乱世を歩む武人〜第三十二話〜 |
桂枝
「さて・・・そろそろ来るのかな?」
穏やかに晴れた日、私は街の中で人を待っていた。
その人物の名は「華佗」五斗米道の正式継承者であり医者としての技術「は」超一流の男だ。
先日主人に言われて治療を依頼してほしいという内容の手紙を送ったら二つ返事で了承してくれたのだ。そして予定では今日到着することになっているので顔を知っている私が迎えに来た。
北郷にもあわせてやりたがったが今日は三姉妹の公演の護衛の指揮を取りに行ってしまったため2つ先の街にいる。できればどういう反応をするのかに興味があったがまぁ仕方ないだろう。
于禁
「見失ったのー・・・」
楽進
「なんと足の早い・・・沙和と真桜は右から回り込め!私は左から迎撃する!」
李典
「了解や!」
一人そんなことを考えていたら三羽烏が慌てた様子で走って来た。・・・察するに不審者か?
于禁
「あ、荀攸さんなの。凪ちゃん。手伝ってもらえないかなぁ?」
楽進
「ちょっと聞いてくる・・・荀攸さま!今、お時間ありますでしょうか!?」
こちらに気づいた楽進達がこちらへと駆け寄って来た。不審者程度で彼女たちに援護が必要だとは思えないんだが・・・
桂枝
「悪いが・・・客人が来る予定になっていてな。主人への引き合わせを頼まれているのでココを動けない。・・・どうしても俺が手伝ったほうがいいか?」
楽進
「いえ、そういうことでしたら大丈夫です。もし二人の変質者に出会いましたら出来れば足止めをお願いいたします。」
私にわざわざ足止めを依頼するほど・・・か。
桂枝
「変質者か・・・見ればわかるものなのか?」
于禁
「あれを見て変質者と思わない人はいないと思うの!」
李典
「せやっ!人間や無いって言われても納得するくらいの化物やったで!」
そんなにか・・・まぁこちらに被害がないようにしてほしいものだ。
桂枝
「わかった。出会ったら対応しよう。そうだ、今日は霞さんは遠征の予定がない。そんなに言うのならば依頼してみるといい。」
楽進
「そうか霞さまがいた・・・!ありがとうございます!二人共。行こうっ!」
そういって急いで駆け抜けて言ってしまった。
桂枝
「・・・なんだったんだ?」
なんだかいまいち要領を得ないまま一人残された私は首をかしげていた。
華佗
「お?そこにいるのは・・・桂枝か?」
桂枝
「ん?・・・おお。来てくれたか。華佗」
真名を呼ぶ声がしたので振り向いたら今日ここで待っていた昔なじみの友人がそこにいた。
華佗
「やはり桂枝かっ!久しぶりだな!その後はどうだ?姉とは再会できたのか?」
桂枝
「ああ。ここで二人揃って仲良く働いているさ。」
そういってお互いに手を伸ばしガシッと握手をした。・・・あいかわらず燃えているなぁこいつは。
桂枝
「そっちはどうだ?俺が出発してすぐに五斗米道(ゴッドヴェイドー)正統後継者として活動を始めたんだろう?」
華佗
「ああ、もちろんだ。五斗米道に治せぬ病など恋の病以外存在しない!」
桂枝
「・・・む?」
なんか変な単語が聞こえたが・・・気のせいだろう。北郷ならばともかくこいつから発せられるとは思えない単語だったし。
桂枝
「まぁいい。今から我が主人のもとへ案内しよう。慢性的な頭痛らしくてな。俺ではどうすることもできないんだ。」
華佗
「頭痛か・・・分かった!任せておいてくれ!」
こうして頼もしい返事をする華佗を主人の元へと案内したのであった・・・
華琳
「あなたが華佗?」
王宮の間へと取り付いだ華佗への主人の第一声がこれだった。
華佗
「俺を呼んだのは君か?曹操。」
対する華佗も立ち上がったまま頭も下げずに主人に返す。ちなみに私は当然のごとく華佗の横で膝をついていた。
桂花
「こらっ!あなた、頭が高いわよ!」
ソレを見かねた姉が華佗をたしなめる。私としては彼はあくまで「医者」であり「客人」だ。別にいいんじゃないかなぁと思っていたりする。
華琳
「構わないわ。私の困りごとを取り除けるというのならばそれ以上のことは望まないわよ。」
流石というべきか、主人は意に介することはないようだ。
華佗
「困り事か・・・桂枝からは重い頭痛と聞き及んでいるが間違いはないか?」
桂花
「なっ!ちょっと!アンタ今桂枝のこと真名で呼んだわね!」
いきなり怒り出す姉。しまった・・・言ってなかった。
桂枝
「落ち着いてくれ姉貴。こいつは俺の恩人で信頼出来るやつなんだ。だから自分で預けた。信頼してくれていい。」
桂花
「・・・本当なのね?かばっているとかじゃなくて?」
桂枝
「かばうわけないだろ?俺ならその場で首はねてるよ」
桂花
「・・・それもそうね。」
なんとか落ち着かせることに成功。
華佗
「あの怒り様・・・なるほど。彼女がお前のお姉さんか。」
桂枝
「ああ、いい姉貴だろう?」
そういってどちらともなく笑いあった。
華佗
「話を戻そう。頭痛というのはどの程度のものなんだ?」
夏候淵
「我が国は河北四州を収めはじめて間もない。問題が多い分心労が重なってしまってな・・・数日に一度、ひどい時は夜にゆっくりとお休みになれないそうなのだ。」
・・・そこまでだったのか。気づかない自分が情けない。
華佗
「なるほど・・・睡眠は酒にも勝る万薬の長。それは辛いだろう。」
華琳
「ええ、だから桂枝にアナタの話を聞いて呼び寄せたというわけ。どう?この痛み、あなたの五斗米道で癒せるのかしら?」
あ、面倒くさい予感。
華佗
「違う!」
華琳
「なんですって?」
華佗
「五斗米道じゃない!五斗米道(ゴットヴェイドー)だ!」
・・・ああ、やっぱり。昔から発音のこだわりかた異常だったからなぁ。
華琳
「ご・・・ごっと?」
流石の主人も困惑気味だ。普通はあの発音はわからないって一度教えたことがるんだけどな・・・
桂枝
「華琳さま。「ゴットヴェイドー」と発音します。が、今回は気にしなくて結構です。華佗。このことについては後で俺がゆっくりと説明しておくから診察を初めてくれ。」
華佗
「桂枝がそういうのなら・・・わかった。では、早速診察させてもらおうか。」
さて、では私は後ろを向いておこうかな・・・
夏侯惇
「診察・・・はっ!ちょっと待て!貴様・・・診察ということは華琳さまの裸体を見た挙句にその汚い手で華琳さまのお体に触ろうと考えているのではあるまいな!?」
といきなり夏侯惇さんが今気づいたとばかりに叫びだした。・・・この人は何を言ってるんだ?
桂花
「なんですって!」
続いて姉も聞いてないと言わんばかりに叫びだした。・・・いや、姉貴よ。
華佗
「・・・それがどうしたんだ?」
夏候淵
「それはそうだろう、姉者。相手は医者だぞ」
桂枝
「あー・・・姉貴。大丈夫だ。そういうくだらない考えを診察中にするやつではない。俺が保証しよう。」
そんな下世話なこと考えるやつに真名を預けるわけがないだろうということに気づいて欲しかった・・・
桂花
「グッ・・・でもダメっ!ダメよ!男の汚らわしい視線に華琳さまのお姿をさらす時点ですでに屈辱だというのに・・・!」
夏侯惇
「桂花の言うとおりだ!ましてや華琳さまの玉体に触れさせるなど、例え神々が許してもこの夏侯元譲が許すわけにはいかん!」
桂花
「私も許さないわ!・・・そうだ!桂枝!あなたが診察なさい!こいつと同じ勉強をしてきたんでしょう!?」
桂枝
「・・・できてるならすでにやってる。悪いが俺には無理だ。」
私に可能ならば主人の頭痛なんて放っておくわけないだろうが。
華琳
「そう、無理なら仕方ないわね。秋蘭脱ぐのを手伝って。華佗。さっさと見てちょうだい。」
そういって服を脱ごうとする主人。それにきづいたので改めて私は主人を背を向けた座り込んだ。
夏侯惇・桂花
「「華琳さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」
二人の絶叫が聞こえるがまぁ気にしなくていいだろう。
桂枝
「っと、華琳さま。診察が長時間に及んではお体を冷やします。こちらをお羽織りください。」
そういって後ろを向きながら私の外套を投げ渡した。
華琳
「そう、ありがとう桂枝・・・ってアナタ。それの上からコレを着ていたの?」
そういう私の今の姿は実は文官服だったりする。診察がここで行われる可能性を考慮しちゃんと下に準備していたのだ。
桂枝
「ええ、今日は少し肌寒いくらいでしたし問題はありませんでしたよ。」
ちなみに無形は2つに分けて腰から下げている。
華佗
「では、治療をはじめるぞ。いいか?」
華佗の準備も終わったようだし、そろそろ始めてもらうとしよう。
夏候淵
「鍼か。」
華佗
「ああ。我が五斗米道はこれをしかるべきところに打ち込んで治療とする。効果は抜群だ!」
桂花
「ならさっさと始めなさい!これでお風邪を召してしまったら元も子もないわ!」
夏侯惇
「10数えるうちに終えるのだぞ!」
華佗
「弱い病魔ならその程度で終わるんだが・・・」
さて、久しぶりだなぁこいつの治療。直接みることは不可能だけど。
華佗
「さて、ならば行くぞ・・・。」
そして華佗は全身の氣をみなぎらせて・・・
華佗
「はあああああああああああああっ!」
それらすべてを眼力へと集中させた。
桂枝
「相変わらずのすごい氣の量だよな・・・羨ましい。」
背後から感じる華佗の氣を受け私はそうつぶやいた。
氣を完璧に制御下におき「病魔」と呼ばれるものを見つけた後、鍼に氣を通しそれごと打ち砕く。それが五斗米道の治療だ。
だから当然氣の量は多ければ多いほどいい。通常男性よりかは多い私だがそれでも足りないため同じ事はできるが効果は今ひとつだ。おそらく体の疲れを取る程度で終わるだろう。
だがこいつは違う。正式継承であるこいつの純粋な所有量ならば霞さん達英傑を呼ばれるものにも負けていない。
その氣の量全てを五斗米道に捧げ、人の治療に心血を注いでいるこいつだからこそ倒せない病魔などいないと、主人の頭痛も長くて数分で片付くだろうと思っていた。
しかし私のそんな楽観的な予想は・・・
華佗
「な・・・なんだ、この病魔・・・!こんな大物、見たこと無いぞ・・・!」
桂枝
「・・・何?」
そんな一言で裏切られることになる。
華佗
「ぐはぁっ!」
すでに何度目かの吹っ飛び。後ろを向いているため表情はわからないがきっと主人を含む他の皆は何が起きているのかわからずポカンとしていることだろう。
華佗
「ぐぅ・・・っ!この氣あたり・・・一撃の重み・・・この病魔・・・違う。俺が今まで戦ってきたどの病魔とも違う・・・!」
桂枝
「・・・大丈夫か?」
横からみえる華佗はすでに肩で息をしている。汗も尋常ではなくかなりの苦戦が見て取れた。
桂枝
「まあ・・・なんだ。とりあえず一呼吸おいてみろよ。」
病魔が存在しているのはわかるが見えない私にはどうしてこいつが吹っ飛んでいるかがわからない。
しかしとりあえ疲れているのは見て取れたため布と水を渡した。
華佗
「ああ、すまない。」
そういって布で汗を拭き水筒に入った水を一気に飲み干した。
桂枝
「・・・そんなにまずいのか?既に何本か鍼も折れてる音がしてるけど?」
華佗
「ああ、かつてない強敵だ・・・だが、負ける訳にはいかない!この技を授けてくれた師匠のためにも・・・俺の治療を待ちわびる大陸の皆のためにも・・・!」
そういってなお一層氣を燃え上がらせる。
華佗
「我が身、我が鍼と一つとなり!一鍼同体!全力全快!必察必治癒・・・病魔覆滅!」
そういってまた新たな鍼を持ち主人へのほうへと向かう華佗。
夏侯惇
「今、必殺必中とか言わなかったか!?」
桂枝
「「必ず察る」とかいて「必察」。「必ず治癒する」と書いて「必治癒」です。大丈夫。殺すとは言ってません」
夏侯惇
「ややこしいわ!」
正直私もそう思う。
華佗
「げ・ん・き・に・なれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!
再度突撃していく華佗。どこを狙っているのかはわからんが姉と夏侯惇さんの反応がすごいのできっと胸か足あたりなのだろう。しかし・・・
華佗
「ぐ・・・俺は・・・負けてなるものかぁ!」
どうやらまた止まってしまったようだ。そして・・・
華佗
「がはぁぁぁぁぁっ!」
また吹っ飛んで戻ってきた。
桂枝
「・・・大丈夫か?」
満身創痍で倒れる華佗をみてそう言葉をかける。
華佗
「く・・・っ! 確かに強敵だ・・・だが・・・俺は・・・ここで・・・こんなところで倒れるわけには行かないんだァ!」
そういって華佗は立ち上がった。何度となくやられているがその瞳の奥の炎はなおも熱く燃えたままだ。
華佗
「師匠・・・申し訳ありません。最後に頂いた鍼・・・今こそ使わせて頂きます!」
そういって鍼箱を取り出す。そして何か切り札でも取り出すのかと思って見ていたが
華佗
「えーっと・・・こっちだっけ?・・・な・・・ない!あの鍼がない!」
どうやらなくしてしまったらしい。
華琳
「ねぇ、華佗は何をやっているのかしら?」
桂枝
「さぁ・・・自分にはさっぱり。なぁ、華佗。何が無いんだ?」
まぁ鍼だというのはわかるんだが。
華佗
「・・・俺が師匠に最後に譲り受けた「金鍼」という針だ。あれにはそこらの鍼よりずっと膨大な氣が内包されおり俺がそれを使うことでどんな病でも一瞬で光に変えることができるんだが・・・」
・・・なるほどね。氣を込めた鍼か。
華佗
「だ・・・だが!俺は医者だ!絶対に諦めてなるものか!足りない道具は俺の勇気で補ってみせる!はぁぁぁぁっ「待った」・・・桂枝?」
桂枝
「勇気も大いに結構だが・・・これで補えないか?」
そういって私は切り札たる鍼を華佗に渡した。
華佗
「なっ!!これは・・・なんという氣が内包された鍼!一体コレをどこで・・・?」
桂枝
「半年かけて自力で作った。・・・それでもダメか?」
入っているのは私の氣だがそこは何の意志も方向も込めずに作った鍼。こいつの氣に触れればちゃんとコイツの意に沿って動くはず。
華佗
「いや、これだけの氣があれば・・・いける!礼をいうぞ桂枝!」
桂枝
「礼はいい。主人を頼んだ。」
華佗
「無論だ!はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!}
華佗が鍼を持ち改めて氣を高めはじめる。が、先程から少し気になることが一点・・・
桂枝
「・・・なにやら外が騒がしいのですね。」
夏候淵
「そうだな・・・しかしこちらも目が離せる状況ではない。」
まぁそうだろう。華佗の治療も一段落と行きそうだがまだ終らないだろうし。
桂枝
「・・・少し見てきますのでここはよろしくお願いします。」
とりあえずもうすることもないだろうと考えた私は王宮の間から廊下へとでた。
桂枝
「さて・・・火事でもおきたかな?」
そんなことを考えならが廊下を歩き出そうとした私は2つのナニカがこちらに来るのを発見。
そのナニカが謎の奇声を発しながらこちらに迫ってきた。
その姿を確認した私は・・・
???
「ふんぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっぅぅぅぅぅ!!!」
???
「ぬふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅんんん!!!」
死を覚悟した。
今、廊下を爆走しているナニカこと紐パンのみを履いた漢女(おとめ)、貂蝉と褌に胸当て、ネクタイに黒い外套を着ている漢女こと卑弥呼は目の前の文官服の男に気づいた。
貂蝉
「あら?」
「何故か」華佗の金鍼をもっていた二人は他の武将達全てから逃げつつも王宮の間へと駆け込もうとしていたのだ。
卑弥呼
「うぬ、どうしたのだ貂蝉。はやくその鍼をだぁりんに届けなければならないのだぞ?」
貂蝉
「今、その華佗ちゃんがいる部屋の扉の前に。熱〜い視線を送るいい男がいるのよ。」
卑弥呼
「何?・・・なるほど確かにイイオノコだ。」
彼女(?)達はそれを見て走る速度を緩めた。気づいたのだ。このまま突進するだけではあの男に必ず止められるだろうと。
桂枝
「・・・一応意志は通じる生き物だとお見受けします。ここは我が主、曹孟徳様がいらっしゃる王宮の間です。ただいま外せぬ用の最中ですので、お引取りを」
そういって桂枝は無形を構えた。
貂蝉
「あらん。あんなに熱のこもった視線でみつめちゃって・・・」
卑弥呼
「うむ、だがワシらにはすでにだぁりんがおる!残念だがお主の気持ちを受け取ってやることはできんのだ。」
桂枝
「・・・」
対する桂枝は無言で二人を見ている。二人の会話なんて全く聞いていない彼が、思っている事柄はただひとつ。
「ここから先は一歩も通さない。」
二人もそこにある絶対の意志を感じ取った。
卑弥呼
「なるほど・・・どうやらワシも本気で相手をせねばならぬようだな。貂蝉、下がっておれ。」
言われて貂蝉は無言で一歩下がる。卑弥呼は天地上下の構えを取り桂枝を威嚇した。
桂枝
「・・・(死んだな)」
桂枝とて実力差がわからないほど愚かではない。骨格からくる体つき、内包しているバケモノとすら呼べるである氣の量。そして一切隙のない構え。
そして何をどうしてかはわからないがそこにある少しばかりの抱いている劣情に近いナニカ。どこを見ても勝てる要素はカケラも見当たらなかった。
だがもしここで通してしまえばこの二人の姿は華琳の目に止まる。美しいものに目がない華琳がコンナモノを見たら余計に頭痛をひどくすることは自明の理だ。
それだけは避けなければならない。あの曹孟徳が医者に頼らねばならないほどの頭痛。そのタネを増やすことだけは桂枝の全存在にかけて阻止せねばならなかった。
対する卑弥呼に負けはない。しかし桂枝の容姿、その精錬された氣の質を見るに彼女(?)にとってはイイオノコ。怪我をさせるのも忍びない。
おそらく決着は一瞬。「あたりどころが悪くて死ぬか」「気絶するか」の二択というどうあがいても桂枝に未来のない展開。
数秒の間。そんな空気を破ったのは・・・
華佗
「桂枝!すまない。病魔全てを倒すことは出来なかった・・・あれ、卑弥呼に貂蝉。どうしてここにいるんだ?」
桂枝の背後から聞こえてきたそんな声と
霞
「桂枝っ!よう止めてくれた!お前らこっちや!包囲して捕らえるで!」
楽進
「はいっ!さぁ、宮城の周りは完全に包囲した!もう逃げ場はないぞそこの二人!」
彼女(?)達の背後から聞こえてきた大勢の兵士の声だった。
桂枝
「なんだ。あの二人華佗の知り合いだったのか。」
華佗
「ああ、すまないな。迷惑をかけた。」
ひと通り騒動も落ち着いた今、私は城門前で華佗と話をしていた。
あのあと、華佗の治療が終わったと聞くやいなや、何やら離した後即座に反転。廊下横から外に飛び出し城壁を「跳び越えて」どこかへと去ってしまった。
霞さんや楽進さんはすごく悔しそうだったなぁ・・・まぁ私としては見た目以外に害がなく、その外見も主人の目に止めずに済んだとなればとくに問題はない。
桂枝
「まぁいいさ。けが人もいなかったし。それと主人の方なんだが・・・」
華佗
「ああ、お前から預かった鍼を用いてなんとか症状を軽くすることには成功したんだが・・・」
桂枝
「完治には至らずか。」
コイツに完治できないのならばこの大陸に完治できるやつはイないのだろう。・・・それほどの重病と見ていいのか。
華佗
「すまない。世の中にはあんなにも恐ろしい病魔がいるんだな・・・・俺の未熟さ、思い知ったぜ・・・」
桂枝
「まぁ俺の鍼ということもあったしな。・・・次は万全の状態で来てくれ。なんか言われるようなら俺が口添えをするからさ。」
華佗
「頼む。修行して鍛え直し、今度こそあの病魔を完全に打ち破らせてもらう・・・!」
そういって華佗は燃えた。
華佗
「それと桂枝、曹操の病魔だがあれは心と体の疲労から悪化する可能性がある。悪化したらすぐに知らせて欲しいが・・・もしもの時はお前が鍼を打ってやってくれ。」
桂枝
「・・・俺がか?知っているだろう?お前のようには鍼を打つことは・・・」
華佗
「疲労回復と簡単な風邪程度ならお前でも充分にできるだろう?曹操にも伝えてあるから疲労が溜まっていると思ったら打ってやる程度で構わないさ。」
こいつ、主人に俺が鍼打てるのいいやがったのか。疲れる、効果が今ひとつ、絶対に弄られるという理由で話してなかったのに・・・
桂枝
「まぁ・・・機会があったらやっておくさ。その状態にしないために俺達がいるんだけどな。」
華佗
「そういう意味ではお前も不安なんだが・・・まぁいい。頼んだぞ」
貂蝉
「お話は終わったかしらん?」
卑弥呼
「うむ、そろそろまいろうではないか。速くいかんと日がくれるでな。」
唐突に、気配を微塵も感じな方その状態で例の二人は現れた。
桂枝
「・・・・・・・・・どうも。華佗の知り合いだったそうで。」
貂蝉
「誰が筋肉を鍛えすぎたせいで筋肉の塊とかししてしまったマッチョの成れの果てですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
卑弥呼
「落ち着け貂蝉よ。こやつは何も言っておらんぞ」
貂蝉
「・・・あらん?」
マッチョ?の意味はわからんが実際そう思いはした。
卑弥呼
「それにしても・・・なるほど。お主が華佗の言っていた魏にいる知り合いだったのか。」
桂枝
「ええ、華佗とはかつて同じ修行をしていましたから。」
卑弥呼
「なるほど・・・そのだぁりん同様に洗練された氣の流れはそれによるものだったのか。」
貂蝉
「本当に・・・華佗ちゃんやご主人様がいなかったら思わず振り向いちゃうくらいのいい男だわん。」
・・・なんだろう。九死に一生を得るという感覚はこういうものなのかもしれない。
桂枝
「ソレ以外に取り柄がありませんので。・・・とりあえずあなた方は此度の騒ぎを起こした張本人。私だけならともかく他の方に見つかっては何かと面倒が多い。・・・そろそろ行くといい。華佗。」
華佗
「ああ、わかった。それじゃあな桂枝。お前も体には気をつけろよ。」
そういってお互いに踵を返そうとする。
貂蝉
「ちょっとまって。あなた・・・北郷という男に心当たりはなぁい?」
すると貂蝉が何やら話しかけてきた。北郷・・・そんな珍しい名前、知っている限りあいつしかいないだろう。
桂枝
「ええ、今日は所要のため出かけておりますが・・・何か用事でも?」
貂蝉
「・・・いいえ、天の御遣いというからちょっと気になってね?アナタはごしゅ・・・天の御遣い様とはどういう関係なのかしら?」
桂枝
「親友ですが、何か?」
貂蝉
「・・・なるほど。そういう外史なのねここは・・・」
なにやらボソっと呟いたみたいがだが残念ながら聞き取ることはできなかった。
貂蝉
「わかったわ、ありがとう。じゃあ・・・その御使い様と仲良くねん。」
そういって今度こそ三人は背を向け歩き出した。・・・知り合いだったのだろうか。あの目は母親(?)が子供を見る時のような目にそっくりだった。
桂枝
「何やらどっと疲れたな・・・」
今日は色々大変だったからな・・・と私も城へと戻りはじめた。
そんな色々ある中で私が思ったことはただひとつ。
アレを主人や姉の目に触れさせるわけにはいかないので、これから華佗が来るときはあの二人の動向を見ておかないといけないなぁ・・・
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ついにヤツラと会合。 | ||
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コメント | ||
>>不知火 観珪 さん ええ、全くですね・・・出会ってしまい住み着いちゃったなんていいたら洒落になりませんし。(RIN) >> アルヤ さん うまくやれば恋からすら一本取れるかもしれない桂枝ですが流石にアレらは無理です。(RIN) >> 侵略!?イヌ娘 さん 物理的に死ぬor色々な意味で死ぬのまさに「どうあがいても絶望」状態。きっと彼も敵じゃなかったことを心底安心したでしょうね。(RIN) >> 黄金拍車 さん ですよねー。流石に人外の相手をできるほど桂枝も丈夫じゃないんで・・・(RIN) 一刀くん、本城にいなくてよかったな……(神余 雛) あの桂枝をもってしてあそこまで言わせるのかよ・・・・・・(アルヤ) ヤツラに喰われたら男が死ぬも同然だからね、ある意味九死に一生だねW(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ) 姉とは再開したのか?」⇒再会 そりゃ死も覚悟するわなw(黄金拍車) |
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