真恋姫†無双 弓史に一生 第四章 第三話 新参者の居場所
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〜麗紗side〜

 

あの出来事から数日。

 

私達は司隷、弘農郡弘農の近くまで来てます。

 

流石に洛陽に近いだけあって、町は栄えてるし、村も地方に比べればマシだと思えるほどでした。

 

お兄ちゃんは董卓さんに会いに行くって言ってましたが、朝廷に勤める人に果たして会えるのでしょうか…。もしかしたら、お兄ちゃんはまた、私が考えもつかないような策を使うのでしょうか。

 

…お兄ちゃんは頭が良いので、私なんかじゃとてもじゃないけど役に立てません。

 

軍を率いることも出来ませんし、武に関しても自信はありません。

 

…私、お兄ちゃんの傍に居て邪魔にならないでしょうか…。

 

「………紗……麗…しゃ…麗紗…麗紗ってば!!」

 

「ひゃい!!?? えっ…えと!!あの!!その!?」

 

「とりあえず落ち着けって…。はい、深呼吸して。」

 

「すぅ〜…はぁ〜…。」

 

「落ち着いた?」

 

「はい…。 お兄ちゃん…どうしたん…ですか?」

 

「そろそろ弘農に着くからさ。麗紗はどうするのかなって思ってな。」

 

「皆さん…どうかするのですか…?」

 

「芽衣と橙里、一刀は服を買いに行くって言ってたし、奏と三姉妹は美味しいものを食べに市場に行くってさ。」

 

「あ…あの…お兄ちゃんは…?」

 

「俺?? 俺は特に。 適当にぶらつこうかと思ってるけど…。麗紗が特に決めてないなら、俺と一緒に来るか?」

 

「良いんですか?」

 

「まぁ、一人より二人の方が楽しいだろ。」

 

「ふふっ…そうですね。」

 

「で、どうする?来るか?」

 

「はい!!ご一緒します!!」

 

「んっ。じゃあ適当にぶらつくか。」

 

お兄ちゃんと一緒に町を巡れる…。

 

どうしよう…緊張してきた…お腹痛い…。

 

胸の高鳴りが止まらない…。心臓がドクンドクンいっていて、今にも胸から飛び出してきそう…。

 

あぅ〜…顔が熱い…。

 

「…麗紗、大丈夫か?」

 

「ひぃ!! だっ…だだ、だ大丈夫です!!( ///)」

 

「いやっ、口ではそう言ってるが…顔も赤いしさっきからうずくまってるし…体調悪いんじゃないか? 無理はせずに今日は宿で先に休んでるか?」

 

「大丈夫です!!」

 

「でも…。」

 

「大丈夫です!!!!!」

 

「…まぁ、そこまで言うなら…。でも、体調が優れなかったら俺に言えよ?良いな?」

 

「はい!!お兄ちゃん♪」

 

危なかった…。もう少しでこの貴重な時間が無くなるとこだった…。

 

でも、お兄ちゃんが私を気遣ってくれるのもまた…。

 

…もし、私が体調が悪くて寝てますって言ったら…お兄ちゃんは私を看病してくれたのかな…。

 

 

 

 

 

 

(麗紗妄想中…。)

 

 

 

 

 

 

「麗紗、大丈夫か?」

 

「はい…お兄ちゃん…。」

 

「まったく…世話の焼ける妹だな…。」

 

「えへへ…。ゴメンなさい…お兄ちゃん。」

 

「まぁ、良いよ。何か欲しいものとかあるか?」

 

「お…お兄ちゃんが…傍に居てくれれば…。」

 

「分かった。大丈夫、お兄ちゃんが傍に居るからな。(ギュッと手を握る)」

 

「へへっ…温かいです…。」

 

「何だ…寒いのか?」

 

「はい…ちょっと…。」

 

「う〜ん。布団はもう無いしな…。しょうがない。(ゴソゴソ)」

 

「えっ!!?ちょっと!!お兄ちゃん!! 何、布団に入って来てるんですか!!」

 

「しょうがないだろ…。でも、こうすればもっと温かくなるしな…。(ギュッと抱きつく)」

 

「たっ…確かに温かいですけど…。」

 

「麗紗…心臓がドキドキいってるな…。」

 

「は…恥ずかしくて…。( ///)」

 

「恥ずかしい? 興奮してるの間違いじゃないのか。(ぼそっ)」

 

「そっ…そんな…。( ///)かあぁぁ〜」

 

「顔を真っ赤にさせて…図星なんだな…。」

 

「ううぅ〜…。」

 

「真っ赤になる麗紗も可愛いな…。」

 

「おっ…お兄ちゃん…私、お兄ちゃんのこと…。」

 

「おいで、麗紗。俺も麗紗のこと…。」

 

それから、ああなってこうなって…。お兄ちゃん…激し過ぎで…もう……お兄ちゃんの変態…。

 

でも……いざって言う時は優しく……へへっ…えへへへへ…。

 

 

 

 

(妄想終了)

 

 

 

 

「ん?? ……大丈夫か、麗紗のやつ…。」

 

この時、麗紗は知らなかった。

 

妄想が膨らみすぎて、顔がにやけきり、それが聖に見えていたことを…。

 

 

 

 

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弘農の町に着く寸前まで妄想に浸っていた私…。

 

既にばれていると思いますが…そうです。私はそういうのが好きな女の子です。

 

と言うのも、前まではそんなに興味は無かったのですが、水鏡塾に居たときに朱里ちゃん、雛里ちゃんに見せてもらったのが衝撃的すぎて…。

 

それから、事あるごとに妄想に耽る日々…。

 

……お兄ちゃんはこんな私を好きになってくれるでしょうか…。

 

 

 

 

弘農の町は思っていたよりも質素と言う感じがしました。

 

洛陽の町に近いのだからもっと発展してても良いと思うのだけれど…。町の発展度合いは地方の州都と対して変わらないくらい…。

 

「どうだ麗紗。これが、弘農の町だぞ!!」

 

でも、お兄ちゃんは嬉しそうでした。どうしてお兄ちゃんは嬉しそうなんでしょう??

 

「お兄ちゃん…。私には…この町は発展してるように思えません…。洛陽に近いのだから…もっと発展してても良いと思います。」

 

すると、お兄ちゃんはポカンとした顔をした後、急に笑い出して。

 

「はっはっは!!麗紗、確かに見た感じの町は活気がないかもしれないな。」

 

お腹を抱えて苦しそうにヒィヒィ言ってます。

 

…そこまで笑わなくても…。

 

「でもな。よく町の人たちの顔を見てみな。」

 

そう言われて、私は町人達の顔付を見てみました。…皆さん、普通の顔をしてる気がしますが…。

 

「えっ…。普通の顔をしてる気が…。」

 

「そうだな。少なくとも((辛そうな顔してるやつ|・・・・・・・・・・))はいないよな。」

 

「っ!?」

 

「分かってくれたか?」

 

確かに、辛そうな顔をしてる人は見ません。

 

今までの町には、少なくとも一つくらいは貧乏街があり、辛そうな顔をした人が居たんですが…。

 

お兄ちゃんは町の善し悪しは市場の店の質や数ではなく、人々の活気であると言っていました。

 

後のことは、人々のやる気に付いてくる物であって、産物でしか無いと…。

 

ここ弘農の町人達の顔には活気とまではいきませんが、この世を憂んだような目や溜息を吐く者はいない…当たり前の一日を楽しむように生きているように見えました。

 

「ここの町の人たちは皆良い目をしてる…。流石洛陽に近いだけあるんじゃないか?」

 

「はい…。えへへっ。」

 

「ん?どうした?」

 

「いえっ…やっぱり…お兄ちゃんは凄いなって。」

 

「何が凄いんだ?」

 

「普通は…私みたいに市場の大きさなんかでその町のことを考えます。でも…お兄ちゃんは違いました。だから凄いんです!!」

 

一瞬お兄ちゃんが怯んだように見えましたが何故でしょうか…。

 

「はは…。ありがとな。でも、俺も太守となるんだ…。それぐらいの目を持ってないと大変だろ?」

 

「確かにそうかもしれないですけど…私では考え付きませんでした。」

 

「きっとそれは経験の差さ…。麗紗もきっとそんな目線で見れるようになるよ。」

 

その言葉を聞いて余計に不安になりました…。

 

やっぱり私はお兄ちゃんの傍には居られないんじゃないか…邪魔になっては居ないだろうか…。

 

不安で不安で…ついにその不安が言葉となって私の口から出てきました。

 

「…お兄ちゃん。私…やっぱり一緒に来なければよかったんですかね…。」

 

「えっ!?どうした!!」

 

「…ううん、違う…。一緒に来ちゃいけなかったんだって思います…。」

 

「…どうしてそう思うんだい?」

 

お兄ちゃんは驚いた顔をしていましたが、私に諭すかのように優しく話しかけてくれました。

 

「私は…お兄ちゃんのように武も知も経験もありません…。ぐすっ…そんな…私が…ずずっ…お兄ちゃんの傍に居るだけで…迷惑に…なります…。」

 

「……。」

 

「だから…私はここにいちゃ駄目だと思うんです…。だから…。」

 

ここから先は頭の良いお兄ちゃんなら言わなくても分かるはず…。

 

私には高すぎたのかもしれない…お兄ちゃんの理想は…。

 

今の私にはその理想を手助けできるところは何も無い…。勢いだけで付いてきた自分が情けなく思います…。

 

 

 

そんなことを考えていたら、急に腕を引っ張られて、転びそうになりました。

 

が、そんなのお構い無しに、私を引く手はその速さを上げていき、気付けば私は走り出していました。

 

そして、手を引いてるのがお兄ちゃんであるということにも気付きました…。

 

……お兄ちゃんの手…温かいな…。

 

 

〜聖side〜

 

「だから…私はここにいちゃ駄目だと思うんです…。だから…。」

 

そこから先は言おうとしない麗紗…。

 

つまり、先は分かるだろ? ってことか…。

 

麗紗は自分に何もできないと言っていた。そしてそれが今ネックとなって、俺の下に居るのが辛いと…。

 

そうか、俺は知らず知らずの内にまた人を悲しくさせてたのか…。

 

…また、約束破っちまったな…。

 

 

芽衣に怒られるかな?

 

奏に呆れられるかな?

 

橙里が膨れっ面になるかな?

 

一刀に小言をまた言われるかな?

 

三姉妹に色々と言われるかな?

 

そして…麗紗とここでお別れになるのかな…??

 

 

嫌だな…。

 

せっかく出来た仲間が………俺の理想を追ってくれる人が………俺の妹代わりが消えるのは…。

 

なんだ…俺は麗紗に一緒に来て欲しいって思ってたのか…。

 

だったら答えは簡単だ…。麗紗の居場所を作ってやれば良い!!

 

そう思うと直ぐに麗紗の手をとって通りを走り出した。

 

麗紗を見ると、驚きの表情をしながら俺の後ろを着いて来ている。

 

が、その足取りは意外としっかりしていた。

 

 

 

その足で俺は装飾店に入る。

 

何事かと目を回す麗紗を尻目に、俺は指輪を選ぶ。

 

すると、偶然にも俺がしている指輪と似たような指輪を見つける。

 

そこに嵌められてる石は…何だろう、凄く良く見た気がする石だ…確か……世界で一番堅い石で出来てた気がする…。

 

でも、これも麗紗のためだ!!

 

「おっちゃん!!」

 

「へい、毎度。」

 

「この指輪…いくら?」

 

「この指輪ですか!! いや〜お客さん、お目が高い!! この石は金剛石って良いましてね、ついこの前海外の貿易船から買いつた一点物なんですよ。なので、少々お高いですが…。」

 

「これで足りるか?」

 

そう言って俺は銀五枚を並べる。

 

「へぇ…まぁ…そうですね…。」

 

「頼む…。今はこれ以上持ち合わせが無いけど、ここで待っててくれればいつでも払いに来るから!!」

 

「…後ろの彼女さんのためですかい?」

 

「あぁ!!この娘の一生がかかってるかも知れないんだ!!」

 

「…(ニヤッ)。分かりました!!銀五枚でお売りします!!」

 

「…良いのか?」

 

「へぇ、構いません。旦那の心意気に惹かれました。好きな娘のために財産はたいて指輪を買う…くぅ〜泣かすじゃねぇか!!!!」

 

俺の後ろで麗紗の顔が真っ赤になって、「あうぁぅ…。( ///)」と言いながら俯いてしまった。その光景に少し萌えた(笑)

 

「じゃあ、悪いけど…。」

 

「へぃ!!毎度。」

 

「麗紗、手を出して。」

 

素直に手を出してくれる麗紗。その右手の薬指に指輪を嵌めて、

 

「そっ…そんな!! 私にはこんなもの…。」

 

「この指輪の対価は銀五枚だ…。麗紗に払えるかい?」

 

「…払えません…。だから…。」

 

「なら、仕方ないな…。麗紗、俺の下で働け。そして、返済しろ!!これはお願いじゃない!!…命令だ。(ニコッ)」

 

そう言って笑顔を向けると、麗紗は涙でグシャグシャになった顔を俺に向けて、胸に飛び込んできた。

 

「本当…ですか…??」

 

「あぁ、俺の傍で何でも良いから働いてくれ…。麗紗がいないと、俺が寂しいんだ…。」

 

「…ふぁい…。ひぐっ…私…一生懸命…働きます…。何でも頑張ります…。」

 

「うん…。銀五枚分、返せたらその時にもう一度考えてみて。もしその時でも出て行きたければ俺は構わないよ。」

 

そう言って麗紗の頭を撫でてあげる。

 

…その後、麗紗はしばらく泣き続けた。

 

俺は麗紗が泣きやむまでずっと頭を撫で続けた。その姿を見た人々は恋人同士が抱き合ってると言うよりは、兄弟の妹が兄に泣きついているようにしか見えなかったという…。

 

 

こうして、麗紗が俺達の仲間を出て行くことは無くなった…が、今日のこの出費が実はこの後に大変なことになる。

 

…だが、このときは聖はおろか、残りの誰にも分からない事だった。

 

 

説明
どうも、作者のkikkomanです。

タイトルで分かるかもしれませんが、今話は麗紗回です。


社会でもそうですが、新参者と言うのは肩身が狭いもの。

それは、現代だろうが恋姫の世界だろうが同じこと。

新参者の麗紗の思いとは…。



また、今話で麗紗の性癖曝露ですね…。でも、こんな娘もあり!!


話の最後には、なにやら匂わすフレーズが…。気にはなりますが、次話は日曜日にあげますのでしばらくお待ちください。

では、お楽しみに…。
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