ソードアート・オンライン デュアルユニークスキル 第三話 三十五層ミーシェ
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シリカ視点

 

シリカ「あ、あの、お話はありがたいんですけど・・・」

 

あたしは迷いの森で出会ったデュオさん一緒に三十五層の主街区【ミーシェ】に戻ってきた。

大通りから転移門広場に入ると、早速顔見知りのプレイヤーたちに声を掛けられてしまった。

あたしがフリーになったのを聞きつけ、パーティーを組まないかと誘ってきたのだ。

 

プレイヤーA「そんなこと言わずに、何処でも好きなトコに連れてってあげるからさ。」

 

なかなか引き下がらないこのプレイヤーの話を、受け答えが嫌味にならないように

一生懸命頭を下げて断ると、傍らに立つデュオさんの右腕を掴みながら続けた。

 

シリカ「・・・しばらくこの人とパーティーを組むことになったので・・・」

 

プレイヤーB「ええ〜、そりゃないよ。」

 

プレイヤーたちは口々に不満の声を上げると、その中の数人がデュオさんに

うさんくさそうな視線を投げかける。

確かにこのプレイヤーの見た目は、正直言ってあまり強そうではない。

高級そうな防具を装備しているわけでもないし、金属の鎧の類は一切なし、

黒いシャツに茶色の革のパンツ、その上に紅いロングコートだけ。

背負うのは黄色い三角形の鍔を持つ両手剣。しかもそれは鞘が無い。

 

プレイヤーC「おい、あんた・・・」

 

最も熱心に勧誘していた背の高い両手剣使いが

デュオさんの前に進み出て、見下ろす格好で口を開いた。

 

プレイヤーC「見ない顔だけど、抜けがけはやめてもらいたいな。俺らはずっと前からこの子に声をかけてるんだぜ。」

 

するとデュオさんはどうでもいいような顔で言い返す。

 

デュオ「それはかわいそうに、ずっとフラレつづけてるのか。でもさあまりしつこいと本当に嫌われるよ。」

 

プレイヤーC「なんだと・・・!!」

 

デュオさんの言葉に両手剣使いは声を荒げる。

だがデュオさんはそんな両手剣使いの肩に手を置くと

 

デュオ「安心しろ。君たちのアイドルは俺が責任もって預かるから。というわけで行こうか?シリカ。」

 

そう言って歩いていってしまった。

あたしはプレイヤーたちに頭を下げるとデュオさんを追いかけた。

ようやくプレイヤーを姿が見えなくなると、あたしはほっと息をつき、

デュオさんの顔を見上げて言った。

 

シリカ「・・・す、すいません、迷惑かけちゃって。」

 

デュオ「いやいいよ。慣れてるから。」

 

デュオさんは本当に気にしていないようで平然としている。

 

デュオ「しかし、人気者は大変だね。」

 

シリカ「そんなことないです。マスコット代わりに誘われてるだけなんです、きっと。それなのに・・・あたしいい気になっちゃって・・・」

 

あたしはピナのことを思い出してしまい、泣きそうになってしまう。

するとデュオさんは、あたしの頭にポンッと手を置き、落ち着いた声で言った。

 

デュオ「大丈夫。必ず蘇生してみせるよ。」

 

シリカ「・・・はい!」

 

あたしは涙を拭い、デュオさんに微笑みかけた。不思議とこの人の言葉は信じられる気がした。

やがて、道の右側に、一際大きな建物が見えてきた。あたしの定宿【風見鶏亭】だ。

そこで、あたしは何も聞かずにデュオさんをここに連れてきてしまったことに気付いた。

 

シリカ「あ、デュオさんホームはどこに・・・」

 

デュオ「二十二層だけど、いつもはフィールドで寝てるから。今日はここに泊まるか。」

 

シリカ「そうですか!」

 

嬉しくなって、あたしは両手をぱんと叩いた。

 

シリカ「ここチーズケーキがけっこういけるんですよ。」

 

そう言いながらデュオさんのコートを引っ張って宿屋に入ろうとした時、

隣の道具屋から四,五人の集団が出てきた。

それはあたしがここ二週間参加していたパーティーのメンバーだった。

 

?「あら、シリカじゃない。」

 

その中にいた真っ赤な髪を派手にカールさせた女性プレイヤー、ロザリアさんに声を掛けられてしまった。

今一番会いたくなかったプレイヤーだった。

 

シリカ「・・・どうも。」

 

ロザリア「へぇ〜え、森から脱出できたんだ。よかったわね。」

 

あたしは顔を合わせたくなかったため、俯く。

するとデュオさんが覗き込むようにして問いかけてきた。

 

デュオ「どうかした?」

 

シリカ「・・・いえ、別に・・・」

 

あたしはすぐに否定する。

するとロザリアさんはあたしの肩を見て、嫌な笑みを浮かべる。

 

ロザリア「あら?あのトカゲ、どうしちゃったの?」

 

あたしは唇を噛んだ。使い魔は主人の下を離れたり、((アイテム欄|ストレージ))に

格納したり、どこかに預けたりすることはできない。

つまり、使い魔が主人の下を離れるということは、死んだということを意味する。

ロザリアさんがそれを知らないわけが無い。

それなのに、この人は薄い笑いを浮かべながら続けた。

 

ロザリア「あらら、もしかしてぇ・・・?」

 

シリカ「ピナは死にました・・・でも!」

 

あたしはロザリアさんを睨みつけて続ける。

 

シリカ「絶対に生き返らせます!」

 

ロザリア「へぇ、てことは、【思い出の丘】に行くつもりなんだ。でもあんたのレベルで攻略できるの?」

 

デュオ「簡単だよ。」

 

あたしが答える前に、デュオさんが前に進み出てきて、あたしをかばうようにコートの陰に隠す。

 

デュオ「たかが四十七層だ。三日もあれば簡単に攻略できる。」

 

ロザリアさんはあからさまに値踏む視線でデュオさんを眺め回し、再びあざけるような笑みを浮かべた。

 

ロザリア「あんたもその子にたらしこまれた口?見たトコそんなに強そうじゃないけど。」

 

デュオ「ああ、俺は弱いさ。」

 

あたしは目の前のこの人が言っていることが信じられなかった。

ロザリアさんは勝ち誇ったような笑みを浮かべている。

しかしデュオさんは余裕の笑みを崩していなかった。

 

デュオ「だがお前よりは、圧倒的に強いと思うぜ。」

 

その時、一瞬だったけどデュオさんの瞳には凶暴な鋭さが宿っていた。

 

ロザリア「ふん、冗談は顔だけにしときな。あんたなんかアタシの足元にも及ばないさ。」

 

デュオ「寝言は寝て言え。行こうシリカ。」

 

あたしはデュオさんに促され、宿屋へと足を向けた。

 

ロザリア「ま、せいぜい頑張ってね。」

 

デュオ「応援、ありがとう。じゃあね。」

 

デュオさんが最後にそう言って後、あたしたち宿屋に入った。

説明
三十五層の主街区でのことです。
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