IS インフィニット・ストラトス 〜転入生は女嫌い!?〜 第四十七話 〜リベンジ・マッチ〜
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数時間前に一夏達と福音が戦っていた場所から約3km程離れた空中、そこに福音はいた。

 

「……」

 

まるで幼子の様に膝を抱えて宙に浮かんでいる光景は迷子の様にも見える。数時間同じ状態でいた福音だったが、その静寂は二発の弾丸によって終わりを告げられた。

 

「!?」

 

いきなり超超遠距離からの攻撃、そしてその弾丸が福音の頭部に突き刺さる。福音は絶対防御を発動、攻撃自体をガードした後その発射地点を一瞬で把握して頭部の羽の様なスラスターを展開、物凄いスピードで空中を駆ける。

 

「くっ、もう気づかれたか!」

 

「ラウラさん、攻撃を!!」

 

「ああ!!」

 

福音を狙撃したのはラウラとセシリア。セシリアはパッケージ“ストライク・ガンナー”を装備して空中から狙撃する。ラウラも自分のISのパッケージ“パンツァー・カノニーア”を装備して砲撃を継続。ラウラの方は元々飛行戦闘には適していない事もあり、福音から5km離れた小島に体を固定して砲撃を行なっていた。

 

「予想より与えられているダメージ量が少ないな。セシリア、接近してきたらフェイズ2に移行だ!!」

 

「ええ、分かっていますわ!!」

 

そう言いながらセシリアは専用スナイパーライフル“スターダスト・シューター”で狙撃を継続する。しかし二人が攻撃を続ける間にも驚異的な速度で福音は二人に迫りあっという間に距離は1kmを切ってしまう。しかしラウラの策はまだまだ残っていた。

 

「シャルロット、今だ!!」

 

「了解っ!!」

 

二人と福音の距離が500mまで縮まった時、いきなり福音の背部が爆発を起こす。慌てて背後に目をやると、そこには右手にアサルトカノン“ガルム”、左手にグレネードランチャーを握ったシャルロットがいた。そのまま急降下しつつガルムによる射撃を継続すると同時にセシリアとラウラも狙撃を再開する。

 

「落っちろぉ!!」

 

ガルムの雨の様な弾幕に押されて海上付近まで落下する福音。福音も((銀の鐘|シルバー・ベル))を放って応戦するのだが、全てシャルロットの追加装備“ガーデン・カーテン”に遮られていた。

 

「一夏、箒、鈴、行けっ!!」

 

ラウラがここにはいない三人に指示を出すと、福音を中心として海から水しぶきが上がった。海上に立った水柱から物凄い勢いで白、紅、紫の三色が福音に襲いかかる。

 

「うおおおぉぉ!!」

 

「はあああぁぁ!!」

 

「くらいなさいっ!!」

 

一夏、箒、鈴の三人がそれぞれの近接武器を展開して福音に襲いかかる。福音は体を一回転させて全方位の銀の鐘を放とうとするが、一夏達の方が一手早かった。

 

「まずはその羽だっ!!」

 

箒が刀で頭部から生えている片翼を切り落とす。一夏と鈴の斬撃は回避されたが一次攻撃の成果とすればまずまずと言った所だろう。

 

「各員気を抜くな!フェイズ3に移行、フォーメーションを組んで福音を行動不能に追い込め!!」

 

ラウラから叱咤と指示が飛ぶ。鈴は福音から距離を取り、ガコンと音を立てながら龍砲を稼働させて炎を纏った弾丸を繰り出す。シャルロットもガルムとショットガン“レイン・オブ・サタデイ”を構えて乱射する。セシリアとラウラは後方からの援護射撃に徹し、一夏と箒は距離を詰めながら斬撃を加えていった。

 

「La♪」

 

しかし福音もやられるばかりではなかった。クロウを落とした時と同じように装甲の各部から羽を生やしてエネルギー弾を放つ準備に入る。

 

『銀の鐘、最大稼働開始』

 

「来るぞ!全員回避行動を取れ!!」

 

「シャルロットさん、お願いしますわ!!」

 

「任せて!!」

 

そして福音から光弾が全方位に向かって発射される。前衛の三人はそれぞれ機動を活かして回避、もしくは武器によって弾丸を撃ち落とす。後衛はシャルロットがセシリアの盾となりラウラは自分の物理シールドで防いでいた。

 

「鈴、箒、タイミングを合わせて仕掛けるぜ!!ラウラ達は援護してくれ!!」

 

「分かった!落ちろっ!!」

 

「くらいなさい!!」

 

一夏から指示を受けてセシリアがシャルロットのシールドの隙間から狙撃を、ラウラも自分の物理シールドを解除してシャルロットのカバーを受けながらレールガンによる砲撃をかけた。二人の攻撃により福音の体勢が崩れて全方位射撃が一時中断される。

 

「いい加減にっ!!」

 

「落ちなさい!!」

 

鈴と箒が同時に攻撃を仕掛ける。すれ違いざまに仕掛けた斬撃は福音の胸部装甲を破壊、人体の弱点が晒される状態となる。

 

「くらえぇぇ!!」

 

一夏が雪片で刺突を繰り出す。狙いは福音の胸部、そこを上手く攻撃出来れば絶対防御が発動して福音のエネルギーは一気に減少するはず、しかしそれで終わる福音ではなかった。

 

「何っ!?」

 

何とスラスターでもある片方の羽が切り落とされているにも関わらず、驚異的な加速性能で一夏との距離を詰める。そして一夏の右腕を握って攻撃を止めた。軍用ISだからなのか、一夏の右腕を掴んだ手は一夏がもがいても簡単には取れず、残っていたもう片方の羽が輝き始めた。

 

「やらせるかぁっ!!」

 

「止めろ鈴!来るなっ!!」

 

「La♪」

 

そこで鈴が一夏を救出すべく双天牙月を構えて飛び込む。福音は一夏に放つ予定であった銀の鐘を鈴の方へと乱射した。

 

「っきゃあぁ!!!」

 

「鈴!!!」

 

装甲がある程度あると言っても、軍用ISの一斉射撃を受ければひとたまりも無い。福音の羽から射出された光弾をその身に受けた鈴はISを装備したまま、海へと落下していく。

 

≪鈴!無事か!?≫

 

落下した鈴に通信を送るラウラの耳に帰ってきたのは、いつも通りの勝気な少女の返事だった。

 

≪あはは、ごめんね。私は一応無事だけどもう戦えそうにないわ≫

 

「そうか、良かった!!」

 

「一夏を離せぇ!!」

 

そこで箒が再び福音へと斬りかかる。福音は箒の武装を見て脅威だと判断したのか、一夏の右腕を離して回避行動に入った。そのまま追撃をする箒を見ながら、一夏はラウラに通信をつなぐ。

 

「ラウラ、どうする!?」

 

≪鈴は無事だ、鈴の救出は後回しにして攻撃を続行する。私とセシリア、シャルロットで隙を作るから、一夏と箒で攻撃を叩き込め!!≫

 

「分かった、箒!!」

 

「ああ!!」

 

追撃をしていた箒が蹴りを入れて福音と距離を取る。福音は空中で踏みとどまるが、攻撃を察知してふとセシリア達の方向を見ると、遥か彼方ではセシリアとラウラが福音に狙いを定めている。

 

「くらえっ!!」

 

「落ちてもらいますわ!!」

 

「おまけだよ!!」

 

セシリアとラウラからの攻撃が雨の様に福音に襲いかかる。しかも反対側からはガルムとレイン・オブ・サタデイを構えたシャルロットからの弾幕が福音を足止めしていた。少なくない数の弾丸をその身に浴びながら、福音は目的を戦闘から離脱に切り替える。

 

≪戦闘続行は困難、優先行動を殲滅から離脱に移行≫

 

「逃がすかよっ!!」

 

動きの止まっている福音に一夏が飛びかかる。雪片の刀身がスライドしてエネルギーの刃が出現すると共に、その刀身が何倍にも膨れ上がった。

 

「これでぇぇぇ!!!」

 

そしてその攻撃は福音の残ったスラスターを捉えた。切られた羽が宙を舞いながら光の粒子となって消えていく。しかし攻撃はそれで終わりでは無かった。

 

「まだ終わりではないぞ!!」

 

一夏の背後には雨月を刺突の状態で構えた箒がいた。一夏が福音と箒を結ぶ線上から離脱した瞬間、箒が鋭い突きを放つ。

 

「沈めっ!!」

 

『!?!?』

 

両の羽を切り落とされ素早く動く術を失った福音はもはやただの的に過ぎなかった。雨月の刀身の周囲から放たれた赤いレーザーが福音の四肢と胴体に直撃して海に突き落とす。なす術も無く福音は派手な水しぶきを上げながら海に叩き落とされた。一夏が荒い息を吐きながら雪片を元の形に戻す。

 

「お、終わりましたの?」

 

「まだ分かんないけど、取り敢えず箒の攻撃は当たってた」

 

「みんな!早く鈴を回収しなくちゃ!!」

 

「そうだな、私とセシリアで鈴の回収を行う。残りは周辺の警戒に──」

 

全員が今後の予定を話し合っていると、いきなり海上が爆発する。周囲が水しぶきで包まれる中、一夏と箒はその中心にいる者を見てしまった。

 

「一夏、箒、何があった!!」

 

「まだだ、まだ終わってなかった!!」

 

「あれは、まさか、((第二形態移行|セカンドシフト))!?」

 

そう、一夏と箒の瞳に映ったのは海面すれすれで光輝く体を抱いている福音だった。しかもいつの間にか切り落とした頭部の羽が前より輝きを増した状態で生え変わっている。

 

「くっ、マズイ!各員、密集体型を──」

 

ラウラが全員に注意を促すが遅かった。一夏と箒が福音を見下ろす中、無言で宙に浮いたかと思うと、いきなりその姿が消えた。

 

「何だと!?」

 

次に出現した場所はラウラの目の前だった。どうやら動きが早すぎて一夏と箒には知覚出来なかったらしい。傍にいたセシリアが助ける暇も無く、輝きを増した羽から無慈悲な光弾がラウラに突き刺さっていく。

 

「ぐっ!?があぁぁ!!!」

 

「ラウラさんっ!?」

 

「セシリア!!僕に任せて!!」

 

セシリアの武装では近すぎる距離に対する相手には有効的な攻撃が与えられない。素早くシャルロットがカバーに入ったが、ラウラを放り投げた福音の姿が再びぶれる。

 

「えっ!?どこに!!」

 

「シャルロットさん、後ろですわ!!!」

 

「シャルロット!逃げろ!!!」

 

遅れて一夏と箒も二人の元へ向かう。セシリアはパッケージの能力か、ただ一人福音の動きを知覚出来ていた。シャルロットの背後に回った福音はそのままシャルロットの首を鷲掴みにした。苦痛で顔を歪ませるシャルロットだが、まだ負けた訳ではない。

 

「くっ、このっ!!」

 

右手に持っていたガルムの銃口を背中側に向けて発砲する。しかしその弾丸は一対の羽によって防がれてしまった。弾丸が続く限り乱射し続けるシャルロットだったが、攻撃は一発も通らない。そして福音は片方の羽をシャルロットの顔面近くまで動かして、ラウラの時と同じ様に光弾を放つ。

 

「うわぁあぁあぁ!!!」

 

「シャルロットさん!!」

 

「セシリア、下がれ!!!」

 

ここでようやく一夏と箒が福音の元にたどり着いた。雪片と雨月を構えながら勢いを利用して福音に突っ込む。それを見て福音はシャルロットから手を離すが、気絶しているのかシャルロットはそのまま海に落下してしまった。

 

「止めろぉ!!!」

 

「大人しく落ちろ!!」

 

二人で同時に攻撃を仕掛けるが、三度福音の姿がぶれる。目標を見失った二人は周囲を見渡すがセシリアだけはその姿を捉えていた。

 

「こ、このスピードは!?」

 

空中で加速と旋回を繰り返すセシリア。傍から見たら一人で何かの訓練でもしているのか、と思うがセシリアの目には高速で動き回る一機のISが映っていた。

 

「セシリア、そっちか!!」

 

「今行くぞ!!」

 

急いでセシリアの所に急行する二人だったが間に合わなない。セシリアが一際大きい動きをしたかと思うと、福音が背後からがっちりとセシリアの首を掴み、光弾を打ち続ける。

 

「きゃあああ!!!」

 

「セシリアァー!!」

 

「おのれ!!」

 

青い装甲から黒い煙を噴出させながら海に落下するセシリア。とうとう最後の二人になってしまった一夏と箒は左右から挟み込む形で同時に仕掛けた。

 

『La♪』

 

福音は左右の羽をそれぞれ一夏と箒に向ける。そして一斉射を始めた。少なくない弾丸によって箒は接近を断念するが、一夏は諦めなかった。

 

「うおおおお!!!」

 

零落白夜を発動させて雪片からエネルギーの刀身を出す。そして自分の意思でエネルギーの刀身を何倍にも巨大化させて、雪片自体を盾の様にする事で直撃を防いでいた。ダメージで零落白夜は停止してしまうが、エネルギーの刃を展開したまま福音に斬りかかる。福音も二つの羽を使って雪片による攻撃を防ぐ。互いの武器が接して宙に余剰エネルギーが舞い散る。

 

「もう、もう俺の仲間は誰一人やらせねえ!!!」

 

一夏の頭には先程まで戦っていた仲間の顔が次々と浮かび上がる。そして最後に浮かび上がったのは自分と幼馴染みを守ってくれた目標の男。

 

(もうあんな思いは二度としたくないんだ!!俺もクロウを守りたい、一緒に戦いたいんだ!!!)

 

第二形態移行前ではあっさりと切断出来たが今は出来ない事から、切れないのは単純に出力の問題だろう。

 

「だから、負けられないんだぁぁぁ!!!!」

 

一際大きく叫ぶ一夏、不意にその頭に声が響く。

 

(聞かせてください、貴方の望みを)

 

「え?」

 

そしていきなり意識が薄れて目の前が真っ暗になる。最後に見たのは福音の背中越しに見える箒の顔だった。

 

説明
第四十七話です。
初の連続投稿!
書き溜めが、もう残ってない……。
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タグ
IS インフィニット・ストラトス SF 恋愛 クロウ・ブルースト スーパーロボット大戦 ちょっと原作ブレイク 主人公が若干チート ハーレム だけどヒロインは千冬 

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