リテラエルネルア「第一話」 |
「はぁあ!!」
暁は悪魔――ヘルプライドを回し蹴りでダウンさせ、頭を踏みつけて胴体に目掛けて撃ち込んだ。
「Break!」
何発か撃ち込んだ後、大きく蹴飛ばした。
「次ぃ!!」
蹴飛ばされたヘルプライドはその身を塵にかえ崩れていった。
「乱暴な戦いかただな」
それを見ていたシグナムがヘルプライドを斬り捨てながら率直な感想を述べた。
「悪いがコイツら相手に遠慮する気はさらさらなくてな」
暁はシグナムを見て感心した。 このような悪魔を見たら恐怖に支配されるだろうが彼女は臆する事なく斬り捨てたのだ、フェイトとて同じだ。
「しかし次から次へとキリがないな」
シグナムは周りを見渡した。 ザッと見ただけで50は越えているだろう。
「コイツら下級悪魔は個体自体はそんなに強くはないが、厄介なのはその数だ。 一度現れたら次々に現れる。 簡単に言えばゴキ○リみたいなものだ」
…………聞いてはいけない単語によって、想像してはいけない光景を思い浮かべてしまい二人は表現を青くする。
「え、コイツらゴキ○リなの!?」
「言うな、テスタロッサ!! 想像したくはない!!」
「言ってて悪いが俺も勘弁だ」
余裕そうだなこの三人……。
しかし、しっかりとヘルプライドを倒してるのは流石と言うべきか。
「……カンザキとやら、コイツらを掃討したら我々と来てもらおうか。 コイツらを知っているならば説明をしてもらわねば」
「別に良いさ、どうやら俺の知っている場所じゃなさそうだからなアンタらについて行った方が状況把握できるはずだ」
彼としては出来るだけ早く状況把握をしたいのだがそれをヘルプライド達はさせてくれない。
「さぁてそうと決まったらとっとと終わらせようか!!」
暁は朱い装飾銃をしまうと翠の装飾銃を持ち替え剣を手にした。
「!?」
その時に夥しい量の紫電が纏いフェイトは驚く。
「(なに、あの魔力量!?)」
暁は両手を広げ悠然とした態度でヘルプライド達の群れに近づく、その時にシグナムは気付いた。 翠の装飾銃から淡く光が放っている事を。
「き、貴様、何をしている!?」
確かに今の暁の行動を見る限り死にに行っているようなものだ、だが暁にとってこれはいつものことだ。
暁に襲い掛かってきたヘルプライドを一閃すると瞬く間に砂へと散った。 そこからはもうクライマックスへの舞踏だ。
軽やかステップ、俊敏なターン、それはダンスをしているかの様だ。
しかしその軌跡にはヘルプライドを倒したという事を大量の砂が示していた。
「二人とも避けろよ!!」
その一言でシグナムとフェイトは直感的に危険と判断し、空へと飛ぶ。
淡く光っていた翠の装飾銃を天に向け引き金を引いた。
すると銃口から巨大な魔力の塊が撃ち出され上空へ留まると弾けた。
「『スフィア・レイン』……Drop dead!!(くたばれ!!)」
親指を立て、それを下に向けると先程弾けた魔力が雨粒状の弾となり轟音と共に降り注いだ。
それは辺り一帯のヘルプライドを貫き、余波で瓦礫にも穴が空いた。 それは蜂の巣と言う比喩を現した光景だ。
「これほどの殲滅魔法を使いこなすとは……。奴は一体何者なんだ?」
あれだけ居た悪魔という異形を瞬く間に駆逐した暁に警戒するシグナム。
「おい、終わったぞ?」
暁は剣を背負い、銃を消すと二人を呼んだ。
「神崎さん申し訳ありませんが武器をこちらに渡して頂けますか?」
二人が暁の傍に来るとフェイトが武器を差し出すよう暁に言ってきた。
言われた本人は「あ〜…やっぱり?」と苦笑いを浮かべていた。
「仕方ない、とりあえず情報を手に入れるためだ」
と、自身に言いかけ暁は武器をフェイトに渡した。
*
―機動六課宿舎・部隊長室―
「一応紙面にて簡易的な質問の解答を書いてもらったんですけど……」
今、暁は簡単な質問が書かれた紙に応えを書き終え目の前の女性に紙を返した。
この女性、シグナムやフェイトからすると名ははやてと言うらしい。
「出身地が日本の『桜木市』ってちょっと聞いたことないなぁ、なのはちゃんはどうや?」
はやては隣にいる栗色のサイドテールの女性―なのはに聞いてみた。
「ううん、聞いたことないよ。 それに地図上ではここ私たちの街の海鳴市でしょ?」
その一言に暁は眉間に皺を作りため息をついた、自身の中で一番可能性が低い答えがでたからだ。
「どうしたんや、神崎さん?」
「いや、アンタら二人名前からして日本人だろ? そのアンタらが知らないとなると可能性的に俺は異世界からこの世界にということになる」
「異世界だと?」
この場に似つかわしくない紅髪の少女が訝しげに放つ。
「並行世界―パラレルワールド―から俺はこの世界に来た、と言うことだ。 くそ、あの水晶に触れなければ良かった」
「その水晶のことなんですが神崎さん。 その水晶は今どこに」
「ん? あぁ、ここに」
暁は右手を出しながら掌を上にした。
「「!?」」
掌から光が出たと思ったら赤い水晶を暁は握っていたのだ。
それを見た全員はまた目を見開いた。
「依頼中遺跡の中で見つけたものなんだがかなりのエネルギーがあるみたいでな、動力源として置かれてたから外して手に入れた」
「神崎さん平気なんですかそんなん素手で持ってて!?」
「ん?、最初は気分悪かったがすぐ収まったな」
「あかんやん!! シャマル、はよ神崎さんを診てぇな!!」
「は、はいはやてちゃん!」
「ちょ、ちょいまて!?」
いきなり慌ただしくなった部屋で暁は待ったをした。
「気分悪くしたのは向こうでコイツを手にした瞬間だけだ、それにコイツからはもう高エネルギーは感じないぞ!!」
「………へ?」
「恐らくだが俺がこの世界に来る時にその高エネルギーで移動したんだろうな」
「そうですか。 神崎さんそれは私達が探している『レリック』というロスト・ロギアです。 それをこちらに渡して下さい」
「『ロスト……』なに?」
はやては簡易的に説明をした。
「要はオーバー・テクノロジーの物を事を『ロスト・ロギア』と言い、それを回収・管理するのがアンタらの仕事か」
暁は腕を組み、納得したように頷く。
「ならこの『ロスト・ロギア』を回収義務があるな」
「ほら」っとレリックを差し出す。
「ありがとうございます、なのはちゃんお願いや」
「うん、レイジング・ハート」
なのはは機械的な杖を出現させて持つと先をレリックに向ける。するとレリックは暁の手をすり抜け、レイジング・ハートとという杖の先端部にある水晶部に吸い込まれた。
「さて、次の話しにいきますが。神崎さん、先程の戦闘についてシグナムとフェイトちゃんから聞きました。 貴方はアンノウンについて『悪魔』と言ってたそうですね」
『悪魔』と聞き神崎は目を細める。
「あぁ、俺は『悪魔狩人デビルハンター』という『悪魔』専門のハンターをしている。 しかしアンノウンって言うのは?」
「この二、三ヶ月の間にアンノウンと遭遇したという報告があります」
はやてはモニターを戻し、再び端末を操作した後またモニターを暁に見せる。
「ですがこの二週間の間に確認例が急上昇しているのです」
「……どいつもこいつも戦った事のある奴ばっかだな」
「そこで、神崎さんにお願いがあります。 お預かりした武器はお返しします、ですからどうか私達に力を貸してください!!」
急に立ち上がったかと思うと勢いよく頭を下げるはやてに皆が驚く。
「はやて、なにコイツに頭なんて下げてんだよ!?」
紅髪の少女がはやてに声を放った。
「じゃあ、提案がある」
「え?」
はやてが頭をあげると暁は真剣な表情ではやてを見ていた。
「テメェ、今の状況分かってんのか!!」
紅髪の少女が暁の胸倉を掴む。
「ヴィータ、やめい。 それで、提案の内容とは?」
はやてが止めるとヴィータが渋々離した。
「俺の寝床と食事の提供。 それをしてくれるなら喜んで協力しよう」
「………は」
もっと凄い条件が出されるかと覚悟していたはやてにとって思いがけない言葉だった。
その一言は周りの予想を良い意味で裏切るものだった。
「あの、そんなので良いの?」
思わずフェイトが口に出してしまった。 他の皆も同意見で首を縦に振っていた、胸倉を掴んでいたヴィータもだ。
「この世界の通貨や身分証明がないんだ、しかたないだろう」
「なら簡単や、ウチの宿舎に空き部屋もあるし、『協力者』なら多少の謝礼金もでるはずや」
「おし、それじゃこの世界について説明をしてくれ」
寝床や食事の確保が出来たことで笑みを浮かべた暁は次の話を促した。 そしてお互いの世界の事も話すようになった。
彼が居た世界とこの世界での似ているが異なり、異なっていて何処か似ている部分が少し明らかになった。
*
機動六課宿舎
空き部屋に案内された暁はベッドに横たわっていた。
「魔法…ねぇ」
彼の居た世界で魔法と言う存在は奇跡に等しい力を秘めていた、それは世界に干渉する神の如き力だ。 それがこの世界じゃ超科学によるものだと言う。
「(魔力行使という点では似てるんだが媒介が必要ってのはやりにくいな)」
起き上がりテーブルの上に置かれているデバイスと総称される銃に目が行った。
彼の武器はこの世界では禁じられているので違法にならないよう改造するとの事だ。 それまでの間に合わせで借りたのがこれだ。
魔銃はともかく剣は思いっきり違法なのだが「どうにかする」とのことだ。
「そうなると接続―リンク―も使えないもんな…これでやっていくしかないか」
とりあえずデバイスの使い方を知りたいので誰かを探しに部屋を出た。 だが、この行動が彼にとって面倒な出来事に発展するとは微塵にも思わなかった。
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第一話の投稿です。 読みづらい部分もありますがご容赦頂けたら幸いです。 ハーメルンにも投稿しています。 |
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