IS学園にもう一人男を追加した 〜 77話
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一夏SIDE

 

 

氷人形

『アアァ・・・!』

 

B

「邪魔だ、デクの坊」

 

ガンッと次々と群がる氷人形を足蹴り、倒れこんだところを蹴り飛ばす・・・生身で。

 

マドカ

「何で、お前がここに居る?」

 

B

「誰も来ないから暇なんだよ・・・という訳で、そいつ貰うぞ」

 

一夏

「っ?」

 

そう言われた瞬間、相手から特殊な電磁波が膨れ出し、半円に周囲へ広がるその電磁波は、触れたものを押し出すように、氷人形や氷面すらも疎外していく。

 

B

「"ディストンション"」

 

マドカ

「くっ!」

 

一夏

「えっ?」

 

電磁波のフィードが俺の目前にまで迫ってきたと思ったら、俺だけがその空間に呑み込まれる。

そこは、三半規管が強くなければ、すぐにでも視酔してしまう世界だった。

明かりが氷に反射して照らしていた極寒の世界とは違い、異次元と言っても信じてしまいそうな、自分と相手以外の見えるもの全てがグニャリと歪曲した世界。

だが、その事を気にするよりも、千冬姉の安否が心配でならなかった。

 

B

「姉さんが心配か?」

 

一夏

「お前は・・・お前もクローンなんだよな?」

 

B

「っ・・・何で、お前が知ってんだよ?」

 

"マドカ"の中を見たからな・・・

 

一夏

「ここから出せ」

 

B

「俺を倒したら、な・・・ってか、何で知ってるのか答えろよ」

 

一夏

「・・・」

 

何故だろう? 今の俺は非常に落ち着いている・・・いや、安心してると言ってもいい。

信じているのだろうか・・・俺達、姉弟の存在を疎ましく思っている"マドカ"を・・・

 

一夏

「でもっ」

 

千冬姉を助けるのは、俺の役目だ!

 

B

「だから答えろって言ってんだろうがぁ!!」

 

 

 

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マドカSIDE

 

 

氷人形

『アアァ・・・!』

 

マドカ

「このっ!」

 

『B』の奴、勝手なマネを! おかげで、私一人でこんな目に会う羽目になってしまった・・・

それに・・・

 

千冬姉

[カチコチ]

 

何で、私が"姉さん"を守っているんだ? 今にでも、凍ったあの顔面に向けて引き金を引けば、私は"モノ"から"者"へと近づける・・・はずなんだ。

なのに、なぜ私は・・・

 

氷人形

『アアァ・・・!』

 

マドカ

「悩ませてくれる猶予も与えてくれないのか・・・」

 

しかも、さっきより動きが機敏になっている。早く、元凶(朝霧獅苑)を無力化させないと、機体のSEが持たない・・・!

 

氷人形

『アアァ・・・!』

 

マドカ

「くっ!」

 

上空に逃げ込めば、氷人形のターゲットは姉さんに変わる。それだけは・・・

 

マドカ

「っ・・・違うっ! 私は、自分の手で姉さんを!」

 

だから、他の奴らに譲るわけにはいかないんだ・・・それだけだ!

 

氷人形

『アアァ!』

 

マドカ

「っ、しまった!」

 

氷上から生えた腕が片足にしがみつく。

 

氷人形

『アアァ・・・!』

 

周りの氷人形共も身動きが取れない私に群がり始め、四方八方から私を取り囲み、その身を硬化させる。

 

マドカ

(この程度で・・・)

 

だが、内部でシールド・ビット『エネルギー・アンブレラ』を自爆させて、氷人形もろとも吹き飛ばす。

 

マドカ

「ごほっ、ごほっ・・・!」

 

今更だが、おかしなものだな・・・傷ついているのに、そんな感覚がまるでない。だけど、分かる・・・

 

マドカ

(今の自爆で・・・機体よりも、体が持たない・・・)

 

木が根元からへし折れる様に氷上に倒れ、かすみ視界に復活する氷人形と姉さんの氷像を捉える。氷人形共は、氷上から這い出て、そのまま真っ直ぐ・・・姉さんの方に。

 

マドカ

「っ!」

 

それを見た途端、意識が一気に覚醒する。

 

マドカ

(姉さんに、近づくな。あいつは・・・あの人、は・・・!)

 

また視界がぐらつき始める。だが、必死に姉さんの下へ氷上を両腕で這う。

 

マドカ

「私の・・・私を・・・」

 

もし、生まれてきたのが織斑一夏ではなく、自分だったら・・・

 

 

 

 

 

 

 

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獅苑?

「"守られたい"?・・・あっ、そのボール洗って」

 

マドカ

「あ、ああ。何というか、憧れでな」

 

獅苑?

「ん〜・・・だったら、思いっきり甘えたらいい・・・おね、ねえちゃん・・・とか」

 

マドカ

「い、いや、甘えるのとは、ちょっと違うような・・・それに、『W』はお前にベッタリだろ。あと、無理して"お姉ちゃん"と言わなくてもいいだろ」

 

獅苑?

「地獄耳だから、気が抜けないんだ・・・あと、おねえ、ちゃんは、お前の事も、みんなの事も気にかけてる」

 

マドカ

「そう言う事を話し合える仲だから、ベッタリだと言っているんだ・・・ふふっ」

 

獅苑?

「何故、笑う?」

 

マドカ

「いやなに・・・羨ましいな、と思っただけだ」

 

獅苑?

「・・・お前、大分キャラが変わったな」

 

マドカ

「そうか? お前もキャラ崩れしたと、私は思うがな」

 

"守られたい"・・・ずっと、一人で任務を遂行し、一人で戦ってきた私には程遠い単語。だが、アイツと・・・『W』の出会いが、私を変えた。クローンとか、同じ境遇とかを抜きにしても、彼女は私の初めて"信じられる人"だった。

いきなり、姉さんから彼女の話なったのを疑問に思うかもしれないが、自分の中でこの2人は似ている部分がある。

姉さんについての説明は要らないと思うが、彼女もオータムや『R(リリヤ)』を従わせる威圧感を持っていて、境界線がない優しい心を持ち合わせている・・・そして"ブラコン"

だけど、そんな人に、私は守られたいと時折、思ったりもする・・・

 

 

 

 

 

 

 

-4ページ-

W

「マドカ」

 

声の導きに意識が再度、覚醒して辺りを見渡す。目の前には『W』が私の顔を覗きこんでいて、私は氷の壁に寄りかかっていた。

 

マドカ

「っ・・・どうして、ここに?」

 

W

「可愛い弟の尻拭いは、姉の務めだから」

 

マドカ

「っ!? お前、言葉がっ!」

 

驚く私の口に人差し指で押さえた『W』は、後ろへ"方天画戟(ほうてんがげき)"を横一閃に振ると、背後にいた氷人形の上下に真っ二つに斬れる。

 

W

「よく分からないけど、ISを展開してる時だけ、ちゃんと話せるみたい」

 

・・・博士の仕業か? フラン仕様の第4世代機は元々、武器はインストールされていないはず。これも何かの仕掛けなのだろう。

 

そうだ、この人をよろしくね」

 

私の隣を指す先には、氷像となっていたはずの姉さんが横たわっていた。『海神』は"水素"をエネルギー源としていて、操る事だって出来る。だから、姉さんの氷像の氷を溶かすことが出来たのか・・・

 

W

「マドカと話せて嬉しい」

 

マドカ

「ぁっ・・・」

 

始めて見た笑みに魅了されている間に、『W』は武器の刃を氷上に突き刺す。すると、その部分だけが固体から気体に昇華する。

 

 

 

『W』SIDE

 

 

氷人形

『アアァ・・・!』

 

W

「っ!」

 

新たな力『リミット・ブレイク』で手に入れた武器"方天画戟"を振り下ろし、全ての氷人形を昇華させていく。

良く分からないけど、私が海中で寝ていた時、突然、頭痛に悩まされ、気づいてみれば、知らない人達が目の前で戦闘していた。

一人は、乱心して紅いISを操る人。一人は、若緑色のISを操る女性。

とりあえず、お邪魔かと思って、その場を後にした。

 

氷人形 ←(獅苑?

『アアァ・・・!』

 

W

(見つけたっ!)

 

何故、『リミット・ブレイク』が発動したかは確実な原因は分からない。だけど、『海神』と『雷神(らいこう)』はISのブラックボックスの部分を中心的に回路やプログラムが組み込まれているため、どんな現象がおきても不思議ではない・・・と、博士が言っていた。

 

W

[ガシッ]

 

懐に片腕を潜り込ませ、顔面にアイアンクローを決め、さらに握力を加える。バキバキと氷の仮面が砕け、本人の顔が晒される。

最初は敵だと認識して危害を加える事に躊躇がなかった・・・でも、今となっては、とても可愛らしい部分が愛らしくて、絶対、私専用の弟にしようと思っている・・・そして、私達の所に来る前の記憶が消されてしまった可愛そうな人。

自分が捕らえてこなければ、この人がこんな事にはならなかった。体を弄られるのは、私だけで十分・・・

 

W

「だから・・・!」

 

記憶を取り戻させる・・・そのやり方は、昔ながらの方法で・・・

 

W

[ガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッ!!!]

 

頭を殴れば、直る!

 

マドカ

「いや、それは非合理的じゃ・・・」

 

マドカの声が通信で聞こえてくるけど、無視して殴り続ける。

 

マドカ

(・・・どうやら、この戦いは一方的な暴力で終わるみたいだな・・・)

 

結果、終わったけど・・・

 

獅苑?

[ガクッ・・・]

 

W

「あ・・・」

 

泡吹いて、気絶しちゃった・・・

 

W

「やりすぎちゃったかな・・・[ミシッ] ん?」

 

半円に広がる電磁波のフィードから、何やら砕けそうな音が・・・私は瞬時に危険を察知し、マドカも危険を感じて織斑千冬さんを運び出している。

私も腕の中で気絶した彼を運び出そうとしたが、先にとてつもないエネルギーが内部からフィードを破壊して、その余波で周りを光に包み込んだ・・・

 

 

 

 

 

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ウッドSIDE

 

 

ウッド

「準備は整ったか?」

 

ボディーガード

「ハッ、いつでも出せます」

 

ウッド

「よし、すぐに出せ」

 

ボディーガード

「え・・・まだ、戻ってきていない者が」

 

ウッド

「かまわん。どうせ、戻りはせんよ・・・それとも、あなたも私に逆らうのですか?」

 

ボディーガード

「い、いえ・・・」

 

ウッド

「それでいい。さて、行こうとするかな」

 

フラン

「どーこにでーすかー!?」

 

ガシャンッガシャンッと、二足ロボットを2本のレバーで操るフランが、薄暗い通路からこちらに歩み寄ってきた。

 

ウッド

「・・・ふぅ、あなたも今頃になってご登場とは・・・」

 

フラン

「私だけじゃないですよー!」

 

ボディーガード

「う、ウッド議員! ハッチが強制的に閉めらr ぐふっ・・・!」

 

シャトルの出入り口にて、上空へ飛び立つ隔壁が閉まった事を慌てふためいたボディーガードが、私達が来る前に忍び込んでいた人物に昏倒させられる。

 

ラウラ

「ウッド・・・貴様を拘束する」

 

ウッド

「シュヴァルツ・ハーゼ・・・隔壁を閉めたのは、『R』か」

 

ラウラ

「リリヤだ・・・これで、お前も年貢の納め時だな。各国のお前の仲間はすでに捕らえられてるぞ」

 

ウッド

「ふんっ。使えん奴等がいても組織は成り立たぬ」

 

フラン

「でーはっ、あなたは違うのでーすか?」

 

ウッド

「フラン博士。私にとって組織は、ただの踏み台でしかないのだよ」

 

踏み台でしかない・・・ちょっと違う言い回しになってしまったが、私は必ず組織を自分のものにしてみせる・・・"あのお方達"すらも蹴落として・・・

 

フラン

「では、あの子達も踏み台にしようとしてたんですね・・・」

 

ラウラ

「フラン・クリン博士が先頭に立って、行われた最強のクローンを作る実験・・・お前のデータベースに、"遺伝子強化試験体α-0000"の情報があった」

 

ウッド

「わざわざ催眠チップを混入させたというのに、まさかあんなにも早く解けるとは思わなかったよ」

 

本当は、ほかのクローン体にも混入させたかったんだがな・・・

しかも、博士はその催眠チップを利用して、催眠が解けるのと同時に『越界の瞳』と『W』に繋がれた回路のストッパーが外れ、『W』の"欠陥"を補う事を可能にした。

博士が催眠チップの存在に気づかないはずがない。今まで、放っておいたのはそのためだろう。

それに、作り物とはいえ、脳は繊細だから手を加えられなかったのも理由の一つかもしれない。

もしかしたら、ほかのクローン達・・・いや、ほかのISにも何か仕掛けをしているのか・・・? 一番、可能性がある奴は『B』ぐらいか?

でもまぁ、今更、そのシステムが発動してようとしてなかろうと・・・

 

ウッド

「人も作り物も一緒ですね。使えない奴は所詮、使えない奴なのだから」

 

フラン

「そこまで言いますか・・・あなた、死ぬ覚悟は出来ていますよね〜?」

 

ラウラ

「悪いが、こいつは我々ドイツが拘束する。老人は手を出すな」

 

勝手な事を抜かしよる御二人だ・・・

 

ウッド

「くくくっ・・・私は死ぬ気も、拘束される気もない。ここで失礼させてもらうよ」

 

今の会話は時間稼ぎ。空がダメなら海中に逃げ込むまでだ・・・

私の足元の床が突如、筒抜けになり、まるで遊園地の"タワーオブテラー"のように、私はその穴から下の階へ一直線ならぬ、一直下降。この最下層には、前もって用意していた潜水艇がある。

 

ラウラ

「・・・」

 

フラン

「誰ですかー!? こーんな仕掛けをつけた人はー」

 

いや、あなたが作った基地でしょ・・・それを利用しただけなのですが・・・

 

 

 

-6ページ-

本音SIDE

 

 

本音

「うぅ〜・・・ホーホーのばかぁ!」

 

また迷子になっちゃよ〜・・・相変わらず、ハナちゃんは返事をしないし〜・・・

 

本音

「また同じ場所に出ちゃうし〜・・・!」

 

ドッペるゲンガーさんと会った赤暗い広場。立ち並ぶ機材と、床から天井に立つ巨大な筒状の"何か"があった。

 

[カチャ・・・ピッピッ]

 

本音

「ん〜?」

 

人の気配と電子音が、響くように聞こえてきた。私は機材の物陰に隠れ、頭半分出し、音源の場所を様子見る。

 

イーリス

「・・・よし、これで終わりだな」

 

そう言って、一仕事終えた感じで、私に近づいてきた。私は咄嗟に頭を隠して、身を強張らせる。女性は私に気づかないで横を通り過ぎ、ほっと胸を撫で下ろす。

あの女性は何をしてたんだろぉ?、と思って、物影から動かず、さっきまで女性が居た場所を見る。

 

本音

「ん〜〜???」

 

筒状の"何か"に小包並みの大きさの物が貼り付けられている。良く見れば、同じ物が自分が隠れていた機材にも貼り付けられてあって・・・

 

本音

「・・・」

 

長方形の小包の中心に電子盤・・・そこには、"09:29"と表示されていて、秒刻みで"29"が"28"に、"28"から"27"と変化していく。

 

本音

「・・・わっ、わわわっ!」

 

私は両腕を振って、大急ぎでその場から走り去る。

 

本音

(あ、あれって、爆弾だよねぇ!? 思いっきり爆弾だったよねぇ!?)

 

爆弾の恐怖よりも、爆弾を初めて見た興奮が勝っていた。私はどこに向かうのかも分からず、心臓の鼓動に合わせて通路や肩幅ギリギリの階段を走り続けた・・・

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インフィニット・ストラトス 朝霧獅苑 のほほんさん 

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