【短編】 コワレタセカイ
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 反転。流転。空に返って、戻ってくる。輪廻転生。死んでも蘇り、繰り返す。赤い空。空は赤かった。空に向かって人が落ちていく。血まみれになって、ぐしゃぐしゃになって、青かった空を赤く染めていく。空はもうすでに真っ赤になっていた。

 空からは溢れた血が雨となって大地に降り注ぐ。高層ビルは赤いペンキを被ったかのよう。ガラスは赤の色眼鏡。コーティングされた色眼鏡。

 池はすでに血の池地獄。深い深い落とし穴。はまって抜け出せない人はそのまま溺れて死んでいく。空から一人の人間が、池に落ちていく。もがいても、もがいても抜け出せない。一度死ねば、きっと天に向かって落ちていけるだろうから、安心しなよ。

 信号機は常に停止を表している。車は大渋滞を起こしている。うるさいクラクションが道路を満たす。ハンドルを叩きすぎて、クラクションは鳴らなくなってしまった。怒号が道路を満たしだしたところで、一人を爆ぜた。怒号は一瞬で悲鳴に変わる。阿鼻叫喚の声は肉塊となって体から発せられている。それは空に向かって落ちていく。

 人に絶望を与えて落ちていく。自分勝手。ひどく身勝手。誰とも知らない誰かに植えつける恐怖。遺産。相続者は人類全て。相続破棄は出来ません。

 空はすでに黒く変色しつつあった。空は落ちていく人の声で気持ちが悪い。気分が悪い。それもいずれ終わるのだ。ただ赤い。紅い。ルビーよりも。そして深淵よりも黒く。歪な空。

 地下鉄は血で溺れていた。人っ子ひとりいないけれど、電車は動いている。機械はそれでも動くのを止めない。一つの自律した生命体。一定動作を保ち続ける不快な生産物。溺れ死んだ人間の体を磨り潰しながら電車は次の駅を目指していった。

 公園の遊具も赤かった。ブランコの鎖に人の体が巻き付いていた。手足が変に曲がっていて、人間らしい。砂浜は泥団子しかなかった。子供たちはキャッキャと喚いて泥団子を作っている。泥団子を投げ合い始めた。当たるとそのまま体を貫く泥団子。貫かれても動じない。頭が飛ぶまで投げるのを止めないのだ。

 学校は綺麗な紅い校舎。紅白帽子は赤帽子。赤組優勢、白組壊滅。白い帽子を被っていればたちまちのうちに殺される。あかあかあか。燃えろよ燃えろ。

 空は真っ黒。血は凝固。割れればきっと青い空。白い雲。あっという間に裂け目が入った。黒い空は裂け目に飲まれていく。真っ黒な空よりも黒い何もかもを飲み込むブラック・ホール。終わる終わる。セカイの終わり。コワレタセカイもこれで終わり。ようやく終わりが来るんだね。意味などないさ、セカイに意味など。

 

説明
 世界シリーズ 番外。無意味。
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無意味 世界 短編 

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