夜天の主とともに 24.拳士VS狙撃手 そのA |
夜天の主とともに 24.拳士VS狙撃手 そのA
ナリンの眼前には所々焦げている健一がいた。レーザーは確かに健一の障壁をも貫いたがそのおかげで健一に達するまでのタイムラグが長くなった。その隙にバインドを解除した。そしてナリンの後ろへ高速で回り込んだのだ。
〈Gun mord.〉
ヴィトルを二丁拳銃へ切り替えて健一を睨むナリン。対する健一は表情を変えずその視線を受け止め佇む。
「決まりやから名乗らしてもらうで。時空管理局嘱託魔導師、ナリン・ノーグルや。期待はしとらんけどお宅は?」
「‥‥‥‥‥。」
「だんまりかいな。まぁええわ。でもこっちは答えてもらうで。………転生者やろ?」
無表情を徹していた健一はここで初めて驚いたような顔をした。ナリンはそれで全て察したようだった。
「やっぱりのぉ。あ、ちなみにワイも転生者やから。原作はあまり見たことあらへし、このあたりの原作知識が抜け落ちとるからあれやけど多分お宅みたいな魔導師はおらへんかったと思うんや。そっちもそう思ったやろ?」
「……原作は見たことはない。それにこの世界と原作は似てはいても絶対的に違う。この世界はこの世界だ。」
「それについては賛成やけどな。前に襲ってきたとち狂った転生者じゃないって言うのはわかったからよかったわ。なんか気が合いそうな気がするで。」
「そうだな、そうかもしれない。」
「んで、話し戻すけどおとなしく投降してくれへん?同じ転生者なじみとして。」
「それは断る。俺自身の、俺たちの願いのためにも。」
「せめてその願いだけでも教えてぇな。」
なおも質問してくるナリンに対しこれ以上は不必要とばかりに無言で拳を構えた。
「やっぱそうなるんかいな。ええで、捕まえたらきりきりしゃべってもらうで?ファイアバレット!!」
ナリンは構えたヴィトルとその周囲にナリンが展開できる限界数を射出した。それに対し健一はジェットをうまく使いこなし避けた。
〈Jet move.〉
突如眼前で避け続けていた健一がナリンの視界から消え、見失った。そして健一はそれこそ一瞬でナリンの背後をとった。気づかれている様子はない。
(とった!!)
「後ろや!!ヴィトル!!」
〈Impulse circle.〉
重々しい健一の拳が届くというところでナリンを中心にして衝撃波が発生し健一は強制的に吹き飛ばされ態勢を崩された。その隙を見逃すわけもなくファイアバレットを一斉に発射し、避けるタイミングを失った健一は障壁を張るしかなかった。そして考える。
(あの衝撃波…厄介だな。いやそれよりもなぜばれた?)
その後も健一が接近しそれをいち早く察知したナリンが衝撃波で距離を取らせて攻撃するという形が数分続いた。そしてナリンはこの状況を待っていた。口では倒すと言ったが実際にはユーノとアルフが複数同時転移する準備のための時間稼ぎが目的だった。状況を確認するため二人にそしてフェイトにも念話をつないだ。
『ユーノ、アルフ転移の方どないや?』
『準備そのものはできてるけど結界だ堅い。』
『あたしもやろうとしてるんだけどただでさえこの結界堅いってのにこの使い魔が邪魔して……。』
『私もこっちで手いっぱいでそっちに手を貸せそうにない。ナリンはどう?』
『あかんな、一応抑えれてるとは思うんやけどそこまでや。それ以上は余裕あらへん。』
状況は手詰まりに近いものだった。アースラからの援軍はあまり期待できない。いまもエイミィが結界の解析をしているがそれまで全員がそれまでの間持つかと言われればわからなかった。そこで予想外の声が念話に割り込んできた。
『みんな聞いて。私が…結界を破るよ。』
『『『『なのは!?』』』』
『私なら……私とレイジングハートならやれる…よ。大丈夫だから。』
確かにこのメンバーの中で一番火力があるのは砲撃型のなのはだ。なのはもレイジングハートかなりの痛手をもらっているがこの状況ではものなのはにやってもらうしかなかった。
『んじゃあ各自なのはの準備ができるまで時間稼ぎや。』
そして念話に割いていた意識を健一へと戻す。いつのまにか何もせず空中にたたずんでいた。
「どや、観念してくれたかいな?どれだけ動こうともそっちの動きは読めるからな。」
「……どうにもそうらしいな。大方魔力の動きを、いやそこまでではなさそうだな。俺から発せられる魔力そのものを感知でもしてるのか?」
笑みを浮かべていた表情がその瞬間わずかにピクッと動いた。それを見逃すはずもなく自分の予想が図星であると健一は確信した。
「つまりわかってても避けれないこうげきならいいわけだ。」
「なんやて?」
小さくつぶやいた声に聞き取れずおもわず聞き返した。現状では膠着状態が続くと思っていたからその問いは当然でもあった。
そして健一はその問いの答えた。
「最初のが俺の最大速度と言った覚えはないぞ!!」
〈Jet move!!〉
ナリンの背後から。
「んな!?」
確かにナリンは自分の背後に回る健一の魔力を感知することはできた。しかしそれはあくまで脳が反応できただけで体はその動きに追いつけなかったのだ。
よってナリンは健一のカートリッジで速度・威力を大幅にあげた拳をもろに食らった。その衝撃で地上まで一気に飛ばされたがそれでもなんとかナリンは堪えていた。
(さっきまでのは最大速度やなかったんかい。しかもまだあの分やとまだ出るやん、絶対。)
真上を見るとすでに目前と迫っていた。しかしこのタイミングはナリンにとって間に合う範囲だった。
「ヴィトル!」
〈Impulse circle.〉
またしても衝撃波が発生し健一は強制的に吹き飛ばされると思われた。しかし、
「おおおおおおお!!」
その衝撃波をそれ以上の加速で突き破った。
「がはぁぁぁ!?」
衝撃波を破った健一のその凶暴な拳は再度ナリンに突き刺さった。なす術もなくナリンの体はアスファルトに数バウンドして止まった。
「ガハッ!!ゲホゲホッ!!」
防御を完全に抜かれての攻撃だった。ありがたいことにヴィトルがバリアジャケットの強度を上げていてくれていたおかげで多少はダメージは減っているがそれでもたった2度の攻撃でかなりのダメージを与えられたのは間違いなかった。
〈マスター!!また来ます!〉
痛む体を無視して見上げると確かに健一が迫ってきていた。まだ多少距離はあったがあのスピードの前にはさして意味はないだろう。
〈Sterling fire.〉
「ステアリングファイアー!!」
一旦ヴィトルを腰にしまい両手を突き出したナリンから円環状の魔方陣が出現しそこから広範囲に凄まじい熱を持った魔力流を発射した。さすがの健一も接近していたため避けることができないと判断し障壁を張って凌ぐことにした。
灼熱の炎は防いでなお熱気が障壁をすり抜け健一のスタミナを少しずつ奪っていった。しかしそれも本当に少しずつなため結果的には足止めぐらいにしかなっていなかった。
健一の行動と視界を遮っていた徐々に炎の勢いは失くしていき、治まったと同時に高速接近できる態勢に健一は入った。そして炎が消え飛び出すとすでにナリンはいなかった。
どこにと辺りを索敵しようとした瞬間、後方から何かの気配を感じた健一は素早く後ろへ向き直るとそこには肩で息をしながらも今までの比にはならない大型の魔法を準備し終えたナリンがいた。
「ファイアースマッシャー!!!」
紅の巨大な砲撃がヴィトルから放たれ周囲の大気を燃やしながら一直線に健一へと向かった。距離が近く気づくのも遅れた健一はその砲撃を避けることができず直後爆音とともに大きな砂埃と煙が上がった。
「はぁはぁ‥‥さすがに‥どうや。」
ヴィトルを冷却しながらナリンは今度こそやった確信した。距離、タイミング、そして威力ともに申し分なかった。当たる前にカートリッジをロードし終えていた様だったがそこから障壁を張ってもそんな短時間であれを防ぎきるほどのものが作れるとは思えない。
ナリンは煙が晴れるのを待ち拘束する準備をした。煙が晴れればそこには地に伏した健一の姿があるはずだった。そう、あるはずだった。
煙が少しずつ晴れてそこにあったのは普通の障壁とは段違いに分厚さが違う薄緑の障壁だった。それはもはや一つの大きな盾にも見えた。事実健一は両手を前に突き出してその盾を支えているようだった。
しかし何よりもナリンにとって衝撃的だったのは、
〈Robust shield.〉
「な、なんやと!?いくらなんでも無傷ってありえへん。」
「何とか間に合ったな、よくやったジェナ。」
〈それが私の仕事ですから。〉
「そうだったな。さてとじゃあそろそろ終わらせてもらおう、ジェナ。」
〈Explosion.〉
カートリッジを2発ロードし、健一は構えた。ナリンも今度こそは見逃さないとばかりに全神経を集中させた。しかし、
「がぁぁぁぁぁぁぁ!?」
何かさせる隙も与えない程のスピードで横から健一は迫った。その拳が事前に張ってあった障壁とバリアジャケットを貫いて脇腹に突き刺さり、凄まじい速度でビルへと吹き飛ばされた。口から吐血しながらも顔を上げるとすでに健一は目の前に移動していて拳を振りかぶっていた。
本能的にナリンはヴィトルをクロスさせた。
〈Defencer.〉
それに応じるようにヴィトルも即席の障壁を張った。それと同時に健一の拳と衝突した。2つは一瞬拮抗した。が、
「叩き潰せ!!」
〈jawol!!!〉
撃に耐え切れずさらに後方へとナリンは吹き飛ばされた。瓦礫に体を預ける形で倒れているナリンは一目で動ける状態ではないことが分かった。設計された当初からかなりの強度を持っているはずのヴィトルもかなりの損傷を受けた。
ナリンは自分を見下ろす健一を睨みつけた。
「なん…でや。なんでこないなこと……するんや。」
「……魔力はもらっていく。来い、闇の書よ。」
突き出した手に突如一冊の本、闇の書が収まった。ナリンにはそれが何かわからなかったが危険なものだというのは肌で感じ取った。しかし離脱しようにも体が思うように動かない。せめてできる限り情報を集めようと集中した。
「闇の書、蒐集。」
「ぐぁぁぁぁぁ!」
蒐集を始めたと同時にナリンのリンカーコアが露出し闇の書へと吸い出されていった。そしてそれが終わるとナリンはついに気を失った。
「………………。」
『健一君、シャマルよ。そっちはどう?』
「今戦闘終了して蒐集した。闇の書を任せた。」
『了解。後は任せて。』
そう言った瞬間闇の書はその場から消え失せた。そしてその場にナリンを残し健一は出ていこうとしたところで健一は咳き込んだ。手のひらを見るとそこには血が出されていた。
〈マスター!?どうしたのですか!!〉
それに応じず少しばかり壁に寄りかかり座った。しばらくすると体も落ち着いたのか健一は何事もなかったように立ち上がった。
「いや……なんでもゲホッ、ない。外に出るぞ。シャマルがもう蒐集し終わってるころだ。」
〈ですが!!〉
「ジェナ。」
〈‥‥了解です。〉
健一が空へ上がるとすでに状況は大きく変わっていた。ヴィータの張った結界は壊され新手の管理局員が何人もいた。そのうちの一人は明らかに凄腕の魔導師に見えた。
『健一か、苦しそうだが大丈夫か?』
『俺のことは…後で。それよりこの状況の説明を頼むシグナム。』
『シャマルが蒐集に成功したのはよかったがその魔導師に結界を破壊。そのすぐ後にそこにいる魔導師たちが乗り込んできたというところだ。離脱しようにも難しい。打開策はあるか?』
『いまからすぐ目を閉じてくれ。目を晦ませる。』
『わかった。』
『おう。』
『わかったわ。』
『心得た。』
「こちらは管理局魔導師執務官クロノ・ハラオウンだ。おとなしく投降を…ん?」
急にシグナムたちが目を閉じたことに違和感を覚えたクロノはもう一度周囲を見渡した。そして見つけた。健一が白く発光する魔力球を生み出しているのを。
「おい君!!何をしている!!」
〈Light flash.〉
クロノを無視し健一はそのまま魔力球を思いっきり殴りつけた。直後目を開くこともできない程のまばゆい閃光と轟音が辺りを覆った。それを予期していなかったクロノたちは目をやられその隙にシグナムたちは離脱した。健一も離脱しようとしたがそこにザフィーラが来た。
「そろそろシャマルのかけた魔法もの時間切れだろう。やつらも視力が戻るのにまだかかるだろう。早く私の背に乗れ。」
「ザフィーラ、助かる。」
健一がザフィーラの背にまたがるとすぐさま短距離連続転移をしながら離脱した。ザフィーラの背に乗せられ疲れからかその上で意識が薄れていくのを感じた。そしてはやての顔が浮かんだ。
(絶対に死なせたりしないからな。)
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A's編っす | ||
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マジですか!?修正しときます。ありがとです(森羅) あの〜吐血したところのでジェナのことヴィトルってよんでますよ?(鎖紅十字) |
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