ISとエンジェロイド |
第五話 対決!! クラス対抗戦
対戦表が発表されてから数週間が経ち、今は五月。どうやら一夏と凰が、喧嘩をして仲が悪い。
「一夏、来週からいよいよクラス対抗戦が始まるぞ。アリーナは試合用の設定に調整されるから、実質特訓は今日で最後だな」
「その代わり、試合当日まで座学をするからな」
それから放課後、一夏の特訓の為第三アリーナへと向かう。
参加メンバーは俺と一夏、篠ノ之、セシリア、エンジェロイドの三人で特訓をしている。
因みに、イカロス達を紹介したときは驚かれ、イカロスとアストレアを相手に三対二で一夏達と模擬戦をさせたところ、イカロスとアストレアが一夏達を圧倒した。三人とも普通に空を飛び、イカロ
スとアストレアについてはIS相手に互角以上の戦闘力があった。
しかし、運が悪いことにこの光景を見た生徒がいて、翌日から学園に広がってしまい、黛先輩から質問されたが何とか誤魔化すことが出来た。それ以来、俺達の特訓風景を見る人が増えた。
話は変わって俺達は、第三アリーナのピットにいる。一夏がドアセンサーに触れ、ほんの数秒でドアが開いた。
「待ってたよ、一夏!」
どうやら凰が待ち伏せしていた。
「貴様、どうやってここに――」
「ここは関係者以外立ち入り禁止ですわよ」
「あたしは関係者よ。一夏関係者。そこの男は確か、山下航だったよね。あたしは凰鈴音宜しく」
「……宜しく」
第一印象は明るくて、活発そうだ。
「で、一夏。反省した?」
「へ? 何が?」
「だ、か、らっ! あたしを怒らせて申し訳なかったなーとか、仲直りしたいなーとか、あるでしょうが!」
「いや、そう言われても……鈴が避けてたんじゃねえか」
「あんたねえ……じゃあなに、女の子が放っておいてって言ったら放っておくわけ!?」
「おう」
一夏、それはないだろう。
「なんか変か?」
「変かって……ああ、もうっ! 謝りなさいよ!」
「だから、なんでだよ! 約束覚えてただろうが!」
「あっきれた。まだそんな寝言言ってんの!? 約束の意味が違うのよ、意味が!」
いつまでこんなやりとりが続くのだろう。まだ続きそうなので、俺達は先に行くことにする。
「まだ続けるのなら、俺達は先に行って始めてるぞ」
「ああ、わかった」
一夏と凰以外のメンバーでアリーナに向かう。
「今日は、セシリアとイカロス、篠ノ之とニンフ、俺とアストレアでそれぞれ組み手を一夏が来るまで続ける。それでいい?」
「ああ」
「ええ」
『はい、マスター』
それからイカロスとセシリアが空中戦を始め、他は地上で戦闘を開始した。
数分後、アリーナに揺れを感じ、地上で戦っていたメンバーは、一旦戦闘を中断しピットの方を見ると、一夏が落ち込んでやって来た。
話を聞くとどうやら凰に対して言ってはいけない事を言ったみたいで、それに怒った凰はISを部分展開して壁を殴り、ピットから出て行ったのだった。どうやらあの時の揺れは、凰が壁を殴った時の影響みたいだ。
あれから数日後の試合当日。第二アリーナ第一試合の組み合わせは一夏対凰。
新入生同士の戦いとあって、アリーナには生徒で埋め尽くされている。
「なんでお前達はここに居るんだ?」
俺とイカロス、ニンフ、アストレアは織斑先生や山田先生達がいるところで、リアルタイムモニターを見ていると織斑先生に話しかけられた。
「ここの方が見やすいからです」
と答えたら、織斑先生はモニターの方に向いた。
凰のISは『甲龍』。その特徴はアンロック・ユニットであり、恐らく形状から装甲がスライドして弾丸を打ち出すものだろう。
ブザーが鳴り響き、一夏と凰が同時に動きだした。
一夏は凰の初撃を防いだものの、凰の攻撃をなんとか捌いている。しかし、凰の見えない弾丸によって吹き飛ばされた。
「なんだあれは……?」
ピットからリアルタイムモニターを見ていた篠ノ之が呟いた。同じくモニターを見ていたセシリアがそれに答えた。
「『衝撃砲』ですわね。空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して撃ち出す。ブルー・ティアーズと同じ第三世代型兵器ですわ」
セシリアの説明を聞きながらモニターを見ていると、一夏の動きが変わった。
衝撃砲をかわし続けて加速姿勢に入り、瞬時加速を繰り出して凰との間合いを詰め、《雪片弐型》の零落白夜を発動した。
ズドオオオオンッ!!!
あと一息で一夏の攻撃が通るところで突然大きな衝撃がアリーナ全体に走った。
ステージ中央から煙が上がり、謎のISがアリーナの遮断シールドを貫通して侵入した際の衝撃波だった。
敵ISが一夏と凰に向けてビームを放つ。二人はなんとかビームをかわした。
「織斑君! 凰さん! 今すぐアリーナから脱出してください! すぐに先生達がISで制圧に行きます!」
山田先生が二人に話しかけた。
『――いや、先生達が来るまで俺達で食い止めます』
そう言って、一夏と凰は敵ISに向かって飛び出した。
「もしもし!? 織斑君聞いてます!? 凰さんも! 聞いてますー!?」
山田先生、ISのプライベート・チャネルは声に出す必要はありませんよ。周囲から見ると危ない人に見えますよ。
「本人達がやると言ってるのだから、やらせてみてもいいだろう」
「お、お、織斑先生! 何を呑気なことを言ってるんですか!?」
「落ち着け。コーヒーでも飲め。糖分が足りないからイライラするんだ」
「……あの、先生。それ塩ですけど……」
「………………」
コーヒーに運んでいたスプーンを止め、塩を容器に戻した。
「なぜ塩があるんだ」
「さ、さあ……? でもあの、大きく『塩』って書いてありますけど……」
「………………」
「あっ! やっぱり弟さんのことが心配なんですね!? だからそんなミスを――」
「………………」
イヤな沈黙が場を支配する。
「あ、あのですねっ――」
「山田先生、コーヒーをどうぞ」
「へ? あ、あの、それ塩が入ってるやつじゃ……」
「どうぞ」
有無を言わせぬ迫力に山田先生は、涙目で塩入りコーヒーを受け取った。
「い、いただきます……」
「熱いので一気に飲むといい」
悪魔だ!
「先生! わたくしにISの使用許可を! すぐに出撃できますわ!」
「そうしたいところだが、――これを見ろ」
ブック型端末の画面を数回叩き、第二アリーナのステータスチェックに切り替えた。
「遮断シールドがレベル4に設定……? しかも、扉が全てロックされて――あのISの仕業ですの!?」
「そのようだ。これでは避難することも救援に向かうこともできないな」
「そうでもないですよ」
俺は二人の会話に口を挟む。
「何? 解除出来るとでも言うのか?」
「俺ではなく、ニンフなら出来ます」
「ならば任せる」
「ニンフ、頼むぞ。優先させるのは、避難経路の確保だ」
「わかったわ」
ニンフはコンピュータに近づき、ハッキングを始めた。
イカロスの側に戻ろうとしたら、篠ノ之が出て行くところが見えたので、イカロスとアストレアの鎖軽く引っ張り二人が反応したのを見て、篠ノ之の後を追う。
篠ノ之の向かった先は中継室だった。俺達が到着した時には、審判とナレーターがのびていた。
「一夏ぁっ!」
近くにいる為、耳鳴りが起きた。
「男なら……男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!」
「篠ノ之、危険だから下がれ」
「ええい、五月蝿い」
「アストレア、篠ノ之を抑えて」
「わかった」
アストレアが篠ノ之を抑えているが、暴れている為手こずっているようだ。
敵ISを見ると腕を此方に向けているのが見えた。俺は、ヴァーチェを展開してイカロスに指示を出す。
「イカロス、『aegis』を俺の後ろに展開だ」
「はい、マスター」
敵ISの射程上に入り、GNフィールドを展開、それと平行して圧縮粒子のチャージをする。
敵ISのビームが此方に向かって来るが、GNフィールドで防いで圧縮粒子量が98%を超えたのを確認、胸部のGNコンデンサーと直結してGNバズーカの砲口を展開後、敵ISに向ける。
「圧縮粒子開放。GNバズーカ、バーストモード」
敵ISのビームを押し返して直撃させる。直後にデュナメスに変更、イカロスに中継室の防衛を任せて一夏達のところに向かった。
「お前等、無事か?」
「ああ」
「なんとかね」
「ところで一夏、《零落白夜》をあと何回使える?」
「よくて一回しか使えないぞ」
「一回か……。俺と凰が援護するから、一夏は隙を突いて攻撃を決めろ」
「おう」
「わかったわ」
二人に指示を出した俺は、両脚のホルスターからGNビームピストルを取り出し、敵ISに向けてビームを放つ。敵ISが回避してビームを撃って来るのに合わせて、GNミサイルを射出する。
「二人共、今の内だ」
「鈴、やれ!」
「わ、わかったわよ!」
凰は両腕を下げ、肩を押し出すような格好で衝撃砲を構え、最大出力で行う為、補佐用の力場展開翼が後部に広がり、一夏がその射線上に飛び出す。
「ちょっ、ちょっと馬鹿! 何してんのよ!? 退きなさいよ!」
「いいから撃て!」
「ああもうっ……! どうなっても知らないわよ!」
GNミサイルで敵ISの右足を破壊し、一夏が衝撃砲のエネルギーにより、瞬時加速で一気に距離を詰め、零落白夜を叩き込み敵ISの右腕を切り落とした。
しかし、敵ISの反撃で一夏が残った左拳を叩き込まれた。しかもそのままビームを至近距離で撃つみたいだ。
『一夏っ!』
篠ノ之と凰が叫んだ。
「……狙いは?」
『完璧ですわ!』
セシリアの声が聞こえ、客席からブルー・ティアーズのピットが四機同時狙撃により敵ISを撃ち抜いた。
『ギリギリのタイミングでしたわ」
『なに、セシリアなら出来ると思っていたからな』
『当然ですわね! 何せわたくしはセシリア・オルコット。イギリス代表候補生なのですから!』
一夏達は敵ISを倒したことで喜んでいるが、密かに敵ISが再起動して残った左腕を最大出力形態に変形させ、一夏を狙っているのを、当の本人達は気付いてない。
「ちっ……。モード、エクシア。TRANS-AM」
俺のIS、GUNDAM共通のワン・オフ・アビリティー【TRANS-AM】を起動させる。
GNソードで敵ISの首、左腕、両脚を切断後、GNビームサーベルでISの頭を貫いた。残った胴体は蹴飛ばしてアリーナの端に転がって行った。
学園の地下深く、そこはレベル4権限を持つ関係者しか入れない、隠された空間である。
機能停止したISはすぐに運び込まれ、解析が開始された。それから二時間、千冬は何度もアリーナでの戦闘映像を繰り返し見ている。
「織斑先生?」
ディスプレイに割り込みでウインドウが開く。ドアのカメラから送られてきたそれには、ブック型端末を持った真耶が映った。
「どうぞ」
許可を貰ってドアが開くと、真耶は入室した。
「あのISの解析結果が出ましたよ」
「ああ。どうだった?」
「はい。あれは――無人機です」
世界中でISの開発が進んでいるが、まだ完成していない技術。遠隔操作と独立稼動。その技術が謎のISに搭載されていた。その事実は、すぐに学園関係者全員に箝口令が敷かれた。
「どのような方法で動いていたかは不明です。山下君の攻撃で機体はバラバラにされましたが、幸いコアは無事でした」
「ふむ。それで、コアはどうだった?」
「……それが、登録されていないコアでした」
「そうか」
やはりな、と続けどこか確信じみた発言をする千冬に、真耶は怪訝そうな顔をした。
「何か心当たりがあるんですか?」
「いや、ない。今はまだ――な」
そう言って千冬は又ディスプレイの映像に視線を戻す。その顔は戦士の顔に近かった。
嘗て世界最高位の座にあった、伝説の操縦者の時を思わせる鋭い瞳は、只映像を見つめ続けていた。
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クラスリーグマッチと謎ISの介入の話。 | ||
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