魔法少女リリカルなのは〜生まれ墜ちるは悪魔の子〜 四十六話 |
アリサたちは驚愕した。
突然、とてつもない怪力と共に投げた石柱に猛スピードで追いついてジャンプで飛び乗ったこともそう。
だが、遠くの空の上で姿が光となって消えたことが最も衝撃を与えた。
「そんな……」
「カリフ……嘘だろ……」
なのはとアルフは信じられないといった表情でカリフの消えた場所を呆然と見つめていた。
今までのカリフからして相手の術中に嵌まってしまったのは初めて見た。
カリフほどの男を嵌めた相手なんかに敵うのか……
そんな不安が頭をよぎった時だった。
「なのは!」
「!?」
バルディッシュのカートリッジをロードしたフェイトが力強く闇の書の意志を見据えていた。
「私たちのコンビネーションであの子を止めたい。すぐ用意お願い」
「う、うん!」
「でもフェイト! カリフ……」
「アルフ……こんな所で私たちが止まってしまったらそれこそカリフは私たちを許してくれないよ。だから信じよう?」
「でもフェイト……!」
アルフはフェイトの手を握って気付いた。
彼女の手も微かに震えていることに。
そして、フェイトも本当はカリフのことが心配で心配で身が張り裂けそうな心地であるということを。
主が気丈に振る舞っているのに自分はなに一人でパニクっているのだろう。
「あ〜……もうっ!」
ゴチャゴチャした頭を整理するためにピシャンッと自分の頬を両手で叩いて持ち直す。
「アタシはユーノと一緒になのはの友達たちとそこの子を避難させるから心配はしないで存分に戦っておくれよ」
「うん、ありがとう」
微笑んで応えるフェイトにアルフも満足気に笑い、プレシアとすれ違う。
その時、アルフは小さく言った。
「今はアリシアも守ってやる……だから……」
「えぇ、私はフェイトたちのサポートと共にあの子を止める……」
「それで何も聞かないでやる……これはカリフに免じてという意味でもだ」
完全に許してもらえたわけじゃない。
だけど、これは小さくも大きな一歩であることをプレシアは感じ取った。
もう少し頑張れば恋焦がれてきた世界が待っている。
過去の過ちを正すため。
母は戦う。
背中を見せて行こうとするアルフにプレシアは呼び止めた。
「待って!」
「……」
アルフは何も言わずに立ち止まると、プレシアは真摯に頭を下げた。
「こんなこと言うのは筋違いなのは分かってる。だけど私は……」
「……」
「あなたたちの未来を見守りたいと思っている。だから……気を付けて」
「……行こう。ユーノ」
「う、うん……」
アルフはプレシアには応えずにユーノと共に魔法陣と共に転移した。
その際に、アリサたちやアリシアの足元にも魔法陣が現れるも、アリサたちはフェイトたちに不安そうに尋ねる。
「なのは、フェイト……大丈夫よね?」
「また、一緒にいられるよね?」
二人の問いになのはたちは固い決意で以て返す。
「うん、また遊ぼう」
「明日も……これからも!」
アリシアとも向き合う。
「初めまして……かな?」
「アリシア……お姉ちゃん……かな?」
「アリシアでいいよ。あ〜あ、どうせならもっとロマンチックな出会い方したかったな〜……」
「にゃはは……」
「残念だったね……」
こんな時でも頬を膨らませて愚痴るアリシアに二人も苦笑い。
でも、アリシアはすぐに優しく微笑んだ。
「今度は皆でパーティーしよ? 今日は忙しくなりそうだから……その時にでもお話しよう?」
「うん……楽しみにしてる」
「絶対に……」
「うん……またね」
再会の意味を込めた別れと共にアリサたちはその場から光と共に転移されて消えた。
なのはたちはそれを確認すると、上空の闇の書の意志へ視線を向ける。
「またね……だって……」
「うん、絶対に負けられない理由ができた」
「だね」
二人は隣り合いながらデバイスを構える。
そんな二人の横にマントを翻したプレシアが立つ。
「あの子の力量は本物、魔力量といい人間の限界レベルを越えてはいるけれど人海戦術でいけば勝機はあるわ」
「……」
「私はもしもの時のための砲撃のための魔力温存でサポートしかできないけど……」
「大丈夫です。母さん」
「……そう」
フェイトの一言にプレシアはもう何も言わなかった。
自分のことをまだ“母さん”なんて呼んでくれる。
自分のことを恨んでも仕方ないというのに、まだ……
(……ありがとね……フェイト)
プレシアは心の中で愛娘に礼を述べながら魔法陣を展開させる。
それと同時になのはたちも砲撃の準備を始める。
「穿て……」
相手も血のような赤のナイフ状の魔力を大量に展開させる。
「行くよ、フェイトちゃん!」
「対カリフ用の中距離コンビネーション……」
今ここに、世界の命運とそれぞれの約束を守るための戦いが始まる……
「ブラッディダガー」
「「ブラストカラミティ!」」
ナイフと砲撃のぶつかり合いにより
海鳴の空を
照らしたのだった。
◆
外では世界の危機が迫っている中、闇の書の中では既に終わっていた。
「ふん、調子のったことをするからだ」
毒づくカリフの目の前には残骸となったカプセルコーポレーションが目の前に広がっていた。
「本物の奴等はただぶちのめすだけでピッコロがほとんどメインだったんだぞ? 嘘くせえにも程がある」
悟空とベジータのいた場所は真っ黒に焼け焦げ、既にスーパーサイヤ人を解いていた。
黒髪をかき上げてその場を立ち去る。
「過去は振り返るためであって逃げ道などではない。奴はそこのとこを分かっていないな」
そう言いながら道路に出て辺りを見回す。
「なるほど……ここはオレの記憶から作った仮想世界ということか……気が全く感じられないのも分かる」
キョロキョロ見回した後に上空へと飛ぶ。
「ということは……はやても別の世界……いや、空間に押し込められているということか」
ここでどうやって脱するかを顎に手を当てて考える。
(気功波で一気にぶっ壊す……いや、そんなことしたら闇の書……じゃなかった、夜天の書自体がぶっ壊れそうだな……)
あまりにリスクが大きすぎるから却下
(気を空間一杯に飽和させてパンクさせる……駄目か、この空間は魔力でできているのだから不純物の気と混ざって大事に至ることもありそうだ)
気による魔力阻害は未知な部分が大きく、この時点では何ともいえないから却下
そうすると、一つの手が浮かんでくる。
(物理エネルギーによる単純な破壊……やはりこれに限る)
だが、この広い空間の壁を探している時間は無いし、逆にめんどくさい。
カリフには拳を使わずとも、自慢の武器がもう一つある。
(久々に喉を鳴らすか……駄目もとだがな)
大きく息を吸う度に筋肉が躍動し、音を立てる。
力を目一杯に貯めに貯めて深呼吸を繰り返す。
ある程度準備運動も終わった。
(偽りとはいえ、お前等にひと目だけ会えて良かった……)
今までの深呼吸よりも深く空気を吸い込む。
(お前等を越える……その目的を改めて認識することができた……里帰りというのはいい)
腹筋がペットボトルが潰れたような音を立ててへこむ。
(あばよ……)
瞬間、カリフは大口を開けた。
「UGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
それは初めてシグナムたちと戦った時に見せた音の爆弾。
強靭な喉と腹筋から繰り出される声だけで周りを破壊し尽くす。
地面は抉れ、建物やら車までもが音の波で破壊されていく。
だが、それだけでは終わらず、音量はさらに上がっていく。
「■■■■■■っ!!」
声にならない声は地面を、建物を、景色を、空を……
世界をも
破壊し尽くしたのだった……
その瞬間、世界の罅から黒い空間が広がる。
「けほ……どうやら当たりだったようだな」
黒い空間はまるで煙のようにかつての故郷を浸食し尽くしていく。
その後、カリフを除いた全ては黒に統一され、黒い世界に一人取り残されてしまった。
「……で、どうしろと?」
一人取り残されたカリフは首を傾げて顎を手で摘まみ一人愚痴るのであった。
◆
一方、同じ闇の書の中
だが、カリフとは違う場所にはやてがいた。
車イスの上で眠りについていた。
はやての前に銀髪の女性が地面に膝を付いてはやてに寄り添っていた。
「ん……」
「どうか安らかに……」
はやての頬を撫でながら女性、闇の書の意志は子供を寝かせつけるように撫でる。
ずっと眠らせている時でも地震のように揺れる。
外の世界での魔導士との戦闘のせいだろう。
だが、その程度であればなんの問題はない。
「う……ん……」
「安心してください。そして安らぎの眠りの中へ……」
振動で倒れそうになる車イスを支えて囁く。
しばらく、その状態が続いた時だった。
突然、一際大きい振動が襲った。
「!?」
闇の書の意志は大きく態勢を崩すもなんとか立ち直した。
「わ、私は……」
反動ではやてが眠りから覚めてしまったのにも気づいていない。
闇の書の状態をサーチして驚愕していた。
(仮想プログラム一つ破壊!? バカな! あの少年がやったのか!?)
闇の書の意志はカリフの仕業だとすぐに見抜いた。
(あれは人の充実した過去を映すプログラムだ! 時間からして覚醒して十分足らずで世界を破壊……過去と決別したというのか!?)
永年に渡って転生してきたが、初めて出会うようなタイプだった。
リンカアーコアとして循環した守護騎士たちの記憶からカリフのことは少し分かっていたつもりだった。
それを差し引いてもカリフの豪胆さ、未来へ突き進む信念はあ予想を遥かに上回っていた。
(少年の位置が分からない……まさか!)
「せや……思い出した……こんな所で寝てる場合やない!」
「! あ、主……」
ここで闇の書の意志ははやての覚醒に気付いた。
はやては闇の書の意志と見上げるようにして向き合う。
「あなたが……闇の書やね?」
「あ、あの……」
「ええ、闇の書が覚醒してあなたと一体となったからかな。今なら分かる。あなたの苦しみと悲しみが」
「……」
「せやから私が何とかする」
「主……」
闇の書の意志は幼いころからのはやてを知っている。
目の前の成長し、優しくも強い意志を含んだ瞳を見て嬉しくなり……
同時に残酷だと思った。
(主が優しければ優しいほど、強ければ強いほど……現実の残酷さに打ちひしがれてしまう……)
この世にはどうにもならないことがある。
それをこの後に知るだろう……
再び流す涙目ではやてを見つめていた。
◆
そして、外の世界でも変化は訪れていた。
膨大な魔力の暴走によって至る所から異常現象が起き始めていた。
街中や海で石柱が生え、もはやなのはたちの世界は元の形を留めてはいなかった。
その上空で閃光が四つ瞬いた。
何度もぶつかっては弾かれる。
それが繰り返されていた。
「アークセイバー!」
「ディバインバスター!」
フェイトとなのはは闇の書の意志を挟みこむように追撃する。
闇の書の意志も片手ずつでシールドを展開して防ごうとする。
「!?」
「させると思って?」
しかし、闇の書の意志の両腕両足を紫のバインドが拘束して動きを止める。
プレシアはさらに魔法陣を展開させて杖を天に掲げる。
「唸れ、雷の十字架!」
紫の光の粒子が闇の書の意志の周りに集い、放電する。
「ライトニング・クルセイダー!」
瞬間、アークセイバーとディバインバスターが当たる直前に雷が十字架を模って爆発した。
上空で凄まじい爆発が起こった。
立ちこめる爆煙を三人は固唾を飲んで見守る。
「完全に通った。だけど、これで駄目なら……」
「大丈夫です。また手を考えます」
「私たちもまだ行けます」
傍らでまだまだやる気を見せる二人にプレシアは苦笑する。
「二人は若くていいけど私ももう歳かしらね……大魔道師が情けないったらありゃしないわ」
「そんなことは……」
「昔はピクニックで山登ってもそんなでもなかったのに……」
「え、えっと……」
フェイトはどうフォローしていいのか分からなくなってオロオロと狼狽する。
そんな困り顔の愛娘にプレシアも笑みが零れる。
「ふふ……冗談よ。ただ、病気も治ったばかりだから一時的に体力が落ちただけ。別にどうってことないわ」
「は、はぁ……」
「色々と納得できないって顔ね。まぁ、私もそうなんだけど」
プレシアもデバイスを構えて晴れゆく爆煙を見定める。
そして、見えたのは依然として宙に浮いている闇の書の意志だった。
「通った感じは無しね……結構ショックだわ」
「ワンパターンの砲撃が通るとでも?」
闇の書の意志の言葉になのはは毅然として返す。
「通す! レイジングハートが泣いている子を救うために力を貸してくれているから!」
「さっきから心が無いって言っているけど、そんな顔で言われたって誰が信じるもんか!」
なのはとフェイトの言葉に闇の書の意志は溢れる涙を拭いながら答える。
「お前たちは何も知らないから希望を抱く……未来を信じる……幼いが故の純心だ。時に純心は鋭利で残酷な牙へと変貌する」
「? 要領を得ないわね。何が言いたいのかしら?」
すると、そこで闇の書の意志に変化が現れる。
自分の胸を押さえて語りだした。
「先程……カリフという少年が闇の書の仮想プログラムを破り、眠ることを拒んだ」
「!?」
カリフという言葉に三人は過剰に反応を示した。
「あの少年はお前たちよりも世の中の汚さを、厳しさを知っているはず……なのに彼は歩みを止めない。自分を信じ、他人を信じている……私には理解し難いことだ」
「……」
「時にお前……フェイトといったか?」
「あ、はい……」
突然の名指しに少々戸惑ってしまうも、何とか気丈に返す。
「このメンツの中でお前が一番彼を信頼しているようだが、何故だ?」
「えっと……どう答えていいのか分からないんだけど……」
しばらく考え、そしてたどたどしくもしっかりと答える。
「カリフは何事からも逃げずに向き合い、立ち向かう強さを持っている……からかな……こうして聞かれると難しくて……ごめんなさい、曖昧な答えで」
「いや、それだけでも私も満足だよ。事実、守護騎士たちの記憶を共有しているからこそ分かる。騎士たちもあそこまで乱暴な少年に絶大な信頼を置いていたのにも関わらず理由なんて自覚していないのだからな。お前が好意を持っていても不思議じゃない」
「はい……って好意ですか!? いえ、私はそんな……! いや、別にカリフのことが嫌いってわけじゃないですし……その……」
フェイトが顔を真っ赤にして答えていると、途端に闇の書の意志は悲しみの表情に戻る。
「幸か不幸か分からないが、先程の仮想プログラムの破壊で夜天の書の守護騎士プログラムが再発した。時期に騎士たちも、主も私から解放されるだろう」
「本当!?」
まさかの展開になのはは目を丸くし、フェイトたちも同じ顔になる。
「あぁ、いずれはカリフも排出される」
「や……」
「やったぁぁ! 良かったねフェイトちゃん!」
「うん!」
なのはとフェイトは抱き合って喜びを分かち合うが、それに対してプレシアは訝しげに問いかける。
「でも、妙な話ね。たった一つのプログラムを破壊するだけで全て元通りなんて……」
「簡単なことだ。彼は見つけてしまったのだよ。“奴”を……」
「奴? だれのことを……」
「この世には力でもどうしようもないことがある……守護騎士プログラムも主も奴にとっては足枷にしか過ぎないって訳さ……」
闇の書の意志の次の一言でなのはたちは言葉を失った。
「彼の純心が彼自身を絶望に付き落とすのも時間の問題だ……」
◆
闇の書の中でもはやてに同じことを話していた。
その話にははやても驚愕しかなかった。
「奴って……そんなに強いん?」
「それが……分からないのです」
「え?」
闇の書の意志の一言にはやても疑問符を浮かべる。
「分からないって……」
「すみません……奴は前の転生の際に闇の書に無理矢理ダウンロードされた改変プログラムですから奴がどんな力を秘めているのかはおろか、姿形さえも見たことがないのです……」
「それならなんで強いって……」
「奴は今こうしている間にも私のプログラムをスキャンして性能をコピー、謂わば私のバックアップとなりつつあります。ですが、奴と私には決定的な違いがあるんです」
「それは何?」
はやてが生唾を飲み込んで聞く。
「それは、奴の方が闇の書を優先的に操作できるということです……お気づきになりませんか? 闇の書の一部だけあなたの管理下に置かれていない部分があることに」
「ん〜……漠然とやけど確かに妙な部分は感じるよ?」
「そこが奴の住処です。そこは私が強制的にシャットダウンしたプログラムのエリアなのですが、日が経つに連れてそのエリアの拡大が止まらないのです……」
「つまり、あなたじゃ制御しきれてないってこと?」
「はい……このままでは遅かれ早かれ私の存在、主さえも奴に取り込まれてしまいます……」
闇の書の意志は涙を流して項垂れる。
その様子にはやては肩に手を置いて叫んだ。
「諦めたらあかん! なんとかして私が止めたる!」
「できません……もう、誰にも……」
「そないなことやってみな……!」
はやてが説得を続けようとした時だった。
「あぐっ!」
「!? どないしたん!?」
急に頭を押さえて苦しみだした闇の書の意志に呼びかける。
「ここに来て……奴が私を取り込もうと……どうやら最終スキャンが始まったようです……」
「そんな……! 負けたらアカン! 気をしっかり持って! 私が付いてる!」
「う、うああぁぁぁぁぁぁ!!」
耐えきれず、悲鳴を上げる闇の書の意志をはやては抱きしめる。
「うぐああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
悲痛に唸る闇の書の意志の耳に口を近付けてはっきりと届く声で言った。
「負けないで! こんな悲しみにのまれちゃ駄目や! リィンフォース!!」
「リィン……フォース?」
苦しみながらも聞き慣れない名前を尋ねる。
「そうや! 強く支える者、幸運の追い風、祝福のエール! これがあなたの名前!!」
「私の……名前……」
「もう呪われた書とか闇の書なんて呼ばせへん! 今まで辛くて悲しい思いをしてきたんや! だから……」
はやては溢れ出る涙を振りまいて一心不乱に叫んだ。
「負けないでぇ!」
「!!」
そして、直後にはやてを中心に黒の世界に光が差し込み、全てを包んだ。
家族を守るための力
それがはやての願い
それがここにきて実った
世界が優しい光に包まれていく中、はやては呟いた。
「守護騎士プログラム修復……破損修復」
再び、熱き心を宿した騎士たちが甦る時が来た。
◆
闇の書の意志……リィンフォースの管理が届かない亜空間
マーブル状の景色が延々と続く世界の中でカリフは歩き続けていた。
「……」
カリフは耳を澄ませ、気を感じ取りながら最果てを目指す。
(ここに生命か何かがいたのは驚いたが、気が小さすぎて特定ができん……しかも時々聞こえてくる音は声……か?)
目を瞑って集中しながら聞き耳を立てていると、また聞こえてきた。
―――……ネン……
「あっちか!」
聞こえた場所を睨み、すぐに舞空術で向かう。
今までよりも鮮明に聞こえてきたため、行動も速く場所もある程度掴めた。
そのまま猛スピードで突き進んでいく。
「……こっちで合ってるよな?」
進みながらも不安になってきた。
なにせ、気はともかく音は時々鳴る程度だからあまり深く探索もできない。
だが、今のでもはっきりと聞こえた方だから自分の感覚を信じてみる。
そのまま突き進むこと数分が経った時だった。
「お?」
前方に何やら丸い物を見つけた。
何も無い世界で初めて見る奇形物に向かってさらにスピードを上げる。
球体は近付くに連れて大きくなっていき、カリフが到着したときにはとてつもないサイズだった。
「でけえな……モスラの繭みてぇ」
血管らしき物が浮かび、鼓動するあまりに不気味な物にも怖気ずに触ってみたりしてみる。
「感触は肉そのもの……味も見ておこう……レロレロレロレロレロレロ……」
執拗に舌を動かして舐めてみると、一つ気付いた。
「ゲテモノは上手いのが常だがなぁ……これは不味くて食えそうもない」
どうでもいい評価を下しながら探索を続ける。
色々とペチペチ触りながら一周しようと歩いていると、唐突に声が響いた。
「だ……れ…だ」
「!?」
カリフはすぐさま跳躍で球体から一メートル離れて構える。
「?」
しばらくして何の反応もなければ敵意も感じられないことに疑問を持ったのかファイティングポーズを解いて再び探索する。
すると、半周した所で見つけた。
まるで繭と一体化しているように半分取り込まれた全裸の男の姿を……
「この顔……似てるな」
そして、カリフの身近な知り合いの顔にも似ていることに疑問を持った。
「そこに……いる……のか?」
「む、言葉は分かるのか?」
「……感覚はあ…る…だが、目は……見えない」
「じゃ、問題は無い。ひとまず聞くけどあんた誰?」
耳をほじりながら質問すると、その繭の男は変わらずに途切れ途切れに答えた。
「ク……ライド……クライド……ハ……ハラオウン」
「クライド……ハラオウンだぁ?」
他人の空似……で済ますようなことではなくなった。
カリフは信じられないと言った表情で見つめた。
彼の知人、クロノに瓜二つの目を開けずに眠る男を……
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主の願い、闇の書の『闇』 | ||
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コメント | ||
次回も、楽しみにしてます!(ryuujin5648) | ||
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