ViVidに転生した。うん、そのはず………。 その6 |
八月になった。夏休みである。
俺は、アインハルトと一緒に修練、ヴィヴィオのところに遊びに行く、無限書庫司書、デバイスの修理やロイの開発、シスターシャッハとの訓練を時折やる……という感じで日々を過ごしていたのだが。
……そう、『だが』、である。
「よーし、お互い頑張ろうねー!」
目の前にいるのは時たま犬耳が見えるんじゃないかと思う時がある青い髪の元気な巨乳少女……スバル・ナカジマさんである。
訓練着を来た状態ではなく、セットアップした……バリアジャケットを着た状態で、ぶんぶんと重そうな篭手型デバイス……『リボルバーナックル』を装着した手を振っていた。
いつもより視線が高くなった状態でそれを見つつ、ため息をつく。
「……メキョッとやられたらボキッて折れるので、お手柔らかにお願いします」
「謙遜は良くないよー。全力で行くからね!」
いや、マジで言ったんですけど。
天然と言うか空気がいまいち読めていないと言うか……若干ダメな娘なスバルさんにもう一回ため息。ため息をつくと幸せが逃げる? もう既に全力で走り去っているのに、今更これ以上逃げる幸せがあるものか。
柔軟体操で体をほぐしつつ、俺はこうなるまでの状況を思い返していた。
話は数時間前にさかのぼる。
朝、いつものようにヴィヴィオのところへ向かったのだが、さすがに朝っぱらから夕方までアニメ見倒すとかいう真似を十にもなってないガキにさせると健康に悪すぎるので、取り敢えず一緒にお散歩、ということになった。
………ん? 「お前も十にもなってないガキ」? 細かいことは気にするな。
なのはさんがいない間、ヴィヴィオの面倒を見ているザフィーラと、寮母のアイナ・トライトンさん曰く、今日もなのはさんとフォワード陣は訓練をやっているらしい。
「仕事の邪魔にならないところから、なのはさんのお仕事、見てようか?」
「うん!」
俺の提案に、ヴィヴィオは嬉しそうに、元気よく頷いた。
で、六課の訓練場を眺めることが出来る場所へと一緒に手をつないでやってくると、ヴィヴィオは目を輝かせてなのはさんの様子を見てた。
「すごぉーい……!」
けど、俺が見てたのはむしろ歳が近いフォワード陣の方だ。エリオのスピード制御、ティアナさんの射撃、スバルさんの((格闘|シューティング・アーツ))、キャロの強化。こういうのは見ているとやはり参考になる。客観的に動きを見ることっていうのも重要だからな。
いつもと同じく胸元にある愛機ロイとデータを見て相談をする。
『射撃はやはり、高速直射弾よりも誘導弾の方が有効でしょうか』
「いや、俺誘導制御苦手だし。アインハルトにスピード低めの射撃撃っても全部((弾殻|バレットシェル))を壊さずに投げ返されただろ?」
覇王流『旋衝波』である。あいつには生半な射砲撃は通じないのだ。
「あれ考えると、相手が反応できないほどの高速直射弾っていうのを目指すのもいいんじゃないかな、ってさ。双剣双銃とはいえ、基本的に近接戦主体でまとめるつもりだし、牽制としてはそっちの方がいいかもしれない」
『了解しました。術式を考えておきます』
「あとで一緒に制御訓練と見直しだな。あとは格闘、か……」
ティアナさんの射撃に援護されつつ、一直線になのはさんへと突っ込むスバルさんを見ながら、呟く。
『あの人とは、同じ格闘型とはいえバトルスタイルが違います』
「そうだな、俺の場合は軽いけど多数の打撃を叩き込み、相手の体勢が崩れたところで重い一撃、だからな。あの人みたいに分厚い防御を用いた突撃とかは向いてないし。とはいえ、体捌きとかは参考にしとこうぜ」
『勿論です。データは収集中です』
と、なのはさんの後ろ……死角にエリオが現れ、槍型のアームドデバイス『ストラーダ』を振り上げ、攻撃しようとしたところを、
ビシィッ!
((捕縛魔法|バインド))に拘束された。恐らく、というかほぼ間違いなく、罠として設置していたのだろう。
なのはさんはスバルさんの打撃を((防御魔法|プロテクション))で防ぐ一方で誘導弾を大量に叩き込もうとするが、ティアナさんの誘導弾に叩き落とされる。
とはいえそれで時間を稼ぎ、その場から回避しつつなのはさんは置き土産のように高速直射砲をエリオへと放つ。
「っとぉ!」
ぎりぎりで捕縛を抜け出したエリオは慌てて回避。
ズドォン!
回避成功。素早く放たれた一撃とはいえ、地面が軽く抉られていた。相当な威力だ。
どうにか避け切ったエリオはまた((第二形態|フォルムツヴァイ))のストラーダを用いて高速移動をしつつ隙をうかがう。
『((高速白兵戦型|ソニックアサルト))……武器こそ違いますが、マスターと同じスタイルですね』
「俺達が目指すのはデバイスなしでの飛行込みの高速機動だけど、ああいうトラップの存在は俺達も気をつけなきゃな」
『死角からだけでなく多方向から攻めることも重要ですね』
「そうだな……。意表をついてあえて真正面から、とかもな」
キャロは後ろで支援をしていた。今はティアナさんの幻術の強化をしている。
「((強化魔法|ブースト))、そして幻術か………」
『現在、強化魔法については((加速|アクセル))、((打撃強化|ストライク))、((防御貫通|インベイド))、((肉体強化|フィジカル))が使用可能です』
「まだ原石っつーか、未完成だけどな。効率とか見直さなきゃいけないし。幻術の方は……」
『未完成です。高速機動にある程度耐えられてなおかつ魔力消費の少ない幻影術式の作成はかなり時間がかかりそうです』
「とはいえ、使用できたら相当強力な切り札になる。近接戦で相手の注意を逸らすことが大事なんだし、維持時間を短めに設定してもいいと思う。そうすりゃかなり魔力消費減るんじゃないか?」
『切り札……マスターの((もう一枚の切り札|レアスキル))も合わせるとさらに相乗効果が出ますからね。維持時間についてはまた実験も必要です』
「まあレアスキルもまだまだ訓練が必要だけどな」
ちょっと苦笑したところで、ティアナさんとキャロの((強化された幻術|ブーステッドイリュージョン))を隠れ蓑にスバルさんとエリオが同時に二方向から攻撃を仕掛ける。
なのはさんはぎりぎりまで引き付けて急速離脱。まとめて砲撃を叩き込もうとする。
「なのはさん半端ないな……」
『ヴィヴィオさんが見ているのがわかってやる気を出してるのでは? ……ですが、対集団戦というのにあれほど手慣れているというのは凄いと思います』
「まあ取り敢えず目指すのが一対一の戦いにおける戦闘技術とはいえ、参考にしてもいいはずなんだが……、ほとんどあれ経験から来るカンと空間把握能力だけで回避してるよな」
「ほう、わかるか」
「わかるっつーか、ほぼ正面から来てるスバルさんと後ろのエリオの攻撃を感知してからの対応が早すぎるからな。あの状況でここまで読んで準備してたとは考えづらいし、そう考えると……、っていうかロイ? お前声変わり設定とかあったか? しかも妙に偉そうだし……」
『マスター』
「あん?」
『今の返事は私ではありません。あなたの隣にいる人です』
「いやそんなのいきなり現れたら恐……ギャアアアア!」
マジでびっくりした。
いつの間にか隣にピンク色の髪の女性……シグナムさんが立っていて少し感心したような表情でこっちを見ていた。
「その歳でそこまでの分析が出来るとはな……」
「い、いつの間に……!」
「ついさっきだ」
そ、そうですか。
ピィーーーーーー!
高いホイッスルの音が鳴り、練習の終わりが告げられた。
「あっちも終わりのようだ。取り敢えず昼食にしないか」
「は、はぁ………。ヴィヴィオ、先に食堂行ってなのはさん達待ってようぜ」
「うん!」
で、問題なのは食堂でのことだ。
「君がレオンハルト・ブランデンブルクか。話はシスターシャッハから聞いているぞ。噂もな」
少し大きなテーブルに座る。同じテーブルに座っているのはシグナムさんにヴィータさんになのはさんにヴィヴィオだ。会話が聞こえる程度の近くにフォワード陣もいた。フェイトさんは執務官の仕事らしい。
口を最初に開いたのはシグナムさんだ。何やら不敵な笑みを浮かべている。………嫌な予感。
「へぇ、そんな有名なのかよ」
ヴィータさんが興味津々な様子で尋ねる。
「ああ、まず噂の方は…、そうだな、最年少でデバイスマイスター資格及び無限書庫司書資格をとり、その上で魔導戦闘技術も相当できる天才だ、という奴だ」
「すごいね、それ! 本当なの?」
「……あくまで噂ですよ」
なのはさんの質問。上手く回避したつもりだ。
「で、シスターシャッハの話の方はどうなんだよ?」
ヴィータさんから容赦なく追撃が来る。
頭を抱えそうになり、ふとフォワード陣の方を見ると、爛々と目を輝かせていらっしゃった。ティアナさんも興味無さげなそぶりをしながらもこっちを盗み見ている。
そんな周りの様子にシグナムさんは満足したのか、ヴィータさんの質問に答えた。
「こう言っていたぞ。『天才と言われることを嫌う努力家。戦闘技術の腕前は、絶えざる修練あってのもの。デバイスマイスター資格も、無限書庫司書資格も、最年少でとれたとはいえきちんと勉強をしてとったものです。……もし、彼を天才と呼ぶべきものがあるとすれば』」
「「……あるとすれば?」」
「『努力をしようと決意した時が非常に幼かったこと。努力の仕方が実に効率的だったこと。そして努力を決して諦めなかったこと、ということが大きいことから「努力の天才」というのが正しいと思います。……ときおり稽古を受けにくるのですが、どんなにボロボロになってもへこたれない、諦めない。あんな子、そうそういません』……だそうだ」
……褒め言葉を聞くとむずがゆくなる。しかも他の人から聞いた評価だ。
「それはまた……」
「シスターシャッハのしごきに耐える、ねえ……シスターシャッハってランクどれくらいだったっけ?」
「陸戦AAAだ」
なのはさんが絶句してる横で、感心した様子のヴィータさんの質問にシグナムさんが答える。いやいやいや、
「そうそういないって……そんなことないと思いますけど」
「私はそんなことあると思うがな? それで高町隊長」
「なんですか?」
シグナムさんの笑みを含んだ声になのはさんが首を傾げる。
「午後に彼とフォワード陣の一名……スバルかエリオと模擬戦をさせてみたらどうだろうか。お互い良い経験になるだろう?」
シグナムさんの提案になのはさんが顔を輝かせる。
「いいですね! レーヴェ君、大丈夫?」
「……まあ確かにいい経験になります。相手の方にとってどうかは分からないんですけど」
渋々俺が頷くと、にっこり笑顔でなのはさんは振り返った。
「じゃあ、相手は……。ねえ、レーヴェ君」
「なんですか?」
考え込んでいたなのはさんから質問が来た。
「またこっち来れる?」
「夏休み中なんで来れると思いますよ。明日とかは無理ですけど……来週までには」
「ならそうだね……今日はスバル! 今度エリオね。それでいいかな?」
その言葉にスバルさんが顔を輝かせた。しっぽがあったらぶんぶん振ってるな。間違いなく。
「はい! よろしくね、レーヴェ!」
「………お、お手柔らかに…」
というか手加減してもらわなきゃ殴殺される気がしてならない。
というわけで今に至る。
「まあ、とはいえ、だ……」
デバイスも未完成だから剣技も銃技も見せられない。
本当ならデバイスのフレームが完成した後にやりたかった。だから少し気が進まない。
しかし、だからといってそれは諦める理由にはならない。
「負ける可能性がすげー高いが……勝つための努力は惜しまない方針で」
『はい、勿論です』
「あ、でも短距離転移は封印な。あれは隠し球だし、まだ実戦使用に耐えられるかどうかシスターシャッハも微妙だって言ってたから」
『了解』
………本音としては、ヴィヴィオの学習能力を知っているので、これがなのはさんとの戦いの時に使われたら相当不利になるっていうのを知ってることが大きいんだけど。
「二人とも、準備はいい?」
「「はい!」」
「じゃあ試合……開始!」
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ちょ、それは死ぬ………ッ! | ||
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