IS -インフィニットストラトス- 〜恋夢交響曲〜 第二十七話
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「暑い・・・」

 

先日の出来事から数日たった日曜日、俺は旭の買い物に付き合うついでに自分の買い物も済ませるため、駅前の噴水の前の街路樹に背を預けてボーっと突っ立っていた。

天気は快晴。いかんせんモヤシ人間の俺には、この天候は少々つらい。

 

「えっと、あと5分で待ち合わせの時間だよな・・・」

 

携帯の時計をみて確認する。毎度のことでもう慣れてしまったが、遅刻したら旭に何をおごらせられるかわかったもんじゃない。

 

「この前は後ろから目隠しされたが、今日は後ろには街路樹だ。もう同じ手は食わな――」

 

ゴン!

 

突如俺の上から何かが落ちてきて脳天にクリーンヒットした。その場にうずくまった俺の耳に、してやったりといった声が聞こえる。

 

「ざ〜んねん、今日は上からでした〜」

 

「お、お前、いつか殴る・・・」

 

木の上からひらりと降りてくる旭。俺の脳天を直撃したのは、あいつのかばんだった。

 

「奏君もまだまだだね〜。それじゃあISのパイロットとしてやってけないよ?」

 

「あんな不意打ち、よけれるかよ・・・」

 

一通り文句を言ってみるが、旭はいたずらが成功したのが嬉しいのかニヤニヤして上機嫌。まぁ、いつものことなのでもう慣れてしまったが。

 

「しかし、また今日もものすごい格好をしてるよな」

 

前のときは服装は普通だが、麦藁帽子に顔にあってない大き目のサングラスだった。今日は、白いハンチングに相変わらずのサングラス、半そでのシャツにスカート、ニーソックスというよくわからない格好だった。

 

「ふふん、どう、わたしのファッションセンス?」

 

くるりとその場で一回転。さすが、アイドルをやっているだけあって様になっている。

 

「それが素だったら相当ひどいな」

 

「ひどいよ奏君、これがわたしの素のファッションなのにぃ」

 

「嘘つくな。ここ最近になるまでお前のそんな格好は見たことがないぞ」

 

「あ、ばれた?」

 

はぁ、やっぱり昔からこいつはこいつだな・・・。

 

「じゃ、いこっか」

 

「そうだな」

 

あらかた漫才が終わると、俺達は並んで歩き出す。

 

「そういや奏君、彼女できた?」

 

「っ・・・!? 何でそんな話になるんだよ!?」

 

「いやぁ、学校は女の子だらけだし、そういった間違いが起きてるんじゃないかってね」

 

「あのな、起きるわけないだろ?」

 

彼女は出来ていない。まぁ、俺の名字が気づいたらボーデヴィッヒになってそうな危機は訪れているが、さすがに黙っておこう。

 

「わかんないよ〜。女子校に通ってたメイクさんが言ってたけど、女子校に通ってると比較対象がいないからだんだん目腐れしてきて、ありえないことも起こったりするって話らしいし」

 

「・・・お前、俺を遠まわしにけなしてないか?」

 

「さあ、どうかな?」

 

ふふん、という旭の顔を見る。サングラス越しだが、こいつがこんな顔をするときは大抵俺をからかっているときだ。

 

「じゃあ、今日は――」

 

突然、すっと旭が俺の腕を取る。

 

「私のステージを作ってくれたお礼もあるし、彼女が居ない奏君を私が慰めてあげよっか」

 

「はぁ・・・もう、好きにしてくれ」

 

少し強引な旭に手を引かれ、俺たちはいろんな店が集まっている大通りへと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

大通りへと進んでいく奏羅と旭を、物陰から見ている人物が二人。

二人が一定距離を進むと、さっと物陰から飛び出す二人の髪はきれいなブロンド。

 

「・・・なんでシャルロットさんがついてきていらっしゃるのかしら?」

 

「・・・セシリアこそ、奏羅の後をつけて何をしてるのかな?」

 

それは先日、奏羅に買い物についていくことを断られたシャルロットと、同じく奏羅との買い物を断られたセシリアだった。

 

「そ、それはシャルロットさんが奏羅さんのプライベートを侵害しようとしていらっしゃるから・・・」

 

「・・・セシリアだって奏羅の後をつけてたでしょ」

 

「そ、それは奏羅さんとたまたま同じ道を進んでただけで――って、あああああっ!?」

 

突然大声を上げるセシリア。その視線の先には、仲良さげに手をつなぐ奏羅と旭の姿が。

 

「て、てててて、手をつないで・・・」

 

「ま、まだ僕つないだこともないのに・・・」

 

二人は悲しそうな、羨ましそうな顔でその光景を見つめていたが、しっかりと足は動いており、奏羅の大体15メートル後ろを進んでいた。

 

「それにしても、お相手の方はものすごい格好ですわね・・・」

 

「そうだよね・・・。結構奇抜な格好だし・・・」

 

「ま、まさか奏羅さん、あんな格好してる女の子が好きなのかしら・・・?」

 

「え、ええ〜? まさかそんな・・・。で、でも・・・」

 

ちらりと横をみると、そこには露店でサングラスが売られている。ひとつ、大体1500円。

 

「あ、あ〜、今日はいい天気だし日差しがまぶしいね」

 

「そ、そうですわね。こんな日はサングラスでもかけないと目に毒ですわね」

 

お互いわざとらしく話をしながら、露店のサングラスを買うと、すぐさまそれをかけた。

 

「ま、まったく、セシリアったらまた似合わないサングラス買っちゃって」

 

「シャルロットさんこそ、それ大きすぎですわ」

 

「あははははは」

 

「うふふふふふ」

 

「ほう、楽しそうだな。では私も交ぜるがいい」

 

「「!?」」

 

いきなり背後から声をかけられ、二人は驚いて振り返る。そこには眼帯をつけた銀髪の少女、ラウラ・ボーデヴィッヒが立っていた。

 

「なっ、なんでラウラがここに・・・?」

 

「私は奏羅を追ってきた。しかし、ここでゆっくりしている暇はないようだ。見失わない前に私は失礼するとしよう」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

「そ、そうですわ! 追って何をしようといいますの!?」

 

「決まっているだろう。アイツは私の嫁だ。あの中に私も交ざる。それだけだ」

 

あっさりといわれて、あっけに取られる二人。こうまでストレートだと、逆にすごいとまで思ってしまう。

 

「ま、待ってよ。ここは一旦情報収集したほうがいいよ。ほら、僕たちの知らない相手なんだしさ」

 

「ふむ、一理あるな。ではどうする?」

 

「ここは追跡の後、二人の関係がどのような状態にあるのかを見極めるべきですわね」

 

セシリアの言葉にラウラが納得したように頷いた。

 

「なるほどな。では、そうしよう」

 

そういって、ラウラは自分もサングラスを買うと、それを顔にかける。

 

「な、なんでラウラまでサングラスを・・・?」

 

「む? われわれは今からチームなのだから、何かしらの共通点をつけるべきだろう」

 

「ラウラさん、あなた眼帯をつけていらっしゃるのでは・・・」

 

こうして、奏羅を追跡するおかしなトリオが結成されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「奏君、ここのスパゲッティおいしいんだよ」

 

「最近の子のくせにパスタとは言わないんだな」

 

「じゃあこの今日のオススメスパゲッティを一皿頼めばいいかな?」

 

「二つ頼めよバカ」

 

「もう、奏君のいけず〜」

 

「なにがだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「見て見て奏君、このアクセサリーわたしに似合うかな?」

 

「そうか? どっちかっていうとこっちじゃないか?」

 

「んー。でも、これ男物っぽくない?」

 

「そうか? 俺はお前がつけても似合うと思うんだけどなぁ」

 

「う〜ん、じゃあ奏君がそういうならそっちにしようかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったー、またわたしの勝ちだね!」

 

「いや、俺はダーツ初心者なんだけど・・・」

 

「それにしても毎回100ポイント差をつけて0勝23敗はないとおもうけどなぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

追跡を始めて数時間、三人の行動は奏羅にいまだばれてはいないが、テンションはすでに最低ラインにまで下がっていた。

 

(あ、あれでは確実に恋人のようですわ・・・)

 

(うう・・・、奏羅もあの子も凄く楽しそう・・・)

 

(少しくらいの浮気なら許してやろうと思っていたが、あれではもう・・・)

 

はぁ・・・。と三人いっぺんにため息を吐いてしまう。

 

「・・・なにやってんのよ、あんたたち」

 

「お、セシリアにシャルロットにラウラじゃないか。どうしたんだ、こんなところで?」

 

そんな三人の前に、一夏と鈴が現れる。二人も買い物をするため町に出てきていたのだ。

 

「あ。あそこに居るの奏羅じゃない?」

 

鈴が指を差す先には、今まさにデパートに入ろうとする奏羅と旭の姿があった。

 

「横に居るのって彼女かしら・・・? って、まさかあんたたち!?」

 

「いや、そのですね・・・」

 

「あ、あはははは・・・」

 

「む、むぅ・・・」

 

三人とも鈴の指摘に言葉を濁してしまう。その様子を見て、鈴も少しあきれてしまった。

 

「まったく、もうちょっと奏羅のプライベートを考えてあげなさいよね・・・。アンタたち一種のストーカーよそれ。」

 

「ちがう。ストーキングではなくスニーキングだ」

 

「ラウラ、あんたそれ言葉が違うだけで大体おんなじよ・・・」

 

「で、でも、鈴だって一夏がああいう状態だったら後をつけるでしょ?」

 

「そ、それはまぁ・・・って何言わせるのよ!」

 

ぱっと一夏のほうをみるが、一夏には聞かれていないようだった。

 

「あれ? あの横に居るのつかさじゃないかな・・・?」

 

一夏の言葉に、セシリア、シャルロット、ラウラが反応する。

 

「あ、あの横に居る方を知っていらっしゃるのですか!?」

 

「あ、ああ。春頃に街に用事があって出たとき、ばったりあの二人と出くわして、一緒に行動したんだ」

 

「そ、そんなに前からの付き合いだったんだ・・・」

 

「ああ、幼馴染とか言ってたな」

 

「「お、幼馴染!?」」

 

セシリアとシャルロットが大声を上げる。二人が想像していたよりも長い付き合いだったらしく、さらにテンションが下がってしまう。

 

(幼馴染っていうことは、一夏さんと箒さんや鈴さんみたいな関係ですわよね・・・)

 

(厳しいなぁ・・・。どれくらい長いんだろ・・・)

 

しかし、そんな二人をよそにラウラだけは何かを決意した様子だった。

 

「・・・二人とも遅れるな。まだ敵の視察は終わってないのだぞ?」

 

「ラウラ・・・?」

 

「私の今の目的は、あいつを私の嫁にすることだ。少し障害が増えたところでその思いは変わりはしない」

 

その言葉にセシリアとシャルロットの二人は顔を見合わせると、力強くうなずいた。

 

「いこうか、セシリア」

 

「ええ、私たちの戦いはこれからですわ」

 

そして、三人は力強く歩を進め、デパートの中へと奏羅を追っていったのだった。

 

「・・・なんで奏羅の尾行なのにこんな大それた感じになってるのよ?」

 

「鈴、俺たちも中に入ろうぜ。水着買いに来たんだし」

 

「そうね・・・。ていうか、続くのねこのしょうもない話」

 

「何のことだ?」

 

「あ、いや、なんでもないわよ」

 

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恋夢交響曲・第二十七話
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