「ファクトリア〜ひーくと愉快な仲間たち〜」【第1章】
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 R.E.47年…マグメルによってクランシステムが施行され、あるボーダーは己の武名を広めるため、またあるボーダーは気の合う戦友と共にクランを設立していった。

ブロア市街地にほど近いニュード汚染地域にあるパブには今日も多くのボーダーたちが集まっていた。彼らのほとんどは傭兵を生業としていた。クランシステムが施行されて間もないこともあってか、パブの中でもクランの会話がそこかしこで話されていた。あのクランはSランクの者しか集めないとか、ネタに走っているクランはあそこが一番いいとか…。

パブの片隅にあるテーブルに若い女性が男たちに話しかけている。彼女は【ひーく】と呼ばれ、ブラストのカスタマイズに定評があることで知られている。もっとも彼女にとってブラストカスタマイズも近所のおばちゃんのスクーターの修理も機械いじりの範囲の中としか思っていない。ひーくも他のボーダーと同様にある目的を持ってクランを設立したひとりであった。

「…というわけで、ここまでが私がクランを設立した目的よ。後は活動するために必要なことは…。」

「ブラストをを修理できるガレージか…。」

どことなく落ち着いた雰囲気の青年がつぶやく。彼は【BLUE】と呼ばれ、ひーくがクランを設立した時に声をかけてきた男である。BLUEはひーくのカスタマイズテクニックにあこがれて声をかけてきた。

「ふむ、それなら少し心当たりがある。希望通りの広さとまではいかないが、使い勝手は良いと思う。ちょっと待っててくれないか。」

禿頭の中年男性が携帯端末を持ってパブの外へ向かい、どこかに連絡を始めた。この中年男性の名前は【たま兄】、自身もある程度のブラストのカスタマイズをしている。そのせいもあってか様々なことに詳しいが己の技術をさらに磨くためブラストのカスタマイズを主としているクランを探していたのだった。

たま兄が外で話をしている間にひーくに血の気が多そうな青年が声をかけてきた。

「ねえ、彼女。昨日整備場でHGのメンテナンスをしていただろ?あの時俺の機体の整備も手伝ってくれてありがとうな。いい整備をしてくれたお礼と言っちゃあアレだが、俺も君のクランに入れてもらえないかい?俺は普段からコア凸をしているからクランの編成といても悪くないと思うぜ。」

「あら、それってナンパのつもり?私の彼氏になるにはもう少し自分の機体をよく知っておいたほうが良いわ。でも、クランに入ってくれるのは大歓迎よ。まだできて間もないところだからあまり大きな活動はできないけど隊長として頑張ってみるわ。ええと、まだ名前を聞いていなかったわね。」

「俺の名前か、【ユズ】だ。敵のコアまで最速で到達することができるぜ。ただし、敵の守備隊と戦闘にならなければな。」

「おいおい、それじゃ前線で俺が敵であったらいい的だな。」

ユズの後ろで声がした。ユズは振り向きざまに声のほうへ拳を向けた。だが男はすんでのところで拳をかわすと続けてこう言った。

「だが味方であればおまえは安心してコアへ向かうことができるぞ。なぜなら俺が敵の守備隊を葬ってやるからな。」

「あれ?でもお前ってこの間敵プラントに単機で突っ込んでいって返り討ちにあっていなかったか。」

ユズが負けずに言い返す。男が何か言いかけた時にひーくが口を挟んできた。

「ねえ、それって私のクランに入りたいってこと?コア凸ができる強襲に前線を支えることができる強襲兵もいるとクランの戦力としては心強いわ。あら?あなたは確か…ロボの話が得意だって聞いたことあるわ。」

男はひーくの唐突な提案に不意を突かれたようだったが、すぐに大きな声で笑った。

「ははははははっ!今日はいい酒が飲めそうだぜ。【Gawain】だ。やっぱりブラスト乗りだとこういう話が合うよな。」

「ちょっとぉ、ロボの話ができるのはそこの女性だけではないわよ。」

二人の女性がGawainの話にかみついてきた。一人はややスレンダーなスタイルと黒髪が特徴的でメイクもばっちり決めている女性、もう一人はモノクル型HUDとヘッドギアを付けあまり化粧っけのない女性である。

黒髪の女性は【レイン】、そして声をかけてきたHUDとヘッドギアを付けた女性は【メイ・B(ブラッド)・フィールド】であった。

レインはひーくに話しかけた。

「あなた達なら私が今開発を請け負っている武器のデータ採取に協力してくれそうだし、ある程度のカスタマイズもここならできそうなので、ひーくさんが良ければ私とメイをクランに入れてもらえないかしら?」

「えっとぉ、私も『この子たち』のお世話なら人並み以上にできるんですけどぉ。あ、でもご飯をつくるのはちょっと苦手なので誰かつくってね。」

とメイがお願いをする

「おい、ちょっと『この子たち』ってのはブラストのことか?それと飯の心配はしなくていいんじゃないかな?ちゃんと戦績を稼げれば食いっぱぐれることはないんだから。」

Gawainがメイに対して突っ込みを入れたが、彼女たちはすでにひーくとの話に夢中であった。

やがて、ひーくの携帯端末に着信が入った。マグメルからであった。クランの設立を申請した時にメンバーの募集もかけていれば、データベースからクランとのマッチングの可能性の高いボーダーを選び出し、勧誘やボーダーからの参加申請を受け付けることができるのである。端末のモニターには参加申請を行ったボーダーの名前が表示されていた。

「【レクサス】か…、じゃあ彼女にも申請許可の返事を出しておきましょう。」

「おお、あと一人いればクラン単独での作戦行動も出来るな。」

とBLUEが声をあげた。

「あと一人か…」

皆がつぶやいたその時である。外に出て連絡をしていたたま兄が戻ってきた。

「さっき話していたガレージのことだが、最高とまではいかないが、いい物件が手に入ったぞ。2週間後に引き渡しになるからその時までにガレージにきてくれ、場所はさっきメールしておいたぞ。」

ユズがたま兄に声をかける。

「なあ、たま兄だれか腕利きのボーダーとか知り合いでいないか?あと一人くらいいればクラン単独で作戦行動ができそうなんだ。」

「そうか、知り合いとまではいかないが、腕利きのボーダーというのなら心当たりがある。少し声をかけてみるか…。」

「よろしく頼むよ。」

Gawainがジョッキを片手に持ちながら大声を張り上げた。

「これだけのクランがいきなりできちまうんだ。ひーくさん、あんた中々のマスターになるんじゃないか?このクランの立ち上げとひーくの前途を祝していっちょパーティーでもしようぜ。」

「じゃあ、戦場で一緒のあの子たちと私たちにかんぱ〜い!」

メイが勝手に乾杯の音頭をとって場を盛り上げる。

「私たちいい戦友になれそうね。」

レインがひーくに向けてグラスを挙げる。こうしてクラン設立の夜はいつの間にやらにぎやかなパーティーとなって更けていったのであった。

2週間後、ひーくを含めた7人は港湾地区に近い倉庫の前に集まっていた。たま兄が連絡した座標はこの倉庫を示しているのだが、肝心のたま兄がまだ姿を見せていないのだ。

「ところでまだたま兄って方は来ないの?あの人が来ないとここに入れませんわ」

入ったばかりのレクサスが愚痴っているとたま兄が乗ったトレーラーがやってきた。後ろにはブラストが乗っている。クランメンバーのものではあるがその中に一体だけ見慣れない機体があった。オレンジ色のブースターに頭部にはまるでウサギの耳のような大きなレーダーユニットを付けたピンク色の機体はクーガーをベースにしているがその外見のみならず内部もかなりチューニングされているのは一目瞭然であった。

「このクーガーは何だ?今まで見たこともない機体だが…。」

ユズが思わず声をあげるとピンク色のクーガーのコックピットハッチが開き、中から痩身のメガネをかけた青年が出てきた。年は20代後半に見える青年はクーガーのわきに置いてあった四角い板を指差した。

「ひーくさんに頼まれた看板の塗装がさっき終わったところなんだ。遅くなって済まない。」

ひーくは看板にかけてある布をとるとそこには赤地に白い大きな文字でこう書かれていた。

[Factoria -Garage](ファクトリア―ガレージ)

そう、彼女が設立したクランの名前はファクトリア。その名の通りブラストメーカーも驚くほどの技術を持ったクランになっていくのだがそれはのちの話。だが彼女は確信した、このメンバーとなら必ず私の理想となるブラストができると…

「ありがとう。【ミストル】さんとても素敵な看板ね。さあ、これで私たちのクランのスタートだわ!」

「もうすでに整備用の工具は搬入済みだ。ブラストを100機位はおけるスペースがあるから安心しておいてくれ。後はこの看板の仕上げをしなくちゃな。」

そういうとミストルはクーガーのコックピットに戻り、ブラストを起動させ立ちあがった。このクーガー(兎型)はダッシュの速度はそれほどではないが跳躍性能が高くなっている。それだけではないクーガーの足に通常ついている大型ホイールの代わりにつま先と同じようなユニットがかかと側についているのが特徴だ。看板を持ったクーガー兎型は倉庫入り口の上に取り付けようとするが50cmほど高さが足りないようだ。しかしミストルはあわてる風でもなくコンソールのスイッチを入れるとかかと側のユニットが垂直に立ち上がり、まるでハイヒールを履いたように身長を高くして看板を扉の上に取り付けた。

「これでこの子たちのおうちが完成なのぉ?うれしい、やったー!」

メイが歓声を上げる。嬉々として自分のブラストを倉庫の中に入れると早速ブラストのカスタマイズ…というよりドレスアップのほうに夢中になっているようだ。

「ところでたま兄、あのミストルさんと知り合いだったのか!?」

Gawainがたま兄に聞いてきた。彼はミストルが3カ月ほど前に行われていたブラストカスタマイズコンペで審査員が彼のために賞を作ったと言われるほどの腕前だったことを知っていたのだ。その時の機体は猫型だったのだが後で審査員から牛型も作ってほしいと言われ話題になっていたのである。

「まあ、以前ブラストの塗装でアドバイスを受けたことと、あるメカが気に入ったのでコンタクトをとったくらいかな。だが、整備やカスタマイズが得意なクランだったら入ってくれるのではないかと思い今回声をかけてみたんだ。さあ、ブラストの搬入を手伝ってくれないか?機体だけでなくカスタマイズ用のパーツも結構あるようだからな」

たま兄とGawainはトレーラーに積んだパーツやブラストの搬入に取り掛かった。

「ねえ、ひーくさん。どうしてこれほどまでの大きい倉庫が必要だったの?普通のクランだったらクラン員が自分のブラスト用の倉庫を借りるとか工房に持って行くんだけど…」

レインが唐突にひーくに聞いた。

「まあ、わたしがブラストや機械をいじるのが大好きなこともあるけど集まってくれたクラン員もブラストいじりが好きだからその場を提供したかったの。それにゆくゆくはブラストメーカーに負けないオリジナルのブラストをみんなで作ることができたらそれは素敵なことだと思わない?」

そういってひーくは軽くほほ笑むと自分の分身ともいえるヘヴィガード(ファイヤーアーチン)に向かって歩き出した。

<第1章了>

説明
すみません、本当に身内ウケ狙いで作ってしまいました。
基本構成はクランメンバーの名前とアバタータイプを使った群像小説?みたいなかたちです。とりあえず一桁ナンバーの方々を載せるだけでも大変だったのにあと50人近くもいるんだよなー全員載せることができるのだろうかw
こんなの俺のイメージじゃないとか言われてもたぶん書き直すのは面倒なので勘弁してください。なんだかんだと言いながらも楽しんでもらえればありがたいです。
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