IS -インフィニット・ストラトス- 〜恋夢交響曲〜 Another side story Chapter1
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「んー・・・暇、暇ぁ」

 

そこは奇妙な部屋だった。部屋のいたるところには機械の備品がちりばめられ、ケーブルがまるで樹海のように広がっている。そしてその上を、不要な部品を識 別、その構成素材を分解して吸収、別の形状へと再構成する機械仕掛けのリスが歩いていた。そう、ここは篠ノ乃束の秘密ラボである。

 

ぱらりろぱらりらぺろ〜

 

携帯電話から着信音が流れる。

 

「こ、この着信音はぁ! トゥッ!」

 

携帯電話へと向けて大ジャンプ。そこにあった物がさらに散らかるが、束にとってはどうでもよかった。

 

「も、もすもす? 終日(ひねもす)?」

 

『・・・・・・』

 

ブツリと電話が切れる。どうやら相手の癇に障ったらしい。

 

「わー、待って待って!」

 

願いが通じたのかはわからないが、もう一度携帯電話が鳴り響いた。

 

「はーい、みんなのアイドル・篠ノ乃束ここに――待って待ってぇ! ちーちゃん!」

 

「その名で呼ぶな」

 

「おっけぃ、ちーちゃん!」

 

「・・・はぁ。まあいい。今日は聞きたいことがある」

 

「何かしらん?」

 

「お前は今回の件に一枚噛んでいるのか?」

 

「今回、今回――はて?」

 

束は首をひねる。とぼけているのではなく、本当に心当たりがない。

 

「VTシステムだ」

 

「ああ、あれ? うふふ、ちーちゃん。あんな不細工なシロモノ、この私が作ると思うかな? 私は完璧にして十全な篠ノ乃束だよ? すなわち、作るものも完璧において十全でなければ意味がない」

 

「・・・・・・」

 

「ていうか忘れてたけど、つい二時間ほど前にあれを作った研究所は地上から消えてもらったよ。・・・ああ、言わなくてもわかってると思うけど、死亡者はゼ ロね。赤子の手をひねるより簡単――ていうかちーちゃん、赤子の手をひねるって結構大変じゃない? 私だけ? あれ、おかしいなぁ」

 

「・・・そうか。では、邪魔したな」

 

「いやいや、邪魔だなんてとんでもない。私の時間はちーちゃんのためならいつでもどこでも二十四時間フルオープン、コンビニなんか目じゃないね。5060喜んで!」

 

「・・・では、またな」

 

ぶつっと電話が切れる。今度はもう一度かかってくるということはもうない。束は名残惜しそうだったが、二秒後にはケロリと電話を放り出していた。

 

「やぁ、久しぶりに声を聞けて束さんは嬉しかったねぇ。ちーちゃんは相変わらず素敵ングだよ。夕日の向こうには行かないでね」

 

うんうんとうなずきながら腕組みをする束。

 

「しかし、ちーちゃんは何で引退したんだろーね」

 

束と千冬は長年の付き合いであるが、束には彼女が引退した理由がわからなかった。人の心は複雑怪奇にして摩訶不思議。天才ですらその深さのすべてを知ることができない。だからこそ知りたい。世界で三人だけの興味の対象なのだから。

 

ちゃらら〜ちゃらら〜

 

再び携帯の着信音が鳴り響く。しかし、その音色は先ほどとはまったく違う。その着信音に束はものすごい反応を見せた。なにせ、この着信音がなるのは初めてのことだからだ。相手は、出る前からわかっている。

 

「やあやあやあ! 久しぶりだねぇ! ずっとず〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと待ってたよ!」

 

「・・・姉さん」

 

「うんうん。用件はわかっているよ。欲しいんだよね? 君だけのオンリーワン、代用無き者(オルタナティヴ・ゼロ)、箒の専用機が。もちろん用意してあるよ。最高性能にして規格外仕様。そして、白と並び立つもの。その機体の名前は『紅椿(あかつばき)』――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろなんだけど・・・」

 

場所はマリア・レインが所属するミッド・ガルズ研究所の日本支部。その玄関前で、リリツィア・ティナークは一人の客人を待っていた。

 

「あ、あれかな・・・?」

 

研究所の前へ、一台の車がやってくる。その車が停車し、中からは一人の女の子が出てきた。

 

「えっと、はじめまして。あなたが今日くる予定になっていた――」

 

「はい、塚乃旭です」

 

その女の子は奏羅の幼馴染、塚乃旭だった。

 

「じゃあ、とりあえず中に入って。まず責任者と顔合わせをして、それから頼まれてたものの説明するから」

 

「はい」

 

二人は研究所に入ると、たわいもない話をしながら責任者、マリア・レインのいる部屋へと向かった。

 

「へー、じゃあ同い年なんだ?」

 

「うん、リリツィアさんも奏君と同期なんでしょ?」

 

「あー、リリィでいいよ。そうだね、なんだかんだで腐れ縁みたいな関係だけどね」

 

同年代ということだからか、旭の人懐っこさのおかげか、二人はすぐに仲良くなり、マリアの部屋に着くまでにずいぶんと親しくしゃべるようになっていた。

 

「失礼します。マリア博士、例のお客様が到着しました」

 

「おっ、あんたが奏羅の幼馴染でアイドルの――」

 

「はい、はじめまして。塚乃旭です」

 

旭はぺこりと丁寧にお辞儀をしたあと、マリアと軽く握手をした。

 

「じゃあ、格納庫までついておいで。あんたのステージ見せてあげるからさ」

 

マリアはそう言うと、旭とリリツィアを連れ立って格納庫へと向かい始める。

 

「どれくらいできてるんですか?」

 

「いや、もう完成している。完璧にとはいかないけどね」

 

「完成してるのに、完璧じゃないんですか?」

 

「ああ、アンタに合わせて調整とかしないといけないからね。完璧とはいかないさ。第一、ものを作る人間自体が不完全な存在なんだ。その人間が完璧にして十全の物を絶対に作れはしない」

 

「・・・なんか、わかるような気がします。それ」

 

「ほう、なかなか見込みがあるじゃないか――さあ、ついたよ」

 

そう言って格納庫のセキュリティに認証キーを読み込ませ、格納庫の厳重な扉を開いた。

 

「これが・・・」

 

「ああ、あんたの計画書に奏羅やここにいるリリィ、さらには私のアイデアを組み込み、私の研究所の最先端技術をつぎ込んでやった。最高性能に出来るかはアンタ次第。従来では考えられない規格外仕様。あんただけのオンリーワン、代用無き者(オルタナティヴ・ゼロ)さ」

 

そこには、旭が夢にまで見た、彼女の望んだ、彼女だけのステージの姿があった。

 

「名前は決めてるの?」

 

リリツィアが旭にたずねると、旭は笑顔でうなずいた。

 

「うん、奏君と一緒に考えたの」

 

「で、その名前は?」

 

「アイドルはみんなの光になって、いろんな人に元気を与える存在だからそれにちなんで、『七色の輝き(ブリリアント・アイリス)』――」

 

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あとがき

 

どうも皆さんお久しぶりです。作者のキキョウです。

とりあえずここで主要キャラが大体出終わったので一区切り。

夏合宿編前にキャラ紹介でもしておこうかなと思っております。

 

さーて、頑張って絵を描くぞ〜

 

と、まあ無駄に張り切っておりますので期待はそこそこしてください(笑)

相も変わらずご意見ご感想など受け付けておりますので、なにか言いたいことがございましたらお気軽にコメントください

見てますとかでも作者は非常に元気になります。かまってちゃんなので(笑)

 

ではまた、次回ノシ

説明
恋夢交響曲・Another side story Chapter1

とりあえず一区切りです。
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コメント
まさかここでオルタナティブの名前が出るとは・・・・香川先生が喜びますね。(i-pod男)
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