再・恋姫†無双〜紅色の向こう側〜第二節 |
第二節「紅い茜雲」
聖フランチェスカの屋上。
一人、校庭で愛紗や華琳などの恋姫達と戯れている一刀を眺めている貂蝉の背後に何者かが虚空の中から現れた。
「貂蝉よ」
「あらん、誰かと思えば卑弥呼じゃない。お久しぶりね」
「お主、少し((鈍|なま))ったのではないか?もしや漢女道の修行、怠っておるのではあるまいな」
「まさか。でもご主人様との愛の日々を送ってる内に少し訛ったかもしれないわねん」
「うぬう〜、一人だけ抜け駆けしおって」
「それより今日は何の用事なのかしら?この外史世界は既に固定化されていて、御老人達にも手出しは出来ないはずだけど」
「うむ、この外史に用事がある訳ではない。実はそのご主人とやらが再生させたあの無印外史だがな、どうやら別のファクターが迷い込んだらしいのだ」
「何ですって?」
「お主の言うご主人、北郷一刀が存在する外史世界には我等管理者は不干渉を貫くと決まってはいる。だが、終端が約束されていた彼の外史がどの様に変貌を遂げるかはもはや誰にも解らん。とりあえず報告だけでもと思ってな」
「分かったわ、ありがとね卑弥呼。ご主人様には…内緒にしておいたほうが良いわね。此処のご主人様は他の外史があるなんて知らない筈だから」
「それが良いであろうな」
「それよりも誰なのかしら、そのファクターは?」
「調べてみたのだが、その名は横島忠夫。その身と引き換えに世界を救った……、英雄じゃ」
***********
荊州にある名も無い小さな邑。
其処にいまだ気を失ったまま運ばれて来た横島の姿を見て、嫌悪感を隠そうともしない少女がいた。
姓を荀、名をケ、字は文若。
旅の途中に賊に襲われている所を義勇軍を結成したばかりの劉備達に救われ、その恩を返す為に仮軍師として彼女達にその知恵を貸している少女である。
過去にいかなる事情があったのか超弩級が付く程の男嫌いで、その勢いたるや男と言うだけで憎んでいるといってもいい程なのだ。
「ちょっと、李典に于禁!何なのよソレはっ!?」
「何や、荀ケはんやないか。何なの言われてもやな…まあ、桃香様の拾いモンや」
「森の中に落っこちてたの〜」
「落っこちてたって…、あんのお馬鹿は〜〜!そんな汚らわしい物、さっさと捨てて来なさい!! 見るからに好色そうな男じゃない、一緒の空気吸っているだけで妊娠させられそうだわ」
「いや、それはさすがに…って、否定しきれなさそうなんは何でやろな?」
「沙和もなんだかそんな気がするの〜」
「ほら、分かったのなら早く捨てていらっしゃい」
荀ケはシッシッと言いながら指を振る。
すると其処に後を追ってきた桃香と凪がやって来た。
「え〜〜、そんなのダメだよ荀ケちゃん」
「ダメじゃない!ほら、早く!」
「ダメだってばあ〜。お願い、荀ケちゃん」
「う、うう〜〜」
「荀ケ殿、貴女が男を嫌うのは貴女の自由だがそれを桃香様に押し付けるのは止めてもらえないだろうか」
桃香は手を合わせ、ウルウルとした目で懇願する様に荀ケを見る。
荀ケは荀ケで、恩人である桃香にはあまり強く出られず、凪にも反論は出来ずにしぶしぶと諦める事にした。
「し、仕方ないわね。その代わり私はそんな男の世話は手伝わないからね!
ふんだ!どうせ私は此処にはそんなに長くは居ないんだから少し我慢すればいいだけの話よ!!」
そう言い放つと荀ケは((踵|きびす))を返して去って行った。
「……荀ケちゃん、やっぱり出て行くつもりなんだね」
「仕方ないでしょう。無理に押し留めた所でお互いの為にもなりませんし」
「ずっと居てくれないかなぁ〜〜」
「そうですね、性格はともかくとして彼女ほどの才の持ち主はそうざらには居ません。何か彼女を此処に留めるいい方法があれば良いのですが」
義勇軍を立ち上げたはいいが、今現在軍師と呼べるのは彼女しか居なかった。
その彼女も、助けてもらった恩義だけで義勇軍に参加してるのであって、何れは出て行くというのを止める事は出来ないでいた。
もっとも、凪達も少し手伝えば直ぐに出て行くと思っていたのだが、
『貴女達は”この私”を助けたのよ。その恩義をほんの少しだけ手助けしただけで返し切れる訳はないでしょう!! もう少しだけ手伝ってやるわよ!!』
と、なんだかんだと数ヶ月の間、義勇軍に留まっていてくれたのだ。
何度か正式に軍に加わってくれと頼んでは見たが彼女曰く、
『私には私の理想とする主の理想像があるのよ、はっきり言って劉備は私の理想とはかけ離れているわ』
そう言われ、断られていたのであった。
「はう〜〜、私ってそんなにダメダメさんかな?」
「そんな事はありません。彼女も言っていたように理想像が違うだけなんです。それに桃香様が駄目な人物であれば我らもとっくの昔に愛想をつかして出て行っています。もう少し御自分に自信をお持ち下さい」
「う…うんっ!有難うね、凪ちゃん!」
それより数刻後…
あまり、立派とはいえない部屋の中。
寝台に寝かされていた横島は夢を見ていた。
愛しい彼女との束の間の会話をする夢を。
********
ルシオラ!良かった、また逢えたんだな。
――ヨコシマ…、駄目よヨコシマ。
今はまだ早いわ、還るのよ。
何故だ?何故早いんだ?何故還らなくちゃいけないんだ?
――お前はまだ生きなきゃいけないわ。
そんな事言わないでくれよ。せっかくこうしてまた逢えたんじゃないか。
――ヨコシマ、お前を死なせない。絶対に!!
待ってくれ、ルシオラ。俺もお前と一緒に。
――駄目よ、たとえ今は辛くても生きてヨコシマ。
きっと…、何時かきっと笑える時が来るから。
だからお前はお前らしく居て。
ルシオラーッ!、俺は、俺は。
――約束してね、ヨコシマ。
何時までも、私の好きなヨコシマらしく……
ヨコシマは、何時までもヨコシマのままで居て。
何時までも……
ルシ・・・・・・・・
********
「ルシオ……ラ……」
寝台に寝かされていた横島がそう呟きながら手を伸ばすと、付き添っていた桃香はそっとその手を掴んだ。
「ル…、ルシオラッ!?」
「わっ!わわわ」
その感触に横島の意識は一気に覚醒し、飛び起きるとルシオラの名を叫びながらその手を握り締めた。
「…君は?」
「え、えっと…私はその、るし…おら?さんって人じゃ無いんです。ごめんなさい」
「い、いや…俺の方こそ行き成り手を掴んじゃったりしてごめんな」
「いいの、私は気にしませんから」
桃香の手を離した横島は辺りを見回して見た。
修繕は施されている様だがかなり粗末な、それでいて古臭い感じの部屋だった。
「あの、此処は一体何処なのかな?」
「此処は荊州にある、小さな邑です。貴方は此処から少し離れた所の森の中で寝ていたんですよ、覚えてないんですか?」
「…森の中に?(どういう事だ?俺は東京湾でアシュタロスの魔体と相打ちになった筈じゃ…。それが何でこんな所に?それに荊州といえばたしか……)」
「失礼します桃香様、あの者は目を…。ああ、丁度目を覚ましている様ですね」
横島は魔体の爆発に巻き込まれ、その後ルシオラと束の間の会話をしたと思ったら其処で目を覚まし、目の前には見知らぬ女性がいた。
しかも此処は荊州という土地だと言う。
其処に三人の少女達が部屋へと入って来た。
「では早速ですが貴方が何者なのか教えて頂けますか?」
「え?あ…俺か。俺は横…」
凪は相変わらず横島をきつめの目線で睨むと、そう言い放つ。
だが、桃香はそんな凪を頬を膨らませながら窘める。
「もー、凪ちゃんったら駄目だよ、自己紹介するときはまず自分から名乗らなくちゃ」
「う…、そ、そうですね。申し訳ありませんでした」
「あはは♪凪ちゃん、怒られてるの〜」
「あかんで凪、自己紹介はちゃんとせなな」
「くっ!お前達に言われる覚えは無い!!」
「まあまあ。じゃあ、私から自己紹介するね。
私は姓を劉、名を備、字は玄徳といいます。よろしくお願いします」
「……は?…えっ!? りゅ、劉備、玄徳?」
横島は彼女が名乗った三国志の英雄と同じ名前を聞き呆然とする。
「私は姓を楽、名を進、字を文謙と申します」
「ウチは姓を李、名を典、字は曼成や」
「私は姓を干、名を禁、字は文則と言うの」
「あ、後ここには居らんけど仮軍師として荀ケっちゅー奴も居るで」
(し、蜀の劉備に魏の楽進、李典、干禁、それに荀ケ?ど、どーなってるんだ?)
「あの〜、それで貴方の名前は?」
「あ、ああ。俺の名は横島忠夫だ、横島が姓で忠夫が名前。字という物は俺には無いよ」
「では横島様。もしかして貴方も天の御遣い様なのではないですか?」
「天の御遣い?何だい、それ?」
桃香達は横島に説明していく。
今、この大陸は動乱の最中にあり力の無い民達は苦しみの底で喘いでいる。
人々を助ける筈の朝廷にはもはやその力は無く、逆に自らの欲望に溺れる愚物達によって混乱に拍車をかけるのみであった。
凪達の邑も彼女達が籠を売る為離れた街に行っていた間に賊に襲われ、帰って来た時には既に数人が生き残っているだけだった。
その後桃香・劉備と出会い、彼女に惚れ込んだ仲間達と義勇軍を作り、戦っている最中に襲われている荀ケを救い、今はこの小さな村を拠点にしている。
そんな時に管輅と呼ばれる占い師が流した『大陸荒れし時、天に流星流れる。それは大地の乱を治め、平穏へと導く天の御遣いの乗りし物なり』という占いが流れた。
((二月|ふたつき))程前、幽州に流星が落ち、その後から天の身遣いの噂が流れるようになって来た。
その名は北郷一刀といい琢群琢県の県令として民を導いているとの事らしい。
桃香が横島を見つけた時は、流星などは流れておらずただの偶然であった。
しかし、桃香は横島もまた御遣いなのではと望みを持っていた。
(成る程、此処は三国志の時代でおよそ1800年前と言った所か。たぶんあの時空間バリヤーの一部がこの世界に繋がっていて其処に俺が偶然飛び込んだせいでこの世界に来てしまったと言う訳か)
横島はおおよそだが今自分が置かれた事態を理解した。
しかし、劉備の期待を受け入れるには彼の心は疲れ切っていた。
「どうなんでしょうか、横島様?」
「…期待を裏切って悪いけど俺はそんな大層な人間じゃないよ。たった一人の女の子すら護れなかった役立たずだよ」
「横島様……」
「ごめんね、劉備ちゃ…さん」
「そう…ですか……」
俯き謝る横島に桃香も項垂れながら応える。
凪達は一瞬そんな横島を責めようとするが、彼の表情から思い止まった。
”護れなかった”と言うのは、彼女達もまた同様なのだから。
「御遣いとやらにはなれないけど雑用位なら手伝えるからさ、何かあったら言ってくれていいよ」
「はい、その時はお願いします…」
話はそこで終わり、横島は散歩をして来ると外へ出て行った。
「…やっぱり、ダメだったみたい。私達には天の導きは無いのかなぁ」
「桃香様、気を落とさないで下さい。貴女には我々が付いています!」
「そやで、凪の言う通りや!」
「私達も頑張るから桃香様も頑張るの〜〜」
「ほほ〜、つまり二人共これからはサボリなどせず、仕事に打ち込むと言う事なのだな」
「げっ!しもうた!」
「うう〜〜、薮蛇なの〜〜」
「ぷっ、あはははは。…これからもよろしくね、三人共」
「「「はい(なの〜)」」」
その頃横島は、一人岩に腰掛けて村の中を見回していた。
『わーーい、わーーい』
『こっちにおいでーーっ!!』
『待てーーっ!!』
横島は邑の中で遊んでいる子供達を見つめていた。
義勇軍が居る為か邑の人達は穏やかな表情をしている。
邑の中に建っているのは家と呼ぶには余りにも粗末な……、悪く言えば掘っ立て小屋の様な物が十数家ほどあるだけの、此処は本当に小さな邑であった。
(俺が居た時代に比べると本当に質素な暮らしだ。……それでも皆は笑っている、そしてこんなささやかな幸せを奪おうとしている奴等が居る……)
そんな事を考えている横島の所に一人の少女がやって来た。
「ねえねえ、おにいちゃん。おにいちゃん、だあれ?」
「え?……ああ、俺か?お兄ちゃんの名前は横島忠夫だよ」
「よこしまただお?よこがせいなの?」
「横が姓?ああ、横島が姓で忠夫が名だよ」
「ふ〜ん。さやはねえ、さやかっていうの」
「さやか、さやちゃんか。いい名前だね」
そう言い横島が頭を撫でてやるとその((鞘花|さやか))という女の子は顔を赤くして照れている。
「えへへ、ありがと」
鞘花が照れていると、そこに他の子供達がやって来た。
「鞘花、何やってるんだ?」
「その人だれ?」
「えっとね、よこしまのおにいちゃんだって」
「う〜〜ん、あそんでくえゆの?」
子供達はいろんな視線で横島を見て来る。
遊んでほしいのかなとそう感じた横島が辺りを見回すと家の壁に数本の竹が立てかけてあった。
「おっちゃん、ここにある竹、少し貰っていいかな?」
「ん?ああ、別にかまわんよ」
「よし、待ってろよ。今からいい物を作ってやるからな」
横島はポケットからナイフを取り出すと竹を割って削っていく。
(そう言えばケイにもこうやって作ってやったっけ)
猫又の親子を思い出し、少し口元がゆるむ。
(確かあの親子も住む所を追い立てられてたんだったな。彼女達だってただ、静かに暮らしたかっただけだ。たったそれだけを望んでいたのに勝手な思惑で住んでいた所を追い出された)
「なあ、兄ちゃん。それ何だ?」
一番年上だろう、男の子が出来上がった竹トンボを指さし聞いて来る。
「これは竹トンボっていってな、こうやって遊ぶんだ。それっ」
横島が竹トンボを飛ばすと子供達は目の色を変えて驚いている。
「すげーーっ!飛んでるぞ!!」
「とんでゆ、とんでゆ!!」
「おにいちゃん、すごい!!」
「ほしい、ほしい。ちょうだい!!」
「あっ、ずるいぞ。オイラだって欲しいのに」
「こらこら。喧嘩しなくたってちゃんと皆に作ってやるよ」
「ほんと、やったーー!!」
「兄ちゃん、早く、早く」
「分かった分かった、慌てるな」
横島は子供達にせかされて人数分の竹トンボを作っていく、ふと気付くと口元が僅かな笑みを浮かべている事に彼は気付いた様だ。
横島がそんな風に子供達と遊んでいる中、劉備達は横島を捜して邑の中を歩いていた。
「横島様、何処に居るのかな?」
「どっかに逃げたんとちゃうやろか?」
「それは無いだろう。行くあてなど無い筈だし。もっとも天に帰る方法があるのなら話は別なんだが」
「え〜〜、それはダメだよ。う〜〜、横島様ぁ〜〜」
……まさんが、こ〜ろんだ」
「ん?」
「どしたん、凪?」
「いや、子供達の声が聞こえた様な」
「子供達の?」
「はははは、動いたな。また鞘花の負けだ」
「さやちゃんのまけ〜〜〜」
「ぶう〜〜、おにいちゃん、もういっかいやろ」
「分かった、もう一回な」
――横島様…子供達と一緒に遊んでいる、皆本当に楽しそう。
「だ〜るまさんが、こ〜ろんだ」
横島が子供達に教えたのは「だるまさんがころんだ」。
初めての遊びに子供達は一喜一憂して夢中になった遊んでいる。
「さーわった!」
「ああ、触られた。俺の負けだな」
「わ〜〜い、やったぁ〜〜!!」
――私達の知らない遊びだけど、どうやらさやちゃん達が勝ったみたい。横島様に抱きついてはしゃいでいる。
でも……
「でも何故かな?横島様、笑顔なのに……ちっとも笑っている様に見えない…」
「あ、玄徳さまだ」
「げんとくさま〜。いっしょにあそぼ〜」
「え、ちょ、ちょっと待って。私はお仕事が…」
――そんな抵抗も虚しく私は子供達に引っ張られて行く。……あぅ〜、横島様が横目で少し笑ってる。うう〜、恥ずかしいよ〜〜。
子供達に連れて行かれる桃香を凪達は少し諦めた様な表情で見ている。
「ああ、桃香様が連れて行かれてもうた」
「仕方が無い、仕事は我々で片付けるぞ」
「ええ〜〜」
「げえ〜〜」
「何だ、何か文句でもあるのか、二人共?」
「うっ!な、凪ちゃんの目が怖いの〜〜」
「しゃーないな。頑張りまひょか」
その後も横島は子供達に歌を歌ってやったり、おとぎ話などを話してやったりして、それは夕暮れ時まで続いた。
「鞘花ーー!」
「あっ、かかさまだ」
――母親が迎えに来たらしくさやちゃんは走って行く。……何だろう、あの中学生くらいの背丈と容姿、そして凶悪なまでのバストサイズは……いかん、ワイはロリやないロリやない。
「さあ鞘花、帰りましょう。玄徳様、ありがとうございます」
「いえ、いいんですよ。私も楽しかったし」
「かかさま、あのね、きょうはおにいちゃんがいろんなことしてあそんでくれたんだよ」
「そうなの、よかったわね。ありがとうございます」
「いや、俺の方こそ。こんなに楽しかったのは久しぶりでしたから」
「おにいちゃん、またあそんでね。ばいば〜い」
母親に手をひかれて帰っていく鞘花に横島は手を振ってやると、鞘花も何度も振り返りながら手を振って来る。
そんな横島の隣に劉備がやって来て話かけて来る。
「あの、横島様…」
「いい子達だね」
「え?は、はいっ!とてもいい子達ですよ」
「そしてこの世界には自分達の欲望の為だけにあの笑顔を奪おうとする奴等が居る……か」
「そうなんです。……何故なんでしょう?皆、ただ普通に笑って居たいだけなのに、平凡な幸せが欲しいだけなのに……」
「普通の、平凡な幸せ…。(俺も欲しかった。彼女と、ただ笑い合ってるだけのそんな普通の幸せが。ルシオラと毎日あの夕陽を眺めていられればそれだけで良かった)」
横島はそんな事を思いながらこの世界での初めての夕陽を、空を流れる茜雲を見つめているがその夕陽には何処となく血の色が混じっている気がしていた。
暫く二人でそうしていると楽進達が劉備達を迎えに来た。
「桃香様、そろそろお戻りください」
「兄ちゃんもガキ共も相手で疲れたやろ」
「うん。ゴメンね、お仕事押し付けちゃったみたいで」
「いつもの事です。お気になさらずに」
「うえ〜ん、ゴメンなさ〜い」
「気にせんでええって桃香様。凪の言う通り、何時もの事なんやから」
「お前達が言うな!!」
「はうっ、真桜ちゃんのせいで私まで怒られたの〜」
「あはは……、一緒に怒られよう」
桃香達は笑いながら宿舎に帰ろうとするが、横島は夕陽を見たまま動こうとしない。
「横島様?」
そんな彼等を通りかかった桂花は見つけ、其処に居た横島をさっそく邑から追い出そうと怒鳴りつけようとするが……
「どうしたんですか、横島様」
「……((紅|あか))いな」
「え?」
「夕陽って…、茜雲ってこんなに紅かったっけ?」
「夕陽ですか?確かに((赤|あか))いですけど…、横…しま、さま?」
――横島様は泣いていた。
とても澄んだ、とても哀しそうな涙を流しながら。
この人は何を無くしたのだろう?
この人は誰を亡くしたのだろう?
何故だか心が疼く、何故こんなにも心が痛くなるのだろう?
――知りたい、もっと解りたい。
御遣い様じゃ無いのかもしれない。
でも、それでもと、信じたくなる何かがこの人にはある。
「違う、違う、違うっ!俺が見たいのは、あいつが見たがってたのは……」
「横島さ…」
「ルシオラと一緒に見たかったのはこんな夕陽じゃ無いっ!!」
――横島様はそう叫ぶと蹲り、頭を抱えながら大きな声で泣き出した。
気付いたら私も泣いていて、そっと横島様の頭を抱きかかえていた。
知りたい、やっぱり知りたいこの人の事を。
そして何時か一緒に笑いたい。
凪ちゃん、真桜ちゃん、沙和ちゃん、荀ケちゃん。
皆と一緒に笑顔で、大きな声で。
☆
そんな一部始終を家の影から桂花は覗いていた。
普段の彼女なら突然泣き出した横島を激しく罵倒しながら蹴り飛ばしたりしていただろう。
だが、その涙の意味を彼女は解っていた。
だからこそ、今の横島にそんな事をする愚かさを彼女は理解していた。
「何よ、男の癖にあんなに大泣きしちゃってさ。情けないったらありゃしない、フンっだ」
そう呟きながら桂花は踵を返して今来た道を戻って行く。
横島の泣き声に、僅かな心の痛みを感じつつ……。
続く。
あとがき
「乱と」
「于吉と」
「……左慈の」
「「あとがきコーナー!!」」
「何だか横島が横島っぽくないですね」
「ああ、それはな、この横島は原作で『煩悩全開ーー!!』する前のシリアスモード全開の横島だからです」
「なるほど、たしかにこの話では煩悩全開はして無かったですね」
「とは言っても横島は横島なので鞘花の母親が出て来た時にはちょっとそれっぽいセリフを入れてます」
「と言うか、やはり出て来ましたね。鞘花」
「うん。やっぱりどーしても出したかった。まあ、登場シーンはNT版のコピーを貼り付けてますが」
「魏√ENDでは荀ケの娘ですが此処では別に母親が出ていますね」
「彼女ですが「一姫伝・魏」では殺されているけど、この話では生きたまま登場してもらいました」
「横島陣営だからロリ巨乳という訳なんですね」
「という訳です」
「ちなみに彼女の歳は…”トスッ!”…!!」
何処からとも無く飛んで来た包丁が于吉の足元に突き刺さる。
「話は変りますがNT版では義勇軍に居る軍師は程cでしたがこの話では荀ケに変ってますね」
「まあ、どうせ書き換えるならトコトン変えてみようと思って桂花にしてみた。桂花をどの様にデレさせるか書き応えがあるし」
「ほほ〜〜」
「………エッ?」
「つまり風はれぎゅらー落ちという訳なんですね〜」
「アレ?ウキツサントサジサンハ?」
「風の顔を見るなり逃げ出してしまいました。後でO・HA・NA・SI・ですね」
「イヤ、アトデトハイワズニイマスグニドウゾ」
「いえいえ、まずは貴方へのO・SI・O・KI・が先です。さあ、風と一緒にあの暗い隅っこに行きましょう…もとい、逝きましょうね〜〜」
「言い直したら嫌ァーーーーーーっ!!」
ズルズル
「じゃあ、お二方。後は宜しくお願いしますね〜」
「うむ、任されよ。何じゃ、またお主か」
「うふふ、今度もたっぷり可愛がってA・GE・RU」
「アーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
「何とか逃げられた様ですね左慈。乱殿には気の毒でしたが」
「へっ!いい気味だぜ」
「逃げられたと思いますか?」
「「はい?」」
「お二人は風とO・HA・NA・SI・ですよ」
「「アーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」」
お死まい
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ようやく二話目の更新でございます。 横島陣営の最初の軍師候補は意外なあの娘。 |
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横島はギャグモードがいいかそれともかっこいいシリアスモードがいいかなやみますねえ。(ZERO&ファルサ) | ||
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