真・恋姫無双呉ルート(無印関羽エンド後)第55話 |
なんとか俺達は劉?軍を撃退することが出来た。が、こちらの損害もかなり大きかった。
愛紗と華雄の奮闘や例の焙烙玉のおかげで何とか劉?軍は退けられた、が、その後に乱入してきた黒い軍勢によって、劉?軍に止めを刺せず、取り逃がす結果となってしまったのだ。
「・・・しっかし一体何なのかしらね。あいつら。てっきり味方かと思ったけど、私達の邪魔したところをみると敵みたいだし・・・」
「だがもし敵だとするならば何故我々の兵糧を守ったかが問題だ。もしも私達を潰すのが目的なら、そのまま放置しておけばよかったのだ。それを助けたところをみると、劉?軍の味方とは考えにくい」
「だとしたなら俺達と劉?以外の第三勢力の軍ってことになるけれど・・・。いったい何処の軍なんだ?」
「連中はご主人様以外の天の御使いに仕えていると言っておりましたが・・・」
雪蓮、冥琳、愛紗、俺の四人は例の黒い軍勢について話し合うものの、結局答えは出ない。分かっていることといえば、連中は俺と愛紗以外の『天の御使い』と呼ばれる何者かに仕えていること、その御使いは俺達より以前にこの世界に降り立っていること、そして、奴らには指揮官クラスの将が少なくとも三人居て、どれもがかなりの強敵であることのみだ。
「で、その指揮官についての情報なんだけど、華雄が戦った相手は、巨大な盾と、長い槍をもった奴だったとか」
「私が戦ったのは、片手に刺突用の長剣、もう片手に敵の武器を受け止めるための剣を持った男です。本人は『双剣の朱雀』と名乗っていましたが、本名かどうかは分かりません・・・」
「私のところを襲ってきたのは両手に長柄の斧と槍が組み合わさったような武器を持った奴だ。幸い劉?軍が逃げたのを見たら直ぐに立ち去ったが、あのままいたら私の兵達は壊滅していたかもしれないな・・・」
俺は見ていないが、どうやら愛紗達と冥琳達も襲撃を受けたらしい。そして敵軍は将兵皆揃って中世の騎士団が身につけそうな真っ黒なフルプレートを纏っているのが特徴で、将が率いる兵士達も相当な強さだったとのことだ。
そして問題が・・・、その軍勢を率いている『もう一人の天の御使い』の正体と、その御使いの目的である。
一刀と愛紗以外の天の御使い・・・・。それも例の予言が下る前にこの世界に降り立った存在・・・。正直自分達には全く見当がつかない。愛紗いわく裏から国の政治も動かすほどの力を持っているとのことだが、この世界のあらかたの勢力、曹操、劉備、それに劉表に袁紹の軍の主だった将について調べたが、全ての将が史実通りの勢力におり、その中に聞いたことが無い将、ましてや自分のようないかにもこの世界とは違う場所から来たような人物の名前は影形も無かった。
残るは朝廷、だがこちらにも特に妙な人物はいない。なら他には?と思うが他の勢力はとてもではないが天下を狙えるようなところではない。そこが朝廷に影響を与えているのなら直ぐ俺達の耳に入るはずだ。孫呉の間諜は国中に放ってある。だが、そこからは特に変わった報告は無い・・・。結局これには全然結論が出ていない有様である。
そしてもう一つ分からないのはその天の御使いの目的だ。
俺達孫呉と劉?との戦いに横槍を入れて何か得があるのだろうか?
どちらか一方に加勢するならまだ分かるが、連中はどちらかが不利になったら不利になった方に加勢するというどっちつかずである。どう考えても妙だ。下手をすれば無駄に戦力を減らすなどということになりかねない。
これに関しても今のところ結論が出ていない状況だ。
「はあ・・・、結局あの黒い連中に関しては分からずじまいか〜」
「既に追跡部隊を何人か送っているんだがな・・・。誰一人として帰ってこないところをみると、既に消されているようだな」
「みたいね、こんな時明命が居れば・・・」
雪蓮は溜息を吐く。明命ならどんなに厳重な警備をもすり抜けて情報を得ることも可能だろう。あの黒装束の軍勢の正体を探るのも容易なはずだ。だが、その明命は太史慈に叩きのめされて孫呉に送還されて今は居ない。
「無い物ねだりを仕方がないよ、雪蓮」
「はい、それよりも今は撤退した劉?軍について考えましょう」
俺達は雪蓮と冥琳にそう促す。確かにあいつらについては俺達も気にはなるが、今はこの戦いに勝利することが大事だ。
先程の奇襲では劉?もかなりの痛手を受けているはずだ。劉?もそろそろ後が無くなってきているだろう。
叩くなら今しかない、俺と愛紗はそう考えていた。
雪蓮も冥琳も同じ考えのようで二人同時にコクリと頷いた。
「そうね、次の戦いには祭達と合流して一気に攻めるわよ」
「祭殿達とはあと3、4日程度で合流できるはずだ。兵糧の補給と兵力の増強を済ませて決戦に備えるとしよう」
冥琳の言葉に俺達は頷く。
最後まで何が起こるか分からない戦場、こちらも総力戦で挑むべきだ。
ただ、懸念するべきことは・・・。
「・・・問題は、また劉?軍の奇襲に合わないか、だよな・・・」
「あー・・・、それがあったわね・・・」
「奇襲自体を止めるのは難しいからな・・・。奇襲されても何とか対応してもらうしかないな・・・」
雪蓮も冥琳も心配そうな表情であった。確かに今までの経過から見て、劉?軍が再び兵糧を狙ってくる可能性は否定できない。
万が一襲われたときにどれだけの兵糧と兵力が残っているか・・・・。それが勝負の分かれ目となる。全滅することは恋と霞がいるから無いとしても、多少の損害は覚悟するべきだろう。
「・・・・」
俺は黙って空を見上げる。
いずれにしろこの戦いもあと少しで終わりだろう。
その戦いで孫呉が勝つか、劉?が勝つか・・・。
兵力ではこちらに分があるが、向こうには地の利がある。
いずれにしろ相当な激戦は覚悟するべきだろう。
「はやく、終わらないかな・・・」
俺は空を見上げながらぼんやり呟いた。
劉?side
同じ頃、無事会稽に辿り着いた劉?と太史慈は、留守番をしていた厳白虎、王朗と共に迫りくる孫呉勢への対策会議を行っていた。
「・・・現在の状況及び兵力は?」
「・・・敵軍兵力は四万以上、兵糧運搬部隊の援軍によってさらに増える可能性大。一方こちらは直ぐに集められるのは五万程度。どんなに無理をしても六、七万が限界・・・」
「しかもこっちは絶賛連敗中だから士気も降下中よー?孫呉の士気もそこまで高いみたいじゃないけど、結構まずいわよ〜?」
「おまけに例の黒い軍勢の件もあります。迂闊には動けません。下手に動いて連中の攻撃を浴びては・・・」
「・・・・状況は最悪・・・、とまでは言わないがかなり悪い、か・・・」
劉?は親指の爪を噛みながら苦々しげな表情をする。
自軍の領地に引き込んで、そこで孫呉勢を完膚なきまでに叩きつぶす予定だったのに、想定外な事の連続で、逆に敵は徐々にこちらに向かって前進してきている。
「・・・・兵糧運搬の連中をもう一度襲うのは?」
「・・・出来ないことは無い、けど、連中も学習しているから、成功するかは微妙なところ。そして、これ以上兵力を削いだら、いざという時対応できない」
「・・・・そうか」
劉?は王朗の言葉に一言そう返した。
兵糧と兵力の補給を許すのは、自分達にとって相当不利だ。
だから出来ることなら妨害したい、が、王朗の言葉ではそれも不可能。
ならばこれは諦めてかかるしかないだろう。多少の数の不利は地の利を生かせば何とか補える。
最大の問題は敵が見せたあの未知の兵器だ。
凄まじい爆音と共に石の礫や金属片を放って、自軍の攻撃や行動を妨害してくるあの黒い玉。
あれを何とか攻略しない限り、自分達に勝機は無いだろう。
先程の戦闘で確認したところによると、あれの最大の脅威はあの爆発による音とそれと共に飛び散る破片だ。
あれのおかげで自軍はまともに戦闘を行えなかった。だが、逆に言ってしまえばあれをなんとかすれば自軍にも勝機はある。
「・・・・なあ束紗、例の兵器の対抗策、どうなってる?」
劉?は自分の参謀格といえる王朗にそう問いただす。王朗は相変わらずの無表情で劉?を見るとコクリと頷いた。
「・・・問題ない、どれほどの音か規模かは分からないけど、何とかなるはず」
その言葉に劉?は安堵からか溜息を吐く。
「よし、分かった。お前が言うんなら大丈夫だろう。睦月!どこか連中を迎い撃てるのに適した場所はねえか!?」
「はっ、既に調べてあります!!」
「えっ?何処何処〜?」
太史慈は机に広げられた揚州の地図の、ある地点を指差した。
「此処が、奴らを迎え撃つのに適しているかと」
太史慈の指差した場所を見て、何を思ったのか劉?は息を吐く。
「会稽、ずばり此処の目の前か・・・・」
劉?の声が、静寂に包まれた室内に響き渡った。
劉表side
「・・・遂に劉?と孫策の戦も終盤戦、か・・・」
「そうですね、そろそろ決着がつくでしょうね、父上」
その頃劉表は、軍の休息場所の天幕の中で息子の劉gと会話を楽しんでいた。その会話の中で、今頃必死に揚州で戦っているであろう孫呉の話題を出していた。
今別の敵と戦う予定の自分達にとって、今のところは関係ない話ではあるが、今後自分の前に立ちはだかる可能性のある敵である故に多少気になったのだ。
もっともここで潰れてしまえば全く関係ないのだが・・・。
「しかし劉?も随分ともっているではないか。まあ地の利を生かしているのもあるだろうが、中々手強い孫呉の連中を追い詰めているのは評価してもよいな」
「はい、特に兵糧襲撃の策は良かった。あれが成功していれば孫呉軍を一気に追い詰められたかもしれないものを。何やら妙な軍勢が邪魔に入ったようですが・・・」
「ふむ?妙な軍勢、とな?」
劉表の問い掛けに、劉gは頷く。
「はい、何でも全員漆黒の鎧に身を包んで『天の御使いに仕える』とか何とか言っている軍勢のようです。父上、何か御存じでは?」
劉gの問いに劉表は胡乱げな表情で劉gを見る。
「・・・何故それを余に問う?」
「いえ、父上は私達にも知らせずに独自に情報を集めたり事を進めることが多いので、この軍勢も父上の隠していた秘蔵の軍かと思ったのですが・・・」
「天の御使いと名乗っておるのだろう?ならあの北郷とやらの配下ではないのか?」
「それが・・・、なんでも劉?軍の危機に孫呉の軍を襲撃して劉?軍を助けたらしく、天の御使いの私兵ではない可能性があるとの話で・・・」
「・・・・・・・」
劉表は沈黙したまま息子の話を聞いていた。息子の話を聞き終わると、劉表は口を開いた。
「知らんな、聞いたことも無い」
「・・・・・」
そっけなくそう返した父に、今度は劉gが沈黙する。この父は何処までも秘密か多い。実の子供達である自分達にも秘密にしていることが多いのだ。そもそも、父は本当に劉家の出なのかどうかさえ・・・・。
(・・・いや、それはもはやどうでもいいことか・・・)
劉gは直ぐに浮かんだ考えを打ち切る。
確かに父は秘密が多い、何を考えているのか分からない時もある。
しかし、それでもこの人は自分達の父親なのだ。
母が亡くなり、まだまだ甘え盛りの自分達をたった一人で育て、愛してくれた大切な父親なのだ。
その後荊州の州牧となり、領内の統治に奔走し続けながらも、自分達を気遣うことを忘れてくれなかった。
そんな偉大な父の考えを信じずに如何しろというのか。
「どうした?青刃」
「・・・いえ、何でもございません。父上」
「そうか、ならもうすぐ目的地だ、気を引き締めろ」
「はっ!」
頼もしい笑みを浮かべて返事を返す息子を、劉表は複雑そうに見つめる。
(すまない、劉g。まだお前達に真実は語れない)
劉表は心の中で目の前の愛息子に、いや、自分に親身になって仕えてくれる者達全てに謝罪の言葉を述べる。
(だが、もうすぐだ。もうすぐ余は、俺はこの頂に立つ。そして・・・・)
劉表は天幕を睨みつけるような目つきで見上げる。
と、突然天幕が開かれると、伝令役の兵士が中に飛び込んできた。
「劉表様!斥候からの報告です!!お考え通り敵軍主力は全軍官渡に向かっており、現在守備兵は約7000。攻めるのは今です!」
「御苦労、斥候の兵士達にはゆるりと休むよう伝えるがよい」
「はっ!」
劉表の許しを得た斥候は直ぐに劉表と劉gの前から下がる。それを見た劉gはすぐさま劉表の方に視線を向ける。
「父上」
「ああ、好機だ。精々敵があの馬鹿につられている隙に、叩きつぶすとしようぞ。
青刃!!直ぐに全軍に進軍準備を整えるように伝えろ!!」
「はっ!準備が出来次第すぐに進撃を開始するのですか?」
「ああ、精々叩きつぶしてくれようか。
曹操の都、許昌をな」
劉表の向ける視線の先、そこにあるのは曹操が新たに漢の都と定めた地。
孫呉から離れた地においても、波乱のあらしが吹き荒れようとしていた。
あとがき
皆さん残暑厳しいこの季節、いかがお過ごしでしょうか。
ようやく第55話が完成いたしました。とはいっても前回よりだいぶ短いですが。
今回は奇襲撃退後の孫呉と劉?、劉表それぞれの勢力の状況についてです。
孫呉軍も劉?軍も、はっきり言ってどちらもボロボロです。ですが兵糧と援軍が来る分やや孫呉有利か?
そして劉表軍は華琳と麗羽がやりあっている隙に許昌を攻め落とす火事場泥棒作戦を実行中・・・、漁夫の利とも言いますか。
史実でも袁紹は許昌攻撃していれば勝てたんですけどね。まあここでは袁紹よりかなりおっかない敵が迫ってきているわけですが・・・。
さて、次回はついに雪蓮と劉?の最終決戦である合肥の戦いです!また更新が遅くなりましても、どうか見捨てずにお待ちいただければ私にとっては至上の喜びです!
説明 | ||
皆様長らくお待たせして申し訳ありません 今回ようやく最新話投稿と相成りました。急いで書いたせいで多少前回より短いですが・・・。 今回は劉?軍撃退後の孫呉、劉表軍の話です。 |
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コメント | ||
陸奥守 様 ・・・また、エタってしまいましたけどね・・・。いつになったら揚州攻略できるのか、自分自身頭が痛くなってきます。(海皇) きまお 様 そう言ってくださってうれしいです。・・・でも今回は少し間が空きすぎました。すいません。(海皇) 運武 様 まことお待たせして申し訳ありません。ようやく投稿が完了いたしました次第です。次は本当にいつになるか分かりませんがどうか期待してくだされば幸いです。(海皇) エタってた時に比べれば最近更新が頻繁なので滅茶苦茶嬉しいです。次回も期待してます。(陸奥守) ゆっくりご自分のペースで頑張ってください。楽しみ楽しみ♪(きまお) 一日で今までの話を一気に見ました!関羽好きの自分にとって嬉しいSSです!続き楽しみに待っていますね!(運武) |
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