ゲイムギョウ界の守護騎士
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第21話 交差する者たち

 

「はぁ〜...たく、ホントにあんたは神出鬼没なんだから」

 

「すまないな。けど、こちらとて好きで神出鬼没をやっているわけじゃないんだ」

 

タイチは睨みを利かせるアイエフにそう言うと、アイエフもタイチ自身のせいではなかったためそれ以上は咎めなかった。

タイチはナンバーズでの死闘の際、変なところに吹き飛ばされたそうだが、なぜか宿にネプテューヌ達よりも早くに到着していたとのこと。

本人曰く「よくわからん」だそう。

いま、タイチ達が向かっているのはルウィーの協会であった。

正直ネプテューヌとコンパ以外は半ば諦めかけていた。

「たぶんムリだ」と。ここの女神様は無愛想(うわさ)で有名らしい。

前のコンパと一緒に元気よく歩くネプテューヌを見て、

 

「あの元気さで何とか鍵の欠片について教えてもらえればいいんだが」

 

「相手が相手ですからね。ムリそうです」

 

タイチの希望なき意見に渇を入れる声。

それはタイチの右隣を歩く、ツインテールのライカのものであった。

 

「まぁ一応宿泊先は確保しておいたわ。失敗確定だから」

 

アイエフも現実主義者なのか、万全な準備を施していた。

自分が楽観的なのも分かっているが最近の疲れが溜まっているせいか、数少ない希望にすがっていた。

 

「息抜き、してみるか」

 

少しだけ声のトーンを低くしてタイチはそう告げた。

 

 

 

 

 

「ホワイトハート様!旅人の方がどうしても、ホワイトハート様に会いたいとおっしゃっているのですが」

 

主人にお使えする意味もこもったメイド服を着た長髪の少女が扉を何の断りも無く勢いよく開けた。

ホワイトハート様と呼ばれた少女:ブランはベッドの上で寝転がり本に読みふけていた。

 

どうも最近ここの協会には人が全く入らないためか、少女:フィナンシエがやけに積極的であった。

正直なところブランは、客人より本の内容のほうが気になってしょうがなかった。

 

「私は本が読みたいの。帰ってもらって」

 

手をひらひらとフィナンシエの方に振り、本に意識を戻す。

 

「まったく、そんなんだと旅人の皆様に不可解な思いをされたまま帰ることになるんですよ!?」

 

「.......」

 

「えーと、じゃあホワイトハート様が秘密裏に書いている小説のことを大陸中に「てめえ!ど、どうしてそれを!?」あきらめてくださいね?」

 

先程までのゆったりとしたブランが急に憤慨したが、いつものことなのかフィナンシエはスルーを決め込む。

 

「分かったわ。でれば、いいんでしょう」

 

本という生気を失ったブランはゆらゆらカタツムリ以下の速度で部屋を出て行った。

途中フィナンシエに押されながら部屋を出たことは言うまでもない。

 

 

 

 

「話は下僕―――フィナンシエから聞いています。ですが、残念ながら鍵の欠片と言う物は聞いたことがありません」

 

フィナンシエがレースカーテンのかかった天蓋つきベッドに向かって「ぎゃーぎゃー」と喚いている。

彼女の目にはメイドらしきもの=下僕の世界観が広がっているらしい。

女神様はどうやら、レースカーテンの奥にいる。

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

タイチはそれだけ言うとそそくさに部屋を出ようとした。

理由は単純。カーテンのかかったベッドの奥から視線を感じたからだ。

 

(俺を見ているのか?)

 

感じる視線から逃れるようにライカの背に隠れながら移動する。

 

「お兄様?「俺は脱出する。後は任せたぞ」そ、そんなことはダメですよ」

 

ライカがタイチに聞こえるぐらいの小さな声で呟く。

だが、タイチはそれを無視して部屋から出ていく。

 

「かわいいぞ、ライカ」

 

去り際に、そんな捨て台詞をはいて

 

「ふえ?....お、お兄様からそんな嬉しいこと言ってもらえるなんて....ふあ〜」

 

もちろんのこと、既にタイチの姿は協院内には無かった。

 

 

 

 

 

 

白銀の世界に佇む一人の青年。

彼は混乱しながらも、とりあえず記憶を探ってみることにした。

 

と思ったが、記憶を探ることが出来なかった。

 

「僕は....誰なんだ?」

 

気付けば、この世界にいた。

自分が何者なのかもわからない状況。

 

「ここ.....何処?」

 

数分遅れて自分のさらに最悪な状況に気付く、青年。

見たこともない銀世界に驚きはするも、状況が状況であった。

 

「ジャスティスキィィィィィック!!」

 

「....もう一回寝てみようかな」

 

どうやらつい数分前に戦闘が開始されていたらしい。

もしかしたら寝たら記憶が戻るかもしれない、そんな希望も少しあってのことだ。

青年はとりあえず、木陰に隠れ戦闘を見学することにした。

 

少女vs牛鬼の群れ

 

赤いマフラーをたなびかしている黒いライダースーツに身を包む女の子。

髪は目が覚めるような青、身長は青年より頭一個分小さいぐらいだろう。

その特徴的な、格好はまさに昭和のラ○ダーさんであった。

 

だが、そんな戦闘は「正義が勝つ」の定義があるためか少女の圧勝であった。

先程のなんちゃらキックは絶大の威力を誇っていたらしく牛鬼の群れを一撃で蹴散らした。

 

とりあえず、目をつけられないように青年はフードを深く被ることにした。

 

「ん?あんた、怪しいわね!」

 

逆にその行為が仇となったようだ。牛鬼を倒し終えた少女が怪訝そうにこちらを見ていた。

 

「え?ぼ、僕は別にそんな「問答無用!ジャスティスキィィィィィィック!!」あぐっ!」

 

いきなりの攻撃であった。

記憶喪失している青年がそれを避ける術は無かったので見事に強力な一撃が頭部にヒットした。

青年は力なく仰向けに倒れる。

 

「はーはっはっはっはっはー!正義は必ず勝つのよ!!」

 

両手を腰に当て高らかに笑う、少女。

 

「いたい....」

 

青年は意味もわからず、意識を落としてしまった。

 

意識を落とす一瞬に思ったのは「僕、記憶喪失以前に悪いことでもしたのかな?」であった。

 

 

 

 

「さぁ、正体を見せなさい!!」

 

抵抗以前に意識を失っている青年のフードを勢いよく引っぺがす少女。

 

「なっ!」

 

少女がフードを取った瞬間青年の姿は一瞬のうちに、白い光に包まれ消えていった。

消えたと同時に空から一つの巨大な鎌が少女を襲った。

 

「っ!?」

 

反応する瞬間も少女には与えられなかった。

鎌は少女のすぐ横に突き刺さると同時に眩い光が白銀の世界を全て照らし出した。

 

「あ〜、私のダーリンに手はだしちゃダメ」

 

ひどい眩暈 頭痛、それらが少女のわずかな意識を一瞬で途切れさせた。

そのアニメ声は既に少女には届いていなかった。

 

 

 

 

 

先とは変わらぬ白銀の世界。宙に浮いているのは、小さな少女であった。

 

少女の髪は白銀であり、その長い髪は腰まである。

服はこの場には似合わない巫女装束の服であった。

だが、少女にとっては思い入れのある服である。

 

「やっと出会えたね。私はあなたの剣。だから、あなたの赴くままに」

 

宙に浮いているのは少女だけではない。少女の隣には先程の青年がいた。

 

不思議なことにこの世界は静か過ぎていた。

 

何の音もしない。木々も一切揺れもしない。まるで世界が止まってるかのような感覚だった。

 

だが、そんな些細なことはいまの少女にとっては非常にどうでもいいことだ。

最愛の人をこの腕に収めることが出来たのだから。

 

「私があなたを守る....から!どん...な敵からも.......絶対に守るから....もう..もう離れないで...!」

 

少女はいままでずっと我慢していたのか、ボロボロに泣きながら意識のない青年によりいっそう強く抱きついた。この温もりをずっと忘れない為にも。

説明
ルウィーに行った一行は協会にて女神様と面会していた。
そして森の深くでは1人の正義のヒーローがモンスターと戦っていた。それを陰で見ている1人の青年。
舞台は雪の聖地へと移り変わる!!
すみません。今回は短編となっております。
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