優しき闇の使い魔 第四話 |
ルイズとヴィストリアは保健室からルイズの自室へと移り、就寝する事にした。
別にそのまま保健室で寝ていても良かったのだが、いつも迷惑かけているので今回は戻る事にしたのだ。
「ここが私の部屋よ。どうぞ」
木製の扉を押し開き、ヴィストリアに室内へ入るように進めるルイズ。
12畳ほどの広めの部屋に、シンプルなベッド、クローゼットにタンス、鏡台、丸いテーブルに、椅子が三つ。
広くて丸いテーブルがある以外はごくごく普通の部屋だと思われる。
「特に、これと言って何かあるわけじゃないけど…」
「そう?シンプルで良いと思うよ」
「ありがと。さ、もう遅いし、早く寝ましょ?」
「だね。申し訳ないんだけど、毛布を一枚貸してくれる?」
早速寝ようと言う事で、毛布を一枚借りようと訪ねるヴィストリア。
「毛布?」
「風邪をひくことはないとは思うんだけど、一応ね?」
「……?ヴィスティどこで寝るつもり?」
「え?その辺?」
ヴィストリアは原作で初期の才人が寝ていたであろう鏡台の横の壁を指差す。
「……なんで?」
「え?なんでって…一応使い魔だから同じ部屋にいたほうが良いかなって思ったんだけど…」
「そうじゃなくてなんでそんな所で?」
「えっと…?」
何を言っているの?とばかりに首を傾げるルイズに同じく首を傾げるヴィストリア。
二人の話には何かが噛み合っていない様だ。
「ベッドで寝れば良いでしょ?」
「………?あれ?じゃあルイズさんはどうするの?」
「え?そりゃ私もベッドで寝るけど?」
「……??僕は?」
「だから一緒に寝れば良いじゃない」
再び何を言ってるの?当然でしょ。とでも言いたげにヴィストリアを見るルイズ。
「えっと…女の子と一緒のベッドに入るのはちょっと…僕なら、毛布さえ貸してもらえれば床で大丈夫だし」
「本当に大丈夫?」
「うん。平気。」
「本当に?」
「慣れてるし」
話が平行線になる前に、半ば押し切る感じでルイズから毛布を受け取り、身体を包んで壁に背を預けて腰かけるヴィストリアだった。
「寝苦しかったらベッド入ってきて良いからね?」
「あはは。ありがとうルイズさん」
軽く苦笑して毛布に包まるヴィストリア。
「それじゃお休み、ヴィスティ」
「お休みなさい。ルイズさん」
翌日早朝…珍しく早めにルイズが起きだして、ヴィストリアの方を見る。
「結局ベッドには来なかったのね」
少し苦笑しながら毛布に包まれて眠るヴィストリアを眺める。
ふわふわの毛布が気持ちいいのか「にへへ…」と、あどけない顔を毛布に埋める。
それを見てルイズは…
「これで本当に魔王なんてね…どう見ても小動物にしか見えないわよ」
げんなりしつつもヴィストリアの寝顔に癒されるのだった。
そこへ…コンコン…ガチャ…
短いノックの音が響く。
「おはようルイ…ズ?」
いつものようにキュルケがルイズを起こしに入室してきた。
そうして彼女の目に写ったのは、床で眠るヴィストリア。
そのヴィストリアを見ながらニヤニヤするルイズ。
「あ、おはようキュルケさん」
入ってきたキュルケに挨拶を返す。
が、キュルケの様子がおかしい。
フルフルと肩を震わせ、眉にシワが寄る。
「ルイズ!あんたってば、どんな性癖してるのっ!?」
と叫ぶキュルケ。
「ふえ!?」
突然の事にどう反応していいのか分からずルイズはパニックに陥る。
「いたいけな男の子を毛布一つで転がして、そのあどけない寝顔を見ながらニヤニヤするなんてどれだけマニアックなのよあなたっ!?」
「な、なんの話ですか!?」
「そんなのあたしの知ってるルイズじゃないわよっ!」
「ちょっと落ち着いてキュルケさんっ!」
とりあえず落ち着かせようとするが、当のキュルケがルイズの肩を掴んで揺さぶるので気分が悪くなり、徐々に顔を青く染める。
「あたしの知ってるルイズはもっと純粋無垢で真っ白で天然ボケでぽややんとしててポンコツな可愛い女の子なのよ!?」
「私、今までキュルケさんにそんなふうに思われてたの!?」
なんとかキュルケの拘束から逃れ、息を整えていると、まさか自分がポンコツ扱いされていると知ってしまい、軽く絶望した。
「あぁ…どうしたらいいのよ…こんなポンコツじゃない内容じゃ、タバサに話して一緒に笑えないじゃない…」
「ポンコツな内容だったら話してるの!?たまにタバサと出合い頭に笑われると思ったらそれが原因!?」
しかもそれをよりによってタバサと話のタネにされていたとは思いもよらなかった。
その時、ふわふわの毛布がヴィストリアの鼻を擽り…「…くしゅんっ!」と、くしゃみを一つ。
「風邪引いたらどうするの!?」
キュルケは更にヒートアップしてルイズに説教を始める。
「ち、違うの!キュルケさん!誤解なの!」
「なにが誤解よ!?現に彼、冷たい床で寒さに震えてるじゃないっ!」
「私、昨日ちゃんと一緒のベッドに寝るように言ったのっ!」
「知り合ったばかりの殿方と一緒のベッドに入るなんてあなたどれだけ淫乱なのよ!?」
「私にどうしろと!?それにそんな邪な感情なんてもってないもん!」
こちらの話はまともに取り合わず、現状だけを見て説教するキュルケ。
「でも現に彼は床で寝てるじゃない!」
「そ、それは彼が…」
「『お願いします』って言った所、あなたが『あんたなんか床で十分よっ!その辺で勝手に寝てなさいっ!』って言ったのね!?」
「キュルケさんの中で私、どれだけ悪女だって思われてるの!?」
必死に弁明するルイズに、益々妄想が暴走していくキュルケ。
彼女の暴走は止まりそうもない。
そんな時…「んみゅう?」と、可愛らしい声を出しながら目を覚ますヴィストリア。
どうやら二人の叫び声で起きてしまったらしい。
ヴィストリアが起きたので、キュルケに状況説明。
「と、言う訳で、僕が自分から進言したんです。」
「あら、そうだったの。ごめんなさいルイズ。私ってば早とちりしちゃったみたいで…」
「いえ、私も、誤解されても仕方ない状況だったし…」
きゅる〜〜ヴィストリアの方から可愛らしい音が聞こえた。
「あ、あう//////」
「くすっ…お腹空いたの?」
ルイズがヴィストリアの反応を見てクスリと笑う。
「あ…その…よく考えたら、昨日から何も食べてなくて…////」
「…そう言えば、私もね」
召喚した時から気絶していたルイズと召喚された時から気絶していたヴィストリア。
ある意味お似合いかもしれない。
「それじゃ、タバサの部屋によってから食堂に行きましょ?」
「はい。」
「わかりました」
キュルケの提案に素直に従う二人だった。途中、タバサと合流してから食堂に着いた四人。
ハリー・〇ッターに出てくる食堂と変わらない光景が目に映った。
「ひ、広いね…」
「三百数人くらいいるから、この位広くしないと入りきらないのよきっと…」
と、ヴィストリアの問いに憶測を交えながらルイズが答えた。
「ヴィスティは私の隣ね?」
「あ、はい。」
「おい!そこは僕の席だぞ!平民が軽々しく…す…わる…な…?」
金髪の少年が座ろうとしているヴィストリアをみて叫ぶが、ヴィストリアの顔を見て固まった。
ルイズが言っていた通り、ヴィストリアは美少年だ。 しかし、その顔立ちからよく美少女に間違われる。
そして、金髪少年はヴィストリアを見て頬を赤く染めていたのだ。
「あ、すいません。今どきます。」
そう言って、軽く頭を下げてから立ちあがろうとするヴィストリア。
「大丈夫よ。昨日の内に私が知らせておいて、席を増やしてもらってるから」
そう言ったのはキュルケだ。
キュルケは気絶したルイズの代わりに、使い魔の申請を行っていたのだ。
ヴィストリアが人であると言う事を知っているので、ルイズならそうするだろうと当たりをつけたキュルケが前もって伝え、席を増やして貰ったのだ。
「だから、心配しなくても大丈夫よ。((男の子|・・・))でしょ。どんと胸を張りなさい。」
「お、おと…こ…?」
金髪少年はヴィストリアを再び見て絶句した。
自分は、今、男の子にときめいてしまった事によるショックだ。
「僕の純情を踏みにじったなああああああああああ!?!?」
「えう!?いきなり何ですか!?」
金髪少年…もとい、ギーシュはヴィストリアに怒鳴った。
ギーシュは俗に言うナルシストだ。 女子からの人気はそれなりにだがある。
だが、彼は勝手に勘違いをして勝手にときめいて、自分勝手に怒鳴ってきた。
自己中心的にも程がある。
「お前は僕を怒らせた!決闘だ!!」
「止めときなさいよギーシュ。貴方じゃ逆立ちしたってヴィスティには勝てないから」
「勝ち負けは兎も角、なんで決闘になるのよ」
「…筋力、学力、容姿に自信がないから魔法でねじ伏せようとする」
と、ギーシュの叫びに上からルイズ・キュルケ・タバサの順で呟く。
「弱い男の醜い悪あがき…」
ドギツイ言葉でギーシュに毒を吐くタバサ。
ギーシュは真っ赤になってヴィストリアに薔薇の造花を向ける。
「もう許さん!!君!僕と決闘だ!そして、僕の純情を踏みにじった事を後悔させてやる!」
「いや、だから何の事ですか!?話が見えないんですけど!?」
「どこまでも惚ける気かっ!ふんっ!まぁいい!ヴェストリの広場で待っている!逃げようなどと思うなよっ!?」
そう言って、ギーシュはヴィストリアの返事も聞かずにヴェストリの広場へと向かった。
そんなギーシュに対してヴィストリアは「僕にどうしろと……」と、ため息をついたのだった。
ギーシュの姿が見えなくなると、ルイズがその場を仕切り直そうと切り替える。
「……まぁ、とりあえず…ギーシュの事は放っておいて、朝食にしましょう。決闘を受ける、受けないにしても、お腹が空いてちゃ何もできないし」
と、ルイズの言に従い、4人は朝食をおいしく頂いた。
因みに…タバサはその小さな体のどこに入るのかが不思議だが残さず全て食べたし。キュルケの方は極力残さないようにはしているが、腹八分目で抑えている。
ただし、残すと言っても食いかけを残す様な事せず、食べる分だけとりわけ残りをタバサに献上していた。
ルイズとヴィストリアは…ルイズの方は体に見合った分しか食べないので、いつも半分残ってしまう。その為、ルイズとヴィストリアでキッチリ半分ずつ分けて食べた。
椅子は増えていたが、食事の用意は間に合わなかったので都合が良かったとも言える。
そうして…約1時間後…ヴェストリの広場。
「………遅い!!!!いつまで待たせるんだね君は!!」
一人で勝手に先行していたギーシュは憤慨しながらヴィストリアに怒鳴った。
「す、すいません…昨日から何も食べてなかったからお腹空いちゃって…それに、朝食を抜くと1日の活力がでないですし…」
「腹が減っているのは僕も同じだ!こっちは食べないで来てるんだから、君も食べないでくるのが礼儀と言うものだろう!」
「……正確な時間と食事云々を指定していないあなたが悪い。」
と、ギーシュの反論をタバサが正論で返した。
「君は黙っていたまえ!これは僕と彼の問題だ!」
「あなたが勝手に勘違いして、彼を巻き込んでいるだけ。彼に落ち度はない。」
「うぐ…と、とにかく、彼は僕の純情を踏みにじった!許すわけにはいかない!」
「だからそれはギーシュが勝手に勘違いしたんじゃない!そ、そりゃぁ…最初は私も女の子って言うかメイドっぽく見えちゃったけど…」
ルイズもルイズで他人の事は言えなかった。というか、容姿が女の子っぽく見えるだけで勝手に勘違いされて、いちゃもんをつけられるヴィストリアが不憫でならない。
「諸君!!決闘だ!!!」
結局、ギーシュは無理矢理ヴィストリア本人の了承も得ずに決闘を宣言した。
当のヴィストリアと言えば「ううう…僕の意見は……」と半泣きで訴える事しかできない。
……彼は本当に魔王なんだろうか?
「なぁ?ギーシュのあれ、どう思う?」
「どう思うもなにも、自分の主張を一方的に押し付けて((女の子|・・・))に迫る悪漢の図、だろ?」
「だよなぁ〜。俺もそう思う」
外野から聞こえてくる話し声に異色が混じりはじめる。
「ギーシュ様…昔は格好良いって思っていたけれど、同じ女性としてあの姿は認められないわ。あの娘、可哀想…」
「私もそう思うわ。昔の私ってばあんな男のどこが良いって思ってたのかしら…」
ちらほらと聞こえてくるギーシュに対する非難の声。
当然その声はギーシュ達にも聞こえている。
「皆ちょっと待ってくれ!誤解!君たちは誤解しているんだ!」
ギーシュの必死の声に一瞬周りの声が止む。
「君たちは誤解している!こいつは女なんかじゃない!男なんだ!」
静寂。
「……………ギーシュ」
周りのギーシュの見る目が更に冷たくなった。
「言い逃れにしてもそれは酷いぞ」
「女の子に向かって“男だ”ってのはいくらなんでもないだろう…」
「ギーシュ様…最低です…」
「なんて暴言かしら…」
口々に巻き起こるギーシュに対する非難の数々。
「だ、だから待ってくれ!どうしてそうなるんだ!あいつは本当に男なんだよ!」
ギーシュが顔を真っ赤にして叫ぶ。
「わかったわかった。とりあえずあの娘を男だと仮定しよう。それで、その男(仮)とのこの決闘の発端はなんなんだ?」
「くっ!仮定ではないというのに!だが良いだろう!聞かせてあげようじゃないか!事の発端を!」
ギーシュ説明中………
「…………………ギーシュ」
説明が終了した途端、ギーシュに向けられるのは当然の様に非難の目の嵐。
「要訳すると、だ。見目麗しい美少女が居たから声をかけた…と」
「話してみたら男だった…と」
「それで騙されたって言って決闘をする…と」
事のあらましを聞き、状況を整理する一同。
そんな一同を見て、これで判っただろう?と、腕を組んでドヤ顔で見渡すギーシュ。
しかし、一同の出す答えは決まっている…『ギーシュが悪い』。
「バカじゃないの?」
「なぜ僕が非難されるんだ!?」
「どこから見てもお前の勘違いであの娘に絡んでるだけじゃないか…」
「うるさいっ!とにかくこれは僕なりのけじめでもあるんだ!外野は黙っていてくれないかっ!」
それから数分後…ギーシュとの決闘に、嫌々ながらも臨む事になったヴィストリア。
向かい合う二人。 だがその時、ヴィストリアの背中にふわりとした重みが加わる。
さらに頬にサラサラとした感触。
「………?」
不思議に思うヴィストリアが振り返り見たもの。
それはヴィストリアの背中に抱き着き、自らの頬をヴィストリアの頬に擦り寄せる一人の少女だった。
「え、えっと…?」
混乱するヴィストリア。
その彼の目の前に抱き着いたままの少女が、何故かハルケギニアの人達にも読める文字の書かれたスケッチブックを突き付ける。
『みつけた…』と、丸く可愛い字でそう書かれている。
「あ、あれ?」
その字とスケッチブックに心当たりのあるヴィストリアはとりあえずこの抱き着く少女を確認しようと引きはがす。
「…っ」少女の口から漏れる喘ぎ声にも似たため息はとりあえずスルーで。
引きはがした少女。 それはヴィストリアのよく知る少女だった。
肩ほどで切り揃えられた柔らそうな茶髪の髪型。
ルビーを思わせるヴィストリアと同じ深紅の瞳。 芸術品のように整った顔。
出るところは出て、引っ込むところはしっかり絞られているスタイル。
そしてなにより印象的なのは左手に持たれたスケッチブック。
どこから見てもそれは…"自分の妹のアリス"であった。
だが、なぜ彼女がここにいるのかが判らない。
彼女は自分が召喚されたとき、居なかったはずなのだから。
「あ、あれ?なんでここに?」
カキカキとなんの迷いもなくスケッチブックにマジックを走らせる。
『貴方の居場所が私の居場所』
「もしかして…アリスも召喚されて?」
ペラ…カキカキ…
『私は貴方以外の呼び掛けに答えない…』
「でも召喚じゃないなら一体どうやってこの世界に?」
ペラ…カキカキ…
『ヴィスティ…あまり私をナメないでほしい』
「…え?」
ペラ…カキカキ…
『貴方に会うためなら、世界の壁くらいドリルが無くても越えてみせる…』
「あ…はは…凄いね…(なんでドリル?)」
「おい君たちっ!」
ほのぼのと会話をしているとヴィストリアの前方から声がかかる。
見るとギーシュが肩を震わせ、怒っていた。
「あ、”忘れてた”…」
うっかり呟いたその一言。 それがギーシュをキレさせた。
「ふ…ふふふ…良い度胸じゃないか。僕を無視して美少女といちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃとっ!」
「え?いや…確かに美少女は美少女だけど彼女はただの妹で…」
ちらりとアリスを見る。
『美少女…』一言スケッチブックに書き、その周りにハートマークを量産するアリス。
よほど嬉しかったらしい。
「あ、アリス?」
『ヴィスティ。私、美少女?』
「え?あ、うん。アリスは美少女だと思うけど…」
ペラリ
『嬉しい…』
「言ったそばから君たちはぁぁぁっ!!!」
そんな二人に髪を掻き乱しながら唸り声を挙げるギーシュ。
カキカキ…
『…?ヴィスティ、あの人はなぜ怒っているの?』
「たぶん、僕が彼との決闘を無視してアリスと話してるからじゃないかなぁ…」
『……?…決闘?』
こてん。と、可愛らしく首を傾げるアリス。
「うん…なんか流れでそうなっちゃったみたいで…」
対するヴィストリアはげんなりした表情で告げる。
『ヴィスティは、決闘…いや?』
「そりゃやらなくて済むならそれが一番だけど…」
カキカキ…
『……私が代わる?』
「え?でも…」
「君たちいい加減にしたまえっ!」
ギーシュが怒りに任せて杖を振るう。
ボコリと音がして青銅のゴーレムが地面から生えた。
『あれくらいなら平気。ヴィスティは休んでて。すぐに終わるから』
「え?いや…でも…」
「僕はどちらでもいいさ。ただ君たちは僕を怒らせた!女だからといって手加減はできないからそのつもりでいたまえっ!」
『構わない。すぐに終わらせる…』
両者構える。
が、
『……ごめん。少し待ってほしい』
突然アリスからタイムが入る。その様子に、フフンと髪を払いながら余裕の態度を見せ始めるギーシュ。
「どうしたんだね?まさか、降参とでも言うつもりかい?」
『そんなつもりはない。ただ少し席を外したい』
「ふん?逃げるつもりか?」
『そんなつもりはない。すぐに戻る』
一体どこへ行こうと言うのか?話しながらもゆっくりとヴィストリアの方に近づいていくアリス。
「すぐに?ふん。武器でも取りに行く気かね?」
『違う。さっきヴィスティに抱き着いたせい…』
「…?」
「え?僕?」
ギーシュと二人、首を傾げる。
『下着が濡れて気持ち悪い。あと冷たくて感じちゃう…』
「なっ!?」
「ちょっ!?アリス!公衆の面前でなんて事書いてるの!?」
公衆の面前で恥ずかしげもなく今の状況を暴露するアリスにあたふたし出す。
『ヴィスティ責任とってほしい…』
「責任!?」
『身体が火照ってしかたない。鎮めてほしい』
「だからなんて事書いてるのさっ!」
周囲を見てみると、何人かは顔を真っ赤にしている。
しかも数人ではあるが、前屈みになっている男子もちらほら居る。
『…?だから鎮めてほしい。あなたの指と舌で私の胸とあそこを愛撫して…』
「ストーーーーーーーーップ!!!!公衆の面前でホントなんてこと書いてるの!?」
『なにも合体までなんて贅沢は言わない。けれどその分までヴィスティの指と舌で愛して……』
「お願いだからアリスちょっと自重してーーーーーーっ!!!!」
一切の羞恥を見せずに淡々とヴィストリアに要求を書き綴るアリスに、あたふたしながらもとりあえずスケッチブックを取り上げる事で止めた。
彼の不運は、まだ、始まった瞬間からクライマックスレベルである。
説明 | ||
ギーシュ登場。 筆談少女の正体。 少女たちのテンションは止まる事を知らない。 |
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