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その後しばらく街の中を闊歩した。特にこれといってすることはないので、要するに暇つぶしだ。しかし、何分目的が無いので、二三時間で飽きてしまった。まぁ、街自体があまり大きくないという訳なのだが。それはそれとして今日の寝床を探さねばならない。流石に、二日続けて野宿はつらいからな。

?「何でこの街、宿が一つもないんだよ?」

?血眼になって探したのに、結局見つからなかった。散々探し回った挙句見つからなかったという事実は、流石に身に応えた様で、とてつもない、虚脱感に襲われてしまった。しかし、道のど真ん中で倒れしまっては、犬か鴉に食べられるので、やむをえず最寄りの建物の中に入った。

 

?

 

そこはBARだった。特段これといって物珍しいものはなく、いたって一般的なBARだった。

 

「おや?もしかして、さっきの兄ちゃんかい?」

「あー、さっきの爺さんか。」

「一体何の用だい?」

「いやー、街中歩き回ってたら、喉渇いちゃって。」

「宿が無くて困っているのだろう」

?何だこの爺さん、やたらと鋭い?

「実のところそうなんだけど…当面の間泊めてくれないか?」

「あぁいいともいいとも。しかし、それには条件がある。」

?ゴクリ

一体どんな条件なんだ。

「お前さんに課す条件は、たったの三つ。まず一つここで働いてもらう。なにBARだから夜だけでいい。」

「問題ない。昼間は自由ってことでいいんだな?」

「あぁ、基本的にはな。二つ目は、お前さんにはある仕事を頼みたい。」

「仕事?」

「そう仕事。しかし仕事とは言っても儂からお前さんに頼むのでは無く、何処ぞ誰かさんからのだから。いくらかお金も貰えるから。あぁ因みに、BARの仕事は無給だから。」

「まぁタダで泊めて貰えるなら…」

「もちろんタダさ。」

「了解した。三つ目はなんだ?」

「……」

「おーい、起きてますか〜」

「起きてる。あまりにも話が早く進んだもんで、少し驚いてしまった。」

「何で驚く必要が?」

「何、少し昔の話さ。いつか教えてやるさね。それはそうとして三つ目だったな。」

「おう。」

「これだ。」

と言うと同時にやや厚みのある紙束が目の前に現れた。

「これは?」

明らかに何をしろと言われるのかは、分かっているんだが。もしたしたら別な事かもしれない、という一縷の望みみたいなものを信じて尋ねた。

 

 

ー駅前

 

「仕事帰りにBARはどうですか?」

ビラ配りなう。何この状況。絶対おかしい。俺が配る必要がないじゃん?

 

時間を遡りBARでの会話の続き。

「何、ビラ配りだよ。」

「いやいや、量がおかしいだろ。普通目の前にある分が一人分だろ。」

目の前の束プラス紙袋

「騙された。」

「儂がいつ騙したと。まぁ確かに、この量を一人でやらせるのは可哀想だ。」

「だろだろ。」

「だから、助っ人をつける?」

……ハイィ

 

時間を現在に戻し駅前

 

確かに助っ人のお蔭でビラは減っている。確かに減ってはいるんだが……

「何故俺の配るビラを誰一人として受け取ってくれないんだ〜」

「そういわれましても…」

あの爺め、覚えてろ、いつか晴らしてやる。

?「しかし何であの爺さん他人にこんなことさせるんだ?」

「あぁそのことですか。お祖父様曰く、可愛い孫娘に虫が集ったらどうするのだ〜という理由で、ビラ配りを他人にやらせているんですよ。」

「ナ〜ル」

?孫娘思いのいい爺さんなんだな〜。うんうん。俺のことも嫌な顔の一つもしないで、受け入れてくれるなんて。うんうん。しかしだよしかし、

「何時になったら配り終えるんだ?」

「さぁ〜?」

「何枚でもいいから誰か貰ってくれー?」

?二人の影は夕闇に紛れることなく黒くはっきりと映っていたのだった。

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第三幕
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