fortissimo//Zwei Anleihen in Niflheimr 2話〜廻りだす運命〜 |
今回は1キャラのみの紹介となります。
竹花 浩太郎(たけばな こうたろう)
身長:186p 体重:74s
((予言の巫女|ヴォルスパー))本部所属
特徴:飄々としている
ミステリアス
丁寧な物腰
・予言の巫女本部に所属している『召喚せし者』の1人。
飄々としていて、常に余裕そうな笑みを浮かべている、どこか食えない性格の男。
その内面に何を秘めているかは謎に包まれている。
何故か、自分の能力を頑なに使用しようとしない。
超謎キャラです。しかし、一応味方です。
さて、彼が内面に何を秘めているのか?
何を思って戦いに身を投じてるのか?
彼に注目すべき点はそこですかね。
では本編をお楽しみください。
今回はなんと、fortissimo本編よりあのキャラが登場…?
「・・・まずいのじゃ」
「ほう、まずいとは?」
異質な空気を纏うその空間に在るのは2つの影。
1つは、背丈の短い少女のような体型をしている女。
だがこれでも彼女は成人済みである。
幼気な顔を歪め、呪いを呟くように何かを唸っている。
もう1つは、女とは対照的な長身の男。
彼も彼女とほぼ同年齢だがその年齢に似つかわしくない貫禄を身体から滲みださせている。
表情も女とうってかわって、余裕そうにヘラヘラと笑みを浮かべている。
それがカンに障ったのか女は男を睨みつける。
「浩太郎・・・お主、本当に危機感を持っておるのか?」
「ははは、実感もないのに危機感も何もないですよ、苺さん」
「まったく・・・この男は」
苺と呼ばれた女は呆れたように首を横に振る。
こういつはもうどうしようもない、というような顔である。
「・・・それで、例の彼はどうですか?芳乃創世さん・・・でしたっけ?」
「順調でないから、このような顔をしておるのじゃろ・・・」
「ふむ・・・なるほど。やはり奇跡とはそう簡単に起こらないというわけですね。
残酷ですねぇ。神は残酷だ」
浩太郎は何がおかしいのかツボにはまったように笑い声を上げ続ける。
その様子を見る苺が大きな溜め息をつくと同時に1人の男が暗闇から姿を現した。
「失礼、2人ともよろしいかな?」
「隆太・・・何じゃ?何か用かの」
隆太と呼ばれた男は「あぁ」と頷くと手元にある資料に目を落とした。
彼の名前は((工藤隆太|くどうりゅうた))。
ただでさえ真面目そうな顔にしわを刻みつけたせいか、外見だけ見ればとても高校生の
息子と娘がいるように見えないだろう。
そう、彼は二児の父親・・・逢菜と翔の父なのだ。
「2人とも、今我々がどのような状況にあるか・・・自覚はあるかね?」
「私は大丈夫じゃがこやつがどうものう・・・」
「ははは、申し訳ありません」
「・・・まぁいいだろう。現在こちらに対する攻め手は厳しいものではないからな。
自覚できないのもわからないではない。・・・だがな、このままでは我々の
敗北は揺るがない。戦力の増加・・・又は『究極覚醒研究』の成功・・・
つまり芳乃創世の覚醒・・・このどちらかが叶えば勝利することも難くない」
至ってシンプルな考えだがそれは事実以外の何物でもないだろう。
だが、それが叶うのが難しいこともまた事実。
つまり現状、彼らは詰んでいるのだ。
「そこで私は・・・個人的に戦力増加の計画に踏み切ることにした」
「個人的に・・・戦力増加・・・?」
「具体的には?」
「私の息子・・・工藤翔を『((召喚せし者|マホウツカイ))』として覚醒させる」
「「っ!!」」
苺と浩太郎が同時に息を呑む。それは驚きによるものか、それとも・・・。
「ま、待つのじゃ隆太!お主、自分の息子を・・・このような醜い争いに
巻き込む気か!?」
「言っている場合ではないだろう。世界の危機だというのに、己の私情だけで
行動はできん」
「じゃ、じゃが・・・!そ、そもそも彼が適合者であるという保障はあるのか・・・?」
「あぁ、奴は間違いなく適合者だ。それは私が保障する」
その絶対の自信はどこから来るのか。隆太は不気味に口端を釣り上げる。
「まぁ仮に適合者ではなかったとしたら・・・逢菜がいるしな。
あいつが『((召喚せし者|マホウツカイ))』の素質があるかは微妙だが・・・」
今の言い方からするに翔は『((召喚せし者|マホウツカイ))』としての素質があると確信できるほどの
『何か』を持ち合わせているということだろう。
苺も浩太郎もそれには勘づいてたが、その『何か』が何なのかは理解できないでいた。
・・・
・・・・
・・・・・
「ほら、お兄ちゃん!こっちこっち!」
「ちょ、逢菜、おま、早っ・・・」
「お兄ちゃん男の子でしょー?情けないぞー」
「いや・・・お前が体力ありすぎるだけだ・・・」
お兄ちゃんはさっきから額に汗を浮かべて、苦しそうに肩で息をしている。
・・・ちょっとはしゃぎすぎちゃったかな。
「ったく・・・少しは加減してくれよな」
「あぅ・・・ごめん」
「・・・ま、いいけどさ。今日はお前の誕生日だからな」
・・・誕生日。それは誰もに年に一回訪れる、この世に産み落とされたことを祝う日。
今日が私の誕生日なのだ。
そもそも何故私たちはデートしているのか。
それはお兄ちゃんが「今年の誕生日プレゼント何がいい?」という問いを投げかけてきた
ことに始まる。
その問いに対し、私は間髪いれずに「お兄ちゃんとデート!」と言ったのだ。
我ながら大胆な発言だと思ったけど、お兄ちゃんはそれを笑顔で受け入れてくれた。
私はそれがとても嬉しくて。嬉しく・・・て・・・。
「逢菜、着いたぞ」
「あ、うん」
やってきたのは星見商店街。
今日も今日とて、現地の人たちによって大いに賑わいを見せている。
「さぁて、どこからまわる?」
「う〜ん・・・お兄ちゃんと一緒ならどこでもいいかな・・・えへへ」
「・・・ったく。嬉しいこと言ってくれるじゃねーの。じゃあとりあえず適当に
ぶらつくか?」
「うんっ」
・・・
・・・・
・・・・・
「お、ここって・・・例の新しく出来た甘味処か。せっかく来たんだし
何か買っていくか?」
「うん、そうしよそうしよ!」
「うーん、しかし結構並んでるなぁ・・・。逢菜、俺並んどいてやるから
その辺ぶらついてこいよ」
「え、でも悪いよー。それに今日はお兄ちゃんとのデートなんだし・・・」
「いいからいいから。何がいい?」
うー・・・お兄ちゃんの分からず屋。
「・・・大判焼きのミルクカスタード」
「了解。じゃ、買ってくるから」
お兄ちゃんは私にそう言うなり、そそくさと最後尾並んでしまった。
・・・もう、馬鹿。
私は鼻を曲げてその辺の店を適当に物色することにした。
「・・・あれ」
こんな所にお店なんてあったっけ?新しく出来たのかな・・・。
私は軽くお店の中を覗いてみる。
すると奥の方から気の良さそうなおじいさんの「いらっしゃい」という
声が聴こえてきた。
どうやらお土産屋さんみたいだけど・・・。
・・・へぇ、結構色々あるみたい。
でもなんかツクヨミノヤマネコグッズが多い気がするけど気のせいかな・・・。
「あ、このストラップ可愛い・・・」
私好みのストラップを見つけ、それを手に取ろうとした瞬間。
それは起こった。
ドクン―――――
「・・・え?」
・・・何、この変な感じ。まるで全身の血液が一瞬で沸騰して、それが
体内で逆流してるような感覚。
軽い吐き気と目まいを抑えるように私は静かに瞳を閉じる。
「はっ・・・はぁっ・・・」
何度か深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着かせて、私はそっと目を開ける。
そして、開いた瞳は吸い込まれるように、『それ』に焦点を合わせていた。
「・・・紅い・・・宝石?」
私の瞳を貫いたのは、不気味なくらいに真紅の輝きを放つ宝石だった。
何故だろう。ただの・・・ただの宝石のはずなのに、まるで生き物のように
私をジッと見つけている気がする。
そして私は・・・その宝石に共鳴するように・・・。
「すいません。・・・これ、ください」
そう呟いていた。
・・・
・・・・
・・・・・
「う〜〜ん・・・楽しかったぁ!」
「そうか、なら良かった」
楽しくて幸せな時間はあっという間に過ぎ、もうお日様が沈もうとするような
時刻になっていた。
さすがにこれ以上遊ぶのはきついだろうとなって、私たちは今、茜色に染まる
帰り道を歩いている。
「お兄ちゃんは・・・楽しかった?」
「・・・楽しくなかったわけないだろ。まぁ、さすがに疲れたけどな」
「・・・えへへへ」
私は甘えるようにお兄ちゃんの腕に絡みつく。
今さらだけど、やっぱり端から見るとカップルとかに見えるのかな。・・・よし。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
「んー?」
お兄ちゃんの視線が私を捕えた。今だっ!
「えいっ!」
「っ・・・!?」
唇に柔らかくて熱いものが触れる。
そっ、と優しく、撫でるように、包み込むように・・・
私はお兄ちゃんにキスをした。
「あ、逢菜・・・っ!おまっ・・・!」
「あ、お兄ちゃん照れてる!かーわいっ♪」
これは、私からの贈り物。
「ほう・・・逢菜。てめぇ、なかなかいい性格してるじゃねぇか。
兄をからかったことを冥府にて後悔するがいい!!だぁぁらっしゃぁぁぁ!!」
「わぁぁっ!!?お兄ちゃんが怒ったぁぁ〜〜〜!!?」
いつも楽しい日常を与えてくれるお兄ちゃんへの((贈り物|プレゼント))。
そして、今日まで頑張ってきた私への((ご褒美|プレゼント))。
・・・なんちゃって、ね。
・・・
・・・・
・・・・・
「・・・えへ」
あの後、帰路についた私たちはいつものように明るい食卓を囲んだ。
お兄ちゃんがサプライズでバースデーケーキを出してくれた時は嬉しさのあまり
目から熱いものが流れてしまった。
もう・・・ほんと・・・卑怯だよね。
「えへ、えへへ・・・」
ベッドに潜ってニヤニヤしてる私は端から見たら完全無欠の変態なんだろう。
それでも、こう呟かずにはいられなかった。
「・・・お兄ちゃん、大好き・・・」
・・・
・・・・
・・・・・
「あぁ、疲れた・・・」
俺は吸い込まれるようにベッドに横たわる。
今日はすごく密度の濃い1日だった気がするな。
自分でも呆れるほど『今日』という1日を楽しんでいた。
やはりあいつと過ごす『今』は退屈しない。
いや、むしろ楽しすぎて怖いくらいだ。
「ありがとな・・・逢菜」
・・・・・・。
「にしても・・・一樹のやつ、どうしたんだ?」
毎年、逢菜の誕生日を一緒に祝ってたあいつが今年に限って、
「たまには家族団らんで過ごしてくださいよ」だなんて。
・・・あいつ、何かあったのか?
そんなことを思いながらボーっとしていると、机の上から空気を切り裂くような
無機質な機械音が鳴り響いた。
どうやら俺のピッチ(PHS)が鳴ってるようだ。
普段あまり使ってないから着信音に馬鹿みたいにビビってしまった。
通話するとしても逢菜か一樹相手にたまにするくらいだし。
・・・だとしたらこんな時間に誰だ?
「・・・もしもし」
俺は軽くためらいながらも通話ボタンを押した。
そして聴こえてきた声は―――
「翔か?」
この世で一番聴きたくない人物の声だった。
「・・・何だよ。仕事優先屑野郎」
「実の父親になんて口のききかたをする。それでも私の息子か」
「てめぇの息子になった覚えなんかねぇよ。それに・・・何が実の父親だ。
ホラ吹いてんじゃねぇぞ、頭沸いてんじゃねぇのか」
憎しみが止まることを知らず溢れかえってくる。
できることなら今すぐにでもこいつを五分刻みにしてやりたいくらいだ。
工藤隆太・・・・・・。こいつは俺の・・・俺と逢菜の実の父親ではない。
義理の父親なのだ。
「・・・まぁいい。明日の放課後、星見商店街に来い。話がある」
「はいそうですか、なんつって俺が了承するとでも思ったのか。
お前に話があっても俺にはない。・・・じゃあな、屑やろ・・・」
しびれを切らし俺が通話を切ろうとした瞬間、奴は呪いを呟くような低いトーンで
こう言い放った。
「逢菜が巻き込まれてもいいのか?」
「な・・・にっ・・・!?」
一瞬で全身の血液が煮えたぎった。
きっと俺は今、この世のものとは思えない、鬼のような形相をしているだろう。
血管がブチ切れそうになるくらいに奥歯を噛みしめる。
こいつは・・・こいつは今なんつった・・・!?
「待ってるぞ」
「なっ!?おい、ちょっと待て、てめぇっ・・・!!!」
その声を最後に、通話はプツッと途絶えてしまった。
・・・あの・・・くそっ・・・!!
「っ・・・ちっく・・・しょォォォ・・・!!!」
何で・・・こんな・・・。
「・・・絶対に・・・」
あいつだけは許さない・・・!!
「・・・・・・くっ・・・そォォォォォォォォォォォ!!」
俺はいたたまれない気持ちになり、自分の無力を嘆くように満月の夜に咆哮した。
・・・
・・・・
・・・・・
「ッオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
白銀の刃が満天の夜の満月を切り裂く。美しい夜空を汚すは鮮血の雨。
大気を振動するは、1人の男の断末魔。
その男の近くには、木っ端微塵に砕け散った((戦略破壊魔術兵器|マホウ))が無残に転がっていた。
そして、男は夜空に吸い込まれるように『((魔術粒子|エーテル))』となり、霧散していく。
これが((戦略破壊魔術兵器|マホウ))を破壊された((召喚せし者|マホウツカイ))の辿る末路。
絶対にして、何があっても揺るぐことのない((結末|みらい))。
男が消滅したことを合図に蒼白の世界が解きほどかれる。
「・・・言えないよな」
その場に呆然と佇む少年は紛れもない、逢菜の幼馴染、神月一樹だった。
「人を殺してたから、誕生日を祝えなかったなんて・・・」
誰に呟くでもなく、一樹は顔を苦痛に歪め、虚空をにらみ続けた。
説明 | ||
2話です。今回は物語が少し動き始める回です。 |
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