。

「まあ、驚いたのは事実だけどね」ピュン

「え?」チッ「熱い!?熱いぞ!痛いんじゃないけどそれ以上の恐怖を感じたぞ!?」

「だって驚かなかったし、逆に驚かされたんだもん」ぷくっ

「だもんじゃないですよ。てゆうか今の動き全然見えなかったんですけど、あなたいったい何者・・・」

「わたしは「こちらは三鬼(みき)先輩。元死神のトップエースですごいひとなんだよ!」です・・・」ピュン

「熱!?何でですか先輩」チッ

「あんたその癖まだ直してないの?人のセリフにかぶせるのは治したほうがいいと思うゾ」ザワ

「ひ!す、すみません」ぺこぺこ

死神やあ・・・

俺はそのとき初めてここはあの世なのだと感じた。

「さ、それじゃ早速はじめようか」

「は、はい」

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「葉野ひろしくん、歳は16、高校1年生、性別は・・・男でいいのよね?」

「女に見えますか?」

「いやいや、設定でさ。たまにそういう子が来るから性転換のサービスもやってんの」

「へ〜」ジロジロ

「わ、私は元から女です!!」

「ははは、では年齢の設定は変えないでいいですか?」

「はい」

「ほい、それでは次にこのメガネをかけてください」

「え?はい」スチャ

何だろう、黒縁のメガネ、度が入ってない

「浄玻璃の鏡ヴァージョン4起動確認、はいそれじゃ頭をからっぽにして目を開けといてね」

「瞬きしちゃだめだよ」

ド、ドライアイになる!

30秒ほどで終わりました

「はいそれじゃはずしてねー「はい」はいどうも。それじゃあちょっと分別するからちょっと待っててね」

「はい」

「これが一番恥ずかしいんだよなー」

「?なあ、浄玻璃の鏡ってもしかして・・・」

「あれ、知ってんの?マニアックだね〜」

「あ、やっぱり・・・」

ここで分からない人のために豆知識

浄玻璃の鏡とは生前した善悪すべてのことを映し出す鏡です、いやな鏡ですね。

「はい終了〜」

「えーっと、トータル 86うち悪14善72・・・」

「・・・」

「へー良かったね」

「で、目立つものだけ残すと悪3善3っと」

「・・・え?」

やっぱり

「それじゃ、善悪が同数となったので天国か地獄、どちらがいいか選んでください」

「・・・」

どしようかな、別にあの事は後悔してないんだけど・・・

「地獄でお願いします」

「いいの?せっかく選べるのに・・・」

「どっちにしてもそんなに変わらないと聞いたんで」

「そうね、そんなに変わんないわね」

「それでは、次に住居なんだけど・・・君の場合おじいばあちゃんがもうすでに生き返っていて、ご両親は・・・あら?お父さんのほうはもう亡くなってこちらに来てるわね、でも・・・そう、ね。お父さんの件は後悔してる?」

「いいえ、特には」

「あの、先輩話が見えないんですけど」

「んーちょっとこれは教えてあげられ「いいですよ」あら、そう?」

「はい、何なら僕から」

「お願いするわ、それじゃあなたは一人暮らしになるから空き住居探してみるわ」

「お願いします」

「・・・」

俺は花塚のほうを向かずに淡々としゃべりだした。

「俺は中学生の頃父親を殺しているんだ、自分の手で」

「・・・」

「俺の父親は一応サラリーマンでな、ちゃんと働いていたんだけど酒が入ると人が変わって鬼みたいになるんだ、顔を真っ赤にして回りにあたる、そんなだったから外では飲めなかったから家で飲んでたんだ、当然暴力は俺と母さんにきた、すごかったよ、たまに借金の取立てやみたいなシーンがドラマであるけど本当あんな感じで、まあ素手だったからまだ良かったよ。でもね、ある日、上司になんか言われたらしくていつも以上に機嫌が悪くてさ、俺もその日はなんだかいつも抑えられているものが抑えられなくてさ、親父が、椅子で母さんを殴ったとき、ああ、もう抑えなくていいやと思ってさ、本当に自然にさ答えを書き間違えたら消しゴムを取るみたいな感じでさ、まな板の上にあった包丁をとってさ、親父の背中を刺したんだ。親父が一瞬止まってさ、倒れて、こっちをにらみつけてきて、やばいと思ってさ、刺したんだ、腹を、胸を、肩を、足を、手を何度も何度もさ。気づいたら回りが真っ赤でさ、母さんは動かなくてさ、とりあえず救急車を呼んでさ、ボーっとしてた」

「あんたは、それで本当に後悔はないの」

「ないよ」

即答だった

「あれ?」

「何よ」

「何でないてるの?」

「え?」ツー

花塚は泣いていた、無く必要は無いのに。

「もしかして同情してくれた?ありがとうね、だけどいいよ、別に。本当に何にも感じてないから」

「・・・そう」

「うん」

「「・・・・・」」

「母さんはね」

「え?」

「母さんは今でも目を覚まさなくてさ、ショックが大きかったんだろうね、たまに目を開けるんだけど、すぐに寝ちゃうんだ」

「そう、ならよかったわね、守りたいものは守れたんだから」

「そうだね、あれで目を覚まさなかったら、俺はどうしてたんだろうな。・・・でも」

「何?」

「いやなんでもない」

でも多分俺は自分を守りたかっただけだと思う、とは言いたくなかった。

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その後、しばらく話していると三鬼さんが戻ってきた

「はい、これの中から選んでね、一応一戸建てとアパートで生活に困らないぐらいのとこを1つずつ選んだけど、どうする?きみ財産が少ないからどっちにしてもバイトしてもらう事になるんだけど」

「ふむ、一戸建てのほうは年65万、アパートは月3000円って!安すぎません?」

「そう?でも風呂なし、台所共有、10畳部屋2つに12畳部屋4つでこれなんだから決めちゃいなよ〜」

「あ、そこらへん死神の寮の近くだ。だったら近くに銭湯もあるしスーパーもあるから便利だよ」

「へ〜」

でもだからこそこの値段は怪しい

「もしかしていわく付きだったりします?」

「いえ、悪いものは付いてませんよ、悪いものは・・・」

「やっぱりか」

「でも悪いものじゃないんでしょ?だったらいいじゃない、何か困ったときは助けに行ってやるから」ポン

「ない胸をたたくといい音なるのねー」

「センパイ!」

「ほほほー」

うーんそれじゃあ(女性であれ助けられると分かったら少し安心したというのは情けないが)

「悪いものじゃないんですよね」

「そうよ?」

「なぜ疑問にするんですか?・・・まあいいです、そこにします」

「あらそう?それじゃよろしくね」

「はい(よろしく?)」

「ええーとあとは学校だけど、そこから一番近いのは死士(しし)高校ね、専門の高校に行きたいとかあったら別のところもあるわよ」

「いいえ、そこでいいです。近ければ遅刻はしないと思いますから」

「プッ」

「しょうがないだろ自分の死因なんだから」

「ごめんごめん」

「それじゃ、死神科か普通科を選んでちょうだい」

「そんなのがあるんですか?」

「そうよ、花塚も死神科に通っているわ」

「ちなみに2年生よ」

「じゃあそっちに入ったら花塚先輩になるのか・・・って2年生!?」

「何よ、文句ある?」

「いや、仕事持ってるくらいだからもっと年上なのかと・・・」

「死神科では1年生のときに訓練をうけて2年からは実習を混ぜていくのよ」

「へー。でもいいや、普通科で。まだ何かやろうとか決まってないし」

「・・・そう」

「ん?どうした?」

「あらあらふふふ」

「何ですか先輩・・・」

「いや、青春してるなあって」

「何言ってるんですか」

「?なんの話ですか?」

「な、なんでもないこっちの話」

「それじゃ普通科ね、学力は問題ないから明々後日から登校して、明日にはもう登録手続き終わってると思うから制服とかもらったりして身の回りを整えてね」

「はい」

「じゃ、これで登録完了。住居あたりの地図だから。それでは、楽しい幽霊ライフを!」

「ありがとうございました!」

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そうして、花塚に連れられてカウンターを2つに分けている中央の通路を通り、奥の扉まできた。

「それではここで案内を終了させてもらいます。本日はありがとうございました、それでは楽しい幽霊ライフを!」

「あいよ」

「なによ、その返事は。先輩にはあんなにげんきよく返事したのに」ブツブツ

「なに?」

「なんでもない」

「?」

「それじゃあこのリングを体のどこかに通して、そこのくぼみを触ると自動的にサイズが固定されるから」

そういわれて、直径はバスケットボールぐらいの黒いリングを渡され、特にそういうファッションには興味がなかったので適当に左手首に通し、言われたとおりくぼみを押すときつくならない程度に縮んだ。

「ほんと、想像してたのと全然違うな」

「それは身分証明書みたいなもの後は時計とかカレンダー、サービス契約すれば念話や伝書通信とかができるわよ。こんど町案内してあげるからそのとき希望するんだったらやるといいわ」

「ありがとう、お願いするよ」

「うん。それじゃあ、初期設定は多分町役場の中になってるから大丈夫だと思うけど、もし他のところに設定しなおせるから、詳しくは説明書を読んで頂戴」ポイッ

「はいよ」キャッチ

携帯ぐらいの説明書だ、暇があるときに読んでおこう。

「それじゃまたね、明日朝に迎えに行くから、寝坊しないようにしっかり寝ておきなさい」

「分かった、本当にありがとうな」

「そう思うんだったら、一日でもなれるように努力して頂戴。お休み!」

そう言って扉に手を触れると空間に解けるようにして消えた。

「ほんと、現実とは思えないな」

さて明日から忙しくなりそうだ。早く新居にかえって寝よう。

そうして、俺も花塚を真似るようにして扉に手を付けた。

 

説明
若干の間が空いてしまってすみません。
それでは今回もよろしくお願いします!
・・・ちょっと設定懲り過ぎました・・・?
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幽霊

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