ISとエンジェロイド
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 第四話 転校生は一夏のセカンド幼馴染!?

 

 

 

 

 

 四月下旬、桜の開花時期が過ぎて全て散った頃。今は織斑先生が担当の授業を受けている。

 

 

 「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、山下。試しに飛んでみせろ」

 

 

 (起動、GUNDAM。モード、エクシア)

 

 

 クラス代表が決まった後日、一次移行したのでISの状態を確認したら分かったことがあった。後付装備ができない代わりに近接格闘のエクシア、狙撃のデュナメス、機動と可変のキュリオス、砲撃のヴァーチェの四種類に変更が可能になった。様々な状況に合わせて対策が取れるのでこれは有難かった。

 

 俺とオルコットはISの展開を済ましたのに、一夏がまだ展開してない。

 

 

 「集中しろ」

 

 

 一夏が右腕を突き出し、ガントレットを左手で掴んだ。その後、白式が展開された。

 

 ところで、何故俺のISだけ浮遊してないんだろう。

 

 

 「よし、飛べ」

 

 

 言われて、俺とオルコットは急上昇し、ある程度上昇したところで静止する。

 

 一夏も遅れて上昇するが、俺とオルコットよりも遅かった。

 

 

 「何をやっている。スペック上の出力では山下の機体は兎も角、白式の方が上だぞ」

 

 

 通信回線で一夏が怒られてる。急上昇と急下降は昨日習ったばかりだが、イメージトレーニングをしたから割と簡単に成功した。

 

 

 「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」

 

 「そう言われてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。なんで浮いてるんだ、これ」

 

 「説明しても構いませんが、長いですわよ? 反重力力翼と流動波干渉の話になりますもの」

 

 「わかった。説明はしてくれなくていい」

 

 「一夏にしては賢明な判断だな」

 

 「くっ、正論だから反論できない」

 

 「一夏っ! いつまでそんなところに居る! 早く降りてこい!」

 

 

 と、歓談してたら通信回線から怒鳴り声が聞こえた。地上を見ると、山田先生がインカムを篠ノ之に奪われておたおたしていた。因みに、ISのハイパーセンサーによる補正で地上の細かい砂まで見える。

 

 

 「因みに、これでも機能制限がかかっているんでしてよ。元々ISは宇宙空間での稼動を想定したもの。何万キロと離れた星の光で自分の位置を把握するためですから、この程度の距離は見えて当然ですわ」

 

 

 流石は優等生。長々と説明ご苦労様です。篠ノ之の説明では擬音ばかりで本人以外解らなかった。

 

 

 「織斑、オルコット、山下。急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ」

 

 「了解です。では航さん、一夏さん。お先に」

 

 

 言って、すぐにオルコットは地上に向かい完全停止をやってのけた。

 

 

 「一夏、次は俺が行かせてもらう」

 

 

 一夏に言って急下降する。どんどん地上に向かい、残り十メートルになったところで足を下に向ける。

 

 難なく辿り着いたが、停止した位置から地表十一センチだった。

 

 

 ギュンッ――――――――ズドォォンッ!!!

 

 

 数秒後に俺の横で一夏が墜落した。

 

 

 「馬鹿者。誰が地上に激突しろと言った。グラウンドに穴を開けてどうする」

 

 「……すみません」

 

 

 その後、一夏は姿勢制御をして起き上がった。

 

 

 「情けないぞ、一夏。昨日私が教えてやっただろう」

 

 

 篠ノ之が一夏に説教を始めたので助け舟を出すことにする。

 

 

 「大丈夫か、一夏」

 

 「あ、ああ。大丈夫だ」

 

 

 一夏の心配をしていると、織斑先生がこちらにやってきた。

 

 

 「織斑、オルコットは武装を展開しろ。山下は既に展開されてるので結構だ」

 

 『はい』

 

 

 オルコット、一夏の順に武器を展開した。

 

 

 「織斑は遅い。〇.五秒で出せるようになれ」

 

 

 一夏の課題が一つ増えたか。

 

 

 「オルコットは流石、代表候補生といったところか。――但し、そのポーズは止めろ。横に向けて銃身を展開させて誰を撃つ気だ。正面に展開できるようにしろ」

 

 「で、ですがこれはわたくしのイメージを纏める為に必要な――」

 

 「直せ。いいな」

 

 「――、……はい」

 

 

 織斑先生の一睨みでオルコットの反論を終わらせた。

 

 

 「オルコット、近接用の武装を展開しろ」

 

 「えっ。あ、はっ、はい」

 

 

 いきなり振られた会話に反応が鈍るオルコット。

 

 

 「くっ……」

 

 「まだか?」

 

 「す、すぐです。――ああ、もうっ!《インターセプター》!」

 

 

 武器の名前を半ばヤケクソ気味に叫ばないと出ないのか。近接用の武器はオルコットも一夏と同じ訓練メニューだな。

 

 

 「……何秒かかっている。お前は、実戦でも相手に待ってもらうのか?」

 

 「じ、実戦では近接の間合いに入らせません! ですから、問題ありませんわ!」

 

 「ほう。山下との対戦で簡単に懐を許していたように見えたが?」

 

 「あ、あれは、その……」

 

 「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、グラウンドを片付けておけよ」

 

 

 一夏が篠ノ之を見ても顔を逸らされ、今度は俺を見る。

 

 

 「はぁ。……仕方がない、手伝ってやるよ」

 

 「悪い、恩に着る」

 

 

 溜息を吐いて穴埋めを手伝う。意外にもすぐに土は見つかり、数分で穴埋めが終わった。

 

 

 

 

 

 「という訳でっ! 織斑君クラス代表決定おめでとう!」

 

 「おめでと〜!」

 

 

 ぱん、ぱん。と、一夏の頭上に向けてクラッカーを乱射する。イカロス達と夕食を取った後、食堂に来るとこの有様だ。壁を見ると、デカデカと『織斑一夏クラス代表就任パーティー』と書いた紙がかけてある。

 

 

 「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねえ」

 

 「ほんとほんと」

 

 「ラッキーだったよねー。同じクラスになれて」

 

 「ほんとほんと」

 

 

 さっきから相槌を打っている女子は、うちのクラスにはいないことに俺と一夏以外気付いてないのか。しかも、明らかに三十名以上いるのだが。

 

 

 「人気者だな、一夏」

 

 「……本当にそう思うか?」

 

 「ふん」

 

 

 篠ノ之の機嫌が悪い。一夏の周りに女子が集まっているからだろう。

 

 

 「はいはーい、新聞部でーす。話題の新入生、織斑一夏君と山下航君に特別インタビューをしに来ました〜!」

 

 

 おー、と一同が盛り上がる。

 

 

 「あ、私は黛薫子。宜しくね。新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺」

 

 

 この年齢で名刺を持っているんだ。

 

 

 「ではではずばり織斑君! クラス代表になった感想を、どうぞ!」

 

 「えーと……。まあ、なんというか、頑張ります」

 

 「えー。もっといいコメント頂戴よ〜。俺に触ると火傷するぜ、とか!」

 

 「自分、不器用ですから!」

 

 「うわ、前時代的!」

 

 

 一夏、それはどうかと……。

 

 

 「じゃあまあ、適当に捏造しておくからいいとして」

 

 

 一夏が言ったことについては捏造も仕方がないか。

 

 

 「次は山下君ね。どうしてクラス代表を辞退したの?」

 

 「一夏の経験値稼ぎの為。……あとは面倒だから」

 

 「あはは、確かにそうね。セシリアちゃんもコメント頂戴」

 

 「わたくし、こういったコメントはあまり好きではありませんが、仕方ないですわね」

 

 

 そう言ってもいつもより気合が入っているのは、誰の目から見てもわかるだろう。

 

 

 「コホン。ではまず、どうしてわたくしがクラス代表を辞退したかというと、それはつまり――」

 

 「ああ、長そうだからいいや。写真だけ頂戴」

 

 「さ、最後まで聞きなさい!」

 

 「いいよ、適当に捏造しておくから。よし、山下君に惚れたからってことにしよう」

 

 「なっ、な、ななっ……!?」

 

 

 顔を赤くするオルコット。余計なことは言わない方がいいと判断する。

 

 

 「とりあえず三人並んでね。写真撮るから」

 

 「えっ?」

 

 「注目の専用機持ちだからねー。スリーショットもらうよ。あ、手を重ねるといいかもね」

 

 

 突然モジモジし始めたオルコットは、ちらちらと俺を見てくる。

 

 

 「あの、撮った写真は当然頂けますわよね?」

 

 「そりゃもちろん」

 

 「でしたら今すぐ着替えて――」

 

 「時間かかるから駄目。はい、さっさと並ぶ」

 

 

 黛先輩は俺と一夏の手を引いて、その後に続くオルコット。そのまま手を重ねるところまで持っていく。因みに、一夏、俺、オルコットの順に手を重ねておく。

 

 

 「………………」

 

 「……なんだよ、箒」

 

 「何でもない」

 

 

 篠ノ之がこちらを見るので、一夏とオルコットに気付かれないように手招きする。俺の意図が伝わったのか頷いてくれた。

 

 

 「それじゃあ撮るよー。35×51÷24は〜?」

 

 「え? えっと……2?」

 

 「ぶー、74.375でしたー」

 

 

 パシャッ、とデジカメのシャッターが切られる。

 

 

 「なんで全員入ってるんだ?」

 

 

 俺と一夏の間に篠ノ之が入るのはいいが、何故他のメンバーも。

 

 

 「貴女達ねえっ!」

 

 「まーまーまー」

 

 「セシリアだけ抜け駆けはないでしょー」

 

 「クラスの思い出になっていいじゃん」

 

 「ねー」

 

 

 口々にオルコットを丸め込んでいる。

 

 

 「う、ぐ……」

 

 

 ともあれ、『織斑一夏クラス代表就任パーティー』は十時過ぎまで続いたらしい。らしいというのは、俺が途中で部屋に帰り翌日一夏から聞いたからだ。

 

 

 

 

 

 「織斑君、山下君、おはよー。ねえ、転校生の噂聞いた?」

 

 

 朝。俺と一夏は席に着くなりクラスメイトに話しかけられた。

 

 

 「おはよう。転校生? 今の時期に?」

 

 「そう、なんでも中国の代表候補生なんだってさ」

 

 「ふーん」

 

 「あら、わたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」

 

 

 それは流石にないだろう。

 

 

 「このクラスに転入してくるわけではないのだろう? 騒ぐ程のことでもあるまい」

 

 「む……気になるのか?」

 

 「ん? ああ、少しは」

 

 「ふん……」

 

 

 案外、一夏の知り合いだったりして。

 

 

 「今のお前に女子を気にしている余裕があるのか? 来月にはクラス対抗戦があるというのに」

 

 「そうだな。クラス対抗戦に向けてより実戦的な訓練を開始するから」

 

 「まあ、やれるだけやってみるか」

 

 「やれるだけでは困りますわ! 一夏さんには勝って頂きませんと!」

 

 「そうだぞ。男たるものそのような弱気でどうする」

 

 「織斑君が勝つとクラス皆が幸せだよ!」

 

 「負けたら、更に厳しくするから覚えておいて」

 

 

 俺、オルコット、篠ノ之、クラスメイトが好きなことを口々に言う。

 

 

 「織斑君、頑張ってね!」

 

 「フリーパスの為にもね!」

 

 「今のところ専用機を持ってるクラス代表って一組と四組だけだから、余裕だよ」

 

 

 楽しそうな女子一同の気概を削ぐわけにはいかず、一夏は一言とだけ返事をした。

 

 

 「――その情報、古いよ」

 

 

 教室の入り口から声が聞こえた。

 

 

 「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

 

 腕を組み、片膝を立ててドアにもたれている知らない女子。

 

 

 「鈴……? お前、鈴か?」

 

 「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

 

 「何格好付けてるんだ? すげえ似合わないぞ」

 

 「んなっ……!? なんてこと言うのよ、アンタは!」

 

 「おい」

 

 「なによ!?」

 

 

 バシンッ! 聞き返した凰に痛烈な攻撃が入った。

 

 

 「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」

 

 「ち、千冬さん……」

 

 「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」

 

 「す、すみません……」

 

 

 さっさとドアから退く凰。明らかに織斑先生を恐れている。

 

 

 「またあとで来るからね! 逃げないでよ、一夏」

 

 「さっさと戻れ」

 

 「は、はいっ!」

 

 

 織斑先生に怒られて二組に急いで戻って行った。

 

 

 「っていうかアイツ、IS操縦者だったのか。初めて知った」

 

 「……一夏、今のは誰だ? 知り合いか? 豪く親しそうだったな?」

 

 

 篠ノ之を始め、クラスメイトが一夏に質問している。

 

 

 バシンバシンバシンバシン!

 

 

 「席に着け、馬鹿ども」

 

 

 今日もいつも通りの一日が始める。

 

 

 

 

 

 放課後の第三アリーナ。今日も俺とオルコットで一夏の特訓をしていると意外な人物がやってきた。

 

 

 「な、なんだその顔は……可笑しいか?」

 

 「いや、その、可笑しいっていうか――」

 

 「篠ノ之さん!? ど、どうしてここにいますの!?」

 

 

 俺達の前に打鉄を装着、展開した篠ノ之がいる。

 

 

 「どうしてもなにも、一夏に頼まれたからだ」

 

 「篠ノ之が来たことだし。一夏、準備は出来てるな? 篠ノ之、オルコット始めようか?」

 

 「ああ」

 

 「よろしくてよ」

 

 「ちょっ、俺の意思はあああぁぁぁーー」

 

 

 結果、三人によって一夏は、ボコボコにされたのはいうまでない。

 

 

 

 

 

 「今日はこのくらいでいいだろう」

 

 「お、おう……」

 

 

 ぜえぜえと一夏が息切れしているのに対して、篠ノ之は多少疲れてるが一夏程ではなく、俺とオルコットは全く疲れてない。

 

 

 「ふん。鍛えてないからそうなるのだ」

 

 「よし、訓練メニューに体力向上も加えようか?」

 

 「いや、今のままでいい」

 

 「何をしている、早くピットに戻れ」

 

 「お、おう。……って、箒? なんでこっち側に来るんだ?」

 

 「私もピットに戻るからだ」

 

 「いや、セシリアの方に――」

 

 「ぴ、ピットなどどっちでも構わないだろう!」

 

 

 と、そんなやりとりがオルコットとピットに戻っていると聞こえた。

 

 

 「航さん、わたくしのことは“セシリア”と呼んでくれませんか?」

 

 「別にいいが。それでセシリアは、近接武器の展開速度はどうなった?」

 

 「漸く一秒以内に出せるようになりましてよ」

 

 「次は、懐に入られてもある程度対応できるようにしないとな」

 

 「その時はお願いしても宜しいですか?」

 

 「ああ、いつでもいい」

 

 

 セシリアと接近戦の相手にすることを約束してピットを後にする。

 

 

説明
見本とパーティーと一夏の知り合いが転入する話。
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タグ
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